企業イノテック東証プライム:9880】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

① 経営理念

 当社グループは、エンジニアリングをコアとしたトータルソリューションプロバイダーとして、顧客企業が求める多様なニーズにお応えすることをビジネスとしております。当社グループの基本方針として、以下の「我々が目指すもの」を常に念頭に置いた企業活動を行っております。

「我々が目指すもの」

・エレクトロニクスビジネスを通じて、人々の生活を豊かで快適なものにし、「未来社会に貢献」する

・創造力を駆使、携わるエレクトロニクス業界の技術の進歩に寄与し、「不可欠な存在」になる

・我々の真の事業は「問題を解決」することであり、顧客に満足いただく労苦を惜しまない

・先端技術に挑戦し続ける「パイオニア」になる

・創造力を発揮できる会社の仕組みづくりに心血を注ぐ、「誇りの持てる会社を実現」する

② ビジョン、方針

「未来を変えテック、イノテック ~Innovation Technology~」

 社名の由来でもあるInnovationとTechnologyを経営の根幹に据え、経営理念のひとつである「未来社会に貢献する」という命題にチャレンジいたします。革新的な技術により未来を変えていくことで持続可能な社会の実現のために不可欠な存在となることを目指します。

 そのために、以下のミッションに取り組んでまいります。

・最先端技術と人を繋ぎ、豊かで快適な未来社会に貢献する

・顧客に寄り添い、ともに課題を解決する

・イノテックならではの付加価値の提供を目指す

(2)経営戦略等

① 前中期経営計画について

 当社グループは創業以来の商社から転換し、「自社製品/サービスを軸に、顧客企業の設計・開発・検証・テストをサポートするソリューションプロバイダー」としての成長を目指しております。商社ビジネスで培った顧客のニーズを把握する力を土台とし、最先端の技術を採用した様々なハードウェア・ソフトウェア・サービスの提供を可能とするのが当社グループの強みであると認識しており、利益成長の機会が豊富に存在していると考えております。2019年2月に公表した2019年度から2023年度までの中期経営計画(以下「前中計」という。)においては、多様化する顧客ニーズを読み取り、最適なソリューションを取り揃え提供していくことで、顧客にとって不可欠なパートナーであり続けることを目指し、数値目標としてROE8%超を掲げ、以下の5つの戦略に取り組んでまいりました。

 利益成長の追求を図る戦略

・テストソリューション事業の成長

・自社製品売上の増加/メーカー機能の強化

・顧客ベースの拡大/海外市場開拓

・新規分野への積極的な取組

 資本政策・投資戦略

・「資本政策に関する基本方針」(2018年2月7日公表)に則した資本効率の向上(資本コストを意識した投資)

 また、長期的に企業価値向上に繋がる施策として、ESG/SDGs分野の活動も充実させる。

 前中計期間では、事業面においてハードウェア・ソフトウェア・受託事業などを含めた自社製品/サービスの割合を高めることで事業ポートフォリオの改革を進めたほか、資本構成の大胆な変更や業績の拡大によりROEは向上したものの、安定的に目標を超える収益力の構築には至りませんでした。

② 新中期経営計画について

 当社グループは2024年3月21日に2024年度から2026年度までの新たな中期経営計画(以下「新中計」という。)を公表いたしました。

 新中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上を意識した目標設定が肝要と考えており、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の目標とし、以下の戦略に取り組んでまいります。

 当社グループ共通の事業戦略

・営業利益率の向上

・経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化

・業績の安定性向上

 各事業セグメントの事業戦略

・テストソリューション事業

 製品ポートフォリオの拡充と最適化

・半導体設計関連事業

 グループ経営の基盤を固める強固な安定収益の拡大

・システム・サービス事業

 マスカスタマイゼーションの推進

(3)経営環境

 当社グループが参画する半導体/エレクトロニクス業界は、半導体業界に対する日本政府の支援や海外企業の誘致、生成AIの普及やデジタル化の進展などにより今後好転していくものと期待されます。一方、地政学的リスクの顕在化への対応など、リスク管理にも十分な配慮が必要と認識しております。

 翌連結会計年度のわが国経済は、賃上げ等による所得環境の改善や好調な企業業績を背景とした設備投資の増加などにより緩やかな回復基調が継続するものと思われます。一方、人件費の上昇や円安の進行、資源価格の高止まりや政府の物価対策の終了等が景気に与える影響が懸念されるほか、ウクライナや中東情勢など地政学的リスクの高まり、中国経済の減速や欧米の景気後退懸念など、先行き不透明な状況も続くことが予想されます。

 当社グループの事業活動においては、テストソリューション事業は、イメージセンサー向けデコーダーボードの販売増や中国半導体市場における設備投資の増加による信頼性評価装置の需要増が見込まれるものの、メモリー向けテスターの需要回復には未だ時間を要するものと思われ、後工程用検査ボードの販売も当期実績には及ばない見込みであります。

 半導体設計関連事業は、EDAソフトウェアにおいては、当連結会計年度に既存顧客との契約更改が順調に進んだことや、引き続き新規分野の顧客開拓などへ注力することにより堅調に推移するものと見込んでおります。また、LSI設計受託においては中国経済減速の影響により海外事業が落ち込むものの、国内大手顧客の稼働率は回復傾向で進捗するものと予想されます。

 システム・サービス事業は、引き続きCPUボードやBOX型コンピューターの社会インフラ向け需要が高いことや、決済端末の出荷台数も新機種リリースなどにより好調に推移するものと見込まれるほか、車載関連の組込みソフト検証ツール及び検証サービスも既存顧客を中心に伸長するものと予想されます。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 前中期経営計画について

 当社グループは、前中計において以下の事項に取り組み、企業価値の向上に努めてまいりました。

 イ.テストソリューション事業の成長

 テストソリューション事業は、強みである顧客ニーズの把握とそれに応じた柔軟な設計に基づく専用テスターや信頼性評価装置、プローブカードの開発により、限られた分野ではあるものの確固たるポジションを築いております。こうした強みを他の用途のテスター等に応用し製品ラインナップを拡充するとともに、海外顧客の獲得にも注力し事業の安定化とさらなる成長を目指し、積極的な研究開発や人材増強等に取り組んだ結果、売上高は前中計の5年間で大きく伸長いたしました。MEMS型プローブカードや後工程用検査ボードなどの新製品も売上拡大に貢献し、市況悪化時においても一定の収益を確保したものの、事業の安定化については引き続き取り組みが必要と考えております。

 ロ.自社製品売上の増加/メーカー機能の強化

 近年、当社グループは先端的な自社ソリューション、自社製品の開発・展開を図ってまいりました。売上高研究開発費比率も上昇してきており、優秀な技術者の確保や品質管理の強化などメーカーとしての機能を充実させるため、採用活動や品質管理の社内規則の制定などに積極的に取り組んできた結果、自社製品売上高の比率は自社サービスを含め7割超を占めるまでになりました。

 ハ.顧客ベースの拡大/海外市場開拓

 当社グループの顧客は、従来の輸入商社ビジネスにおいては国内の大手エレクトロニクス企業に大きく偏っておりましたが、テリトリー制限のない自社製品/サービス事業の推進による製品の多様化が顧客の多様化に繋がり、テストソリューション事業のアジア・北米への進出や連結子会社の三栄ハイテックス株式会社の海外進出が進展いたしました。

 ニ.新規分野への積極的な取組

 コーポレートベンチャーキャピタルとして設立したFenox Innotech Venture Company VI, L.P.によるベンチャー企業への投資を含め、様々なビジネスチャンスを模索し、産業用ロボット向けの物体認識・アーム制御AI事業の立ち上げを中心に一定の成果を得ました。

 ホ.資本効率の向上

 前中計期間において、ROEが目標の8%を超えたのは2021年度のみに留まりましたが、2018年2月に公表した「イノテックグループの資本政策に関する基本方針」に沿った施策を実施し、自社株買いによる資本構成の大胆な変更や業績の拡大により、ROEやROICが向上、資本コストも低下し、さらには増配の効果もあり株価は上昇いたしました。

 ヘ.ESG活動の推進

 当社グループでは国際的なビジネスに対応するためのガバナンス体制の構築、地域社会への貢献、社員に対する教育の充実、気候変動や環境への配慮等に関して、これまで以上に積極的に取り組んでおり、女性採用比率の向上や本社ビル屋上における太陽光パネルの設置などの施策を実施いたしました。また、こうした活動について当社ウェブサイトに専用ページを開設し情報開示の充実を図っており、当社グループが社会にとって不可欠な存在であるということを理解していただけるよう努め、中長期の持続的成長の実現へと繋げてまいります。

② 新中期経営計画について

 新中計において掲げた上記目標を実現するため、当社グループは以下の施策に取り組んでまいります。

 イ.事業戦略

 当社グループ全体として、以下の3つの戦略に取り組んでまいります。

a.営業利益率の向上

ROE等の向上には、第一に売上高営業利益率をはじめとした本業の採算向上が求められます。当社グループは自社製品比率の向上/メーカー化により利益率の向上を図ってまいりましたが、さらに付加価値の高い製品やサービスの提供を目指してまいります。

b.経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化

 当社グループの事業の中で注力分野、成長分野を見定め、経営資源の再配分を検討し、グループ内の組織再編や事業撤退を含め、事業ポートフォリオを今一度見直し、採算性や成長性のさらなる向上が実現できるものと考えております。

c.業績の安定性向上

 半導体業界への売上比率の高い当社グループにとって業績の安定性向上は、資本コストの低下にも繋がる重要なテーマと捉えております。特定業界、特定顧客依存からの脱却のため、製品等の充実を図るとともに、定期的に収入が見込めるストック型ビジネスの強化にも取り組む方針であります。

 これら当社グループ全体の事業戦略実現のため、各事業セグメントにおいては以下の戦略を中心に事業を発展させていく計画であります。

「テストソリューション事業 ~製品ポートフォリオの拡充と最適化~」

 テストソリューション事業は、特定顧客への依存や収益変動の大きさが課題となっております。引き続きNANDフラッシュメモリー向けテスターを主軸としながら、CMOSイメージセンサーなど他のデバイス向けテスターへの展開や、テストシステムの一部を担う機能の提供(後工程用検査ボード、イメージセンサー向けデコーダーボードなど)に事業範囲を広げてまいります。連結子会社のSTAr Technologies, Inc.は、強みであり比較的安定した収益が見込めるファウンドリ向け信頼性評価装置や研究開発用プローブカードに経営資源を集中するとともに、高周波、化合物半導体、パワー半導体など成長性の高い分野への展開を進めてまいります。

「半導体設計関連事業 ~グループ経営の基盤を固める強固な安定収益~」

 半導体設計関連事業は、安定的な収益が見込める現在のビジネスモデルをベースに、さらなる成長や収益性の向上を目指し、事業領域を拡大してまいります。米国ケイデンス社のEDAソフトウェアや各種シミュレーション/解析ツールを駆使し、従来のIC設計から基板設計やシステム製品の設計に範囲を広げ、効率的な設計開発をサポートする体制を目指してまいります。さらに、ツールの提供にとどまらず、設計自体をサポートするサービスの提供を連結子会社の三栄ハイテックス株式会社や株式会社モーデックとの連携により実現してまいります。

「システム・サービス事業 ~マスカスタマイゼーション~」

 システム・サービス事業は、ハード、ソフト、コンサルなど様々な形で顧客の製品への付加価値提供を目指しております。顧客ニーズを的確に捉えたパーソナライズドサービスを念頭に、BtoB分野における「マスカスタマイゼーション」を基本的な戦略として掲げ、ビジネス拡大を行ってまいります。キャッシュレス決済端末、エッジコンピューティング、画像処理など特徴的な技術により、イノテックらしく顧客満足度の高いソリューション提供に尽力してまいります。また、決済端末のサービス収入のようなストック型ビジネスの拡大にも注力してまいります。

 また、事業セグメントを超えたシナジーとしてシミュレーションプラットフォームの活用を目指してまいります。半導体設計や自動車開発の場で、当社グループの事業セグメントを跨ぐ形で強みとなっているのが、シミュレーション/解析、検証のためのツールやコンサルティングサービスです。デジタルツインが注目されるなか、当社の提供するシミュレーション関連の製品やサービスが、顧客の開発効率の改善や製品付加価値の向上に資することを目指し、ノウハウの蓄積を進めてまいります。

 ロ.資本政策

2018年2月に公表した「イノテックグループの資本政策に関する基本方針」を新中計においても踏襲し、ROE目標の実現や株主還元の充実に引き続き注力するため、以下に掲げる具体的な数値の目安や施策を念頭に推進してまいります。

・D/Eレシオ0.5倍以下

・現預金保有は月商の2か月以内

・配当性向は50%程度

・取引銀行との政策保有株式の見直し

・在庫水準の適正化と運転資金管理

 ハ.サステナビリティ

 当社グループでは「ヒューマンキャピタルマネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「エレクトロニクス技術を通じた社会課題の解決」、「社会との共生と持続可能な未来への貢献」、「経営基盤の整備」の5つのマテリアリティを特定し、それぞれにKPIを設定、開示しております。

 ヒューマンキャピタルマネジメントに関しては、ダイバーシティの推進に加え、モチベーション向上のための報酬制度見直しや福利厚生の充実策を段階的に講じております。女性管理職については新中計期間中の2025年に5%、2030年に10%とすることを目標として掲げております。

 気候変動への対応については、本社ビル屋上への太陽光パネル設置工事の実施を完了し、さらに2050年までにScope1・2の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標達成に向け、具体的な計画を策定中であります。

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

① 前中期経営計画について

 前中計では「利益成長に伴う企業価値の拡大」を目指し、具体的な数値目標としてROE8%超を掲げ、利益やキャッシュ・フローの拡大と同時に「資本政策に関する基本方針」に基づいた適切な資本政策の実行により資本効率の向上を図り、両面からROE目標の達成を目指してまいりました。

 当社グループが前中計において掲げた主な数値目標は以下のとおりであります。

・自己資本当期純利益率(ROE):中期8%超

・投下資本利益率(ROIC):ROICと加重平均資本コスト(WACC)のスプレッド拡大を実現し、8%を目指す

・負債資本倍率(D/Eレシオ):有利子負債による資金調達を行う場合においては0.5倍以下を目安とする

・配当性向:連結配当性向30%を下回らないこととし、急激な業績変化等が起こらなければ50%程度を目安とする。また、自己株式取得を機動的に行い、総還元性向を高め、自己資本額を適正に保つ

 前中計期間における実績は次のとおりであります。

 

2019年度

(第34期)

2020年度

(第35期)

2021年度

(第36期)

2022年度

(第37期)

2023年度

(第38期)

ROE

5.8%

7.8%

10.4%

7.3%

6.1%

ROIC

4.5%

4.7%

6.7%

5.0%

4.7%

D/Eレシオ

35.7%

42.5%

38.7%

38.7%

46.2%

配当性向

49.4%

41.4%

38.5%

55.1%

63.3%

② 新中期経営計画について

 新中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上のため、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の数値目標としております。また、「資本政策に関する基本方針」については、新中計においても踏襲する方針としております。

 当社グループが新中計において掲げた主な数値目標は以下のとおりであります。

・自己資本当期純利益率(ROE):10%を目指す(8%以上を維持)

・投下資本利益率(ROIC):8%を目指す(6%以上を維持)

・負債資本倍率(D/Eレシオ):財務健全性維持と機動的な成長投資を図るため、0.5倍を上限とする

・配当性向:連結配当性向30%を下回らないこととし、急激な業績変化等が起こらなければ50%程度を目安とする。また、自己株式取得を機動的に行い、総還元性向を高め、自己資本額を適正に保つ

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