企業兼大株主岩手銀行東証プライム:8345】「銀行業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当行は、1932年5月の創業以来、基本姿勢である「地域社会の発展に貢献する」ならびに「健全経営に徹する」の2つを経営理念として堅持し続けております。

(2)経営環境

 現在の地域金融機関を取り巻く環境は、低金利の長期化により預金と貸出を主体とする従来のビジネスモデルが先細りしていることに加え、異業種からの参入やネット銀行の拡大など、変化への対応が求められる状況にあります。また、気候変動への取り組みがグローバル化しているほか、地政学リスクの高まりに起因したエネルギーや原材料の価格高騰、キャッシュレスの進展やAIをはじめとした新技術の発展など、環境は目まぐるしく変動し予測が困難となっています。

 当行が主要な営業基盤とする岩手県におきましては、都市部への人口流出や働き手不足、事業の後継者不在等を理由とした廃業・解散が増加し事業所数が減少するなど、課題がより顕在化・深刻化しています。また、エネルギーや原材料の価格高騰が今後一段と企業収益に影響を与えるものと予想されます。企業や地域社会にとって、生産性向上に向けたデジタル化や働き方改革の推進、カーボンニュートラルへの対応はより重要性を増しており、これらの地域課題に対して官民一丸となった取り組みが急務となっております。

 一方、豊かな自然を有する本県は再生可能エネルギーのポテンシャルが高く、食料自給率100%以上を維持する数少ない県であり、エネルギーや食料の生産・供給拠点としての存在感を高めています。また、県南部では半導体・自動車産業などの産業集積が進み、県北部では地域エネルギーや森林・海洋資源を活用した地域循環共生圏の実現に向けた動きが加速するなど、県内全域で産業構造変革や社会経済の変革が進みつつあります。観光資源も充実し、奈良県、鹿児島県と並び、国内最多となる3つの世界遺産を有しています。

 また、上場企業においては、より資本効率や株価を意識した経営が求められているところ、当行としましても株主・投資家のみなさまとの実効性のある対話を通じて、経営効率のさらなる向上とガバナンスの高度化に取り組む必要があると認識しております。

(3)対処すべき課題

① 長期ビジョン

2023年4月、当行グループは向こう10年の長期ビジョン「お客さまの課題解決と地域社会の持続的成長を牽引する価値共創カンパニー」を掲げました。この長期ビジョンは、「地域が賑わい、安心して暮らすことができる」「魅力的な企業がある」「身近で便利な金融インフラがある」といった地域住民やお客さまが理想とする地域社会を実現していくため、10年先に当行グループがありたい姿を表現しております。

 当行グループは、地域の事業者や行政自治体と連携しながら、岩手特有の地域資源の強みを活かしさらなる可能性を引き出していくことで、地域に新たな価値を生み出し、豊かで活力ある、そしてサステナブルな地域社会を実現していきたいと考えております。



② 中期経営計画

当行グループは長期ビジョンの実現を目指し、2023年4月より「第21次中期経営計画~地域価値共創プラン~」(以下、「今次中計」といいます。)をスタートさせました。今次中計では、前中期経営計画において取り組んだグループ基盤整備や事業再構築等を通じて備わった経営基盤を土台として、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の理念を踏襲し、「金融サービス領域の深化」と金融の枠を超えた「新たな事業領域への挑戦」を推し進めております。そして長期目標である連結当期純利益100億円、ROE5%以上の到達に向けた第1フェーズとして、高い水準にある自己資本の有効活用と事業ポートフォリオの変革を通じた利益成長軌道をつくり出します。具体的には、次に掲げる3つの基本方針を柱として、それぞれに実効性のある施策を展開しております。

[基本方針Ⅰ:ソーシャルソリューションビジネスの高度化]

<グループ総合力と外部連携による包括的なソリューション提供>

法人のお客さまに対しては、多様化・複雑化する課題解決を支援していくため、グループ総合力を活かした本業支援や事業承継、事業の再構築などのソリューションやファイナンスの提供、お客さまの商品に対するブランディングや販路拡大に向けたビジネスマッチングの支援、外部専門機関などとの連携によるお客さまの生産性向上などに取り組んでおります。また、環境・社会課題に対応した「いわぎんサステナビリティ・リンク・ローン」を創設し、お客さまのサステナブルな事業を支援しております。

個人のお客さまに対しては、ライフイベント、長寿社会に対応したサービスを提供していくため、投資信託商品や保険商品の充実を図るとともに、職域や教育現場でのセミナー等の開催を通して幅広い世代に対する金融リテラシーの向上に取り組んでおります。また、グループ機能や外部連携を活用して、民事信託や遺言信託などのメニューを提供しているほか、インターネットバンキングによる投資信託取引の取扱時間を延長するなど、非対面チャネルの拡充にも注力しております。

データ利活用による金融サービスの革新

 当行グループが保有する豊富な情報を活用した広告事業やマーケティング支援事業では、様々なチャネルを通してお客さまの効果的なマーケティング活動を支援しております。また、お客さまのパーソナライズ情報を活用したアプリプッシュ通知・電子メール自動配信機能の導入により、適時適切な商品・サービスのご案内を実施しております。このほか、お客さまとの接点強化のため、「いわぎんアプリ」に住宅ローンの固定金利再選択機能やカード再発行申込機能、家族間で口座の入出金や残高を確認できる「見守りサービス」などを追加し利便性向上に努めております。

環境ビジネスの推進強化

TCFD提言(※1)への対応を促進するため、頭取を委員長とするサステナビリティ推進委員会において気候変動対応に関する施策等を協議・進捗管理しているほか、「生物多様性のための30 by 30アライアンス(※2)」へ参加し、サステナブルな地域社会の実現に向けて各種活動を展開しております。

地域やお客さまの脱炭素化に向けた取り組みを支援するため、岩手県洋野町と住友商事東北とともにJブルーカーボンクレジットの紹介業務を開始したほか、脱炭素経営に向けた多様なファイナンスやビジネスマッチングメニューを提供しております。

※1.TCFD提言…金融市場安定化の観点から、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けた金融安定理事会が設立した気候関連財務情報開示タスクフォースが公表した気候変動の「リスク」と「機会」に関する財務上の影響を把握・開示すること等を推奨する最終報告書のこと。

※2.生物多様性のための30 by 30アライアンス…生物多様性の損失を食い止め、回復させるというゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標のこと。

フロンティア事業領域への拡大

金融の枠を超えた新たな事業領域への挑戦を推し進めるため、2023年4月に頭取直轄の新事業専担部署として「フロンティア事業室」を新設しました。2023年7月には、当行100%出資の投資専門子会社「いわぎん未来投資」を新設し、出資等を通じた外部パートナーとの連携・協業を目的とした投資ファンドの運営を開始したほか、地域の脱炭素化を推し進めるため、再生可能エネルギー分野に対するコンサルティングに加え、発電・供給を当行グループが担うことを目的として、再生可能エネルギー関連事業へ参入しております。

 また、更なる新事業領域創出と新事業挑戦への意欲醸成を目的として、事業アイデア創出から事業化までを行う中長期的な取り組みである「いわぎんインキュベーションプログラム」を開催しております。

[基本方針Ⅱ:地域を支える盤石な経営基盤の確立]

アセットアロケーションの変革

キャピタルアロケーションの最適化とアセットビジネスの強化を図るため、「ストラクチャード・ファイナンス室」を新設し、ストラクチャード・ファイナンスに関する業務や人員などを集約しフロント機能を強化しております。これにより、再生可能エネルギーや秋田・岩手アライアンスによる連携ファイナンス、仕組ローンなどの取り込みを図り、収益機会の多角化を進めております。また、有価証券のポートフォリオ再構築に向けて、マーケット動向を踏まえつつ、円債を中心に積み上げを図っております。

生産性の高い業務運営体制への変革

地域の金融インフラ維持と質の高いコンサルティング機能の提供を両立させる持続可能な店舗体制の構築に向けて、広域型営業体制である「地域統括型店舗運営体制」を導入し、順次体制移行を進めております。地域統括型店舗運営体制では、人員と業務を地域の統括店に集約し、ナレッジ共有による職員のスキルアップを図りつつ、コンサルティング機能の強化と生産性の向上に取り組んでおります。

 また、事務レス(効率化・削減)に向けて、事務フローの見直しやテレビ相談窓口による遠隔相談体制を整備しているほか、営業店タブレット端末の機能強化や帳票の電子化によるペーパーレス化を進めております。

ガバナンス態勢の高度化

持続的な成長や企業価値向上に向けての基盤となるガバナンス態勢を高度化していくため、コンプライアンス態勢をはじめ、各種リスク管理態勢の高度化に取り組んでおります。また、株主や機関投資家、個人投資家の皆さまとのコミュニケーション機会の拡充に努め、当年度は新たに、個人投資家向け説明会のWeb配信や決算発表内容の英訳配信を開始するなど、情報開示の充実を図っております。

[基本方針Ⅲ:多様な人材が働きがいを持ち続ける組織づくり]

<地域課題を解決できる人材の育成>

地域毎に異なる課題に対し、ビジネスチャンスを見出し解決に導く人材を育成することを目的に、地域課題を考えるプログラムや対話力向上プログラムを階層別研修に導入しております。また、行員の成長意欲に応えるため、休日セミナーのシーズンプログラム化や本部・グループ会社へのトレーニー派遣などを実施しております。

<チャレンジ性にあふれた企業風土への変革>

職員の自律的なキャリア形成を促進するため、「いわぎんエキスパートパス(IEP)」制度を活用して、中小企業診断士やFP1級などの公的資格取得を支援しているほか、職員が公募により希望する部署やグループ会社での業務従事を可能とする「ジョブチャレンジ制度」を導入しております。また、経営理念や長期ビジョンを具現化するために部下職員のチャレンジ意欲を尊重し、成長支援を行うため、全ての管理職を対象にマネジメントスキル向上に向けた研修会を開催しております。

<働きがいを持ち続け、安心して活躍できる組織の実現~D&I(※3)推進~

当行における人と組織に対する基本的な考え方及び人事施策全般における根幹となる考え方として、「人事ポリシー(※4)」を制定しております。また、約20年ぶりに人事制度を全面改定しております。新しい人事制度の導入により、上司・部下間の対話を通じた人材育成が主眼となる仕組みを構築し、職員の働きがいやエンゲージメントを高め、一人ひとりの実力を最大限に引き出す組織の実現を目指してまいります。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にあたっては、意義の理解や無意識の思い込み・偏見(アンコンシャス・バイアス)の排除を目的として女性職員を対象としたキャリア研修や全職員を対象としたアンコンシャス・バイアスをテーマとする勉強会を行っております。また、男性職員の育児休業等の取得推進に向け、グループ内の事例紹介や取得に向けた啓蒙活動に努めた結果、対象となる男性職員の育児休業等取得率は100%となりました。

※3.D&I…多様性を意味するダイバーシティと受容を意味するインクルージョンを組み合わせた言葉。性別や年齢、国籍、価値観、ライフスタイルなどのあらゆるちがいを受け入れ、すべての人がそれぞれの個性を発揮して活躍できる社会の実現を目指す考え方。

※4.人事ポリシー…「人こそが最も重要な財産であり、あらゆる価値の源泉」であるとともに、経営理念の実現のためには「職員一人ひとりと銀行がともに成長し続ける」という、当行における人と組織の基本的な考え方。

③ 主要計数目標(中期経営計画、長期目標)

 長期目標達成に向けた第1フェーズとして、以下の主要計数目標を設定しております。

 

指標

2023年度

計画

2023年度

実績

2025年度

計画

長期目標

(2032年度まで)

連結当期純利益 

40億円

42億円

70億円

100億円

連結ROE(株主資本ベース) ※1

2.2%

2.3%

4%以上

5%以上

連結自己資本比率 ※2

11.1%

11.2%

10%程度

OHR(単体) ※3

79.2%

73.0%

60%台

顧客向けサービス業務利益 ※4

△9億円

△0.8億円

10億円以上

※1 連結当期純利益÷株主資本平均残高

※2 自己資本の額÷リスクアセット等の額

※3 経費(除く臨時処理分)÷コア業務粗利益

※4 貸出金平残×預貸金利回り差+役務利益-営業経費

 当行グループは、地域の皆さまからの期待と資本市場からの要請にお応えすることができるよう、今後も「ESG(環境・社会・企業統治)経営」と「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)経営」の実践を通じた企業価値向上に取り組んでまいります。

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