企業兼大株主オリンパス東証プライム:7733】「精密機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)サステナビリティ共通

 当社グループはその存在意義である、「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を目指す活動を通じて社会に貢献することで、当社グループ自身がサステナブルな企業であり続けることができると認識しており、当社のESG戦略はそれを実現する上で重要なものです。

<ガバナンス>

 ESGの推進においては、2021年4月にESG担当役員を新設し、中長期事業計画の中でKPIを設定する仕組みを構築する等、その強化を図っています。ESG担当役員はESGを包括的に推進するとともに進捗状況をモニタリングし、グループ経営執行会議および取締役会に報告しています。また、2021年3月期より執行役の報酬について、長期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬のうち、10%が外部ESG評価機関の評価結果と連動するようになりました。2022年3月期にはその比率を20%に引き上げ、取り組みの強化を図っています。ESGへの取り組みは企業活動そのものと一体である恒久的な取り組みであるため、インセンティブの中でも長期インセンティブを連動の対象とすると共に、成果に対する評価は単年度の成果ではなく3年間の各年度の外部ESG評価機関の評価結果と連動する設計となっています。

 2023年3月期には当社のESG戦略の推進体制の再検討を行い、2024年3月期より新しいグループレベルでのガバナンス体制の新設を決定いたしました。この新しいガバナンス体制においては、各事業・各機能部門の責任者を中心に構成され、ESG戦略の遂行及びモニタリングを推進する「ESG委員会(ESG Committee)」を設置し、その下に機能横断的に取り組む必要のあるテーマごとにテーマ別ワーキンググループを置いて戦略の実施を推進します。またESG委員会を通じてグループ経営執行会議及び取締役会に対して戦略の実施状況や活動成果、課題等の報告を実施いたします。グループ経営執行会議並びに取締役会からの指示・助言を受けることで、適切なガバナンス体制の下、ESG戦略を適切に実行して行きます。

<ガバナンス体制>

<戦略>

 2023年3月期には従来のESG戦略をベースに、戦略の見直しと調整を実施しました。2024年3月期を初年度とする新しい経営戦略において、ESGを重要項目の一つと位置付け、従来以上にESG戦略と経営戦略・事業戦略・機能戦略との親和性・一貫性を強化してきています。

 従来のESG戦略の骨子・枠組みを残しながら、新たにステークホルダーの皆様のご意見をお聞きし、近年の社会から企業が求められるサステナビリティへの期待値・要求事項を踏まえ、メドテック業界における動向も参考にしながら、グループ経営執行会議および取締役会に諮る等のプロセスを経て、従来の「6つのESG領域」と「5つの重要課題」を新たに「6つの重要領域(Focus Area)」とし、その下に「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定しました。また、この「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定するプロセスの中では、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社の事業へのインパクト」の2つの軸から、これら「25項目の重要課題(Materiality Topics)」をTop Priority / High Priority/ Othersの3段階に優先順位付けをしています。この「6つの重要領域(Focus Area)」及び「25項目の重要課題(Materiality Topics)」は、当社グループの経営活動・事業活動と一体化し、これらの活動を通じて広く社会課題の解決に貢献することを表明するものです。当社グループが競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えています。マテリアリティは社会・事業変化によって可変のものであり、今後も必要に応じて見直しを行います。

    6つの重要領域(Focus Area)

・医療機会の幅広い提供およびアウトカムの向上

・コンプライアンスおよび製品の品質安全性への注力

・責任あるサプライチェーンの推進

・健やかな組織文化の醸成

・社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献

・コーポレートガバナンスの強化

<リスク管理>

 全社的なリスクアセスメントを実施する中で、サステナビリティ・ESGに関するリスク項目を抽出し、全社のリスクモニタリング管理体制を通じてリスク管理を実施しています。合わせて、その結果は適宜グループ経営執行会議や取締役会にも報告しています。

<指標と目標>

    2023年3月期においても前年度に引き続き世界の代表的なコーポレート・サステナビリティ評価指標である「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)」をESG活動の指標とし、各種Indexに選定されることを目標としています。当社はこれまでの間、2018年に初めて「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に初めて選定された後、執行役の長期インセンティブと外部ESG評価機関の評価結果との連動を開始した2022年3月期の翌年、2022年12月に初めて「DJSI World」の構成銘柄に選定されました。それ以降、2023年3月期までDJSI Worldは2年連続、DJSI Asia Pacificは4年連続の選定となりました。

 また、2023年3月期においては、ESG戦略の見直しの中で、特に重要度の高いTop Priorityに位置付けられる「重要課題(Materiality Topics)」を中心に、これを実施するための具体的な「代表的実施項目(flagship initiatives)」を定め、それぞれに定量的・定性的なKPI及びターゲットを定めてきました。

(2)気候変動

<ガバナンス>

 当社グループは、製品開発、調達、製造、物流、販売、修理といったバリューチェーン全体を通した環境負荷の低減に取り組んでいます。気候変動対応を含む環境活動の最高責任者であるCEOおよびCHRO(Chief Human Resources Officer)の下、EHS(環境・健康・安全衛生)機能を管轄するHuman Resources Headが、当社グループ全体の環境活動を統括しています。

 EHS機能はHuman Resources Headの指示のもと、当社グループ全体の「環境安全衛生ポリシー」を策定するとともに、温室効果ガス使用量の削減目標を含む環境行動計画を策定し、当社グループ全体の環境行動計画の推進と進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最高責任者(CEOおよびCHRO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指示を行います。取締役会は気候変動の対応状況について適宜報告を受け、取り組み状況をモニタリングしています。

  *最高責任者は2023年3月期まではCEOおよびCAO、2023年4月1日からはCEOおよびCHRO

環境推進体制 (本有価証券報告書提出時)

<戦略>

 当社グループは、シナリオ分析の手法を用いて、短期、中期および長期の時間軸ごとに気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提示している「2℃シナリオ:RCP2.6、IEA B2DS(産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満とするシナリオ)」および「4℃シナリオ:RCP8.5(産業革命前からの世界の平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1~5年)には、自然災害発生による操業停止・サプライチェーン断絶を、中長期的(10~20年)には、炭素税の導入や温室効果ガス削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。

 気候変動のリスクは当社グループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは限定的であると認識しています。例えば、物理的リスクとしては自然災害の自社工場操業への影響についても台風や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの面でも、昨今世界規模で台風や洪水が発生し、当社グループでも販売拠点の一時休業等の影響がありましたが、影響は限定的でした。また、移行リスクとしては、炭素税導入等による操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると工場でのエネルギーコストは小さいため影響は限定的であると考えます。

 また、気候変動の機会については、温室効果ガス削減に寄与する製品へのニーズの高まりを機会ととらえて省エネルギー等に配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、当社グループの製品は製品自体が小型で使用によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が小さいことから、事業活動に大きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。

 

環境変化

リスク

機会

対策

2℃

シナリオ

低炭素社会への移行に伴う規制強化

<移行リスク>

炭素税・排出権取引や各国の温室効果ガス削減規制の強化による調達・操業コストの増加、製品に対する温室効果ガス削減規制の強化への対応不足による市場競争力の低下

省エネルギーによる事業コストの削減

環境配慮型製品の開発による市場競争力の向上

ステークホルダーからの評価向上

エネルギー効率改善

再生可能エネルギー導入拡大

サプライヤーの多様化

製品・サービスの設計開発段階での環境配慮設計

4℃

シナリオ

気温上昇・異常気象の発生増加

<物理リスク>

台風や洪水等の自然災害規模の拡大による操業停止およびサプライチェーンの断絶(サプライヤーからの納品停止、物流拠点及び販売・修理サービス拠点の休業による顧客への納品停止等)

<リスク管理>

 当社グループは、経営戦略や事業計画の策定段階において、当社の事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への影響度が高いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移行リスク、自然災害による物理的リスクの内容も含みます。

 リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発生可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを行い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法人の環境統括部門が事業所関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。

 また、特に事業運営への影響度の大きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執行会議および取締役会へ報告されます。CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不足している場合は活動計画の見直しを行います。

<指標と目標>

 当社グループは、2030年までに自社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope 1 & Scope 2)を実質ゼロとすること、2030年までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることの目標を設定しています。また、脱炭素社会の実現に広く貢献するためには、自社からの温室効果ガス排出量に加えて、サプライチェーン上の温室効果ガス排出量までを含めた取組みが必要であると考え、2023年5月にサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を2040年までにネットゼロとする目標を策定し発表しました。本目標は、パリ協定で努力目標とされる高水準の1.5℃目標に沿ったものです。

 2022年3月期における実績は、温室効果ガス排出量対2018年3月期比25.9%削減、再生可能エネルギー由来の電力導入率18.9%を達成しました。今後は2030年までの目標達成に向け、世界各国の拠点での継続的な製造改善活動や省エネの推進と、再生可能エネルギーの導入を進めます。また、製品ライフサイクル全体での温室効果ガスを削減するために、環境配慮型製品の開発、グリーン調達の推進や物流効率改善等に継続的に取り組みます。

  *実績データは本有価証券報告書提出時に第三者保証が得られている2022年3月期のもの

 

目標

実績

温室効果ガス排出量削減率

(対2018年3月期)

21%以上

25.9%

再生可能エネルギー導入率

12%以上

18.9%

(3)人的資本・多様性

<戦略>

(ⅰ)人材育成方針

人材開発の基本的な考え方

 長期的視点における最も重要な経営資源は「人」であると考えのもと、誠実・共感をもって従業員一人ひとりを尊重するとともに、経営環境の変化に対しては当社グループ一体となって結束し俊敏に対応できる組織づくりを目指しています。これを実現するためには、従業員一人ひとりが当社グループ共通の理念や価値観を深く理解し、グローバルで活躍するためのスキル、そして高い専門性を有し、リーダーシップを発揮できる人材であることが求められます。また、人材開発を人材育成の側面から見るのではなく、こうした従業員の持つ意欲と活力を信頼し、その個性と能力が最大限活かされるよう適所に適材を配置することも重要です。

当社グループの目指す企業文化

 当社グループでは、健やかな組織文化とそれを支えるリーダーが、経営戦略の実現を後押しする重要な要因になると考えています。

 当社グループが目指す健やかな組織文化は「私たちの存在意義を実現するため、従業員一人ひとりがベストな状態でパフォーマンスを発揮できる文化」と定義しており、この文化の実現のためには6つの要素を特定しています。現在、6つの要素のさらなる向上のため、当社グループ全体で取り組みを進めています。

健やかな組織文化を実現するための施策

 健やかな組織文化の実現に向け、当社グループ共通の人事制度の構築や人材育成を実行しています。特に、経営戦略の達成に向け、グローバルで活躍できるリーダーシップのある人材の育成が重要だと考え、継続的な経営人材の強化および人材育成、リーダーシップや実行力強化に向けた研修等を実施しています。

(ⅱ)社内環境整備方針

多様性(Diversity, Equity, and Inclusion)

 当社グループでは、組織全体のダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを促進することで、より魅力的で競争力のある革新的な事業展開が実現できると考えています。そのため、性別、障がい、国籍、人種に関係なく、多様な人材にやりがいのある仕事を提供し、専門性を高め持続的に成長することを目指しています。

 当社グループが競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えており、2023年3月期に策定したESG戦略の「6つの重要領域(Focus Area)」及び「25項目の重要課題(Materiality Topics)」においても、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進を、特に重要度の高いTop Priorityに位置付けられる「重要課題(Materiality Topics)」の一つとして掲げています。

 DEIの戦略的な重点領域の一つとして女性活躍推進を定義し当社グループとしての目標値を設定しておりますが、特に日本地域においては注力すべき地域として個別の目標を定め、推進してまいります。

エンゲージメント強化

 当社グループのコアバリューサーベイは、健やかな組織文化づくりという私たちの目標を支える、従業員エンゲージメントの重要なツールです。従業員の声に耳を傾け、その体験や求めるものを会社が知る手段となっています。

 現在、サーベイの結果を受け、複数の組織階層でトップダウンとボトムアップの両面から組織のあるべき姿とのギャップを埋めるためのアクションプランを策定し、グローバルで展開しています。それぞれの地域を中心に、各部門や機能において、サーベイから抽出したコラボレーション、チャレンジできる風土、ワークライフバランスに関する課題を改善するためのアクションを実行していきます。今後は定期的にアクションプランの進捗と改善度合いを確認することで、より健やかな組織文化の実現を目指してまいります。

人材開発推進体制

 これまで当社グループが取り組んできた各地域の人材開発体制に加え、当社グループ全体での最適な人材開発を推進していくため、人事組織をグローバルと各地域による連携した体制としました。またHRビジネスパートナーと呼ばれる機能・事業組織担当の人事が事業や機能組織のリーダーたちとの連携も高めることで、当社グループ全体での一貫性を持つだけでなく地域やビジネス個別状況にも合わせて、人材開発施策の効率性の向上、効果の最大化を図っています。

<指標及び目標>

 本項「人的資本・多様性」における具体的な指標及び目標については、「第1 企業の概要 5 従業員の状況」掲載の、①管理職に占める女性労働者の割合、②男性の育児休業等取得率、③男女の賃金差異をご参照ください。

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