ニプロ 【東証プライム:8086】「精密機器」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティ経営
当社グループは、「未来に向かって、世界の人々の健康を支え、医療ニーズに応える商品、技術および事業の創造革新を行い、社会に貢献し、自己実現を図る」という経営理念に基づき、真にグローバルな総合医療メーカーとして、サステナビリティ経営の推進に取り組んでおります。
当社グループのサステナビリティ経営に関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
ガバナンス
当社グループは、事業を通じたあらゆる社会的課題の解決に向け、サステナビリティ経営の推進に取り組むべく、体制強化を図っており、代表取締役社長 佐野嘉彦が当社グループにおけるサステナビリティ経営に関する総括責任者となっており、経営判断の最高責任者として、気候変動関連事項を取締役会などの機関決定において責任を有しております。
また、サステナビリティ経営に関する取り組みの最高サステナビリティ責任者(以下「CSO」という。)を任命し、推進体制の強化を図っております。現在のCSOはニプロ株式会社常務取締役経営企画本部長 余語岳仁が担当しております。CSOは、当社グループのサステナビリティ経営の課題に対応するサステナビリティ委員会の委員長を担い、各事業部門におけるサステナビリティ経営に関する活動を統括管理しております。
サステナビリティ委員会は、さらに「環境委員会」、「ソーシャル委員会」、「ガバナンス委員会」に区分され、ESG取り組みの管理・推進を行っております。
管理・推進状況については四半期に一度以上の頻度で取締役会の審議事項として上程され、戦略の審議および指導、KPI設定およびその進捗管理などを審議し、その内容は各委員会を通じて各事業部に還元される体制としております。
リスク管理
当社グループでは、「経営リスク管理規程」を策定し、事業に大きな影響を与えうる経営上のリスクを的確に把握し、適切な企業経営に努めております。また、想定されるリスクが一定額を超過する場合には都度取締役会に上程され、迅速にリスク管理の経営意思決定を行っております。
(2) 気候変動への対応
当社グループは、気候変動を事業継続に大きな影響を及ぼす重要な課題であると認識しております。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDのフレームワークに沿った情報開示の拡充を進めております。
ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについては、サステナビリティ経営で掲げるガバナンスに包括されております。詳細については「(1)サステナビリティ経営 ガバナンス」をご参照ください。
戦略
当社グループにおける気候変動の影響は、今後社会がカーボンニュートラルに向け変遷する過程で生じる政治的な影響や新技術の確立、市場ニーズの変化などによる「移行」に関わるものと、地球温暖化が進行することによって生じる異常気象の多発やそれに伴う災害の発生、平均気温上昇などの「物理的変化」によるものに大別されます。
当社グループは総合医療メーカーであり、これらの影響を各事業部門の観点から分析し、リスク管理・機会についてそれぞれ特定を行い事業戦略に組み込んでおります。
・気候関連リスク
分類 | リスク項目 | 事業への影響 | 影響度・時期 | 対策 |
移行リスク (1.5℃ シナリオ) | 炭素価格の上昇 | 炭素税導入・強化により工場や事業所のエネルギーコスト・原材料のコストが増加する | 大・中期 | 操業に伴うGHG排出量の多い生産拠点のGHG排出量削減に向けて、省エネルギー対策の実施および再生可能エネルギーの使用を推進する |
環境意識の高まりによる顧客行動の変化 | 環境配慮製品の供給要望が高まった際に、代替素材への移行が困難な場合の販売機会の喪失/需要減少によって売上高が減少する | 中・長期 | 既存製品の小型・軽量化や製造過程の効率化によるGHG排出量削減を進めており、一部製品では品質確保のうえでの包装材簡素化や包装材の低炭素素材への切り替えなどを実施。今後も環境配慮素材を取り入れた製品の開発や製品包装材における低炭素素材の利用も検討を進める | |
物理的リスク (4℃シナリオ) | 異常気象による災害の発生 | 異常気象に伴う災害発生が増加した際、生産設備の被災・物流の混乱・材料供給の停滞等が要因で供給量が減少する | 大・長期 | 異常気象を想定したBCPの策定・維持・管理を実施。様々な災害リスクへの体制を加味したうえで生産拠点の建設や各拠点での災害対策(自家発電設備の保有、燃料・食料の備蓄、原材料の在庫確保等)を行っている |
・気候関連機会
分類 | 機会項目 | 事業への影響 | 影響度・時期 | 対策 |
資源の効率 | 効率的な物流プロセスによる間接費の削減 | 物量と物流プロセスのコントロール強化によるコスト削減や、輸送効率・品質向上の機会につながる | 中・中期 | 国内外での物流経路や運賃の見直し、物流拠点の適正配置、在庫量の適正化を行う。 在庫量適正化は保管料や輸送費の削減のみならず、廃棄処分量の削減にも寄与する |
製品および サービス | 消費者の需要に対応する供給量増加 | 気候変動に伴う新たな感染症の発生や長期的な疾患動向の変化に起因する消費者の感染予防への関心/需要の高まりに対応する製品の提供機会が増加する | 大・長期 | 関連製品の需要拡大時に医療現場への供給責任を果たすべく、迅速な増産体制の構築、および必要と判断した品目の在庫水準をその他製品より厚く設定して世界的な需要拡大に対応した製品の供給を行う |
製品および サービス | 環境意識の高まりに対応する製品群の需要増加 | 移動に伴うGHGを排出しない在宅療法の需要が高まり、在宅療法関連製品の売上増加につながる | 小・長期 | 顧客の声を収集しながら、研究開発を推進する |
リスク管理
気候変動に関するリスク管理については、サステナビリティ経営で掲げるリスク管理に包括されております。詳細については「(1)サステナビリティ経営 リスク管理」をご参照ください。
指標と目標
当社グループは、温室効果ガス排出量(単位:t-CO2)を気候変動に関するリスクを評価・管理するための指標として定めています。また、温室効果ガス排出量の削減を推進するために、2045年までにScope1・2においてネットゼロ達成を目指し、その中間目標として2030年までにScope1・2において2021年比37.8%削減を目指しております。直近の主な削減事例としては、ニプロファーマ株式会社(日本)の大館工場では、化石燃料の代わりに、間伐材チップを燃焼することでタービンを回し発電する「バイオマスボイラー」から生成する蒸気を生産工程で活用しており、GHGの削減を行っております。また、Scope1・2の排出量削減には再生可能エネルギーや非化石証書などの活用を行い、グループ全体のGHG排出量削減を図って参ります。
また、気候変動に関するその他の取組は以下のとおりであります。
サプライチェーン管理
当社グループは、多数の国・地域で製造・販売を行っており、グローバルなサプライチェーンを展開しております。ビジネスのグローバル化に伴い、当社だけでなく、取引先との協働および管理体制の構築が不可欠となり、取引先への働きかけを実施しています。気候変動についてはサプライチェーン全体での温室効果ガス削減に向けて、取引先由来のGHG排出量(Scope3)の算定に注力しており、今後は取引先との協働も進めていく予定です。「パートナーシップ構築宣言」と「サプライヤーさまへのお願い」を制定し、環境・人権課題等も踏まえたサプライチェーン全体での付加価値向上に邁進いたします。
リサイクル
当社グループの製品は、様々な資源を使い生み出されています。限りある資源を効率的に活用するとともに、持続可能な循環型社会の実現が求められています。廃棄物の環境に及ぼす影響を最小化するために、当グループでは製造過程で生じる産業廃棄物を焼却炉で燃やす際に発生する熱を発電や温水などに再利用するほか、産業廃棄物の減量化を図っており、包材のリサイクル率から向上させるべく検討を開始しております。
(3) 人的資本
当社グループは、「意欲:willingness」を社是としており、すべての活動に「意欲」をもって取り組むことを従業員の行動の基本としております。意欲ある、すべての人材にチャンスを与える社風を守るため、あらゆる背景を持った従業員ひとりひとりが自己実現を図ることのできるよう、環境を整備していくことを目標として、実践しております。
戦略
当社グループにおける人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針、戦略は以下のとおりであります。
① 人材の育成方針
意欲ある人材を登用していくため、2017年に刷新した人事制度においては、昇進・昇格の基準を明確化し、能力によっては年齢にかかわらず課長、部長に登用できる仕組みを構築し、従業員全体の意欲向上に効果を発揮しております。また、自らのニプログループにおけるキャリア形成を見据えたうえで人事異動に手を上げることのできる社内公募制度も、今後さらに拡充していきます。
ボーダーレス時代において、80億人の世界市場に果断に向かっていくには、日本語以外の言語能力を獲得することが必要不可欠になっています。そのため、選抜された従業員に対しては英語を中心とした言語教育プログラムを提供し、語学力を高める機会を創出しています。
また、当社グループは、「コミュニケーションの中でしか成長は生まれない」という信念に基づき、コロナ禍においても、集合型研修を、感染症予防対策を十二分にとりながら行っておりました。研修内では相互のコミュニケーションを取るプログラムを多く取り入れることで、意欲向上や知識拡充だけでなく幅広く社内の異なる背景の人材どうしの理解を深める機会が生まれ、エンゲージメントの向上や離職率の低下につながっています。今後も、集合型研修の拡充を行ってまいります。
② 社内環境整備に関する方針
当社グループは、働く人の行動指針として、FISH哲学を推進しています。FISH哲学とは「態度を選ぶ」、「仕事を楽しむ」、「注意を向ける」、「人を喜ばせる」という4つの基本マインドであり、その考え方を意識することで「意欲的に働こう」という気持ちを湧き立たせ、さらに周りの人間も巻き込んで働きやすい活気のある職場環境にしようという考え方です。このFISH哲学は全社的に推進されており、社内イベントとして各事業所・工場などのFISH活動を紹介・表彰する「FISHフェスティバル・FISHアワード」が開催されています。こうした取り組みにより、さらなるFISH哲学の浸透と、従業員のコミュニケーションの円滑化、職場環境の向上を図っています。
2023年3月に竣工した新本社屋においては、FISH哲学を意識した『出会う 繋がる 創造する』というコンセプトを掲げ、共創スペース、リラクゼーションルームなど、従業員のコミュニケーションをさらに活性化させる仕掛けを用意いたしました。
今後も当社グループは、人生の各ステージにおいて、育児・介護をはじめとした理由により離職せざるをえないといった選択をすることがないよう、就業環境を整備していきます。医療機器・医薬品において、開発から実際に現場で利用されるまでに至るすべての過程で、それに携わった経験値というものが、大きな力を発揮します。意欲をもった従業員ひとりひとりが、永くその力を発揮し続けられるよう、必要な環境を整備してまいります。
③ 健康経営方針
当社グループは、世界の人々の健康を支えるという経営理念のもと、健康寿命を延ばすことを目標としております。そのためにも、従業員自身の健康も重要と考え、健康経営を推進しています。CHO(最高健康責任者)のもと、健康経営推進委員会が構成され、各事業部から選出されたメンバーとともに様々な課題に対する討議を行っています。特に重点課題として挙げられている禁煙・メンタルヘルス・職場活動活性化などに関しては、新本社屋を敷地内全面禁煙にするほか、従業員の健康リテラシーを高めるためのセミナーの開催や健康アプリの導入などの施策を実施しています。
指標と目標
当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人的資本に関する方針及び戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 目標 | 達成年度 |
従業員ワークエンゲージメント(注)2 | 51.7 | 51.1 | 51.1 | 55.0 | 2024年度 |
従業員10年定着率(注)3 | 72.0% | 70.9% | 70.1% | 80.0% | 2030年度 |
女性管理職比率(注)4 | 4.0% | 4.3% | 4.8% | 10.0% | 2027年度 |
従業員喫煙率(注)5 | ― | 22.6% | 21.5% | 15.0% | 2027年度 |
(注) 1 これらの指標、目標はニプロ株式会社単体の数値となります。
2 従業員ワークエンゲージメントは、従業員個人の仕事に対するポジティブな心理状態を表し、偏差値で示しております。なお、本調査における製造業全体の平均値は49.3、最も数値の高い企業で56.2となっております。
3 従業員10年定着率は、同一年度入社者(新卒・中途含む)のうち10年後に在籍している割合を示しております。
4 管理職全体に占める女性の割合を示しております。
5 年に一度実施している生活習慣のアンケート結果を元に算出しております。なお、2020年度については本アンケート調査が未実施となっております。
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