企業兼大株主オークマ東証プライム:6103】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として4,199百万円を支出いたしました。

 研究開発活動の概要は、次のとおりであります。

(1) 新機種・新技術開発

 半導体や自動車関連の需要の落ち着きや中国経済減速の影響を受け、2023年暦年の日工会受注額は前年比15.5%減の1兆4,865億円と3年ぶりに減少しました。しかしながら、日工会受注額は過去7番目であり、労働人口減少、脱炭素化、サプライチェーン再編等、社会課題や地政学リスクへの対応に伴う需要は底堅く推移しました。

 こうした中、「ものづくりDXソリューションの展開」を基本戦略とし、Purposeである「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ため、当社の強みである機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合技術を活かし、高い生産性と安定した稼働を実現する新機種(スマートマシン)・新技術開発を進めています。特に「脱炭素化」「自動化」の対応に注力しており、開発した新技術は自社のスマートファクトリー「Dream Site(ドリームサイト)」で実証確認し、ここで得られたノウハウを反映することで、信頼性の向上を図っております。

 国内外の大手の製造業が脱炭素化に向けた取組みを開示し、サプライチェーン全体への波及が進んでいることから、中小規模企業においても脱炭素化の取組みが必要となっています。このような状況を踏まえ、部品加工工場の電力消費量の多くを占める工作機械の省エネルギー(CO2排出量の削減)技術の開発を進めております。具体的には、精度安定化のために必要となる工作機械の暖機運転や工場の環境温度変化を抑制するための空調を削減しても工作機械が自律的に高精度の安定維持を行うと共に、周辺機器の稼働を自動できめ細かく運転することで省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」として展開し、提供しております。2023年度は、工作機械の基本となる加工性能と環境温度変化に対する精度安定性をさらに高めた立形マシニングセンター「MB-V Ⅱシリーズ」を開発し、機械稼働時の保守作業が大きく削減できるスラッジレスタンクも進化させたことが高く評価され「2023年十大新製品賞本賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。

 また、労働人口減少により自動化・省人化への要望が高まる中、Dream Site(ドリームサイト)での経験を活かした技術開発を行っております。一般に産業ロボットを操作するには工作機械とは異なったロボット特有の言語を習得する必要があり、ロボット導入の障壁となっています。この課題に対して、「工作機械オペレータがすぐに使える自動化」をコンセプトに特徴のある技術開発を行い、工作機械とロボットを完全融合した次世代ロボットシステム『ARMROID(アームロイド)』を提供しております。さらに、2023年度はロボットと工作機械を組み合わせた加工セルに対して、ロボットの動作順を表形式の工程表で指定するだけで動作可能なスマート加工セルコントローラー「smarTwinCELL(スマ―ツインセル)」を開発しました。Green-Smart Machineの複合加工機MULTUS B300Ⅱと組み合わせ「smarTwinCELLロボットキット」として提供を開始しました。また、生産の繁忙に合わせて柔軟に自動化することを目的に、移動可能なワークストッカとロボットを組み合わせた移動式協働ロボット「OMR」を開発し、提供を開始しました。自動化したい工作機械に対して約4分半で設置でき、最大10台の工作機械に対応ができること、最大30種の加工部品に対応可能であることが特徴で多品種少量生産の生産現場の生産性向上に貢献いたします。このような自動化の普及推進と並行し、㈱木村鋳造所との協創において、工程間のデジタルデータ連携や、これまで培ったソリューションを応用したロボットによる砂型の直接加工の実現で、多品種少量の中・小型鋳物の生産性を向上する新鋳造製造技術を開発しました。このように自動化の適用範囲を拡大することで、ソリューションの提供範囲を広げています。

 自働化において重要となるワークの製造品質向上にも積極的に取り組んでおります。加工精度に対しては、精度確認を目的に活用される機内計測装置の校正作業を自動で行う機能を開発し、提供を開始しました。従来の手作業を無くすことができるだけでなく、計測誤差に伴う製品不良を未然に防止します。また、稼働の安定化に対して、ドリル加工時に工作機械が自動で加工不具合を防ぐ「AI加工診断機能(ドリル)」を開発し、提供を開始しました。Dream Site(ドリームサイト)で4年以上運用し、ガンドリルによる加工不具合の撲滅を実証すると共に、お客様によるモニタ活用で、機械・ワークの保護や工具費用の削減に貢献できることを実証しています。

当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度と高生産性」を追求し、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」の実現に必要な技術開発、新製品開発を行い、「最高のものづくりサービス」を提供することで、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。

(2) スマートマシンを支えるNC装置の開発とスマートファクトリー実現の取組み

 当グループは、1963年(昭和38年)に自社製NC装置「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。

 近年、社会における人々の志向の多様化、脱炭素社会への移行、安全保障など地政学的リスクへの対応など、時代が大きく転換しようとしている中で、ものづくり産業における生産革新、スマート化が進展しております。こうしたスマートなものづくりを支えるのが、スマートマシンであり、スマートマニュファクチャリング(スマートなものづくりの仕組み)であります。

 スマートマシンを支えるNC装置では、お客様の「ものづくりDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を実現する新世代CNC「OSP-P500」を2023年5月より複合加工機、横形マシニングセンター、5軸制御のマシニングセンターに搭載を開始しました。迅速かつ正確なフロントローディングを実現するデジタルツイン、初心者でも簡単に加工が可能な革新的操作性、加えて高精度・高生産性と環境対応を両立する脱炭素ソリューション、セキュアな環境を実現する強固なセキュリティを備え、先進のデジタル技術や知能化・AI技術、脱炭素化技術により、幅広い産業の製造現場においてお客様の「ものづくりDX」の実現を支援し、社会課題解決と高精度・高生産性を両立したものづくりを推進します。

1) スマートマシンを支える新世代CNC「OSP-P500」での機能開発

1-1) 2つのデジタルツイン

 実際の機械から収集した様々なデータを元に、限りなく実際の機械に近いシミュレーションを可能とするデジタルツイン技術を活用し、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するPC上でのデジタルツインと、実際の機械動作を行わず、機械動作を高速、高精度でシミュレーション可能な実際の機械上でのデジタルツインの2つのデジタルツインを開発しました。

PC上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」)では、実際の機械の軸動作だけでなく、ATC等の周辺装置などの様々な動作情報をNC装置(OSP-P500)により収集、PCに送出することにより、PC上においても精度の高い機械動作のシミュレーションを高速で実行することにより、より精度の高い工具パスや干渉チェックの検証、高精度の加工時間見積を可能にしました。

 実際の機械上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンマシン」)では、実際の機械を制御するための制御データをそのままシミュレーションに用いることにより、加工を開始する前の作業者が設定したデータ設定ミスなど、今まで実際に動かしてみないとわからなかったことが事前に確認できるようになりました。

 この2つのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」および「デジタルツイン オンマシン」)により、迅速かつ正確なフロントローディングや実際の機械上での作業確認時間の短縮を図り、生産性の向上を実現します。

1-2) スマートOSP操作

 製造業での人手不足、熟練技能者の高齢化が叫ばれる中、NCプログラムを全く知らない初心者の方でも、簡単に加工を行えるようガイダンスにより作業者を支援する「スマートOSP操作」を開発しました。

「スマートOSP操作」の加工においては、加工に必要データを表形式に順に入力することにより、加工するための動作を定義でき、加工工程、工具、切削条件を自動決定し、直ぐに加工が行えます。加工をするための原点設定や工具の取付けなどの段取り作業についても、表形式で手順をガイダンスし、作業者の作業を支援します。

 これにより、作業者は短期間で機械の操作や加工を習得できます。

1-3)セキュリティ機能

 製造現場でのIoTが加速しています。工場内の機械や様々な機器がネットワークで繋がるだけでなく、グローバルに拡がる複数の工場間、あるいは、取引先を含めたサプライチェーンがネットワークで繋がっていきます。このような中で、サイバー攻撃により生産が停止したというニュースも耳にします。このようなサイバー攻撃のリスクから工作機械を守るために、工作機械での強固なセキュリティ機能を開発しました。

不正なアクセスや接続を防ぐオペレータ認証機能による「防衛」、被害を抑制するホワイトリスト方式のウィルス対策による「防御」、万が一に備える制御ソフトウェアとデータのバックアップ機能による「復旧」の3つの観点で、サイバー攻撃のリスクから お客様の大切な資産を守ります。

1-4) ECO suite plus

 環境対応として、脱炭素社会の実現に向け、工作機械の使用によるCO2排出量(消費電力)を見える化すると共に、加工中は、必要な時に必要な分だけ周辺機器を運転するよう制御、加工完了後は、機械が自律的に不要な周辺機器をアイドルストップしたり、作業者の作業状況を自動で判別して周辺機器のアイドルストップと復帰を自動化するなど、様々な機能により当グループが提案する「Green Smart Machine」を支えています。

2) スマートファクトリー実現の取組み

 次世代のものづくりが拡がる中、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」では、当グループが目指すスマートファクトリーとして、導入した自社製スマートマシンを活用し、全体最適の見える化工場、部品加工プロセスの制御周期の高速化によるスループット向上、ロボット・自動化システムによる自動化・省人化に取組んでいます。さらには、業務・製造プロセスのデジタル化を進め、デジタルマニュファクチャリングの実現に向けて、着実な成果を上げております。

 加えて、この取組みを会社全体の業務プロセスに拡張し、当グループにおいて「ものづくりDX」として取組んでいます。

 今後は、「ものづくりDX」ソリューションとして、上記の当グループ工場や社内の業務プロセスにおけるDXの取組みの成果やお客様のものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウや成功事例を、個人や個別組織の経験値として蓄積するだけでなく、デジタル化により全体で共有し、リードタイム短縮、生産性向上、品質向上に利活用し、変化する顧客や社会のニーズに迅速に適合できるように変革することをお客様と共に協創して取組み、お客様の価値創造を支援していきます。

 当グループでは、半世紀に渡る自社製NC装置開発の基本理念を今後も継承すると共に、当グループの強みである機・電・情・知融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術、先進のAI活用技術の開発と強化を進め、スマートマシンの実現を推進すると共に、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」で実証されたデジタルマニュファクチャリングを、「ものづくりサービス」として提供し、世界中のお客様の価値創造の実現と社会に貢献できるように推進してまいります。

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