イーディーピー 【東証グロース:7794】「その他製品」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び退職すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、優れた特性を持つダイヤモンドの広い応用によって、様々な分野でのイノベーションの創出を進め、地球規模での地球環境維持や社会問題の解決を通じ、世界への貢献を目指しています。
当社で活動する従業員が、健康で充実した日々を送れるよう、様々な施策を講じています。また、株主や顧客、取引先などのあらゆるステークホルダーへの責任を果たすことを、経営方針としています。
(2) 経営環境等
当社の事業は、基本的には人工合成のダイヤモンドを販売する材料ビジネスですが、ほとんどがダイヤモンドの新しい応用を目指す分野に向けられています。天然のダイヤモンドは形状や組成が広い応用に適さないことから、人工合成のダイヤモンドを使った開発が進められています。また、伝統的な分野である宝石についても、人工合成ダイヤモンドへの転換が進んできており、これに伴って多数の企業が設立され、活発な市場環境となっています。
工具用素材としての利用は、既存市場と言えますが、その市場規模は安定的であります。しかしこの市場は種結晶や基板及びウエハの市場と比較して低い価格水準であり、当社が幅広く参入する環境ではありません。宝石及び工具用素材以外の応用については、未だ創成期にあるため市場規模が小さく、個々の案件ごとの対応になっております。2インチウエハなどのインパクトのある製品が実用化できれば、大きな展開が可能となると考え、開発に注力しております。
現在製品を供給している分野について、市場環境を以下に示します。
①人工ダイヤモンド宝石製造用の種結晶市場
a.人工宝石の製造と市場
人工ダイヤモンド宝石は超高圧合成法と気相合成法によって製作されるダイヤモンド宝石です。ダイヤモンドとしては、天然に比べ不純物が少なく純粋で、無色だけでなくピンク、ブルー、グリーン等の色がついたものも販売されております。「The Business Research CompanyのLab Grown Diamonds Global Market Report 2024」によれば、2023年のLGD市場は235億ドルにのぼり、年率10.2%の成長をしている、と報告されております。このようにLGDは大きな市場を獲得しており、さらに高速に市場拡大が進むと見られます。一方、生産量の拡大によって価格低下も進行しております。欧米においては、天然ダイヤモンドの採掘による自然破壊や、以前から指摘されている鉱山における児童労働等の問題があるため、人工ダイヤモンドのSDGsにおける優位点を意識する消費者が増加しております。これに対応して、宝飾店においても人工宝石を積極的に販売するところが増加しております。
気相合成法で作る人工ダイヤモンド宝石は、超高圧法で製造される宝石に比べ、高品質で大型です。このため、新規に人工宝石に参入する企業の多くは、気相合成法で製造しております。特にインドにおいては、毎年多くの新規企業が設立され、既存企業の生産能力も大幅な拡大を続けております。
b.必要とされる種結晶の製造
この気相合成法で製作している宝石は、製作するに際して種結晶が必要とされます。通常は0.2mmないし0.3mm厚の薄い単結晶を種結晶として使用し、3~10mmの厚さに成長し、これをカット、研磨して宝石に仕上げます。
気相合成法では、結晶の成長は厚さ方向のみ成長するため、面積方向の成長がほとんどありません。このため、成長によって種結晶の形状からの面積的な拡大が無く、最も一般的なブリリアンカットの宝石では、厚さと形状の関係が一定であるため、種結晶形状が宝石の大きさ(カラット数)を決定します。
このように、種結晶のサイズが、最終的に宝石となるダイヤモンドの大きさを決めるため、大きな宝石の製造を目指すには、大きな種結晶が必要となります。
人工宝石市場では、大型宝石の出荷が活発となっています。天然ではほとんど市場に出ていない5カラット以上の宝石を目指す動きもあって、当社は大型種結晶のニーズがあると見込んでおります。当社は5x5mm~15x15mmの広い範囲の形状を持つ種結晶を製作できます。現在では成長装置を数百台も保有する人工宝石製造会社が複数あり、これらの会社が必要とする月当たりの種結晶は1,000個を超える場合もあります。このような大量の種結晶を、品質の揃ったものとするためには、生産技術の安定が必要です。
c.種結晶ビジネスの競合
当社は種結晶を独自技術により製造し人工宝石製造会社等に販売しておりますが、当社の販売先である人工宝石製造会社の一部が、成長した結晶を薄く切断して、その表面を研磨することで、種結晶を製作しております。その場合には、当社と競合することになります。この手法の製造コストは、現時点では当社より高いと判断しております。また、金属等の基板上に成長した疑似単結晶を、種結晶として製造している企業もありますが、種結晶としての性能は当社種結晶より劣ることが判明しております。
②基板及びウエハ
ダイヤモンドの優れた半導体特性を生かすデバイス開発に必要な、基板やウエハを供給しております。ウエハについては、未だ市場ができていないものの、基礎研究やデバイスの研究開発用に各国の研究機関や企業に販売しております。最終的には、2インチ以上の口径を持つウエハが必要ですが、現時点では基礎研究段階であり、15x15mmを最大とする単結晶基板もしくは、30x30mmまでのモザイク結晶基板を販売しております。当社は、単純な基板だけでなく、結晶方位、基板上にボロンを混入させた半導体層を形成したエピ基板、結晶品質を制御した基板等の多様な要求に対応できる製品群があります。当社はモザイク結晶で大型化の先頭に立っており、ウエハ市場の創成をけん引して参ります。
③光学部品及びヒートシンク
ダイヤモンドの持っている高熱伝導率や、光やX線を透過する特性を利用し、デバイスの除熱や、各種計測器、放射光施設等の部品などに利用されております。
5Gシステムに代表される先端通信分野では、高発熱デバイスの使用が必要で、熱を除去して安定的なデバイスの動作をするため、ダイヤモンドの利用検討が進んでおります。また、検査機器で使用するX線発生装置の小型化に伴い、X線を透過する窓としての利用が開始されており、当社製品が使用されております。これまでの市場は、散発的に開発される部品の供給にとどまっていましたが、X線用窓が量産に移行した等の新しい動きがあります。当社が狙って開発している光学部品には、一定の市場が見通せるものもあります。
④工具素材
ダイヤモンド単結晶を利用する切削、耐摩耗工具は、相手材料が限定され、特殊な加工に限られております。また、工具素材の全市場では、ほとんどが超高圧合成単結晶を使用しております。超高圧合成単結晶のサイズが限定されていることから、当社の大型結晶への要求があります。なお、工具素材については、積極的に販売拡大を行わない方針であります。
(3)目標とする経営指標
当社は先端技術を使っている製造業であり、製造設備への投資を継続的に行っていく必要があります。このために、高い利益率を維持し、確固たる資金調達手段を保持することが重要と考えられます。このような観点から、主な経営指標として、以下の経営指標を重視しております。
①売上高成長率
②経常利益率
③ROE
④自己資本比率
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、2024年4月を始期とする3か年の中期経営計画を策定(2024年5月10日に公表)し、その最終年度である2027年3月期に、以下の数値の達成を目標としております。第2の創業と位置づけ当社、グループ企業あげて取り組んでまいります。
<中期経営計画>
(当社及びエス・エフ・ディー株式会社、設立予定のインド現地法人の連結ベース)
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 |
売上高(百万円) | 2,362 | 2,770 | 3,390 |
営業利益(百万円) | 274 | 470 | 560 |
経常利益(百万円) | 263 | 460 | 550 |
親会社株主に帰属する 当期純利益(百万円) | 180 | 340 | 390 |
1株当たり当期純利益 (円) | 13.70 | 25.89 | 29.69 |
当社のビジネス分野はLGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)と半導体応用開発に必要な素材であるウエハ・基板等(ダイヤモンドデバイス)の2つで構成されています。中期経営計画の達成に向けての、当社共通の課題、それぞれの事業分野ごとの課題は以下のとおりです。
①LGD分野の活動に係る課題
LGDの本格的な宝石ビジネスは約12年前に始まり、市場アナリストの情報として、現在ではダイヤモンド宝石市場における流通量の20%以上にも達しているとの推定も出ており、急速に規模が拡大しています。当社はこの分野で種結晶のみを販売する単一製品のビジネス形態で今日に至っておりますが、今後はLGD分野で複数の製品を展開できるように進める方針です。
ⅰ.種結晶ビジネスの進め方
既に種結晶の競合企業が出ているだけでなく、LGD製造企業が自家用に製作する種結晶が増加しています。特にインドにおいてはこの傾向が顕著で、当社の種結晶の優秀さは認められているものの、当社製品に対する購買意欲は低下しております。また、LGD製造企業は成長した原石から複数の宝石を切り出すCAD-CAM技術も確立しているため、種結晶サイズごとに大きさの異なる宝石を製作する工程自体が減少しています。当社は、昨年中頃に至りこのような状況の変化に対する情報収集能力の不足が種結晶ビジネスへの対応を遅らせる原因となっていることを認識しました。
このような状況を改善するため、世界的なダイヤモンド加工産業の集積地であるインド・グジャラート州において、タイムリーに顧客のニーズに応えていくことを目的として、当社は、当社100%子会社であるエス・エフ・ディー株式会社(以下、「SFD」といいます。)とともに、インドにおいて現地法人を設立いたします。
この現地法人では、従来からの当社製品である種結晶を、インドのLGDメーカーに対し現地販売いたします。また、SFDが計画している宝石の製作を可能とするため、当社で製作した原石を、現地法人を通じて当地で宝石に加工いたします。完成した宝石はSFDが購入して、日本及び世界で販売してまいります。
このような活動を行うために、現地法人には販売や加工等に必要な要員を配置し、場合によっては加工設備を設置して、試作や加工技術の開発を行うことも検討してまいります。
②ダイヤモンドデバイス分野の活動に係る課題
ダイヤモンドの持つ優れた半導体特性を利用して、パワーデバイスや量子デバイス等に応用するための研究が、世界各地で進められています。しかし、現在検討されている多くのデバイスの開発は、基礎研究段階から少し進んだ程度です。このような状況のためユーザーからは、当社が持っている大型単結晶やモザイク結晶を発展させ、パワーデバイスや量子デバイス等を開発するために必要な製品を展開することが求められています。
ⅰ.ウエハの開発と上市への進め方
半導体プロセスを使ったデバイス製作を行うには、最低の大きさとして2インチウエハ(直径50mm)が必要です。このサイズへの到達時期が早まれば、これを使用して量産技術開発が促進され、デバイスの実用化が早まると見られます。単結晶の2インチウエハへの大型化は、長期の開発が必要と考えられ、代替的なウエハを商品化して、普及させることを考えています。既定の開発方針であるモザイク結晶による2インチウエハの開発を進めながら、暫定的に1インチ単結晶ウエハの実用化を進める等の、新しい施策を検討・実行してまいります。
ⅱ.ウエハ加工技術の開発
デバイスの製作プロセスに使用するためのウエハとしては、表面の粗さ、うねり、欠陥密度等が、既存の半導体材料のレベルに達していることが、実用化の条件となります。このためには、結晶製作技術や加工技術の高度化が必須であり、これらに取り組んでまいります。
③当社の共通の課題
当社が東京証券取引所グロース市場へ上場して2年程度経過しましたが、さらに成長していくためには、ガバナンスの強化に引き続き取り組んでいく必要があると認識しています。また、開発体制、工場運営、人材等に対しても、以下の課題があると考えています。
ⅰ.技術開発
当社のビジネス分野では、多くの技術で世界的に優位な地位にあり、今後もこの地位を維持することが重要であると認識しています。製品そのものだけでなく、製造技術や評価技術等幅広い分野での研究開発活動が必要です。当社は現在の開発候補アイテムとして十分なラインナップを確保するに至っておりません。これを補うために、大学、公的研究機関及び他企業と連携することで、カバーする範囲を広げる必要があります。これまでも大学、公的研究機関及び他企業と委託研究や共同研究を行ってまいりましたが、海外の機関を含めさらに拡大することを検討します。
ⅱ.工場運営とコスト削減
当社は、今後製品ラインナップを多品種に拡大していくことが必須の状況にあり、その実現のためには、既存の生産方式及び体制とは異なる生産方式及び体制を構築していく必要があると認識しています。新しい製品を作る工場運営の柔軟性や、従来とは異なるコスト削減への取り組みが、必要となることは確実で、このために適材適所の人材配置を行います。必要に応じて新たに人材を採用して、新しい事態に対応いたします。
ⅲ.人材育成
当社の置かれた状況から、上場企業としてのガバナンスの強化、生産体制の維持と発展、新規技術の開発、新たな営業活動のための海外拠点の設置、グループ企業としての運営等に必要な人材の確保が急務であります。当社はこれまで必要な人材を外部から採用してまいりましたが、当社の事業活動に適した人材を育成することも、重要になっております。これを進めるために、教育システムを構築し、長期的に当社を担う人材を養成してまいります。
ⅳ.ダイバーシティーの重視
当社はESGを重視する経営方針の中で、ダイバーシティーを意識して、女性の管理職への登用や障害者の雇用等を進める必要があります。特に、部長クラス以上の経営陣への女性の登用は急務であると認識しております。
ⅴ.経営陣の高齢化と後継者の育成
当社の部長以上の経営陣は、60歳以上の比率が高く、将来の後継者の育成とあわせて、年齢構成を検討する必要があると認識しております。また役員についても、平均年齢を下げて、将来の当社を担う経営体制を構築することを検討してまいります。
ⅵ.輸出管理
経済安全保障の観点から、2022年12月に輸出貿易管理令の一部を改正する政令が施行され、ダイヤモンドの基板等が、新たな規制品目に入りました。
当社が2022年12月から2023年4月にかけて規制品目であるダイヤモンド基板等を、経済産業省の許可を得ずに輸出しておりましたことに関し、経済産業省より2024年5月21日に「厳正な輸出管理の徹底について(厳重注意)」を受領しました。当社としては、今回の事態を厳粛に受け止め、これまで以上に法令遵守を徹底し、社内体制を整備することにより、再発防止に努めてまいります。
なお、当社は昨年4月から6月にかけて一時的に輸出を自粛しましたが、6月下旬から改正後の法令に則した手続きのもと輸出許可申請を開始し、7月から許可を得て順次出荷しております。
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