企業兼大株主長瀬産業東証プライム:8012】「卸売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)基本理念

 当社グループ(以下、NAGASE)は、グループ共通の価値観として、経営理念、ビジョン、ありたい姿を制定しています。また、理念体系すべてに共通する考え方としてサステナビリティ基本方針を策定しています。

 なお、NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”の実現に向け、NAGASEにとって重要なステークホルダーと各ステークホルダーに提供したい価値、それらを実現するためのマテリアリティ(重要課題)を下記のとおり特定しております。

(2)中期経営計画 ACE 2.0

 NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」からバックキャスティングし、特定したマテリアリティを解決するために5ヶ年の中期経営計画 ACE 2.0を策定しました。ACE 2.0の位置づけを“質の追求”と掲げ2021年4月から始動しており、ACE 2.0に掲げる事項を対処すべき課題と捉えております。

※“ACE”は、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表します。

ACE 2.0の定量目標および実績

ACE 2.0の定量目標および実績は、下表のとおりです。

 2023年度は、世界的な需要の低迷を受けた樹脂販売事業や、需給バランスの悪化を受けた情報印刷関連材料事業は、販売数量の減少と販売単価の下落により、採算が悪化しました。加えて、Prinovaグループは中国廉価品が流入したことにより販売単価が下落したことや、ユタ工場における自動化設備導入の遅れにより人件費等が先行したことで、全体として収益性が悪化しました。

 足元では落ち着きつつありますが、全世界的な物価の上昇による金利負担の上昇や人件費の上昇傾向が継続し、収益構造の変革が一層求められる外部環境となっております。

 このような背景から、2023年11月に通期予想を営業利益300億円に修正し、全体の業績は、見通しどおりの着地となりました。

 また、コロナ禍におけるサプライチェーンの不安定な状況に対応するために戦略的に積み増していた在庫を圧縮したほか、注力領域における取組みの進展、改善領域における損失の縮減等、“質の追求”の面では大きな成果が出た1年となりました。

 後記の基本方針のもと、中期経営計画の最終年度である2025年度における定量目標の達成を目指し、引き続きACE 2.0を推進していきます。

ACE 2.0基本方針

 ACE 2.0では、NAGASEの持続的な成長を可能にするため、すべてのステークホルダーが期待する“想い”を具体的な“形”(事業・仕組み・風土)として創出し、“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”を目指し、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革と、両変革を支える機能として、DXのさらなる加速、サステナビリティの推進およびコーポレート機能の強化を図ります。

収益構造の変革‐“ありたい姿”に向けた収益基盤の構築

 経営資源の最大効率化を図るために、経営資源の確保と再投下を実行しております。効率性および成長性の観点から、事業を「基盤」、「注力」、「育成」、「改善」の4つの領域に分類し、各領域に応じて戦略を実行し、さらにリソースシフトを加速しております。

 NAGASEは商社機能に加え、製造機能および研究開発機能を有しております。従来、4象限については事業軸で分類しておりましたが、2023年度において、今後の成長をより確実なものとするために事業ポートフォリオを機能軸で再整理し、各領域における重点分野を明確化いたしました。

(事業ポートフォリオの考え方)

[収益構造の変革―取組み状況]

(基盤領域)

 商社機能を事業ポートフォリオにおける基盤領域と定義しています。商社機能はグローバルネットワークとNAGASEの人財が有する情報の目利き力を活かした課題の探索とマッチングを担います。良質な情報を注力・育成領域の事業展開に活かし将来の新規事業、新規素材の創出に欠かせない機能を果たしています。

 半導体分野においてサプライチェーンへの深い理解と、技術に関する知見、課題解決力を総合して提案活動を進めた結果、日本における最先端半導体の製造を目指すRapidus㈱の調達取り纏めのパートナーに選定されました。今後、最先端半導体の製造の実現に向けたサプライチェーンの構築・維持を通じて貢献してまいります。

 また、新型コロナウイルスの影響を受けて混乱していたサプライチェーン維持のため、戦略的に積み増していた在庫の圧縮を進めた結果、資本の適正化が進みました。

[取組み状況]

(注力領域)

 Prinovaグループを中心としたフード分野、ナガセケムテックス㈱を中心とした半導体分野、ナガセヴィータ㈱(2024年4月に㈱林原から商号変更)を中心としたライフサイエンス分野における製造機能を注力領域と定義しています。

 フード分野では、Prinovaグループのユタ工場における自動化設備の導入が足元では完了し、利益貢献に向けた体制が整いました。今後、収益性の高い製造加工ビジネスをグローバルに拡大するべく、M&Aなど、積極的に投資を行ってまいります。

 半導体分野ではナガセケムテックス㈱のハイエンドサーバー用途向けの液状封止材の販売が好調に推移し、今後も継続的な成長を見込んでいます。ナガセケムテックス㈱では、剥離剤等の薬液関連製品のBCPの観点から新たな製造拠点の設立の検討を進めています。加えて、パートナーであるSACHEM, Inc.との合弁会社であるSN Tech㈱において半導体の製造プロセスにおいて使用されるケミカルの回収・再生事業の開始に向けた取組みが進展しました。今後、半導体業界に対してユニークなソリューションの提供を進めてまいります。

 ライフサイエンス分野では化粧品業界や医薬品業界向けの素材を製造する㈱林原の商号をナガセヴィータ㈱に変更しました。これは生命に寄り添い、人と地球の幸せを支える企業として社会に貢献していくという想いを込めたものです。また、ナガセヴィータ㈱はEcoVadisのプラチナを取得し、サプライチェーンにおいて信頼されるパートナーとして外部機関からも最高ランクの評価を獲得しました。新たな事業領域への拡大検討を進めており、M&A等の手段も活用しながら成長を加速させていきます。

(育成領域)

 将来の収益の柱となるような新規素材の研究開発や、新規事業創出のためのインキュベーション、高い成長が見込まれるエリアにおける事業を育成領域と定義しています。

 研究開発機能を通じて、希少アミノ酸であるエルゴチオネインの量産化に向けた取組みが進展し、将来の事業化に向けて順調に進捗しています。また、でんぷんを主成分とし、独自の酵素技術と有機合成技術を掛け合わせ、生分解性を有しながらも従来と同等の吸水性能を持つ生分解吸水性ポリマーの開発に成功し、マーケティング活動を開始しています。加えて、足元では海洋生分解性を有するグレードの開発にも成功しました。第三者機関における試験において海洋生分解認証に求められる分解性を示すことが確認され、河川等を通じて海洋に流れ出るおそれがある緑化や農業用の保水材用途においても環境対応製品として展開できる可能性が広がりました。

 素材開発を通じた社会課題解決に貢献し続けるための研究開発機能の強化を目的として、NAGASEバイオイノベーションセンターとナガセヴィータ㈱の基盤研究機能を統合し、新たなバイオ研究拠点を新設することを決定しました。(開設は2027年4月以降を予定)

 既存事業とは異なる視点で将来の新規事業創出を促進するためにCVC(Corporate Venture Capital)を組成しました。最先端の技術やナレッジを広く獲得し、次世代のビジネスの種を見つけるべく、スタートアップへの投資を促進していきます。

 また、今後のさらなる成長を期待する分野としてグローバルサウス(インド、ブラジル、メキシコ、インドネシア)を定義し、事業部門横断でのエリア戦略立案等、取組みを進めました。今後もリソースの投下を加速していきます。

(改善領域)

 赤字事業や不採算取引、将来の資産の減損損失が懸念される事業を改善領域と定義しています。

 徹底したモニタリング活動を通じて不採算取引および減損損失は、2022年度と比べ大幅に減少しました。

 2023年度において、事業ポートフォリオマネジメントの高度化を図るため事業別の資本コストを用いたモニタリングを開始しました。各事業においてそれぞれの想定資本コストを上回る価値創造を実現している事業への資本投下を進めるとともに、資本コストと比べて十分な投資収益率を実現していない事業からの資本の引上げを通じた資産の入替えを今後も進めていきます。

 なお、持続的な成長に向け、注力・育成領域を中心として総額約800億円の投資案件については検討を継続しております。適切な検討プロセスを通じて企業価値向上に繋がる案件を精査したうえで判断を進めていきます。

企業風土の変革‐“ありたい姿”に向けたマインドセット

 “質の追求”を実現するためには、経済価値と社会価値を両輪で追求していくことが必要と考え、財務情報に加え非財務情報のKPIを設定し、両KPI達成に向けモニタリングを行っています。また効率性の追求に向け、コア業務の生産性の改善を図り、また事業戦略によるROICの向上、財務戦略によるWACCの低減を行い、ROICスプレッドの改善を図ります。ROICがWACCを上回る状態を常態化させ、企業価値の向上を目指します。加えて、変革を推進する人財の強化が必要と考えており、社員と会社のエンゲージメントを向上させ、双方の持続的な成長と発展を実現します。

(効率性の追求)

(エンゲージメントの向上)

[企業風土の変革―取組み状況]

 2023年度のROICは当初想定どおり在庫の縮減が進んだ効果があったものの、ACE 2.0の定量目標および実績に記載のとおり事業面における収益性が低下したことにより4.0%となりました。

 WACCはNet DEレシオが0.27倍に低下し、加重平均資本に占める株主資本の割合が上昇した影響等により5.9%となりました。

 資本効率性を向上させる取組みとして、2023年度は政策保有株式を17銘柄、71億円売却しました。また、各種施策を通じた収益性の向上を推し進めておりますが、ACE 2.0の定量目標であるROE8.0%以上の達成に向けては更なる資本効率性の向上が必要であるとの認識のもと、株主還元方針の変更を決定し、これまでの継続増配に加え、ACE 2.0の最終年度までの2年間の限定措置として、総還元性向を100%とすることを決定いたしました。

 なお、変更後の株主還元方針はACE 2.0終了時点で見直しを実施いたします。

(政策保有株式の売却方針および実績)

(株主還元方針の変更)

ACE 2.0終了(2025年度)までの限定措置。ACE 2.0終了時点で見直しを行います。

 変革を推進する人財の強化については、当社において、役割・職務の明確化と処遇連動性の確保、ダイナミックな人材配置・登用、多様な高度専門人材の確保・登用を目的とした人事制度改定を実施し、2024年4月1日より運用を開始しました。また、事業部毎にHRBP(HR Business Partner)を配置し中長期の事業戦略と連動した人事戦略を推進するための体制強化を進めました。その他、選択型研修の拡充を通じた学びの機会の創出や、D&I(Diversity&Inclusion)の推進を目的にした経営層や管理職向けワークショップの実施を通じて風土変革等を進めています。これらの取組みを通して、従業員エンゲージメント向上、そして競争力の強化を推進してまいります。

 また、組織運営の効率化、意思決定のスピードアップ、不採算事業の整理の実効性強化、人的資源の再配分等を目的とした11事業部から7事業部への統合を実施いたしました。加えて、外部環境の変化に応じて迅速に重要な意思決定ができるような各種会議体の見直しを進めると同時に事業部門への権限委譲も進め、効率的な経営基盤の整備を進めました。

変革を支える機能

 両変革を実現するために、DX、サステナビリティおよびコーポレート機能はグループ横断的に必要な機能であり、これらの機能を拡充します。

 DXを手段として活用することで、NAGASEの強みである「広域なネットワーク」、「技術知見」および「課題解決力・人財」をさらなる強みとし、顧客や社会の課題を解決できるビジネスモデルの深化・探索、イノベーションの創出および生産性の向上等を図ります。

 またサステナビリティ基本方針を根幹に置き、「ありたい姿」の実現に向け、経済価値と社会価値の追求を実現すべく、グループ全体に機能を提供していきます。

[取組み状況]

 DXのさらなる加速に関して、デジタルマーケティングによる顧客基盤の強化・拡大に向けたマーケティングプラットフォームの構築については一定の目途が立ち、各事業部門・地域において活用し収益を獲得するフェーズに移行しました。

 サステナビリティの推進に関して、脱炭素経営ソリューションの展開パートナーである㈱ゼロボードおよび富士通㈱との協業によりWBCSD※1のPACT※2においてサプライチェーン上のGHG排出量の一次データを収集・連携し最終製品のGHG排出量を算定する取組みを成功させる等、サプライチェーン上における気候変動対応のソリューションに関する知見を深めました。

※1 World Business Council for Sustainable Development(持続可能な開発のための世界経済人会議)

※2 Partnership for Carbon Transparency (サプライチェーン全体でのGHG排出量の一次データ交換の透明性を通じて、製品のカーボンフットプリント情報を企業間で連携するパートナーシップ)

 サステナビリティに関する活動の詳細は、「2「サステナビリティに関する考え方及び取組」」を参照ください。

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