ゆうちょ銀行 【東証プライム:7182】「銀行業」 へ投稿
企業概要
以下の記載における将来に関する事項は、明示がある場合又は文脈上明らかな場合を除き、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当行グループは、お客さまの声を明日への羅針盤とする「最も身近で信頼される銀行」を目指してまいります。
「信 頼」:法令等を遵守し、お客さまを始め、市場、株主、社員との信頼、社会への貢献を大切にします。
「変 革」:お客さまの声・環境の変化に応じ、経営・業務の変革に真摯に取り組んでいきます。
「効 率」:お客さま志向の商品・サービスを追求し、スピードと効率性の向上に努めます。
「専門性」:お客さまの期待に応えるサービスを目指し、不断に専門性の向上を図ります。
(2) 経営環境
当連結会計年度の経済情勢を顧みますと、世界経済は、米欧中央銀行による金融引き締めの下、高インフレが徐々に鈍化し、米国を中心に底堅く推移しました。米国経済は、連邦準備制度理事会による利上げが5月と7月に行われた後、政策金利が高止まりする中でも、プラス成長を維持しました。一方、ユーロ圏経済は、欧州中央銀行による利上げが9月に行われた後、政策金利は据え置かれましたが、低調に推移しました。日本経済は、賃金と物価が緩やかに上昇する中、一部に弱めの動きが見られるものの、底堅く推移しました。
金融資本市場では、米国の長期市場金利は、米国経済の底堅さが継続する中、上昇基調で推移しました。また、日本の長期市場金利は、日本銀行によるイールドカーブ・コントロールの運用柔軟化・撤廃を受けて上昇基調で推移し、3月末には0.7%台となりました。日本の短期市場金利についても、日本銀行によるマイナス金利政策の解除を受け、マイナス圏からプラス圏に上昇しました。
ドル円相場は、日本と米欧の金利差拡大や金融政策の方向性の違いを背景に、4月初めの130円台前半から3月末には150円程度まで円安が進行しました。
S&P500種指数は、米国景気が底堅く推移する中、金融政策の動向を睨みつつ上下した後、早期利下げ観測の高まり等を受けて年終盤以降上昇し、史上最高値を更新した後も3月にかけて上昇基調が続きました。日経平均株価は、年末にかけて概ね30,000円台前半で推移しましたが、年明け後は円安進行や日本企業の経営改革への期待感等から急上昇し、2月下旬に史上最高値を更新した後、3月には40,000円台まで上昇しました。
当行グループを取り巻く経営環境のうち、海外の金融経済環境については、インフレ高進を受けた米欧中央銀行による大幅な金融引き締めの継続により、外貨調達コストが高止まる等、厳しい経営環境が継続しております。
一方、国内の金融経済環境については、日本銀行による金融政策転換等を受け、長期金利が上昇傾向に転じており、今後も上昇基調が継続した場合には、新規投資利回りの向上等による収益改善が見込まれます。
いずれにしましても、現下の金融経済環境は不透明な状況にあることから、ダウンサイドリスクには注意が必要であると認識しており、当行グループとしては引き続き、適切なリスク管理の下、安定的な収益の確保に努めてまいります。
(3) 経営戦略、対処すべき課題等
当行グループは、中期経営計画(2021年度~2025年度)で定めた5つの重点戦略を全社一丸となって推進し、当初3か年では、2023年度の財務目標の達成に加え、2025年度の財務目標も前倒しで達成する等、成果を挙げることができました。
一方、当行グループを取り巻く経営環境は、国内外での金利の上昇、生成AIの浸透を始めとする社会のデジタル化の想定以上の進展、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に対する関心の高まり等、大きく変化しております。
このような経営環境の変化を踏まえ、2024年度~2025年度の残り2年間の計画を見直すことといたしました。
(事業戦略)
基本的な方向性は維持しつつ、次期中期経営計画も展望し、「リテールビジネス」、「マーケットビジネス」及び「Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)」という3つの成長エンジンをビジネス戦略の中心に据え、それを支える経営基盤を強化する枠組みへと見直しました。当行グループは、「社会と地域の発展に貢献する」というパーパス、「最も身近で信頼される銀行を目指す」という経営理念及び、3つのミッション(後記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 事業の概況」をご参照ください。)の下、当行グループ独自の強みを活かした3つのビジネス戦略を強力に推進し、サステナブルなビジネスモデルへの変革を一層加速することで、ROE(資本利益率)の持続的向上を目指してまいります。
事業戦略の見直し
○リテールビジネスの変革
当行グループの強みであるリアルとデジタルの相互補完戦略を加速し、伝統的な銀行業務を超えた新しいリテールビジネスへの変革を進め、一人ひとりのお客さまとの取引を一層深めてまいります。デジタルサービス戦略では、「ゆうちょ通帳アプリ(以下「通帳アプリ」)」の使いやすさ・機能の改善や、郵便局ネットワークも活用した積極的なアプローチにより、通帳アプリユーザーの一層の拡大を追求します。そして、パートナー企業との連携により、銀行の枠を超えた多様なサービスを、通帳アプリを通じてお客さまに適切にご案内することで、お客さまの多様なニーズをサポートするとともに、新たな収益機会を開拓してまいります。
資産形成サポートビジネスでは、コンサルタントによる専門的できめ細やかなコンサルティングを実施しつつ、デジタルチャネルを拡充するとともに、全国の郵便局と金融コンタクトセンター等をリモートで接続し、約20,000拠点で投資信託(NISA)の受付を可能とする、リアルとデジタルを融合した日本郵政グループの強みを活かした販売態勢を強化してまいります。
加えて、デジタル技術を活用した業務改革を進め、お客さまの利便性を向上しつつ、業務量の削減による生産性向上に努めてまいります。
○マーケットビジネスの深化
リスク管理を深化しつつ、安定的な資金調達基盤という当行グループの強みを維持し、円金利資産とリスク性資産を組み合わせた最適な運用ポートフォリオを追求してまいります。特に、2022年度までの7年間で約2分の1に縮小した日本国債の保有残高は、日本銀行の政策変更を受けた国内金利の上昇トレンドも踏まえ、日本銀行への預け金等から日本国債への投資シフトを推進し、拡大を目指してまいります。
また、戦略投資領域(注1)を含むリスク性資産についても、引き続き資本を活用し、リスク対比リターンを意識しつつ、残高を拡大してまいります。
(注) 1.プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域
○Σビジネスの本格始動
投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネスと位置づけるΣビジネスを推進し、将来的にサステナブルな収益基盤の構築を目指します。新設子会社の「ゆうちょキャピタルパートナーズ株式会社」を中心に、パートナー企業とも連携しながら、プライベートエクイティファンド投資で培った知見も活かし、全国の中堅・中小企業への資本性資金の供給を本格化させてまいります。また、全国津々浦々の当行ネットワークを活かし、地域金融機関等と連携した新たな投資先企業の発掘を行うとともに、投資先企業の商材・サービスが持つ潜在的なニーズを掘り起こすマーケティング支援業務を推進する等、投資先の成長・課題解決に向けた伴走型の支援を行ってまいります。
これらの取組みを踏まえ、投資実績やマーケット環境の定期的な評価を行いつつ、GP(注2)業務関連残高の拡大を目指してまいります。また、経済的リターンに加えて、地域経済活性化への貢献やCO2排出量削減等のサステナビリティ推進も目指してまいります。
(注) 2.General Partnerの略。案件選定、投資判断等を行うファンドの運営主体
○経営基盤の強化
3つのビジネス戦略を推進するため、それらを支える人財、内部管理態勢、システム基盤等を一層強化してまいります。
特に、競争力・価値創造の「源泉」かつ「財産」である人財については、最重要資本の1つと捉え、「成長を促す」×「能力を引き出す」×「多様性を活かす」という3つの柱を軸とした、経営戦略と連動する人事戦略を推進してまいります。人的資本経営の推進にあたっては、強化分野の人員数、女性管理者数比率や育児休業取得率等の各種目標KPIを設定した上で取り組み、多様な人財が活躍する「いきいき・わくわく」に満ちた会社を社員とともに築き、企業価値の向上を実現してまいります。
また、直営店及び郵便局の部内犯罪の再発防止に向け、防犯ルールの見直し、郵便局におけるKRI(注3)のモニタリング等を日本郵政グループ全体で推進する等、コンプライアンス態勢を一層強化するとともに、お客さま・社員の声をサービスや業務の改善に活かすスキームを通じ、お客さま本位の業務運営を推進してまいります。
加えて、生成AI等の新技術を積極的に活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の一層の推進等、新たな成長に向けた戦略的なIT投資を強化してまいります。
(注) 3.Key Risk Indicatorの略。部内犯罪発生リスクを定量的に捉える指標
(財務目標・資本政策等)
財務目標については、引き続き、収益性指標として連結当期純利益(当行帰属分)・ROE(株主資本ベース)、効率性指標としてOHR(金銭の信託運用損益等を含むベース)(注4)・営業経費(2020年度対比)、健全性指標として自己資本比率(国内基準)・CET1(普通株式等Tier1)比率(国際統一基準)(注5)を設定しています。なお、2025年度の連結当期純利益(当行帰属分)は、当連結会計年度対比で株式等のリスク調整オペレーションに伴う売却益の減少を見込む一方、円金利ポートフォリオ収益の増加、クレジット資産収益の増加、プライベートエクイティ等の収益増加、役務取引等利益の増加等を見込み、中期経営計画策定当初の想定から上方修正しております。金融ユニバーサルサービスを提供する責務を果たしながら、見直し前の中期経営計画で定めた目標を上回る収益性向上や、効率性改善に向けた取組みを推進し、資本コストや資本収益性を意識した経営に努めます。
資本政策は、株主還元・財務健全性・成長投資のバランスを意識した運営に引き続き努めてまいります。特に株主還元については、経営における最重要課題の一つと認識しており、中期経営計画期間中は、基本的な考え方として、配当性向は50%程度とする方針です。ただし、配当の安定性・継続性等を踏まえ、配当性向50~60%程度の範囲を目安とすることとしております。なお、自己株式の取得は、市場環境、業績や内部留保の状況、成長投資の機会、日本郵政グループの当行株式保有方針等を踏まえて検討してまいります。
そのほか、株主のみなさまの日頃からのご支援に感謝するとともに、当行株式への投資魅力を高め、より多くの方々に当行株式を保有していただくことを目的として、株主優待制度を実施しております。
(注) 4.Over Head Ratioの略。銀行業務の効率性を示す指標の一つで、一般的には、経費の業務粗利益に対する比率のこと。当行は相応の規模で金銭の信託を活用した有価証券運用等を行っていることを踏まえ、金銭の信託に係る運用損益等も分母に含めたOHRを指標として設定。経費÷(資金収支等+役務取引等利益)で算出。資金収支等とは、資金運用に係る収益から資金調達に係る費用を除いたもの(売却損益等を含む。)
5.その他有価証券評価益除くベース。2025年度目標はバーゼルⅢ完全実施ベース
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