アニコム ホールディングス 【東証プライム:8715】「保険業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、その達成等を保証するものではありません。
(1) 会社経営の基本方針
アニコムグループは、社名に掲げた「ani(命)+communication(相互理解)=∞(無限大)」を企業活動の根源にすえています。これは、命のあるものすべてがお互いに理解し、尊重し合い、ともに一つの目的に向かって力を合わせることで、これまで不可能と思われていたことが可能になると考えているからです。
こうした考えのもと、私たちアニコムでは、ペット保険事業を柱に、この無限大の価値創造力を活かし、世界中に「ありがとう」を拡大することを、グループの経営理念として掲げています。
(2) アニコムグループの理念体系
<中長期的な経営戦略>
近年、日本の15歳未満の人口は減少を続けており、約1,400万人である一方、犬猫の飼育頭数はそれを上回る約1,600万頭と推計されており、ペット業界の市場規模も2021年には1兆7,000億円へと伸長しています。また、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻等により人々の不安や孤独が高まる中、人々の不安や孤独を癒す存在としてペットの需要はますます高まっています。その結果、保険市場においてペット保険がとりわけ注目されるようになり、主要な保険会社による参入が相次ぐこととなりました。
当社グループは、それぞれの命が持つ個性の違いを互いに尊重しあい、分業協力することで、世界中に「ありがとう」を拡大することを経営理念としています。その実現のため、2000年の創業以来「予防型ペット保険の確立」に注力してまいりました。生れながらに遺伝的脆弱性を抱えるペットの健康のためには、後天的なケアが重要です。当社グループでは、加入動物110万頭超、日々1万件以上の診療情報による膨大なデータを活用し、病気のリスクを高める要因の特定や発症確率の解明を進めています。その分析結果から、遺伝的脆弱性をカバーするキーとなるのが、腸内細菌叢の多様性と口腔内ケアであると考え、更に研究を重ねております。また、当社グループの事業領域も、引き続き保険事業を中心としつつも川上の「ブリーディング・子犬猫のマッチングサポート」、川中の「健診付き保険・口腔・腸内ケア商材等の提供」、川下の「医療の提供」等と、新たな健康増進施策の機動的な投入を可能にすると共に、これまで当社グループを率いてきた保険事業にも好影響を与えあう有機的ポートフォリオを形成するに至りました。
<ペット保険事業とその他の事業のシナジー>
(川上から川中の施策)
当社グループ全体で進めているブリーディングサポート事業においては、出産効率を上げるための技術開発(幹細胞の活用や凍結精子利用技術等)、ブリーディング時の医療を支援するための往診サービス、生体販売を支援するための生体引き渡しセンター(こうのとり)の開設、繁殖管理システムの開発、ブリーディング場の賃貸提供など、ブリーダーを支援するための施策を拡充・進化させてきました。特に、生体引き渡しセンター(こうのとり)は、当社グループ直営の拠点を4拠点開設するなど、注力してまいりました。今後も引き続き当事業を重点施策と位置づけ、積極的なブリーダー支援策を講じることでペット業界の発展に寄与していきたいと考えています。
アニコム パフェ株式会社で実施している遺伝子検査事業においては、2023年度の遺伝子検査検体数が約6万7千件となりました。また、性格(行動)、品種、毛色、体質、親子判定などを一度に測定する技術開発を進めるなど、事業の拡充を進めてきました。今後も、新たな技術を活かしながら事業拡大・サービス拡充を進めていく予定です。
(川中から川下の施策)
アニコム パフェ株式会社で実施している健康イノベーション事業において、歯周病予防のためにMA-T™を利用した歯みがきジェル「CRYSTAL JOY」や、腸内フローラの多様性を高める「7Days Food」の販売を開始しました。直営動物病院を中心に販路の開拓を進めており、今後も健康イノベーション事業を拡大させていきたいと考えています。
アニコム先進医療研究所株式会社の動物病院事業については、現在、55病院となっており、これらの病院では、予防診療から再生医療まで、様々な診療を行っています。動物病院事業を展開・拡大していく中で、当社グループの強みであるカルテ管理システムの利用病院を広げ、そこから得られる医療データや保険金データを活用し、次世代の予防法の確立を目指していきたいと考えています。また、再生医療の普及のためにアニコムグループが中心となって立ち上げた「動物再生医療技術研究組合」は、2024年3月末時点で729の動物病院が加入し、2023年度で447件の幹細胞投与実績を達成しています。今後も再生医療の対象疾患の拡大と、新たな技術の投入を目指していきたいと考えています。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
<経営環境等>
2023年度のペット業界全般は、これまでの特需的な飼育需要がコロナ禍前の水準に戻ったことで、新規飼育頭数が前年比約9万頭減の約77万頭となりました。一方、ペットの家族化の進展により健康管理を意識する飼い主が増えたことなどから、国内のペット保険市場の普及率は20.1%にまで伸長しています。
[犬・猫の飼育頭数の推移及びペット保険の市場規模]
その他、2023年度は、2023年11月よりアマゾン社が日本でのペット保険の販売を開始するなど、更にペット保険への注目度が増しました。他社との戦略の違いやペット保険全体の普及率の伸長などにより、新規参入による影響は軽微と見ていますが、当社グループは、そのような環境変化も踏まえつつ、これまで培ってきたグループ全体のリソース全てを用いて、ペット保険事業の経営効率向上、ひいてはペット業界全体の経営効率向上を目指していきたいと考えています。
<中期経営計画2022-2024>
当社グループでは、2022年から2024年までの3年間については、2030年度の第二期創業期完了を見据えた経営ビジョン実現に向けた基盤を構築する第1フェーズと位置付け、資本・リスク・リターンのバランスを取りながら、株主還元の目線も重視するフェーズとし、主要経営数値目標と主要KPI目標を重要な経営上の指標としています。その2年目である2023年度の実績は次の通りです。
アニコム損保の新規の保険契約件数は22.3万件(前期比2.1%増)、保有契約件数は119.3万件(前期末比7.2%増)と堅調な伸長を継続しました。一方で、株式会社シムネットのブリーダーマッチングサイト成約数が累計30万件を超えるなど、その他経常収益は増加しました。当社グループ全体としては、保険事業を中心に堅調に伸長したことで、最終的な当社グループの経常収益は604.3億円、経常利益は41.5億円となり、共に過去最高となりました。
配当性向については16.2%となり、2024年度目標である20%水準に向けて段階的に上昇させていく予定です。
単体ソルベンシー・マージン比率は333.7%で着地し、目標を上回る結果となりました。今後は、2024年度300%~320%の目標水準に向けて、改めて最適な資本配分構成を目指していく予定です。また、中期的な保険の健全性に係る資本規制(リスク係数等)見直しの議論が規制当局で継続していることから、今後新たに創出されるリスク量を勘案しながら目標値の再設定を検討していくと同時に、引き続き保険金の削減や損害率の低減に努め、ペット保険事業等の強化に取り組んでいきたいと考えています。
2024年度も、「中期経営計画2022-2024」の最終年度として、目標達成に向けて策定した重点施策を着実に対応し、ペット保険の更なる普及と進化 注1)、および保険事業とのシナジー創出事業の拡大 注2)を通じて、ペット業界の更なる発展を目指すと共に社会の発展と同調するサステナブルな業界に変革し、同時に当社グループの着実な利益成長と資本効率の向上を進めてまいります。また、これらを支えるデータ収集基盤の活用と、特許を含めた知財化をより一層推進することで、中・長期的な持続的成長を目指してまいります。
注1)継続率向上・ホワイトレーベルの推進等のペット保険の独自性追求、保険金の削減・損害率改善、販売チャネルの更なる拡大を含む保険獲得コストの削減、オペレーション改善等
注2)ヒト、モノ、カネ、データ、科学、医療をフル活用したブリーディングサポートの更なる強化、動物病院事業の拡大、健康イノベーション事業の拡大、再生医療を含めた先進医療の展開、共生不動産事業の拡大、検索・予約の強化等
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