ジャフコ グループ 【東証プライム:8595】「証券業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度は、原油などのエネルギー価格等の上昇により、世界的にインフレが加速し、米国の金融政策の転換に伴う為替の変動や各国の金融引き締めによる景気減速への懸念が高まりました。また、2023年3月の米国での銀行破綻に端を発した欧米での金融不安など、先行きの不透明感はさらに強くなっています。
一方で、コロナ禍によってデジタルシフトは加速され、価値観やライフスタイルの変化が生じました。テクノロジーの進化は、持続可能な社会の実現に向けて産業の効率化や脱炭素化を推し進めています。このような環境の変化は新しいビジネスへの投資機会を創出し、社会課題解決が期待される投資先に対しては強い追い風にもなっています。
日本でも有望なスタートアップが本格的に出現し、次世代を担う若い起業家が台頭しています。ベンチャーキャピタル(VC)の投資ステージも、シードやアーリーステージが大きな割合を占めています。
当社は創業以来、時代をリードする起業家とともに歩んできました。当社には、経験を積み重ねてきた多くのベ
ンチャーキャピタリストに加え、企業成長を促進するための豊富なリソースとネットワークの蓄積があります。
単なる投資家としてではなく、「CO-FOUNDER」として、事業の構想段階から経営に関与します。起業家とともに事業の成長にコミットし、企業価値を高めていきます。
2018年からパートナーシップモデルを導入し、トップキャピタリストとしてファンドの運用責任を負うパートナーを中心としたフラットな組織作りを行っています。
SV6ファンド以降は、パートナーと従業員が当社とともに出資することで、個人としても運用リスクを負いながら、ファンドパフォーマンスと個人の貢献に連動した成果報酬を享受していきます。従来からの当社の強みである組織力にも磨きをかけており、投資先への経営関与を通じて、ファンドパフォーマンスの一段の向上を目指します。
(1)会社の経営の基本方針
①当社のパーパス
「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」
当社は長年にわたる投資経験の中で、「投資の継続が、持続可能な社会を実現する」ことを信じ、企業・起業家の新たな挑戦に対し投資を続けてきました。地球環境やグローバル経済を取り巻く問題がますます複雑化する中、当社は、まだ見ぬ価値を生み出す挑戦に果敢に投資し、その成長にコミットすることにより、新たな成長への循環をつくりだし、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
②当社のミッション
「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」
当社は創業以来、様々な革新的製品やサービスを起業家と生み出してきました。世の中に必要とされる新事業の創造にコミットすることで、ステークホルダーの皆様とともに新しい時代を切り開くことが当社のミッションです。当社はパーパスの実現を目指す中で、創業時から変わらぬ想いをミッションに掲げ、取り組んでまいります。
③パーパス/ミッション実現に向けた方針と戦略
当社は、ファンドを通じたベンチャー投資とバイアウト投資によりパーパス/ミッションの実現を図ります。
新たな事業に挑戦する起業家や機関投資家を中心とするファンド出資者に対するコミットメントをより明確にするべく、創業以来培ってきた組織力に加え、個人を主体としたパートナーシップモデルを導入することで、競争力を一層高めていきます。
当社の事業の本質はESG投資の考え方に強く合致するものです。社会課題を解決する有望企業の発掘、投資後の対話を通じた成長支援、そしてEXITに至るまでの過程にESGの観点を取り入れていきます。投資先の事業成長を通じてサステナビリティの実現に貢献し、当社の競争力と企業価値を高めていきます。
パーパス/ミッションの実現に向け、当社は下記の取り組みを進めます。
・厳選集中投資と経営関与
新事業を創造するために、ポテンシャルの高い投資対象を絞り込み、大胆に投資を行います。投資先企業に対し影響力のあるシェアを確保し、投資先の経営に深く関与することで、企業の成長を促進します。
・ファンドパフォーマンスの持続的向上とリスクマネー供給の拡大
十分な投資資金を獲得するには、ファンドパフォーマンスを持続的に向上させ、安定的にファンドの外部出資者を確保することが不可欠です。投資先企業の成長を通じて得たリターンを、ファンド出資者・株主と分かちあい、新ファンドの募集に繋げることで、リスクマネーの循環・拡大をもたらします。
・「CO-FOUNDER」としてのジャフコ
事業の立ち上げ局面では、投資家である以上に「CO-FOUNDER≒共同創業者」であることが求められます。当社が創業来獲得してきた精神や知識、経験を継承・発展させ、当社及び個々の従業員が
「CO-FOUNDER」として活躍できる組織を目指します。
④企業価値向上の基本方針の策定
当連結会計年度において中長期を見据えた成長戦略の推進と資本効率の向上を「企業価値向上の基本方針」として開示しました。詳細は後記「(2)会社の対処すべき課題」に記載しています。「厳選集中投資」の投資方針や、「CO-FOUNDER」として経営に深く関与する投資姿勢とそれを支える組織のあり方は変えることなく、今後も収益基盤となるファンドパフォーマンスの持続的な向上を追求していきます。
2023年2月に当社初の統合報告書を発行しました。本報告書は、ステークホルダーの皆様に向けて、新たに策定したパーパスを軸に、当社における価値創造について発信しております。
(2)会社の対処すべき課題
①今後の方向性:企業価値向上の基本方針
当社は、株主の皆様の利益拡大に繋がる企業価値向上を目指し、成長戦略の推進と、純資産の圧縮による資本効率の向上を進めることを基本方針とします。
1)成長戦略の推進
投資運用力とファンド募集力が当社の利益の拡大の両輪であり、これらの活動を組織基盤が下支えします。
●投資運用力の向上
当社は2010年以降、厳選集中投資と経営関与を投資方針に掲げ、有望な投資先を早期に発掘し、投資後の成長に能動的に働きかけることで、キャピタルゲインの最大化とファンドパフォーマンスの向上を図ってきました。
今後、投資運用力の更なる向上を目指し、投資の各プロセスにおける厳選集中投資と経営関与への取り組みを次のようにいっそう進化させます。
・投 資:成長ポテンシャルの高い企業を早期に開拓し、リード投資家として投資実行
・成長支援:投資後の事業開発や体制整備での深い関与、様々な経営資源を投下して投資先の成長角度を向上
・EXIT:深い経営関与を通じて企業価値を最大化するIPOや発展的なM&Aを実現
●ファンド募集力の強化(外部出資の拡大)
安定したファンドパフォーマンスに加え、規律と透明性の高い運用と、投資家のニーズに応じた情報提供を行います。これにより、既存の投資家からの継続出資を受けるとともに、ファンドの社会的・経済的意義に共感する新規投資家層を獲得し、外部出資額を増やします。
●組織基盤の強化
継続的な新卒採用・知見伝承と、専門領域におけるスペシャリスト採用を併用した当社独自の採用・育成モデルで、投資運用力の根幹であるキャピタリストを生み出し続けます。
同時に、投資プロセスを一気通貫で支える組織体制をさらに強化し、個人に過度に依存しない投資運用力の持続的な向上に取り組みます。
2)資本効率の向上
当社はこれまで、市場環境に左右されやすいファンド募集において、当社の自己資金を出資することで適切なファンドサイズを確保してきました。その結果、当社のファンド出資比率は、2023年3月末時点で40%程度となっています。
今後は、新設ファンドサイズを対象マーケットに合わせて段階的に拡大させる一方で、当社の出資比率は段階的に低減させ、中長期的には、新規ファンドへの当社出資比率を20%とすることを目標とします。これにより、必要資金を一定額に抑え、営業投資有価証券残高を維持しながら、高い水準のキャピタルゲインを得ることを目指します。投資運用会社として安定的に運用報酬を得るとともに、高い収益性を継続的に上げることができる、独自の投資運用業の姿を追求していきます。
②対処すべき課題
1)厳選集中投資と経営関与の徹底
スタートアップを取り巻く経営環境は当面厳しいと想定されます。しかし、これまでの歴史を振り返ると、そうした環境下でこそ次世代を担う企業が創業されてきました。当社は、投資方針である厳選集中投資をさらに徹底し、成長ポテンシャルの高い投資対象を見極めて絞り込み、大胆に投資を行います。投資先の経営に深く関与することで、企業の成長を促進します。
2)ファンドパフォーマンスの向上
当社は、グロス倍率(売却金額(未売却投資先の評価金額を含む)÷投資金額)2.5倍以上、ネット倍率((分配金累計額+純資産額)÷払込済出資金額)2.0倍以上をファンドパフォーマンスの具体的な目標としています。
今後も魅力的な会社への投資を行うことで、ファンドパフォーマンスの持続的向上を目指します。
3)ファンド募集
基幹ファンドSV7の募集を継続しています。外部出資を積み上げ、2024年3月期中に800億円から最大で950億円程度のファンド総額を目指します。
4)多様な人材の採用と育成
新卒採用に加えてキャリア採用も積極的に行うとともに、人材の育成にも取り組みます。また、採用の推進と人材の活躍を促すよう人事制度も継続的に見直します。こうして、多様な人材が活躍できる組織づくりを進めます。
5)強固な財務基盤
事業環境や当社の財務状況の変化に応じ、資本効率の向上を意識しつつ、成長戦略の裏付けとなる強固な財
務基盤を一定維持していきます。必要に応じて資金調達方法の多様化も図ります。
また、「CO-FOUNDER」というアイデンティティーを確立し、「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」というミッションの実現に向けて、下記に掲げる五つの姿勢を堅持していきます。
・経験知を受け継ぎ成功を再現する
・次世代を追求し事業をつくりだす
・グローバルに展開しローカルに集中する
・起業家と真摯に企業価値を高める
・先駆者として規律と透明性を守り抜く
なお、(1)会社の経営の基本方針 ③パーパス/ミッション実現に向けた方針と戦略 に記載した通り、当社の投資活動の本質は、ESG投資の考え方に強く合致しています。
投資活動の最初の段階となる有望企業の選定における事業ポテンシャルの評価にあたっては、E(environment=環境)やS(social=社会)、SDGsの側面からのリスクや社会のニーズが重要な要素です。その評価をもとに、サステナブルな成長実現のための課題についても、投資候補先企業の経営陣と議論し、投資実行の判断をしています。
当連結会計年度において、主にE(environment=環境)の観点からは、戸建住宅向け太陽光発電システムの第三者所有サービスを展開する会社に投資をしました。分散電源を創出し、革新的なプロダクトの提供を通じてエネルギーシステムを変革することで、脱炭素社会の実現に貢献しています。S(social=社会)の観点では、従業員の健康管理を経営課題と捉え、健康経営に取り組む企業が増加する中、従業員の心身の不調に関わるヘルスケアコンテンツをオンラインで提供する新たなサービスを開発、運営する会社に投資しました。
投資活動の次の段階は、対話による課題解決と経営関与による成長支援です。事業進捗の状況把握に加え、投資先の資金管理や法令順守状況等を定期的に確認しています。投資先企業の事業の立ち上げは最優先としつつも、管理体制の整備を並行して進めることが重要です。経営陣とは対話を通じて課題を共有し、その解決を図っています。さらに、成長の段階に応じて、人材採用を含め、営業体制、開発体制、管理体制の構築をサポートします。投資先企業のG(governance=内部管理)構築は、経営陣に伴走しながら支援します。
こうした取り組みを通じ、将来的に大きな社会的インパクトを生み出す企業を輩出し、サステナビリティの実現に貢献しています。
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