三菱商事 【東証プライム:8058】「卸売業」 へ投稿
企業概要
1. 「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」
三菱商事は、2022年5月に、2022年度から始まる3ヵ年の新しい経営の指針として、「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」を策定・公表しました。
当社を取り巻く経営環境は、地政学リスクの高まりにより不確実性が高まっています。また、グローバルサプライチェーンの再構築、デジタル化、脱炭素という多様化・複雑化する社会・産業のニーズに対し、先見性をもった対応が求められています。
このような経営環境において、あらゆる産業知見とグローバルネットワークを駆使したインテリジェンスを有機的に「つなげ」・「つながる」ことで、当社ならではの総合力を強化していく経営方針を、今回の「中期経営戦略2024」として纏めました。
(1)中期経営戦略2024で目指すこと
三菱商事グループの総合力強化による社会課題の解決を通じて、スケールのあるMC Shared Value(共創価値)を継続的に創出することを目指します。
(2)定量目標と株主還元
■定量目標
収益基盤の維持・拡大とともに、Energy Transformation(EX)関連やDigital Transformation(DX)関連・成長分野への投資などを通じて、着実に成長し2024年度に8,000億円の当期純利益(当社の所有者に帰属)とROE二桁水準の維持・向上を目指します。
■株主還元
持続的な利益成長に応じて増配を行う累進配当を基本とし、財務規律の下で機動的に自己株式取得を実施する方針とします。総還元性向は30~40%を目処(2024年度は40%程度を目処)とし、財務健全性、配当の安定成長、株主還元に対する市場期待の3つのバランスがとれた還元政策を実施します。
■キャッシュフロー・資本配分
企業価値向上に向けて、財務規律を維持しつつ、キャッシュフローを投資と株主還元に適切に配分します。
併せて、開示の拡充や対話を通じて、ステークホルダーからの当社事業に対する信頼性を一層高めることで、資本コストの低減を図ります。
■投資計画・事業ポートフォリオ
「中期経営戦略2024」期間で、3兆円規模の投資を計画し、EX関連分野への投資を加速します。
同時に、収益基盤の維持・拡大とDX・成長分野への投資も着実に促進します。
(3)「つなげ」・「つながる」ことによる三菱商事グループの総合力を最大化
■成長戦略 [トランスフォーメーションを主導し、成長につなげる]
・EX戦略:EXバリューチェーン全体を俯瞰し、パートナーと共に、カーボンニュートラル社会への移行・産業競争力向上に貢献していきます。
・DX戦略:DX機能を全社横断的に展開し、産業・企業・コミュニティをつなぐことで、社会全体の生産性向上と持続可能な価値創造に貢献していきます。
・未来創造:再エネなどの地域エネルギー資源の積極的な開発を通じて自給率を少しでも高めていくとともに、カーボンニュートラル新産業の創出、地域課題の解決を通じた魅力ある街づくりをテーマとして、パートナーや自治体の皆様と共に、未来創造の実現に貢献していきます。
■経営管理 [規律ある成長で未来へつなぐ]
自律的なグループ経営の強化を促す経営管理メカニズムを構築し、事業環境の変化に対応した循環型成長モデルへの取組みを加速することで、資本効率の維持・向上を図り、財務健全性を維持します。
■推進メカニズム [多様なインテリジェンスをつなぐ]
外部環境への対応力を更に強化すべく「グローバルインテリジェンス委員会(GI委員会)」を新設しました。産業横断的な全社戦略を討議・立案するMC Shared Value会議(MCSV会議)に、GI委員会の分析を反映することで、営業グループの推進力と業界を超えた連携を強化していきます。
■人事施策 [多彩・多才なヒトをつなぎ、活気に満ちた組織へ]
多様性を活かす企業風土づくりやダイナミックな人材シフト・登用などを通じて、「イキイキ・ワクワク、活気あふれる人材と組織」を実現し、人的資本の価値最大化を目指します。
■サステナビリティ施策 [多様なステークホルダーとつながり、社会から信頼され続ける存在へ]
当社が事業活動を通じて取り組む重要な社会課題を「マテリアリティ」として再定義し、取組みの指針とします。温室効果ガス(GHG)削減目標の達成に向け、各事業を気候変動の移行リスク・機会に応じて分類の上モニタリングするなど、様々な施策を通じて事業の低・脱炭素化を推進します。
サステナビリティ施策に関しては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」もご参照ください。
2. 循環型成長モデルを通じた企業価値向上に向けた取組
当連結会計年度も「中期経営戦略2024」で掲げる循環型成長モデルを通じた企業価値向上に取り組みました。利益水準の更なる拡大を見据え、投資決定済み案件の着実な収益化に取り組む他、成長戦略に基づく投資、MCSV戦略投資の推進に取り組んでいます。
また、戦略的事業ポートフォリオの入替及び資本効率向上の取り組みを推進しました。これに加えて、柔軟な資本政策による成長戦略も加速させています。翌連結会計年度についても、企業価値向上に向けた取り組みを継続してまいります。
3. 当連結会計年度のセグメント別の事業環境
① 天然ガスグループ
主要商材であるLNGの世界需要は前年比同水準となり、2023年は約4.0億トンとなりました。なお、アジアのLNGスポット価格は、北半球の冬季にかけて百万Btu(英国熱量単位)当たり20米ドルに近づく場面もありましたが、その後、主要LNG市場である欧州・アジアでの追加需要が限定的であったことも影響し、当連結会計年度末時点では9米ドル台半ばまで落ち着きました。原油価格(Brent)は、ロシア・ウクライナ情勢による影響は落ち着きつつあるものの、中東での地政学リスクの高まりによって、当連結会計年度末時点では80米ドル台後半/バレルまで上昇しています。
② 総合素材グループ
北米地域では金利上昇に伴う景況感の悪化が懸念されたものの、建設・インフラ分野向けなどを中心に需要は底堅く推移しました。一方、アジア圏を中心とした素材領域では、中国の景気減速に伴う需給環境悪化と市況低迷の影響を大きく受けました。
③ 化学ソリューショングループ
粗原料価格は高止まりを続けたものの、各種化学製品の主要市場である中国における過剰生産及び景気減退、それに伴う中国からの輸出量増加により、国際製品市況は低迷基調となりました。加えて、地域情勢の悪化や渇水によるスエズ・パナマ運河迂回による物流費の高騰が見られました。
④ 金属資源グループ
主力事業の一つである原料炭については、需要に大きな影響を与えるインド等の新興国経済は好調を維持しましたが、先進国での経済回復は緩慢であり、中国経済も不動産セクターの不調が長期化しました。一方、原料炭の主要生産地である豪州・カナダでの供給不安が緩和された結果、前連結会計年度比で市況は弱含みで推移しました。もう一つの主力事業である銅については、ロシア・ウクライナ情勢や、ゼロコロナ政策解除後の緩慢な経済回復による欧米及び中国経済の需要停滞に対し、供給制約が拮抗した状態となり、現物需給は引き続きタイトなマーケット構造を維持しました。
⑤ 産業インフラグループ
ウクライナや中東をはじめとした不透明な世界情勢によるサプライチェーンの混乱や、インフレによるコストアップ等の影響を受けた事業もありましたが、産業機械分野での底堅い設備投資需要や円安の影響等を受けて、対面業界における事業環境は前連結会計年度に比べて総じて好転しました。また、このような事業環境の中、キャピタルゲインを得る形で一部事業・資産の売却を実行しました。
⑥ 自動車・モビリティグループ
自動車市場は、世界的に金利高が進む中、特にアセアンにおいて実体経済の軟化、ファイナンス(自動車ローン)審査厳格化により需要が低迷、競合各社が購買力のある顧客を巡り値引き攻勢を強める等、厳しい事業環境にありました。その中で、強固な顧客基盤を持つアセアン地域を中心に、デジタルマーケティングなどのオンライン施策と従来のオフライン施策とを組み合わせ、車両販売の拡大に努めました。
⑦ 食品産業グループ
飼料価格及び原燃料費の高止まりや、円安に伴うコスト上昇が国内の食品加工・製造事業の収益を圧迫するとともに、Cermaq社では鮭鱒養殖を行うチリにて病害が発生するなど、厳しい状況にありました。一方、地政学リスクが顕在化する中、穀物の一大生産地であるブラジルにおいて食の安定調達に寄与する穀物集荷事業を伸長させたほか、資産入替を実行し、食品素材事業の製造能力増強による事業規模拡大を着実に推進するなど、循環型成長モデルの追求による事業基盤の強化に取り組みました。
⑧ コンシューマー産業グループ
原材料価格の高騰、インフレ、賃金上昇等のコスト圧力に対する影響等はあったものの、国内小売・流通業に関しては、人流回復による需要増加の取り込みに加え、従来から取り組んできたDXによるオペレーション効率化やコスト合理化により、中核事業の収益力を強化しました。また、近年の消費者市場において、業界各社が単一事業に留まらず、業界横断的な事業やサービスを展開し、各々の経済圏を構築しつつある中、今後も加速する事業環境の変化に対応すべく、KDDI株式会社及び株式会社ローソンと資本業務提携契約を締結しました。
⑨ 電力ソリューショングループ
前連結会計年度から引き続き、先進国を中心とした再生可能エネルギー(以下「再エネ」)推進施策の取組により、脱炭素に向けた再エネ容量は着実に拡大しました。このような事業環境の中、黎明期から参画した米国の太陽光発電事業において、更なる事業拡大への成長資金確保に向けた資本政策として新たな株主を招聘しました。一方、世界的なインフレや金利上昇により欧米の洋上風力プロジェクト開発に一部減速感が見られるなど、再エネ持分容量拡大に向けては選別的な取組が求められています。
⑩ 複合都市開発グループ
米国の利上げに端を発した金利コストの上昇や金融市場の不安定化により、主力事業の一つである米国不動産関連では、市場全体の取引量が歴史的高水準であった2022年から減少しました。一方、国内においては、不動産市場は主力アセットである物流施設を筆頭に引き続き堅調であり、また、データセンターについてもクラウドの普及や生成AI需要に伴い、持続的な市場拡大が見込まれています。金融事業では、リース事業においてコロナ禍で減少していた取引が回復し、好調に推移しました。
4. 翌連結会計年度以降のセグメント別の事業環境の見通し
事業戦略・テーマに沿って最適な推進体制を再構築し、よりスケールのあるMCSVを創出することを狙いとして、当連結会計年度までの「営業10グループ+2部門(産業DX部門・次世代エネルギー部門)」体制を、翌連結会計年度から「営業8グループ」体制へと改編します。既存4グループ(金属資源、モビリティ(自動車・モビリティから改称)、食品産業、電力ソリューション)と、新設4グループ(地球環境エネルギー、マテリアルソリューション、社会インフラ、S.L.C.)が連携しながらMCSV創出に邁進します。
① 地球環境エネルギーグループ
脱炭素社会への移行には進展が見られるものの、地域や商材によってペースが異なります。次世代エネルギーは、商材によっては一部需要の後倒しが見られる一方、SAF(Sustainable Aviation Fuel)やクリーンアンモニア等、社会実装に向けて進展している商材も見られます。また、天然ガス/LNGは相対的に環境負荷が低い点等を背景に、アジアを中心に中長期的な需要増が見込まれています。
② マテリアルソリューショングループ
低・脱炭素化の進展や技術革新の加速化により、素材産業を取り巻く事業環境は今後も変化を続けていくことが想定されます。また、人口増を支える住宅・インフラ素材、軽量化・電化を支える素材、デジタル社会の発展を支える素材等のニーズは今後も着実に伸張することが見込まれます。
③ 金属資源グループ
原料炭においては、インド等の新興国による需要の牽引、中国不動産セクター及び建設業の回復状況、天候等に起因する原料炭の供給制約といった海上貿易市場へ影響を与え得る事象を注視しています。銅においては、引き続き堅調な需要と生産障害の顕在化によりタイトな需給環境となる見込みです。中長期的には、新興国を中心とする世界経済の成長や、脱炭素・電化を背景とした再エネ・EVの進展により、金属資源・非鉄製品の需要は底堅く推移することが見込まれます。
④ 社会インフラグループ
米国についてはインフレ・金利動向に影響を受ける状況に変化はないものの、米国経済のファンダメンタルズは底堅く、インフレ沈静化・利下げ局面を迎え、不動産市況も徐々に回復に向かう見通しです。国内においては、ゼロ金利政策の解除以降も安定した不動産市況と、堅調な設備投資需要が継続する見込みであり、データセンターについても大手クラウド企業が日本への大型投資を相次ぎ表明するなど市場の更なる成長が期待されます。
⑤ モビリティグループ
既存のタイ・インドネシア事業を含むアセアン・新興市場を軸に、自動車バリューチェーン事業の更なる機能強化と拡張、及び長年培ってきた強固なビジネス・顧客基盤や地域密着型の強みを活かしたモビリティサービス事業を推進する中、自動車市場は、厳格なファイナンス審査の緩和の兆しは見えず、競合各社との競争激化、また電動化の進展あるいは揺り戻し等、引き続き不透明な環境が予想されます。
⑥ 食品産業グループ
今後も飼料価格や原燃料費など不確実性の高い事業環境が続くものと予想されます。一方、世界的な健康志向やサステナビリティへの関心の高まりなどを背景として、鮭鱒養殖事業においては、先進国での堅調な消費に加え、旺盛な消費マインドをもった中流層が増加している新興国での新規需要により、需要が供給を上回る構図が続く見通しです。また、食料安保ニーズの高まりや食に対する嗜好の多様化などの環境変化が、世界的に浸透していくと考えています。
⑦ S.L.C.グループ
中長期的には国内の人口減少・高齢化に伴う消費市場縮小の流れ、短期的には原材料価格の更なる高騰や金利上昇の影響が想定されますが、当面は安定した消費動向やインバウンド需要の回復等により、対面市場は底堅く推移していく見通しです。また、海外でも、米国や東南アジア等を中心に、人口増加や経済成長に伴う対面市場の伸長や様々な事業機会が見込まれます。
⑧ 電力ソリューショングループ
生成AI普及によるデータセンター等の電力需要急増が想定される中、安定的な再エネ供給に対するニーズの一層の高まりが見込まれます。また、再エネの普及拡大に伴い、その間歇性を補うための需給調整機能も益々重要となることが予想されます。今後も脱炭素社会への移行が見込まれており、再エネ由来の電力を活用したグリーン水素をはじめとする次世代エネルギーの市場拡大も期待されています。
5. 個別重要案件
当連結会計年度における重要な個別案件については、「3 事業等のリスク 2.主要なリスクの概要 ⑤事業投資リスク」内の(重要な投資案件)をご参照ください。
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