企業兼大株主エア・ウォーター東証プライム:4088】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度の研究開発活動につきましては、エア・ウォーターグループの技術の源泉であるガス関連技術のさらなる深化を図るため、グループ横断基幹開発センターとして、グループテクノロジーセンター内に「ガス技術開発センター」 を新設しました。また、事業グループごとに開発センターを設置し、技術開発リソースを集約するとともに、開発から事業化までの一貫体制を構築しました。

 さらに、2023年9月には、「ウェルネス(健やかな暮らし)」に関わる新事業の創造、開発、発信するための拠点として、新しいオープンイノベーション施設である、エア・ウォーター健都を開業いたしました。地域と“つながる”ことで産官学民連携によるオープンイノベーションを推進し、体験・実証を通じた「健やかで楽しい暮らし」に関わる新事業の創造により、人生100年時代の社会に貢献していきます。

 エア・ウォーターグループの全事業の基盤である、ガス関連技術のさらなる深化と、これまでに培ったそれぞれの事業グループのコア技術をさらに磨くことで様々な分野へ応用展開を図っていきます。また、オープンイノベーションによる積極的な技術開発により、今まで以上に事業の継続的な成長と社会に貢献できる新事業成果の結実に取り組んでまいります。

 事業グループごとの研究開発活動につきましては、次のとおりであります。

(デジタル&インダストリー)

 デジタル化の急速な進展に伴い、データセンターの処理能力やデータ通信速度の更なる高速化に対応できる材料のニーズが高まっております。また、脱炭素社会の実現に向け、電気自動車の航続距離の伸長や急速充電に対応できる材料が求められております。これに対応するため、半導体や二次電池などのエレクトロニクス分野における幅広い領域を中心として、エア・ウォーターグループ内及び外の技術シナジー発現による差別化商品創出に注力しつつ、新たな材料開発を推進しております。

・エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱においては、高機能を有する電子材料や食品機能材料の開発に注力しております。また、分散している開発拠点を集約し、技術の集中・高度化を図るため、新研究棟の建設を進めており、2025年2月に竣工する予定であります。

・脱炭素社会でますます重要となる蓄電デバイスについては、リチウムイオン電池高性能化のための電解液添加剤の開発の他、リチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池でも寿命・容量を向上させる負極用真球状ハードカーボンの材料開発を推進しており、大学との共同研究もスタートしました。

・脱炭素社会の実現に向け、従来とは異なるCO2回収技術の開発を大学との共同研究にてスタートしており、2030年度の社会実装に向け、開発を推進しております。

・㈱FILWELでは、ハードディスクドライブ、シリコンウエハなどの精密研磨に使用されるパッド材の技術を有しております。現在はSiCパワーデバイスの需要拡大に伴い、SiCバルク基板用の研磨パッドの技術開発に注力しております。

(エネルギーソリューション)

2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、カーボンニュートラルエネルギー関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。

・当社では、NEDO水素社会構築技術開発事業として「北海道豊富町未利用天然ガスを活用した地域CO2フリー水素サプライチェーンの構築」に向けた取組みを推進しております。本実証事業では、豊富町で自噴する天然ガスを用いて、メタン直接改質(DMR)法によりCO2を直接排出することなく高純度水素及びカーボンナノチューブを製造します。製造した水素は近隣の需要家へ供給し、地産地消型水素サプライチェーンの構築を進めてまいります。2024年5月に建屋の建設に着工し、国内初となるDMR法を用いた商用規模での水素製造を目指しております。

・2022年に発表した小型CO2回収装置「ReCO2 STATION」の商用化設計を進め、実装に向けた準備を進めております。また、CO2回収の省エネ化を目的とし、NEDOグリーンイノベーション基金事業において、「Na-Fe系酸化物による革新的CO2分離回収技術の開発」を推進しております。2025年には大阪・関西万博において実証を行う予定であります。

・地産地消エネルギーによる資源循環モデルの開発施設「地球の恵みファーム・松本」の建設を進めております。地球の恵みファーム・松本は「バイオマスガス化発電」「メタン発酵発電」「スマート陸上養殖プラント」「スマート農業ハウス」の4施設で構成されており、「メタン発酵発電」を除く3施設について稼働を開始しました。地域で発生する未利用バイオマス資源を有効活用してエネルギー生産を行うとともに、発生する熱やCO2を養殖設備や農業に利用します。未利用資源からエネルギーを獲得し、排出される廃棄物を最小化することで、エネルギーの地産地消と資源循環モデルを実現します。

・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。環境省が推進する「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の優先テーマとして、バイオガスを用いて液化バイオメタン(LBM)に加工することでLNGの代替燃料として活用する実証を完了し、2024年5月よりバイオメタンの商用販売を開始しております。今後、自治体や企業とのさらなる連携を通じて、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。

(ヘルス&セーフティー)

 医療事業において、医科向けや歯科向けの病院内機器製品やサービスの開発ならびにOEM事業を推進していきます。

・ヘルスケア開発センターでは、医療事業を軸に医科向け、歯科向けの開発に取り組んでいきます。今後は、「光センサー技術」・「音解析技術」・「映像解析技術」のコアコンピタンスを活かして医療事業のみならず、美容・審美歯科領域にもビジネスを拡大し開発を推進していきます。

・在宅医療、遠隔診療用途として肺の呼吸音を可視化および解析が出来る電子聴診器システムおよびそれを利用するIoTプラットフォームの開発をしております。音により、いち早く病態変化に気づけるよう病院内または在宅で使用出来る機器・サービスの開発を目指しております。

・慶應義塾大学発GI型POF(屈折率分布型プラスチック光ファイバー)技術を応用し極細内視鏡の開発を推進しております。極細硬性内視鏡の使用により、患者の関節内を低侵襲で手術前後に直接観察でき、迅速かつ正確な病状把握や、手術後の経過観察を効率よく行うことが可能になります。これにより、外来や在宅での検査・治療が可能となり、患者の肉体的負担、医療現場の負担が大幅に軽減されます。

・エア・ウォーター・メディカル㈱では、既存主製品の酸素濃縮器の開発に加えて、新たにOEM事業を展開しております。血液透析治療向けに、ヘルスケア開発センターで開発した電子聴診器システム技術を展開し血流音を可視化するHVSIモニターの製品化を行い2024年5月より製造、販売しております。これにより、医療従事者の主観評価を数値化し定量的に判断出来るようになり医療現場の負担が軽減されます。

・エア・ウォーター・リアライズ㈱では、エアゾール事業、化粧品事業、注射針事業を展開しております。高付加価値製品の開発、産学連携による新技術と新素材の開発、顧客・消費者のニーズを先取りする提案型開発研究にて事業の拡大を目指しております。

(アグリ&フーズ)

 農作物の栽培・加工・保存技術や食品・飲料の品質向上、分析・機能性及び新技術・商品開発を推進しております。

・農業従事者の減少と食糧問題への取組であるスマート農業開発において、2020年12月より実施している東京大学との共同研究では、主力品のひとつであるブロッコリーの収穫適期予測プログラムを開発いたしました。また、観察技術とデータ技術を応用して肥料使用適切化の開発にも着手し、生産性・品質向上の両立を目指しております。農産物の鮮度保持技術においては、エチレンガスの制御に着目し、北海道大学の保持技術であるプラチナ触媒を利用して当社の流通・販売・加工の改善を目指して実証試験を行っております。また、室蘭工業大学とは鮮度保持と連携した分析技術を活用し、地域ブロックチェーンへの導入の試みを行っております。

・当社事業の強みをさらに高めるため、農産自社資源の活用・分析による機能性研究によって付加価値を与え市場参入を目指しております。鮮度保持技術と連携し、品質の向上とともに、食と健康への取組を活性化しております。

・当社が資本業務提携している㈱ベジテック、デリカフーズ㈱との研究分科会を発足し、事業上で重要な農産品の保存性向上の取組を進めております。事業や実情に応じた、生きた研究活動が始まりました。栽培・食品・飲料・分析の各分野での研究により、かぼちゃ収穫機・生ハム新製法の確立・食品成分の一斉分析法(332成分)、植物性発酵飲料・農作物栄養成分の迅速分析法を開発しました。バリューチェーン全体の技術力向上と、品質向上・新商品開発の取組を進めて参ります。

(その他の事業)

・㈱日本海水では,SDGs実現に向けた研究開発を行っております。NEDOの研究開発委託事業に採択された「海水を用いたCO2鉱物化法の開発(ブルーカーボンリサイクル技術の開発)」について,発電所や工場などから排出されるCO2の固定化,資源化に向けた新技術開発と実用化を進めております。また,これまでに培ってきたヒ素・フッ素などの水処理用吸着剤の製造技術を応用し,南米の塩湖からバッテリーなどに用いられるリチウム回収に向けたリチウム吸着用樹脂の造粒技術の開発に着手しました。「海水資源の活用」をキーワードに,産学官との技術連携による研究開発を積極的に進めることで,新たなビジネスを創出するとともに、SDGs実現にも貢献していきます。

 なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は6,172百万円であり、デジタル&インダストリーが1,964百万円、エネルギーソリューションが874百万円、ヘルス&セーフティーが1,662百万円、アグリ&フーズが1,106百万円、その他の事業が565百万円であります。

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