企業アソインターナショナル東証スタンダード:9340】「サービス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)企業理念・企業行動規範

『Professionalな最新技術を世界から日本へ、日本から世界へ』という企業理念のもと、以下の企業行動規範を定めております。

1.法律を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業、市民を目指す。

2.各国、各地域の文化・慣習を尊重し、経済・社会の発展に貢献する。

3.歯科矯正分野で、最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様の要望にお応えする魅力あふれる製

 品・サービスを提供する。

4.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長を目指す。

5.公明正大な取引を通じて取引先との信頼関係を築き、相互の発展を図る。

6.公正かつ透明な企業経営により、利害関係者の理解と支持を得るよう努める。

7.個人等の情報、自社の秘密情報を適正に管理する。

8.地域の発展と快適で安全な生活に資する活動に協力するなど、地域社会との共生を目指す。

9.違法行為や反社会的行為に関わらないよう、基本的な法律知識、社会常識と正義感を持ち、良識ある行動に

 努める。反社会的勢力には毅然として対応し、関係を持たない。

(2)経営方針

 当社グループは、上記企業理念に基づき、全従業員が一丸となり「高品質」で「高付加価値」の『アソインターナショナルにしかできないこと』を追求してまいりました。

 全従業員の人格・品格形成に努め、世の中の役に立つ企業として持続成長し、世界規模で歯科矯正業界に貢献することが当社グループの経営方針です。

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略

 株式会社グローバルインフォメーションによる「歯科矯正の世界市場:製品別、患者別、エンドユーザー別 - 予測(~2030年)」(2023年5月17日出版)によると、2023年〜2030年に年率14.6%で成長することを見込んでおり、2030年までに世界の歯科矯正の市場規模は302億ドルに到達すると予想しております。また、株式会社アールアンドディ「歯科機器・用品年鑑2024年版」によれば、2022年度日本国内における歯科矯正装置に使用する材料・消耗品、器械・器具の市場規模について、2021年度の108億円と比べ5.5%増の114億円に達しており、引き続き日本国内の市場について、拡大の余地があると考えております。

 また、厚生労働省による「患者調査」によると、以下のとおり、直近10年で日本における歯科診療患者数はほぼ横ばいで推移している中、機能回復を目的とする「歯の欠損補綴」患者の占める割合は過去10年で減少しており、一方「歯科矯正」患者の割合は増加しております。

 12歳を対象とした永久歯の1人当たりの虫歯の数は、文部科学省が実施した令和3年度学校保健統計調査によれば、1984年では4本以上あった数が、2021年では0.6本と減少したこととなりました。また令和4年度学校保健統計調査から、幼稚園から高校までの虫歯発生率は平成24年度の全年齢層平均50.47%から令和4年度の全年齢層平均32.12%までに低下しているという結果から、8020運動(注1)をはじめとした予防歯科の発展・普及による成果が大きいと考えております。このような歯科業界の大きな環境変化により、従来の虫歯治療等の一般診療を中心としていた歯科医療機関(GP(注2))が、歯科矯正分野等の自由診療への事業拡大を想定しております。

 更に、公益社団法人日本臨床矯正歯科医師会による「後悔しない矯正歯科へのかかり方(2020年11月13日)」によると、以下のとおり、40歳未満の男女の約半数が矯正歯科治療の経験や矯正歯科治療への関心があることがわかって

 おります。

 当社グループは、歯科矯正を治療の専門としないGPが自由診療の歯科矯正の市場へと参入してきていることから、GPへ向けて「歯科矯正治療を円滑に行うための支援サービス」を当社グループアドバイザー矯正専門医と提携し展開しており、矯正歯科技工物の提供だけでなく、総合的なサービスの提供を行っております。

 当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、パレスチナ・ガザ地区の軍事衝突がもたらした中東情勢の緊迫、米中経済摩擦等地政的、経済的リスクにより資源エネルギー価格やインフレ率が高止まり等楽観視できない状況が続いております。

 一方、我が国の経済は、諸外国からの力強いインバウンド需要や海外投資資金の日本証券市場への流入により、活況を呈していますが、慢性的な円安や原材料価格高騰がもたらしたインフレ圧力等の影響で、依然として先行きが不透明な状況が続いております。

 このような状況の中、コロナ禍後の国内における審美的な意識は継続的に高まり、未病改善への取り組み拡大等を背景として矯正歯科業界の事業環境は順調に推移していることから歯科矯正治療のニーズが引き続き高いことにより、矯正歯科領域における矯正歯科技工物・矯正材料マーケットの増加傾向は続く見通しと考えております。

 当社グループがこれらの環境と需要を的確に把握し、持続的な成長を続けるためには、経営方針である「高品質」で「高付加価値」の『アソインターナショナルにしかできないこと』を追求してまいりますが、具体的な経営戦略は以下と捉えており、全社一丸となって当社グループの体制強化に努めてまいります。特に、製品の更なる品質向上と、今後も見込まれる需要増加に対応できるよう効率化を目的とした作業工程の機械化・デジタル化を積極的に導入、推進してまいります。さらに歯科矯正における世界市場のビジネス機会は大きいため、新しい海外拠点の設立や欧米企業との資本業務提携を検討しながら、海外の販売体制を構築し、ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.を製造中心拠点として、海外への事業展開を拡充していく方針であります。

①人材の確保と育成

 当社グループが安定的な成長を確保していくためには「高い専門知識と技術を持つ歯科技工士」及び「市場のニーズを引き出す高度なコミュニケーション能力を持つ営業人材」を確保することが重要と考えております。また、人材を育成するうえで「部署・役職ごとに期待役割の要件定義」「属人的作業を生まないための作業工程標

 準化」「明確な評価制度による自走型組織構造の構築」が必須だと捉えております。矯正歯科技工物は医療器具・医療機器と同様に歯科矯正治療の結果に直接的に関わる製品として、品質管理はもとより市場からの改善及び改良の要求には早急に対応する必要があるため、当社グループにおいて製造及び営業で情報の伝達を早める風通しの良い組織体制を構築しております。

 一方、一定の技術を習得した歯科技工士の独立開業支援をするなど、独立後に当社グループの外注先となる協力パートナーとして取引できるように図っております。

a.歯科技工士の確保

 「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)」(厚生労働省2023年12月21日公表)によれば、2022年度の歯科技工士業界において就業中の歯科技工士は32,942名のうち54.1%(計17,807名)が50歳以上と高齢化が進んでおります。また、歯科技工士の従事者数も年々減少傾向にあります(同衛生行政報告例によると2000年の37,244名(平成16年公表より)から2022年までで32,942名(令和4年公表より)まで減少、また39歳以下の歯科技工士人数は2020年の8,839名から2022年の8,135名まで減少)。その中で矯正装置を作れる歯科技工士はもっと限定的であり、このままでは日本の歯科技工業界が歯科技工士の絶対数の減少により衰退していく可能性があります。

 歯科技工業界において、プロフェッショナルな技術を持つ一流人材を育成することは、当社グループの使命だと考えております。そのために当社グループでは機械化による作業工程の効率化と、短期間での基礎技術習得を目的とした歯科技工士育成プログラムにより、生産性の向上と高いレベルでの業務標準化を推進しております。今後はキャリア断絶を防止するための休暇制度や勤務時間の自由度を高めていき、ワークライフバランスを推進してまいります。

 また、歯科技工士の技術習得のみならず、歯科医師をはじめとした歯科医療従事者と対等な関係性を構築するための教養とコミュニケーション能力の向上を目指しております。

b.次世代リーダーの育成

 当社グループでは、人材育成を目的とした研修を実施しております。具体的には、社内研修の他、外部機関を活用したマネジメント研修、役職ごとに設定した期待役割と業務遂行上必要である製品知識、部署ごとに異なる専門知識・資格習得のための研修、国内外歯科学会・講演会での依頼講演、業界紙・商業誌への依頼原稿執筆を行っております。また、幹部候補人材には、国内外製品の材料・器材・技術の輸出入と販売を行うためにメーカーとの折衝から薬機法許認可申請業務を経て、販売までを自身で社内からメンバーを選抜し進行管理を担当する機会を設けており、ジョブローテーションの実施による能力開発と管理者適性を判断する機会となっております。

c.能力開発と育成を目的とした施策、制度

 高い専門知識と技術を持つ歯科技工士を確保するために、以下の取り組みを行うことで、能力開発並びに育成に努めております。

・当社グループ契約技工所としての開業支援

・国内希望転勤

・海外希望出向

・知識、技術の向上を目的とした、国内外歯科学会参加研修

・技術研修のための海外出張

・外国語学力向上のためのミーティング参加

②製品企画強化

 当社グループ製品の品質は、患者の治療結果に大きく影響を与えるものと考えており、既存製品の精度・品質をより向上させるために、デジタル化・機械化による最新デジタル技術の導入を今後も推進します。

 歯科診療のデジタル化に対する顧客ニーズが高まることを踏まえ、AI技術を用いて正常歯列を仮想構築し、矯正歯科技工物へ反映させる仕組みや、クラウド基盤を活用した歯科医療機関と当社グループ間でのデータ連携サービスの開発に取り組んでまいります。

 当社グループのマウスピース型矯正装置「AsoAligner DIGITAL」につきましては、100種類以上の多種多様な矯正歯科技工物を製作可能という当社グループの強みを活かし、他の矯正歯科技工物と複合的に治療に使用してもらえる当社グループ独自のパッケージや、製品の適応症例をより拡張するための開発に取り組んでまいります。

③セールスプロモーション

 当社グループの顧客となり得る歯科医師は歯科大学附属病院で研修を行い、歯科医療機関開業後には出身大学のコミュニティや歯科医師会等、何らかのグループに所属しております。従って、歯科医師同士のネットワーク内での顧客紹介が当社グループの新規顧客獲得の源泉であり重要な営業戦略として位置付けております。

 2020年のコロナ禍以降において、日本矯正歯科学会をはじめとした当社グループをとりまく環境における主要歯科学会の開催がリモート化され、緊急事態宣言中には訪問営業の自粛等、以前とは営業活動の範囲が異なっている状況においても売上に大きな影響を受けていないことから、顧客である歯科医師の口コミによる顧客紹介が当社グループの強みでもあると自負しております。口コミから新規に顧客を獲得し続けるには、市場のニーズを的確に捉え、高品質・高付加価値の製品を安定して供給し続けることが重要だと考えております。

 また将来患者となり得る消費者層では、インターネット及びスマートフォンの普及により主体的に歯科矯正治療に係る情報を収集することが一般化しております。SNSや動画投稿サイト等といったメディアを通した消費者の購買行動に影響を及ぼすインフルエンサーが、歯科矯正治療についての体験談や治療に使用している製品について言及することなど、消費者層の購買行動において大きな役割を担うようになり、市場の需要の高まりの後押しとなっていると認識しております。今後は歯科矯正治療やその治療方法に対する消費者からの興味関心が高くなることを予測しており、当社グループを取り巻く市場の環境を常に分析し、歯科医師のみではなく消費者層の行動変容を起こすために経営リソースの比重を割いていくことが、今後のセールスプロモーションにおいて重要な課題と考えております。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高を重視しております。また、その結果として売上高、並びに収益力を判断するための指標として、売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付けております。当連結会計年度の数値については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループの優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりであります。なお、財務上の課題については、当社グループにおいて内部留保が十分確保されており、また借入等による機動的な資金調達も可能であることから、特段の課題事項はありません。

①優秀な人材の確保と育成

 今後の事業拡大や継続的な成長を目指すにあたって、優秀な人材の確保や育成は必要不可欠であると考えております。特に「(3)経営環境及び中長期的な経営戦略 ①人材の確保と育成」に記載のとおり、歯科技工士の確保と育成は今後の当社グループの安定的な成長にとって欠かせないものとなっております。そのため、当社グループでは機械化による作業工程の効率化と短期間での基礎技術習得を目的とした歯科技工士育成プログラムにより、生産性の向上と高いレベルでの業務標準化を推進しているほか、能力開発に向けた研修制度の充実にも努めております。今後はキャリア断絶を防止するための休暇制度や勤務時間の自由度を高めていき、ワークライフバランスを推進することで、歯科技工士の確保・育成に努めてまいります。

②内部統制の強化とコーポレート・ガバナンス

 当社グループは、株主をはじめ顧客、従業員、地域社会といった様々な利害関係者への社会的責任を果たすため、意思決定プロセスにおける透明性の確保や迅速化など経営の効率性を高めると同時に、業務執行における内部統制機能の充実を図ることがコーポレート・ガバナンスの基本となり、経営上重要な課題と考えております。そのため、取締役の監督責任の明確化、コンプライアンス体制の強化、迅速かつ正確な情報開示の充実に努め、コーポレート・ガバナンスを強化してまいります。

③グローバル展開および事業の多角化

 当社グループはこれまで製造や材料調達では海外拠点を積極的に活用してまいりました。ASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.及びASO INTERNATIONAL MANILA, INC.の海外拠点において、本書提出日現在、合計約300名の従業員が業務にあたっております。一方、当社グループにおける海外売上高は当連結会計年度において4.6%となっております。以下のとおり、海外売上高比率は徐々に増加傾向にあるものの、依然として全体売上高に占める割合が低い水準に留まっておりますが、当連結会計年度においてアメリカ本土に新たな子会社を設立し、今後のアメリカ本土市場への本格的進出により、グローバル事業展開を加速させて、海外売上高比率の上昇を目指してまいります。

 ゆくゆくは、アメリカを始め世界各国から収集・蓄積した歯科矯正データを人工知能により分析し、患者ごとに症例に適した各種技工物の組み合わせプランを設計・提案し、ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.において製造するような体制を整備することを目指しております。

 また、当社グループはこれまで主に多種多様な矯正歯科技工物製作として事業を営んでまいりましたが、今後国内歯科技工士の絶対数が減る中、矯正歯科技工物の製作だけでは国内におけるこれまで通りの売上増加率を維持するのが難しくなることを予想し、今後の会社の更なる発展のために、タイミングを見計らった事業展開の多角化を検討してまいります。

(用語解説)

 本項「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において使用しております用語の定義について以下に記します。

No.

用語

用語の定義

注1

8020運動

「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動のこと。愛知県で行われた疫学調査の結果などを踏まえて、平成元年(1989年)に厚生省(現厚生労働省)と日本歯科医師会が提唱して開始されている。

注2

GP

一般臨床歯科医師(General Practitioner)をいう。GPではない歯科医師とは、大学の教授や研究者、矯正専門医ほか自費専門に行う歯科医師をいう。

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