アンビスホールディングス 【東証プライム:7071】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
社名のアンビスは、Ambitious Vision(大志ある未来像)の造語であります。当社グループは、医療やヘルスケアの進歩に貢献したい、そして、その恩恵をあまねく多くの人々が享受できる社会の実現に貢献したいと考えています。また、サイエンスやテクノロジーではなく、仕組みをイノベーションすることで社会課題を解決し、かつ利益をあげることを実現します。その第一歩として、終末期の病床から医師の機能をアウトソーシングするというアイデアをもとに、ホスピス「医心館」という独自の事業を提案、実践し、都市部から過疎地域まで広く展開、どの地域でも事業化し最期まで医療(療養)を得られる暮らしを提供できる可能性を示したことで医療介護業界に「ホスピス」という事業領域を確立しました。
わが国では、これまで永らく病院に医療資源を集中させる構造をとってまいりました。従来の急性期患者を対象とした「病院完結型」から、高齢者や慢性疾患患者の機能維持・向上を対象とした「地域完結型」の社会保障体制(地域包括ケアシステム)への移行改革が行われようとする今、その構造による体制硬直が改革の障壁となっております。この現状を打破するべく推進される在宅医療は、医療を人々のくらしに還し、病院と地域を親和させるといった医療のパラダイムシフトをもたらすことを期待するものであります。
2013年の創業以来、当社グループは、住み慣れた地域で在宅療養を得られずに困っている高齢者ほかのニーズに応えるべく、医心館事業を提案し、実直に取り組むことを続けてまいりました。結果、医心館はこの展開地域で在宅療養を含めた地域包括ケアシステムや「地域医療」のプラットフォームとして受け入れられているものと認識しております。今後、医心館事業を拡大展開していくにあたり、当社グループとその事業に期待される役割はますます重要かつ大きなものになっていくと見通しております。
当社グループでは、「世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーへ」をビジョンに掲げ、医心館事業に続く第二、第三の事業を創生し100年続くカンパニーを目指してまいります。
足元では「医療過疎地の医療課題をビジネスの力で解決すること」を目下の事業ミッションとして、医療過疎地の医療機関・病院の活性化を推進することで、本格的に医療支援事業を開始しております。今後、3-5年の時間軸で本格的な総合医療カンパニーに変貌することを目指します。
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、主な経営指標として、企業の事業活動の成果を示すEBITDAのほか、収益性の判断指標ではEBITDAマージンを、財務の安定性判断の指標では自己資本比率とNet Debt/EBITDA倍率を用い、これら指標の向上に意識をおき、バランスよく、かつ持続的に企業価値を拡大していくことを目指しております。会計影響の排除、戦略投資効果も勘案した評価へと移行することを企図し、従来の営業利益からEBITDAを重視することにしました。また、企業価値を測る指標として、売上高、EBITDAの前年比増による成長性並びにEBITDAマージンを重視しています。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループの中長期ビジョンは以下の3点であります。
① ホスピス事業(医心館事業)を長期安定的な収益基盤として確立
② 医療支援事業を通じた、疲弊した医療機関・医療法人に対する経営支援をはじめとする、総合医療カンパニーへの進化
③ 世界で最もエキサイティングな医療・ヘルスケアカンパニーとして100年続く企業となり、人々の幸せを実現
これらビジョンをふまえて、当社グループが設定した中長期戦略は以下の2点であります。
(a) 医心館事業規模(開設数)の拡大及び持続的な事業基盤の構築
当社グループは、今後も医心館事業を積極的に展開します。
展開地域では、より厚い信頼(質)とより高いシェア(量)の両方を獲得し維持することを目指します。
具体的な行動方針はつぎのとおりであります。
・末期がん患者を中心とする医心館の展開の推進
医心館は、終末期医療に特化した看護体制を備えた在宅医療のプラットフォームとして機能しており、入居者の過半数が末期がん患者になります。そして、最後まで責任ある医療的ケアを行った結果、病院に搬送することなく医心館で最期を迎える方の割合は非常に高い水準に至りました。一方で、非がん患者や、重度ケアを必要とする事故後や先天異常の若年者(40歳未満の介護保険非対象者)も積極的に受入れ、在宅医療のセーフティーガードとなることを志向しています。
・西日本を含む広範な地域での展開の加速
当社グループは、医心館の開設・運営を推進するに当たり、高齢者人口当たり療養病床数など様々な医療資源が乏しく、切迫度の高い東日本から展開する方針としてきました。また、首都圏は高齢者人口の増加とともに、医療依存度が高く適切な療養先の確保が必要な方々が急増している問題が生じており、当社グループはこの問題にいち早く対応するため、首都圏におけるドミナント展開を加速させてきました。今後も、西日本含め、需要がある地域に拠点新設をしていく方針です。
・入居者及び従業員からのロイヤリティ向上
当社グループは、すでに高い顧客満足度を実現しておりますが、今後はより一層良質なケアを提供し、顧客満足度のさらなる向上に努めてまいります。また、良質なケアの実現に向けて、従業員の退職率低減にも取り組み、教育研修の実施、ゆとりある運営、人員体制の拡充を進めてまいります。
(b) 医療支援事業への取組
前述のとおり、医療過疎地では、病院の多くが医師の慢性的な不足と経営赤字という課題を抱え、病床の休廃止や廃院の危機に瀕しております。そこには、それらの病院に勤務する医師らは、病棟管理から救命対応までのすべてを少ない人員で行わざるを得ない結果としての過密な労働環境があります。医心館事業の本質は、病院の機能を大胆に切り分け、医師を外部化し、質の高い看護体制を事業所に整え、終末期の患者を対象としたケアに特化して運営することにあります。これは医師の労働環境を、及び地域における病院(病床)の存在を危機から救う方策であります。当社グループの創業者であり代表取締役の柴原慶一は、研究者から事業家へと転身した際には、この「本質」を地域医療再生へのアプローチのひとつとして構想し、当初はこれをそのまま事業目的化することになりました。地域の医療機関や医療従事者の専門性や役割を活かした連携によって地域医療を支える仕組みであり、それぞれが役割に特化することで一層の機能強化を促し、地域では医療資源が効果的かつ効率的に利用される姿を期待するものであります。
当社は地域医療が抱える経営赤字や医師の慢性的不足といった課題解決の一歩として、また既存の医心館事業とのシナジー効果を図りつつ地域医療再生事業に一層注力してまいりたく、2020年3月に医療機関及び介護施設の経営に関するコンサルティング等を目的とした連結子会社「株式会社明日の医療」を設立いたしました。株式会社明日の医療は、医療機関や介護施設の運営に関する総合的な支援を行います。具体的には、長年の医心館事業で培った医療機関等とのネットワークにより、地域医療のプラットフォーム形成、病棟の転換、医療従事者の組織づくりといった病院の経営改善に必要な対策をアドバイスしています。また医心館との連携をはかることで入退院調整が有効に行われるようサポートしています。その一例として、2023年10月には、同一地方都市内の2つの医療法人に対する経営支援を開始し、地域マーケティング、病院や施設機能の明確化、コスト管理、組織づくり、多職種連携などのノウハウを活かし、また、余剰病床をホスピスに転換することによって、大幅に収益性を改善することに成功しました。
弊社の経営支援の特徴としては、医師や看護師の人財派遣を通じた超ハンズオン型の経営支援であり、それに加えて、弊社グループにおいてバックオフィス機能の支援として、運営管理や資金面においてもサポートを行うことが可能です。
弊社が医療法人の経営をサポートすることで、医療法人の経営再建だけでなく、在宅医療を含めた地域医療全体の活性化にも寄与できるものと考えております。
今後は地方・過疎地に限定せず、今後、総合病院・後方支援病院を含めた幅広い医療機関に対して経営支援に取り組んでまいります。
(4) 会社の優先的に対処すべき課題
医療過疎地をはじめとした「地域」の医療を強化再生するプラットフォーマー(プラットフォームホルダー)として、またパイオニアとして、好循環を維持強化するための各種戦略を選択できる競争優位と先駆者の優位性をもって、安定的かつ持続的な成長、そして長期的利益へと繋げることを目的としております。このために、既存の医心館事業を一層深耕し、業務効率を改善させ、人材の採用や教育に注力していくなど、積極的な事業展開を図ります。これらを実現するための当社グループの対処すべき課題は以下のとおりと考えております。
① サステナビリティ経営の推進
当社グループは、優先的に取り組むべき重要課題に対処することで、引き続き、社会に対する継続的な貢献と当社グループの企業価値向上の両立を目指していきます。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
② 医心館事業の規模の拡大
当社グループは、引き続き医心館事業を積極的に展開し、展開地域では、より厚い信頼を獲得し維持することを目指します。中期経営計画「Amvis 2025」においては、医心館事業のさらなる規模の拡大を企図し、西日本を含む広範な地域において、需要の高い大都市圏、参入障壁の高い地方都市への新規開設を並行して行い、2022年に公表した目標を上回る水準で規模を拡大する方針であります。
③ 事業ポートフォリオの基本方針と見直し
現在の当社グループは医心館事業の単一セグメントから構成されておりますが今後は医心館事業で得たノウハウや人財を活かし、医療支援事業にも、積極的に取り組んでいく方針です。当社グループでは、連結子会社「株式会社明日の医療」を中心に、医療法人に対する経営支援を提供し、医心館事業とのシナジー効果を発現してまいりたいと存じます。詳細は「(3) 中長期的な会社の経営戦略 (b) 医療支援事業への取組」をご参照ください。
④ 財務健全性の確保
当社グループが今後も持続的に医心館事業を運営・展開していくためには、財務健全性の維持が不可欠であるため、着実な利益剰余金の積み上げとキャッシュフローの創出、有利子負債の管理を通じて財務基盤の強化に取り組んでまいります。当社グループは、自己資本比率の目安を30%と定めておりますが、2024年9月末時点において、46.3%と目安を十分に上回る強固な財務基盤を維持しております。また、自己資本比率以外にNet Debt/EBITDA倍率を参照しております。
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