なとり 【東証プライム:2922】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) サステナビリティ
なとりグループは、いかをはじめとした水産加工品の製造・販売を目的に1948年に事業を開始して以来、従来「珍味」と呼ばれてきた食品を、「つまむ」というソフトの視点から見直し、「常温で流通でき、いつでもどこでも手でつまんで食べられるもの」を“おつまみ”と定義付ける独自の「おつまみコンセプト」を1981年に制定し、事業領域を珍味中心からおつまみ全般へと拡大させてまいりました。「おつまみ」は素材が重要な食品製造販売事業であり当時は、いかなどの水産物が中心でした。その後も、従来の「おつまみコンセプト」を発展させ、“おつまみ”の定義を更に拡大する「新おつまみ宣言」を制定した2006年以降は、手でつまんで食べる常温タイプの製品に留まらず、物流の進化に応じて要冷品や、フォーク・爪楊枝・お箸で食べられる製品の開発にも取り組んでまいりました。
創業当時は水産加工製品への依存度が高い事業構造でしたが、現在は、7つの製品群(さきいか・チーズかまぼこ・いかフライなどの水産加工製品、サラミなどの畜肉加工製品、チーズ鱈® などの酪農加工製品、ナッツなどの農産加工製品、梅・飴などの素材菓子製品、チルド製品、その他製品)を展開しており、最近のするめいかの不漁に対しては、原料を安定的に調達できる畜肉加工製品や酪農加工製品の拡販に注力するなど、経営環境の変化に対し能動的にアクションをとることでポートフォリオの最適化を図り、事業としてのサステナビリティを従来より高めてまいりました。
具体的な製品群別(主に素材別)の売上高の推移は次のグラフの通りです。
今後も様々な素材の風味を活かし、楽しさの演出に欠かせない“おつまみ”をお客様にお届けすることを通じて、更なる事業の成長と発展を目指してまいります。
① ガバナンス
当社グループの重要なサステナビリティ活動は、取締役執行役員 生産本部長が委員長を務める「SDGs推進委員会」が検討し、取締役会に諮りながら経営に反映しています。2020年に設置した「SDGs推進委員会」は原則、毎月開催をしており、2022年には、バリューチェーンに関わる各本部から統括委員としてメンバーが加わり、推進体制を更に強化しました。今後は新体制の下、TCFD提言に基づくシナリオ分析の検討を進め、検討したシナリオに基づき、最重要リスクと機会の特定を勘案しながら、諸施策を推進し、中長期の経営戦略の一部として継続的に反映をしてまいります。
② 戦略
当社グループは、中期経営計画「Next Value up for 80」において、「2.すべての人材が活躍でき働きがいのある職場づくりを目指します」「3.SDGsへの取り組みとガバナンスの強化を目指します」を重点戦略として掲げ、ESG経営への強い意志を表明しております。
重点戦略「2.すべての人材が活躍でき働きがいのある職場づくりを目指します」では、人事諸制度の充実と職場内での良好なコミュニケーションによる働きやすい組織・風土づくりを推進し、目的別教育プログラムの充実によって従業員の専門的な知識やスキルの向上を図るとともに、主体性と多面的な視点を持つ人材の育成に取り組んでおります。
重点戦略「3.SDGsへの取り組みとガバナンスの強化を目指します」では、SDGsに関する当社グループのスローガン「創ろう 未来あるおつまみ」、基本方針「おつまみを通して持続可能な環境と社会の実現に貢献します」に基づき、食品ロスの削減・二酸化炭素排出量の削減・持続可能な原材料調達等の「環境への配慮」、品質保証体制の徹底による「安全・安心」な商品の提供、食育セミナー活動や工場見学等を通した「社会貢献」、女性管理職比率・男性育児休暇取得率の向上等の「働きやすさ」、そしてプライム市場に上場する企業として「コーポレート・ガバナンスの継続強化」を推進し、地域社会とも共存共栄しながら食品メーカーとして、更なる企業価値の向上に邁進してまいります。
③ リスク管理
当社グループのサステナビリティに関する評価などについては、バリューチェーンに関わる各部門のメンバーで構成されるSDGs推進委員会で検討し、代表取締役会長兼社長が委員長を務める「リスク管理委員会」などの各委員会と相互に連携をとりながら、精査を行います。
リスク管理委員会は、原則、毎月開催し、当社グループの事業活動に関するサステナビリティも含めた様々なリスクの抽出とその対応状況を把握した上で、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかを検証・評価し、具体的対策を講じております。
④ 指標と目標
当社グループは、前述の戦略に基づいた指標と目標を設定し、SDGs推進委員会において進捗管理を行っております。二酸化炭素(CO2)排出量の目標については、主に工場において電気・ガス等のエネルギーを効率的に使用する改善活動や、2022年4月より埼玉第二工場で太陽光発電設備を稼働開始したこと、LED照明への切り替え時期を前倒したこと等により、2023年3月期に早期達成いたしました。新たな目標は、2024年3月期のできるだけ早い時期に再設定する予定です。なお、スコープ3を含めた二酸化炭素(CO2)排出量の把握及び目標については、今後、検討してまいります。2023年3月開催のSDGs推進委員会において、自社のサプライチェーン排出量の全体像を把握することを決定し、該当する事業活動の洗い出しに着手しております。
| 取り組み テーマ | 指標 | 2026年3月期 目標 | 前連結会計年度 (2022年3月期)実績 | 当連結会計年度 (2023年3月期) 実績 |
環境への 配慮 | 食品ロスの削減 | 食品ロス率3%以下を維持 | 3%以下 | 2.59% | 2.42% |
二酸化炭素 (CO2)排出量の削減 <スコープ1 +スコープ2> | 原単位当たり CO2排出量の削減率(2014年3月期比) | 15%以上 削減 | 10.5% 削減 | 20.2% 削減 (※1) | |
FSC®認証の 段ボール使用 (※2) | 全製品に占める FSC®認証の段 ボール使用率 | 70%以上 | 26% | 44% | |
MSC認証の 水産原料を使った製品の開発 (※3) | アイテム数 | 1品以上 | 0品 | 1品 | |
社会貢献 | 当社の食育セミナー活動や工場見学(※4)の参加人数 | 2018年度からの累計人数 | 2,000人 以上 | 1,116人 | 1,151人 |
働きやすい職場づくり | 女性管理職比率の向上 | 女性管理職比率 | 10%以上 | 9.3% | 9.9% |
男性育児休暇取得率 | 男性育児休暇 取得率 | 100% | 62.5% | 100.0% |
※1.2023年3月期の実績は、集計時点(2023年4月28日現在)の最新のCO2排出係数で計算した暫定値です。
※2.FSC®(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)認証:森林保全を目的とし、環境や人権、地域に配慮した適切な森林管理を広めるための国際的な認証制度。
※3.MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)認証:水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物の証。
※4.工場見学は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため2021年3月期より一時休止をさせていただいております。
(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
いかなどの魚介類や海藻類、畜肉、チーズ、ナッツ類・梅などの素材の風味を活かした“おつまみ”を製造・販売している当社グループにとって、「気候変動」は原料の安定調達等を左右するリスクのひとつであり、持続的成長に影響を及ぼす重要課題であると認識しております。
また製品の製造工程におけるCO2排出量(スコープ1及びスコープ2)の削減について、その規模に関わらず影響を踏まえた取り組み姿勢は重要であると認識しております。
※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全体のガバナンスに組み込まれております。詳細については「(1) サステナビリティ ① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
気候変動に関する機会・リスクについては、SDGs推進委員会にて全社横断的に検討を行ってまいりますが、当社グループにおける気候変動リスクの大きいものとしては、以下を中心に調査・検討を進めていきます。
分類 | リスク |
移行リスク | 炭素税の導入による、工場稼働や原料調達コストの増加 |
石化由来プラスチックの利用制限による、包材調達コスト増加 | |
物理リスク | 平均気温や海水温の上昇等に伴う、水産原料の漁獲量減少・枯渇、 |
異常気象の激甚化による工場被災、物流寸断などの影響長期化、 |
今後はこれらの内容の精査を進め、シナリオ分析・財務インパクト評価を行った上で、本報告書やホームページ等での開示を進めてまいります。
③ リスク管理
気候変動に関する主なリスクは、サステナビリティ全体のリスクに含めて管理しております。詳細については「(1) サステナビリティ ③ リスク管理」をご参照ください。
④ 指標と目標
気候変動に関する指標と目標は、サステナビリティ全体の指標と目標に含めて管理しております。詳細については「(1) サステナビリティ ④ 指標と目標」をご参照ください。
(3) 人的資本(人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略)
① 戦略
a.人材の育成に関する方針
当社グループでは、創業以来、「”飽くなき食への探究心”に基づいたものづくりへの情熱」を原点としております。この情熱をもって、安全安心で高品質な製品をお客様に提供し続けて成長してきました。これからも、挑戦と革新を続け、おつまみの真のNO.1企業を目指してまいります。そのため、以下のように求める人物像を定めております。
1.正直、親切、誠実な人
2.俊敏に、主体的に、柔軟に行動できる人
3.情熱をもって挑戦し、周囲に活力を与え、失敗しても決してあきらめない人
社内外の研修、自己啓発や仕事を通して人材育成を積極的に行っております。
b.社内環境整備に関する方針
少子高齢化により労働人口が減少する中で、若者の就職観が変化しており、働き方へのニーズも多様化しております。人材の充実を図るため、魅力ある会社づくりのための諸制度の一層の充実や、採用された人材が能力を最大限に発揮できる社内環境の整備が重要です。採用職種を多様化し、入社後は自己申告制度、面接制度により、本人の希望を尊重したキャリアプランを描いてまいります。
また、働きながら子供を育てる従業員への支援を積極的に行っております。1日の労働時間を4時間まで短縮でき、小学校4年生になるまで利用できる育児短時間勤務制度や託児施設を利用する場合の補助など様々な施策を講じてまいります。
男性の育児休業についても、対象者一人一人に制度を説明し、利用促進を図っております。
② 指標と目標
社員が能力を最大限に発揮できる社内環境の整備、魅力のある会社づくりや人材育成に関する指標及び目標、実績は以下のとおりです。
指標 | 2026年3月期 までの目標 | 2020年3月期 実績 | 2021年3月期 実績 | 2022年3月期 実績 | 当連結会計年度 (2023年3月期) 実績 |
a.研修派遣人数 | 累計1,400人 (2020年3月期以降) | 161人 | 累計272人 | 累計468人 | 累計759人 |
b.通信教育受講及び | 累計1,600件 (2020年3月期以降) | 176件 | 累計348件 | 累計601件 | 累計802件 |
c.女性管理職比率 | 10%以上 | 8.4% | 8.8% | 9.3% | 9.9% |
d.育児休業を経て 復職した従業員 の復職率 | 100%を維持 | 100% | 100% | 100% | 33.3% |
復職6人 | 復職5人 | 復職9人 | 復職3人 | ||
休業6人 | 休業5人 | 休業9人 | 休業9人 ※ | ||
e.男性育児休業 取得率 | 30% | ― | ― | ― | 20% |
取得0人 | 取得0人 | 取得0人 | 取得2人 | ||
対象9人 | 対象13人 | 対象10人 | 対象10人 |
※2023年3月期に育児休業を取得した9名のうち、6名は2024年3月期に復職予定です。
a.研修派遣人数
自社の研修以外にも積極的に外部研修、セミナーへ派遣し、従業員へ学ぶ機会の提供を行っております。今後、社員のキャリアプランを面接で確認する中で必要なスキルを習得するための研修に積極的に参加してもらい、2026年3月期までに累計1,400人派遣を目指してまいります。
b.通信教育受講及び資格取得件数
当グループでは、自ら学ぶ姿勢を大切にしており通信教育の受講料補助や公的資格取得者に対して報奨金を支給しております。支援対象の通信教育・資格の拡充を行い、2026年3月期までに受講件数と資格取得件数を合わせて累計1,600件を目指してまいります。
c.女性管理職比率
人材の多様化の一環として、女性の役職への登用を積極的に推進しております。管理職予備軍である係長クラスへの登用や外部の女性研修への派遣などを通して女性管理職を育成してまいります。2026年3月期までに女性管理職比率10%以上を目指しております。
d.育児休業を経て復職した従業員の復職率
働きながら子供を育てる従業員への支援や社内環境の整備を推進しております。対象の個人別に制度説明や定期的に社内情報を発信する制度を整備し、復帰しやすい環境を整えております。2026年3月期まで育児休業を経て復職する従業員の復職率100%を維持してまいります。
e.男性育児休業取得率
当社の男性育児休業については、2023年3月期に初めて取得する従業員が出ております。今後対象者へ個別に説明するなど推進体制を強化して、2026年3月期までに取得率30%を目指してまいります。
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