マーキュリアホールディングス 【東証プライム:7347】「証券業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界に冠たる投資グループへ」をビジョンに、「ファンドの力で日本の今を変える」をミッションに掲げ、4つの経営理念「幸せの総量を最大化する」、「クロスボーダー(国の壁、心の壁、世代の壁を超えて)」、「全ては事業のために」、「5年後の常識」の下、経営に取り組んでおります。
「世界に冠たる投資グループへ」では、オルタナティブ(代替)投資でのアルファ(超過利得)の獲得を追求し、投資資金が有効に使われて循環することで、ファンドの投資家のみならず、投資先並びに当社グループの株主をはじめ様々なステークホルダーの皆様にリターンを分配する、世界に冠たる投資グループを目指します。
「ファンドの力で、日本の今を変える」では、日本に「今」存在する事業には大きな潜在価値があります。それを引き出し、日本を活気溢れる国にすることが私たちのミッションです。グローバリゼーションに伴って世界がつながるからこそ、日本の持つユニークな良さが注目されて高く評価されています。
一方で、伝統的な企業経営の在り方にも変革が求められています。わが国経済が国境や世代を超えて発展するためには、長期資本の力が不可欠です。当社グループでは、日本の上場企業として傘下にオルタナティブファンドマネージャーを擁し、流動性の低い国内事業や資産に長期の投資資金を呼び込み、その変革を促進することで、日本が持つ潜在的な価値を引き出し、日本を活気溢れる国にすることをミッションとしています。
(2)中長期的な経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、東京証券取引所への上場時及び市場変更時の新株発行により調達した自己投資資金を活用し、新たにバイアウト投資戦略及びキャッシュ・フロー投資戦略を策定するとともに、当該戦略に基づく新規ファンドを組成することで、マルチストラテジーのファンド運用会社の基盤を確立してまいりました。
当該実績を踏まえ、2021年12月期から2025年12月期までの5年間は、①上場前後に組成した基幹ファンドからの成功報酬の最大化を図るとともに、②新ファンド組成による管理報酬の底上げを図り、③運営ファンドへの自己投資(セイムボート投資)に係る収益の更なる拡大を図る期間と位置付け、5年後の最終連結会計年度において、成長性の観点から5年平均当期純利益を、安定性の観点から自己資本をそれぞれ目標経営指標と掲げております。
具体的には当社グループの基幹ファンド(コアファンド)であるバイアウトファンドにおけるファンドレイズ、Spring REITにおける新規資産の組入、資産投資分野におけるエネクス・インフラ投資法人やインフラ・ウェアハウジングファンド等の新たな基幹ファンド(コアファンド)の組成及びファンドレイズに注力します。加えて、外部パートナーとの連携による、その他のアセットクラスを含めた取り組みとして、事業法人の戦略投資に対応したソリューション事業(BizTechファンド事業やタイを含むASEAN地域への投資管理サポート事業)、航空機リースファンド事業(事業会社に航空機投資の機会を提供)、太陽光開発ファンド事業(海外インフラ事業への展開)、インバウンド不動産投資ファンド事業、債権ファンドやバリュー投資ファンド事業等の新規企画事業(既存プロダクトからの横展開を含む)も推進することにより、成功報酬の最大化、管理報酬の底上げ及び自己投資収益の拡大を図っていく方針です。
(単位:億円)
| 2019年12月期 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
5年平均当期純利益 | 11.2 | 11.0 | 11.9 | 12.1 | 11.4 |
自己資本 | 121.7 | 119.1 | 151.1 | 166.3 | 170.9 |
(注)1.5年平均当期純利益は、5年平均の親会社株主に帰属する当期純利益であり、当社の事業サイクル及び成功報酬等が損益へ与える影響を考慮した結果、単年度損益よりも5年間の平準化された損益が、当社業績の実態を把握する指標として有用と考えております。
2.自己資本は、株主資本及びその他の包括利益累計額の合計額であり、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げであることから、ファンド運用会社としての安定性を把握する指標として有用と考えております。
3.当社は、2021年7月1日に単独株式移転により株式会社マーキュリアインベストメントの完全親会社として設立されたため、2020年12月期以前につきましては、株式会社マーキュリアインベストメントの連結財務諸表をもとに算定しております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し、行動制限の緩和やインバウンド需要の回復などにより、経済活動及び社会活動の正常化が進み、国内経済は回復基調にあります。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による資源価格の高騰や円安進行、これらを背景とした物価の上昇、さらにはインフレリスクに対応した欧米諸国での政策金利の引き上げといった世界的な金融引き締めが続くなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境を踏まえ、当社グループでは中長期的な成長を目指し、既存ファンドにおいては投資リターンの向上による成功報酬の最大化を図るべく、引き続き投資先企業の支援やモニタリングの強化に努めていくとともに、新規ファンドにおいては、管理報酬の底上げを行うべく、マクロ環境に沿った投資戦略に基づく事業企画を行い、投資家層を拡大することで基幹ファンド化を進めることが必要であると考えております。併せて、今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、上場会社及び金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理、投資家とのコミュニケーションを図るための経営管理体制の充実が必要であると考えております。
①運用管理資産の増加と運用パフォーマンスの向上
当社グループは2016年の東京証券取引所への上場以降は、上場時及び一部指定時の公募増資により調達した約48億円の資金を用いて、バイアウトファンド、航空機ファンド、エネクス・インフラ投資法人等の新ファンドを順調に組成してきた他、上場前に組成したグロースファンドや金融危機時に組成したバリュー投資ファンドからの約65億円の成功報酬を実現することで安定した業績を展開してきました。
2021年には持株体制へ移行するとともに、公募増資を行うことで更なる成長へ向けた体制整備及び資金調達を行い、2022年には公募増資により調達した約20億円の資金を用いて、バイアウトファンド、航空機ファンドの後継ファンドの組成を開始しました。
今後においては、2022年に組成したバイアウトファンド及び航空機ファンド等に加えて、マクロ環境を捉えた新ファンドを企画、組成することにより、運用管理資産を増加させること、より多くの成功報酬を実現すべく、上場後に組成したファンドの運用パフォーマンスを高めることが、それぞれ重要な経営課題であると考えております。
これらの課題に対処するためには、運用管理資産の増加については、従前は銀行が中心であったファンド投資家層を、保険会社等の銀行以外の金融機関、年金基金、大学、財団、更には個人まで拡大すべく、営業基盤と顧客管理の強化を、また、運用パフォーマンスの向上については、投資プロフェッショナルが個人ではなく、組織として活躍できる環境を醸成すべく、経営資源の機動的配分とノウハウの共通化を、それぞれ持株会社体制プラットフォームにおいて確立、整備することが必要不可欠であると考えております。
②オルタナティブ投資に対する理解の促進
当社グループはマルチストラテジーのファンド運用会社ですが、ファンドにおける主たる投資対象はプライベート・エクイティ、インフラストラクチャー、不動産等のオルタナティブ資産になります。オルタナティブ資産は、国内外の株式、債券という伝統的な市場金融商品に対して、長期の投資期間を必要とし、流動性は劣りますが、投資対象を適切に管理することにより高いリターンが見込まれます。
欧米を中心とする海外では、オルタナティブ投資に対する理解が進み、投資家のポートフォリオにおけるオルタナティブ資産の割合が高まっておりますが、日本では海外と比較して、オルタナティブ投資に対する理解が進んでおらず、社会的には、事業承継などのオルタナティブ投資資金へのニーズが高まっているにも関わらず、機関投資家に対するオルタナティブ投資の浸透は依然として低い水準にあります。今後の当社グループが事業拡大を図り、投資家層を拡大する上においては、日本の構造変化に対して当社グループのようなオルタナティブファンドマネージャーが果たしている役割に対する社会や市場からの理解を高めることが重要な経営課題であると考えております。
これらの課題に対処するために、当社グループはオルタナティブ投資における国内のリーディングカンパニーとして、IR/PR活動において、ニュースリリース、セミナー等を通じてオルタナティブ投資に対する理解を促進するための積極的な情報発信を行うとともに、Spring REITやエネクス・インフラ投資法人に続く投資戦略を投資機会として提供し続けるべく、「ファンドの力で日本の今を変える」という当社グループのミッションの達成のために、当社グループの活動に対する社会的認知を促進していくことが必要不可欠と考えております。
③プライム市場の上場維持基準適合へ向けて
当社グループは東京証券取引所の市場再編において、プライム市場を選択しましたが、現在においてはプライム市場の上場維持基準である流通株式時価総額100億円以上の基準を充たしていない状況にあります。今後、当社が中長期的な企業価値の向上を図る上においては、その前提として当社がプライム市場の上場維持基準を充足することが重要な経営課題になるものと考えております。
これらの課題に対処するために、プライム市場の上場維持基準の適合に向けた計画書に記載の通り、①成功報酬の最大化、管理報酬の積み上げ、自己投資収益の拡充による中期利益計画の達成、②ビジョン、ミッション及び経営理念を基礎としたIR/PRの充実による市場評価の浸透、③持株会社をプラットフォームとした機動的な資本政策による成長基盤の確立を図ることが必要不可欠であると考えております。
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