滋賀銀行 【東証プライム:8366】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当行グループが判断したものであります。
当行は、近江商人をルーツに持つ地方銀行として、社会全体の利益を目指す「三方よし」の理念を受け継ぎ、「地域社会」「役職員」「地球環境」のサステナビリティを意識したCSR憲章(経営理念)のもと、事業活動を通じた社会的課題解決に重点的に取り組んでまいりました。
2019年4月に開始した第7次中期経営計画(2024年3月まで5ヵ年の計画)では、目指すべき地域社会の姿を到達点とする「サステナビリティビジョン(長期ビジョン)」を策定し、「地域経済の創造」「地球環境の持続性」「多様な人材の育成」という3つのマテリアリティ(重要課題)に対応した3つの挑戦指標(マイルストーン)を設定して取り組みを進めております。
2020年2月には、SDGsやパリ協定に整合した銀行経営のフレームワークである、国連の「責任銀行原則(PRB)」に地方銀行で初めて署名いたしました。同年10月には経営の基本方針として「サステナビリティ方針」を制定し、サステナビリティを経営の中核に据え、企業価値の向上を目指すとともに、地域との共創により持続可能な社会の実現に貢献することを表明しております。
滋賀銀行 サステナビリティ方針 |
(1)ガバナンス
当行では、サステナビリティを事業活動の中核的なテーマとして認識し、取締役会において議論し、経営戦略やリスク管理に反映しております。具体的な対応や取り組みは、取締役頭取を委員長として設置したサステナビリティ委員会で協議し、委員会での議論の内容は、少なくとも年1回の頻度で取締役会に報告されます。また、取締役会は、報告された内容に対し適切に監督する態勢を構築しております。
サステナビリティ委員会は、常勤役員、全部室長、連結子会社社長をメンバーに年3回開催しております。委員会では、当行が優先して取り組むマテリアリティ(重要課題)の特定、サステナビリティビジョンの策定、サステナビリティ方針に基づく各部施策の検討、ISO14001に基づく環境目標の設定など、サステナビリティに関わる中長期的な経営課題への対応方針や取組計画等を審議し、重要な事項については経営会議(常務会)や取締役会へ内容を報告しております。
(2)戦略
①気候変動
当行は、2004年4月にスタートした中期経営計画より温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、2007年4月には「地球環境との共存共栄」を掲げたCSR憲章(経営理念)を制定するなど、気候変動の原因となる地球温暖化への対応を重要な経営課題の一つと認識してまいりました。
また、2018年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとのエンゲージメントにつなげることを目的として、2019年度からTCFD提言に基づく情報開示を実施しております。
<リスクおよび機会と影響の認識>
当行では、短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で気候変動に伴うリスク(移行リスク・物理的リスク)と機会を1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを前提に評価しております。認識した気候変動リスク及び機会については、CO2排出量削減に関する取り組みを進めているほか、投融資に係る戦略への反映を検討しております。
リスク・機会の種類 | 事業へのインパクト | 顕在時期 | |
移行リスク | 政策・規制 市場 技術 | 1.5℃シナリオの達成に向けた脱炭素政策や規制への対応、又は低炭素志向への市場の変化等が投融資先の事業や業績へ及ぼす影響が当行の与信コストに及ぼす影響 | 中期~長期 |
政策 | 国際的な気候変動対応の高まりを受けた規制導入や変更 | 短期 | |
評判 | 気候変動への対応や情報開示が不足した場合の風評悪化 | 短期 | |
物理的リスク | 急性リスク | 洪水等の自然災害の増加が投融資先の事業や業績に及ぼす影響が当行の与信コストに及ぼす影響 | 短期~中期~長期 |
洪水等の自然災害により当行資産が毀損するリスク | 短期~中期~長期 | ||
慢性リスク | 感染症や熱中症の増加が投融資先の事業や業績に及ぼす影響が当行の与信コストに及ぼす影響 | 短期~中期~長期 | |
機会 | 商品・サービス | 低炭素製品やサービスの開発に係る企業の資金需要の増加 | 短期~中期~長期 |
資源効率化・エネルギー源 | 脱炭素社会への移行に向けた取り組みによる企業のコスト低減や移行に係る資金需要の増加 | 短期~中期~長期 | |
評判 | 地域の脱炭素化に貢献する金融機関として社会的評価が高まることによるビジネス機会の増加 | 中期~長期 |
TCFD提言が開示を推奨している炭素関連資産のうち、特に移行リスクが高いと考えられるエネルギー及びユーティリティーセクター(電力、除く再エネ)向け与信が当行貸出金に占める割合は、2023年3月末時点で約2.66%となっております。今後は、他の炭素関連資産も含めた状況について把握するよう検討を進めてまいります。
<シナリオ分析>
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)等が公表している複数のシナリオを参照の上、パリ協定や2021年11月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)における合意内容等をふまえ、2つのシナリオ分析を実施いたしました。与信コストの増加については、中長期的な取り組みにより低減を図ることが可能であることから、影響は限定的と考えられます。
<分析プロセス>
・セクター毎のリスク(移行リスク、物理的リスク)と機会を分析
・移行リスクのシナリオ分析対象セクターを決定
・移行リスク、物理的リスクともに分析対象に応じたシナリオを設定し、与信コストへの影響を分析
<移行リスク> | 内容等 |
シナリオ | IEAによる「2050年ネットゼロ排出量シナリオ(1.5℃シナリオ)」 |
対象セクター | ① 電力ユーティリティー ② 石油・石炭・ガス ③ 運輸セクター(陸運) |
対象期間 | 2022年3月末を基準として2050年まで |
指標 | 与信関連費用(与信コスト) ※債務者区分判定に基づく与信コスト |
分析結果 | 2050年までの累計で、120億~170億円程度の与信コスト増加 |
<物理的リスク> | 内容等 | |
シナリオ | IPCCの「RCP8.5 シナリオ」(4℃シナリオ) | |
対象地域 | 滋賀県全域及び京都府全域 | 日本国内 |
対象先 | 事業性融資先(大企業を除く) | 当行店舗 |
指標 | 与信関連費用(与信コスト) 減少を踏まえた債務者区分の悪化 の低下 | 当行の店舗を出店している日本国内 107拠点における浸水リスク |
分析結果 | およそ40億円程度の与信コスト増加 | 国内拠点のうち、39拠点(36.4%) で浸水が発生する |
<地域の脱炭素化に向けた取り組み>
2050年に脱炭素社会を実現するためには一刻も早い対策が必要となっており、脱炭素化の潮流は今後急速に加速することが予想されます。産業構造の転換も予想される中、大企業に比べて取り組みが遅れている中堅・中小企業においても脱炭素化に向けた対策を講じていくことが地域経済の観点からも重要となっております。
当行では、脱炭素化に向けた主体を自治体、企業、一般消費者のカテゴリーに分け、それぞれの脱炭素化を促進する取り組みを拡充し、本業を通じた地域の脱炭素化に貢献しております。
(自治体向けの取り組み)
・環境省「脱炭素先行地域」への連携
湖南市との共同提案により、「脱炭素先行地域」の選定を受けております。他の自治体とも連携し、共同提案者として申請を行っております。
・サステナブル・ファイナンスの連携
滋賀県とのコラボレーションにより、「しがぎんサステナビリティ・リンク・ローン“しがCO2ネットゼロ”プラン」を取り扱っております。
(事業者向けの取り組み)
・「未来よしサポート」
脱炭素経営の第一歩となるCO2排出量の“見える化”をサポートするクラウドツールであり、株式会社日立製作所との共同開発により、中小企業にも使いやすい設計としております。
・ESG評価制度
E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の3要素について、各10項目の取り組み状況をお取引先にヒアリングし、対話することで事業性を評価し、経営課題の共有化につなげております。
・SDGsコンサルティング
お取引先の経営戦略にSDGsを取り入れ、サステナビリティ経営を通じて企業価値向上につなげるためのコンサルティングを実施しております。
・サステナブル・ファイナンス
サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)、グリーンローン/ボンドなど、さまざまな資金調達手法を提供しております。
・カーボンニュートラルローン未来よし
脱炭素につながる設備投資を対象とする融資商品であり、ESG評価制度の評価に応じた金利優遇を行うことで、企業の脱炭素化とESG経営への取り組みを促します。
(一般消費者向けの取り組み)
・『しがぎん』スーパー住宅ローン「未来よし」
脱炭素化の取り組みを一般家庭にも拡大していくための戦略商品として2023年4月より取り扱いを開始いたしました。太陽光パネル、蓄電池、エネファームのいずれかを設置することで、住宅ローンの金利を優遇。お客さまは光熱費の節約にもつながり、環境面でも経済面でもスマートな生活が実現できます。手続き面では「住宅ローンセンター」を設置して、申込から契約まで完全非対面で来店不要のスキームを構築。地域の住宅販売会社等とも連携し、脱炭素に向けた利用促進を図っております。
<洪水発生時の店舗の浸水を想定した取り組み>
洪水の発生時において、店舗の浸水被害を未然に防止するとともに、浸水発生時における営業停止から早期復旧するため、次のような取り組みを行っております。今後はより具体的な浸水リスクの可能性を検証して各拠点におけるBCP対策を行うなどして、地域に不可欠なインフラである金融機関としての機能維持に努めてまいります。
・店舗への浸水防止を目的として土のうを各店に備置
・浸水リスクが比較的高い店舗に止水板を設置
・停電発生時において業務を早期復旧するための非常用発電機を設置
・台風による大雨等を想定した全銀協BCP風水害訓練の実施
・システム障害の発生等を想定したBCP訓練(現金手払い等)の実施 など
②人的資本
当行は2019年4月にスタートした第7次中期経営計画において目指す姿を「Sustainability Design Company」とし、「Bank」の発想の枠を超え、お客さまや地域社会の持続可能な発展をデザインし、地域になくてはならない「Company」になるとしております。
この経営戦略を実現するために、求める人材像を「個性を磨き、価値創造の主役として、地域の未来へ挑戦できる人」と定義し、人材育成方針及び社内環境整備方針のもと、「課題解決型人材」及び「自律型人材」の育成に取り組んでおります。
<人材育成方針>
当行は、人材育成方針として「お客さま・地域社会から必要とされる行員の育成」を掲げ、以下のような行員の育成に取り組んでおります。
・社会人の良識と高い職業観を有している行員
・未来志向で物事を捉え、“真の答えはお客さまの中にある”を実践できる行員
・環境変化に柔軟に対応し、こだわりをもって物事をやり遂げることのできる行員
・いたわり、思いやりの心を持ち、チーム、組織として自ら考働できる行員
<社内環境整備方針>
当行は、2020年10月に制定したサステナビリティ方針において、「自ら考え行動できる人材の育成と職場環境の整備」を掲げております。多様な個性や働き方を尊重し、ワーク・ライフ・バランスが充実するなど、一人ひとりが個々の能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでおります。
また、当行は、職員が十分な能力を発揮するためには経済的に安定していることが重要と考え、ファイナンシャル・ウェルネスの取り組みを進めております。具体的には、金融リテラシー向上を目的とした金融教育を実施するとともに、従業員持株会や財産形成預金、確定拠出年金、従業員融資などの各種制度を整備し、経済面から職員を支援することで、従業員満足度や意欲の向上を図っております。
(3)リスク管理
銀行が業務を遂行するうえで直面するリスクは従来にも増して複雑化、多様化しております。
当行では、「勘や経験」に頼らない「合理的な尺度」を持って、リスクを正確に把握しコントロールするために「内部格付制度」や「統合的なリスク管理体制」を構築しております。また、合理的なリスクテイクのもと、継続的な収益確保のため、経営戦略と一体となったリスク管理を行う「リスク・アペタイト・フレームワーク」を導入しております。
また、サステナビリティの観点から、中長期的に企業価値に重大な影響をもたらす可能性があると考えられる事象を「リスクと機会」として捉え、「リスク・アペタイト・フレームワーク」を通じて経営陣が議論・共有することで、あらかじめ必要な対策を講じてリスクを抑制するとともに、当行の経営方針・目的と戦略・リスクのとり方が整合的であるか確認しております。
リスク管理においては、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、風評リスクなどを総体的に捉え、金融機関の経営体力である自己資本と対比・検証することによって適切に管理しております。
2023年1月には「サステナブルな社会の実現に向けた投融資方針」を制定し、環境や社会に対してネガティブ・インパクトを含有する可能性がある投融資について、その影響の軽減・回避するための考え方と対応を明確に示すとともに、案件検討段階でチェックする体制を構築いたしました。
こうした方針をもとに、投融資先とのエンゲージメントを強化し、地域社会や地球環境のサステナビリティに資する取り組みに向けてお金の流れを生み出し、リスク管理にもつなげる「経済と環境の好循環」を目指してまいります。
(4)指標及び目標
① 気候変動等を含む3つのマテリアリティ(重要課題)に対して設定するもの
<マテリアリティ1:地域経済の創造>
地域やお取引先の持続可能な発展に向けた挑戦指標を次のように定めております。
Sustainable Development 推進投融資 実行額累計 | 挑戦指標 | 2023年3月末 |
中期指標(2024年3月期末) | 7,000億円 | 6,770億円 |
長期指標(2030年3月期末) | 1兆円 |
<マテリアリティ2:地球環境の持続性>
環境負荷低減の目標を次のように定めております。 (Scope1, Scope2 基準)
温室効果ガス排出量削減(2013年度比較) | 挑戦指標 | 2023年3月末 |
中期指標(2024年3月期末) | 50%削減 | 66.80%削減 |
長期指標(2030年3月期末) | 75%削減 | |
2050年指標:滋賀県が提唱する“しがCO2ネットゼロ”※ の達成 | ― |
※滋賀県における二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする取り組み。滋賀県が中心となり、県民、事業者等多様な主体と連携して取り組みを推進しております。
当行グループの基準年及び2023年3月期における温室効果ガス排出量は次の通りであります。
2013年度(基準年):9,245 t 2023年3月期:3,069 t
なお、Scope3については計測方法を検討し、開示に向けた議論を行っております。
<マテリアリティ3:多様な人材の育成>
持続可能な社会の担い手となる多様な人材を育成するための挑戦指標を次のように定めております。
SDGs・金融リテラシーの普及・向上活動、 次世代人材の育成活動 延べ実施人数 | 挑戦指標 | 2023年3月末 |
中期指標(2024年3月期末) | 15,000人 | 15,771人 |
長期指標(2030年3月期末) | 30,000人 |
② 人的資本に対して設定するもの(当行単体)
事業内容が異なる連結グループ全体での設定が困難なため、当行単体で指標及び目標を設定しております。
人材育成方針に関する指標を次のように定めております。
指標 | 目標(7次中計期間中) | 実績(2022年度) |
一人あたり研修投資時間 | ― | 14時間 |
課題解決型人財の育成研修(注) | 延べ1,000人 | 928人 |
FP1級資格取得者数 | 300人 | 231人 |
(注)課題解決型ビジネスができる人材の育成研修であり、「コンサルタント(個人・法人向け課題解決ビジネス)」、「高度専門人材(M&A、IT・FinTech)」「グローバル人材の育成」「資産運用担当者」の育成等を含んでおります。
社内環境整備方針に関する指標を次のように定めております。
なお、社内環境整備方針の指標につきましては目標を定めておりませんが、第7次中期経営計画の基本戦略(未来創造挑戦項目)に掲げる「考働改革」に取り組み、生きがい・働きがいを感じられる職場環境づくりに積極的に努めております。
指標 | 実績(2022年度) |
中途採用者の管理職数(注1) | 21人 |
障がい者雇用率 | 2.24% |
有給休暇の平均取得日数(注2) | 17日 |
銀行への満足度に関する肯定的割合(従業員エンゲージメント) | 66.7% |
(注1)中途採用者の管理職数とは、中途採用者の課店長代理級以上の人数を示しております。
(注2)有給休暇の総取得日数を行員、専任行員の平均人数で除して算出しております。
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