ワコム 【東証プライム:6727】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題
当社グループは、2022年3月期~2025年3月期を対象期間とするグループ中期経営方針『Wacom Chapter3』開始から3年が経過し、次期『Wacom Chapter4』に向けた展望とともに、以下のとおり『Wacom Chapter3』及び2023年5月11日に発表したその「アップデート・レポート」に則って事業を展開してまいりました。
当社グループが、人間と社会にとって意味のある体験を、ワコムの技術を通して長い期間ご提供し続け、この世界を少しでも人間的なものにすることに寄与すべく、『Wacom Chapter3』において「Life-long Ink」のビジョンを掲げて設定した5つの戦略軸については変更せず、今後も維持発展させていく所存であります。
①Technology Leadership(ワコムの提供価値の源泉である技術革新に注力)
商品ポートフォリオ刷新の先陣を切って発売した液晶ペンタブレットのフラッグシップモデル『Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)27』に続き、『Wacom Cintiq Pro 17』及び『Wacom Cintiq Pro 22』を上市し、プロクリエイターの皆様の期待に応える創作体験をご提供しております。
②Community Engagement(コミュニティと深く連携し、価値ある体験を形成)
新しい技術を共同で開発していく技術コミュニティ、新しいビジネスを開拓していくビジネスコミュニティ、そして新しい文化体験を創出していく文化コミュニティ等、多岐に亘るコミュニティとの連携を推進中であります。
③New Core Tech, New Core Value Proposition(新しいコア技術をもとに新しい価値を創造)
デジタル手書きの技術をXR(クロスリアリティ)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)の三分野にて掛け合わせることにより新たな体験価値を提供すべく、具体的な技術開発を推進中であります。XR分野では独自のメタバース空間を立上げると同時に「空間描画」を可能にするWacom VR Penの開発を進め、AI分野では生徒の試行錯誤を可視化する株式会社Z会の新しい学習体験サービスの共同開発、セキュリティ分野ではクリエイターの権利を守るサービス『Wacom Yuify(ワコム ユイファイ)』の開発が進行しております。
④Technology Innovation for Sustainable Society(技術で持続可能な社会の発展に貢献)
商品開発、技術開発の一環として、修理しやすい構造の追求、リサイクルしやすい金属部品やリサイクルプラスチックの活用、商品箱の簡易化やリサイクル素材の活用といった即効性のあるものに加えて、アカデミアとの共同研究を通じて環境ケア新素材の開発にも取り組んでおります。
⑤Meaningful Growth(財務的な成長に加えて、多面的な意味を持つ成長を目指す)
私たちは、技術をもとに製品・サービスのユーザー体験を通じてお客様に価値を届けることがワコムの存在意義であり、それを一社だけではなくそれぞれのコミュニティのメンバーとともに学び合いながら実現させていくことが、社会の成長に貢献することにつながると信じております。Meaningful Growthを具現化する体験として毎年11月にコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)」を開催すると同時に、その思いを皆様により深く理解していただくための一環として、当社グループの価値提供と取り組みをとりまとめた『Wacom Story Book』を2023年5月10日に発行しました。
一方で、2020年に世界規模で発生したコロナ禍に端を発したサプライチェーンの混乱、インフレ圧力の高まり、消費者行動の急速な変化等々、当社グループの事業を取り巻く環境が大きく変化し、企業価値の中長期的な向上を目指す観点から当社グループの事業構造を変革させる必要が生じております。
当社グループは、事業構造変革期間である『Wacom Chapter3』の残り1年に、以下の8つの施策に取り組みます。
1.商品ポートフォリオの刷新と粗利改善
2.集中領域での事業構築
3.販路マネジメントの強化
4.在庫マネジメントの改善
5.顧客と用途の拡大
6.一般教育分野での事業開拓
7.資本政策と株主還元のアップデート
8.新ビジネスへの投資と立上げ
(2)経営環境
世界経済はロシア・ウクライナ情勢及び中東地域に起因した地政学的緊張の高まりに加えて、エネルギーや食糧価格の高騰を背景とする主要国での中央銀行の金融引き締めが、その後のインフレ動向、景況感に及ぼす影響について依然として不透明感のある状況であります。これらの情勢を背景に、企業業績に与える影響の大きい今後の為替相場の動向についても、対米ドル、対ユーロともに不透明感があります。IT市場を中心とする事業環境については、モバイル、クラウド、AI、ブロックチェーンなどの技術革新に伴う情報処理の低価格化、利用の容易化がさらに進んでいくことが見込まれております。
(3)目標とする経営指標
『Wacom Chapter3』策定時に設定した財務方針のガイドラインを2023年5月に以下のとおりアップデートしております。
①事業活動の効率性
2025年3月期のROIC(投下資本利益率)10%以上への回復を目安に事業を運営してまいります(修正前:25~30%程度)。
②資本の効率性
2025年3月期のROE(自己資本利益率)10~15%程度を想定しております(修正前:20%程度)。
③株主還元
配当支払については、適正な財務の健全性を確保することを前提にしつつ、連結ベースの配当性向が目安である30%程度を上回る場合でも、原則として安定的な1株当たりの配当額の維持を目指してまいります。
自己株式取得については、上記の資本の効率性を実現する観点から配当支払では賄えない部分について、投資機会や財務状況なども考慮の上、機動的に遂行してまいります。
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