本田技研工業 【東証プライム:7267】「輸送用機器」 へ投稿
企業概要
当社および連結子会社の研究開発は、先進の技術によって、個性的で国際競争力のある商品群を生み出すことを目的としています。製品に関する研究開発につきましては、当社のほか、㈱本田技術研究所、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、また、生産技術に関する研究開発につきましては、当社のほか、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、それぞれ現地に密着した研究開発を行っています。
当社は電動事業のさらなる強化、加速をはかるため、電動事業の強化に向けて2022年4月に発足した事業開発本部をベースとし、電動事業開発本部を発足しました。この本部に、四輪事業に関わる事業戦略機能と電気自動車(EV)の商品開発機能、ならびに二輪・パワープロダクツ事業に関わる電動領域の戦略および開発機能を集約し、「電動事業のさらなる加速」とモビリティの拡がりによる「新たな価値創造」の実現をめざしていきます。
当連結会計年度に発生した研究開発支出は、9,763億円となりました。
また、当社および連結子会社では研究開発支出の一部について、無形資産に計上しています。連結損益計算書に計上されている研究開発費の詳細については、連結財務諸表注記の「21 研究開発費」を参照ください。
セグメントごとの研究開発活動の状況につきましては、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。
(二輪事業)
二輪事業では、「チャレンジする組織風土を最大化し、今後の環境変化を乗り越え、手の届く価格で、お客様に喜んでもらえる商品を創造し続けられるものづくり集団となる」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。
主な成果として、2023年4月にインドにて、競合他社が高いマーケットシェアを占める地区での攻略を見据えて開発したモーターサイクルである「Shine 100」を発売しました。新エンジン、新フレーム設計によるコスト低減活動を反映し競争力のある価格を実現しています。
さらに、モダンなデザインと実用的な仕様装備、お買い得感のある価格でATシェア拡大をめざす、「GIORNO+」をタイにて発売し、インドネシアにおいては「Stylo 160」を発売しました。
加えて、二輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを自動制御することで、ライダーの手動によるクラッチレバー操作を不要とした、「Honda E-Clutch」を世界で初めて(注1)開発しました。「Honda E-Clutch」は、発進、変速、停止など、駆動力が変化するシーンで、ライダーのクラッチレバー操作を必要とせず、最適なクラッチコントロールを自動制御することで違和感のないスムーズなライディングを実現する電子制御技術です。また、ライダーの要求に幅広く対応するため、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバー操作を行えば、通常のマニュアルトランスミッション車と同様、手動によるクラッチコントロールを行えるようにしています。この「Honda E-Clutch」は、軽量コンパクトなシステムで構成されており、既存のエンジンレイアウトを大きく変更することなく車体に搭載できるため、既に発売した「CB650R」や「CBR650R」を皮切りに、趣味性の高いFUNモーターサイクルへ順次適用していきます。
また、サウジアラビアで開催されたFIM(注2)世界ラリーレイド選手権の開幕戦で「世界一過酷なモータースポーツ競技」と言われている「ダカールラリー2024」に、「Monster Energy Honda Team」として、ワークスマシン「CRF450 RALLY」で参戦し、2021年以来3年ぶりとなる総合優勝を果たしました。
「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとして、2040年代にすべての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することをめざし、2030年における当社グループのグローバルでの電動二輪車の年間販売台数目標を、2022年9月に公表した数値から50万台引き上げた400万台とし、さらに、2030年までに、グローバルで電動モデルを合計約30機種投入していきます。2023年は、「EM1 e:」を、欧州、日本、インドネシアにて発売しました。
「EM1 e:」は、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を動力用電源に採用した、原付一種(第一種原動機付自転車)の電動二輪パーソナルコミューターで、Honda国内二輪ラインアップで初めてとなる一般向けの電動二輪車となります。
さらに、2024年には「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展した「SC e: Concept」をベースとしたモデルを、2025年にはFUN用途に使えるモデルや、プラグイン充電式の電動二輪車をそれぞれ世界各国に投入します。これらのモデルに加えスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATVなど、電動二輪車のフルラインアップ化への取り組みを加速させていきます。
また、モータースポーツでも、電動オフロードバイクの世界戦であるFIM E-Xplorer World Cupに、㈱ホンダ・レーシングが運営するワークスチーム(注3)「Team HRC」として、電動モトクロスバイク「CR ELECTRIC PROTO」で参戦するなど、新たな電動二輪車レースに挑戦することで、技術の強化を進めていきます。
二輪事業に係る研究開発支出は、799億円となりました。
(注) 1 当社調べ(2023年10月時点)
2 Fédération Internationale de Motocyclisme(国際モーターサイクリズム連盟)の略称
3 マシンを製造しているメーカーが運営しているチーム
(四輪事業)
四輪事業では、「魅力ある強い商品のために総合力を発揮し、ものづくりプロセスの深化により、四輪事業を永続的に成長させる」を方針として研究開発に取り組んでまいりました。
主な成果として、2023年10月に3代目となる新型「N-BOX」を発売しました。新型「N-BOX」は上質さが感じられるデザインに磨き上げるとともに、広い室内空間はそのままに、開放感のあるすっきりとした視界にすることで運転がしやすく、居心地の良い空間を実現しました。また、お客様がより安心・快適なカーライフを楽しむために新世代コネクテッド技術を搭載した車載通信モジュール「Honda CONNECT」をHondaの軽自動車として初めて採用しました。さらに、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」を標準装備しました。従来機能のほか、近距離衝突軽減ブレーキ、急アクセル抑制機能を新たに追加しました。
また、インド生産の新型SUV「WR-V」をインド、日本および南アフリカで発売しました。「WR-V」は、安心と信頼を感じられる力強いデザインとするとともに、クラストップレベル(注1)の荷室空間を実現し、また、すべての人が安心して運転できるダイナミック性能の提供をめざしました。
「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとして、当社グループは2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、各地域の市場特性にあわせたEVの投入を進めています。
北米においては、新型EV「PROLOGUE」とAcura「ZDX」を2024年に発売しました。「PROLOGUE」と「ZDX」はともに、ゼネラルモーターズ(GM)の「Ultium」バッテリーを搭載したGMとの共同開発モデルであり、カーボンニュートラル実現に向けた北米の電動化戦略を力強く加速させるモデルとなります。
2024年1月には、米国ネバダ州ラスベガス市で開催されたCES 2024において、2026年よりグローバル市場への投入を開始する新たなEV「Honda 0シリーズ」を発表しました。「Honda 0シリーズ」は、グローバルブランドスローガンや電動化方針のもと、大きく変革するHondaを象徴するEVシリーズです。新たなEVシリーズの開発にあたり、「Hondaのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロから全く新しいEVを創造していく」という決意が込められています。HondaのEV戦略を担う「Honda 0シリーズ」は、“Thin, Light, and Wise.(薄く、軽く、賢く)”という新たなEV開発アプローチにより、ゼロからの発想で創り出す、全く新しいEVシリーズです。「Honda 0シリーズ」は、2026年に北米での上市を皮切りに、2030年までに小型から中大型モデルまで、グローバルで7モデルの投入を予定しています。
中国においては、2027年までにEVを10機種投入し、2035年までにEV販売比率100%の達成をめざしています。現在展開している「e:N」シリーズに加えて、新型EV「イエ」シリーズを発表し、引き続きEVラインアップを拡充していきます。
「イエ」シリーズは、次世代EVとしての価値をより高めることを追求しました。当社グループのクルマづくりの理念である「M・M思想(注2)」に基づく人を中心としたパッケージングに加え、走行性能においては、中国で新開発したEV専用プラットフォームの適用と、長年培った電動化技術の融合により、「操る喜び」をさらに突き詰めました。また、智能化技術においては、先進のAIによるサポートなど、全ての乗員が快適に移動できる空間をめざしています。
小型EVについては、2024年秋に日本で発売を予定する軽商用EV「N-VAN e:」を皮切りに、2025年には軽乗用EVモデル、2026年には操る楽しさを際立たせた小型EVなど、小型EVのニーズがある地域に対して順次製品を投入していきます。さらに、「Honda Mobile Power Pack e:」を活用した電動化展開として、2025年度中に「Honda Mobile Power Pack e:」を4個搭載する超小型モビリティを日本へ投入するなど拡充をはかっていきます。
また、当社グループは、水素を電気とともに有望なエネルギーキャリアと位置づけており、2024年2月には、2024年夏に日本で発売予定の新型燃料電池車、「CR-V e:FCEV」を世界初公開しました。「CR-V e:FCEV」は、日本の自動車メーカーが発売するモデルとして初めて(注3)、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ燃料電池車です。燃料電池車が持つ長い航続距離と水素の充填時間の短さといった特長はそのままに、家庭や外出先で充電できるプラグイン機能を加えることで利便性をさらに高めています。
「交通事故死者ゼロ」へ向けた取り組みとしては、2023年11月に、車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷の軽減をサポートする全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360+」を発表しました。「Honda SENSING 360+」は、従来の「Honda SENSING 360」の機能に加え、新たにドライバーモニタリングカメラ、高精度地図を採用することでドライバーの状態確認や、車両の制御機能が向上し、ドライバーの運転負荷を軽減させます。これにより、健康起因やヒューマンエラーで発生する事故を抑制し、全ての人が心から安心して自由に移動できることに加え、「積極的に出かけたい」「もっと遠くまで行きたい」と思えるようなクルマの提供をめざします。「Honda SENSING 360+」は、2024年に中国で、「ACCORD」から適用を開始します。その後、グローバルでの展開を予定しています。
四輪事業に係る研究開発支出は、8,699億円となりました。
(注) 1 コンパクトSUVクラスにおいて。当社調べ(2023年12月時点)
2 マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想。人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとする、当社グループのクルマづくりの基本的な考え方
3 当社調べ(2024年2月時点)
(パワープロダクツ事業及びその他の事業)
パワープロダクツ事業では、「暮らしの“未来”を創造し「役立ち」と「喜び」を更なる高みへ」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。
主な成果として、高い動力性能や優れた経済性でご好評をいただいている4ストローク船外機「BFシリーズ」において最大出力となる350馬力を発揮する、新型船外機「BF350」を、2024年2月に発売しました。「BF350」は、新たに専用設計で開発したV型8気筒エンジンを搭載し、排気量4,952cm3、最大出力350馬力の力強い推進力を発揮するHonda船外機のフラッグシップモデルです。豊かなトルクからもたらされる高い走破性に加え、新設計のクランクシャフトを採用することで、高い静粛性・低振動を実現しています。また、環境にやさしく経済的な船外機をめざし、クラストップレベルの燃費性能(注1)を達成しました。2024年1月には、米国BOATING誌より、最先端技術によりボートオーナーの体験に良い影響を与えた船外機に贈られる「Marine Power Innovation Awards 2023」を受賞しました。
「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとしては、島根県松江市にて、2023年8月から小型船舶用の4kW電動推進機プロトタイプを用いた実証実験を開始しています。今回の実証実験で使用する電動推進機プロトタイプは、当社グループとトーハツ㈱が共同で開発しました。当社グループが出力4kWの電動パワーユニット、トーハツ㈱はギアケースやロアーユニットなどのフレーム領域をそれぞれ担当しており、バッテリーには当社グループの二輪車で使用している交換可能な着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を採用しています。なお、2024年1月からは一般の方の乗船を対象とした実証実験も開始しています。
「新たな価値創造」へ向けた取り組みとして、船外機においては、船一艇でのシステム開発に取り組んでいます。2024年2月に米国・マイアミで開催された「Miami International Boat Show 2024」にて、操船者の死角をカバーする「マルチビューカメラシステム」や、操船者が停船スペースを選択し、自動で停船スペースまで移動・停船する「自動着桟システム」、船の陸揚げする牽引トレーラーまで自動で操船し、トレーラーのレールに積載させる「自動トレーラーローディングシステム」など、知能化による技術進化を発表しました。
また、船外機以外については、当社グループ初となるバッテリー駆動の自律型電動ゼロターン乗用芝刈り機のプロトタイプ「Honda Autonomous Work Mower(以下「Honda AWM」という。)」を、2023年10月に米国・ケンタッキー州ルイビル市で開催された「Equip Exposition 2023」へ出展しました。「Honda AWM」は、ティーチング&プレイバック機能により、事前に学習したルートに沿って自動で芝刈り作業行います。2024年初めには、米国の大手造園会社との実証実験を終え、今後も企業との実証を重ねる中で、「Honda AWM」の更なる改良をめざします。
当社グループはこれからも、「新たな価値創造」へ向けた取り組みを加速していきます。
航空機においては、Honda独自の最先端技術を開発して、空の世界においても新しい価値を創造し、長期的な観点から航空機ビジネスを成長させていくためのビジネス基盤の構築をしてまいりました。
2023年10月に米国ネバダ州ラスベガスにて開催された世界最大のビジネス航空機ショー、2023 ビジネス アビエーション コンベンション アンド エキシビション(2023 NBAA-BACE)にて、開発中の新型小型ビジネスジェット機の名称「HondaJet Echelon」を発表しました。「HondaJet Echelon」は、あらゆる面で移動効率を高め、ライトジェット機より上位の機体カテゴリーと同等レベルの飛行体験を提供します。Honda独自の技術である主翼上面エンジン配置、自然層流翼型・ノーズ、コンポジット胴体をさらに進化させたことで、乗員・乗客合わせて最大11名が搭乗できます。
また、2015年後半から「HondaJet」のデリバリーを開始して以来、2023年度には250機目となるデリバリーを達成しました。「HondaJet」は14カ国・地域で型式証明を取得しており、総飛行時間は21万時間以上を記録し、航空機の信頼指数であるDispatch Reliability(出発信頼度)(注2)において、高い信頼性で業界をリードしています。
パワープロダクツ事業及びその他の事業に係る研究開発支出は、264億円となりました。
(注) 1 当社調べ(2024年1月時点)
2 運行予定時刻から15分以内に出発した割合のこと。航空業界において、飛行機の信頼性の指数として用いられている。
次世代技術分野においては、2023年10月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」にて、人と分かり合える独自のAIである協調人工知能「Honda CI(Cooperative Intelligence)」を搭載し、自動走行技術により、ラストワンマイルを誰でも手軽に自由に移動できる二人乗りの四輪電動モビリティの実証車である「Honda CI-MEV」を出展しました。公共交通機関が無い場所での移動や長距離の歩行が困難な場合など、移動範囲が狭くなりがちな人の生活圏の拡張を実現することをめざしています。
また、2024年2月には、「Honda CI」を搭載した「Honda CIマイクロモビリティ」の技術実証実験の一環として、一般向け自動走行技術実証実験を茨城県常総市で開始しました。CIマイクロモビリティを一般のお客様に体験いただき、フィードバックを得ることで、CIの進化、モビリティとしての使い勝手の向上をめざすとともに、2030年頃の実用化を見据えた社会受容性の醸成をはかっていきます。
当社グループは、いつでも、どこでも、どこへでも、人とモノの移動を「交通事故ゼロ」・「ストレスフリー」で可能とし、「自由な移動の喜び」を一人ひとりが実感できる社会の実現をめざし、CIマイクロモビリティの技術開発に取り組んでいます。
2023年10月には、カナダのトロント・ピアソン空港にて、プラットフォーム型自律移動モビリティ「Honda Autonomous Work Vehicle(以下「Honda AWV」という。)」を活用した実証実験を実施しました。「Honda AWV」は、マッピングと障害物検知機能を活用し、オペレーターによって独自に設定されたルートの自律的な走行や、障害物との衝突を回避するための自動減速・自動停止などを行います。
さらに、2024年2月に開催された「WIND EXPO 春 ~第13回 国際 風力発電展~」にて、洋上風力発電のメンテナンスなど水中作業に活用可能な遠隔操作型の無人潜水機「作業用ROV(Remotely Operated Vehicle)コンセプトモデル」を世界初公開しました。2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、クリーンエネルギーの創出は重要であり、その中でも洋上風力発電の発電量が今後大きく伸びることが予測されています。当社グループは洋上風力発電施設の施工・メンテナンスに貢献することをめざして、ASIMOをはじめとするロボティクス研究で培った技術を活用した作業用ROVの研究開発を行っています。
なお、これらの取り組みに係る研究開発支出は各事業に配分されています。
当連結会計年度末時点において、当社および連結子会社は、国内で13,100件以上、海外で26,600件以上の特許権を保有しています。また、出願中の特許が国内で4,800件以上、海外で11,900件以上あります。当社および連結子会社は、特許の重要性を認識していますが、特許のうちのいくつか、または、関連する一連の特許が終了または失効したとしても、当社および連結子会社の経営に重要な影響を及ぼすことはないと考えています。
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