電気興業 【東証プライム:6706】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、経営理念に「時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す」ことを掲げ、同じく「優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する」ことを実現すべく、長年培ってきた電気通信技術・高周波応用技術に関する豊富な知識と経験に基づき、経営重点方針のもと、たゆまぬ技術開発の推進と品質性能の向上を目標とした各施策を行うことにより、企業価値を高め、株主の皆様や顧客各位のご期待に応えることを経営上の最大基本方針と位置づけております。
また、当社グループは、2021年3月に中長期経営戦略を掲げ、2021年11月には企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するための方針、社会及びステークホルダーに対する責任を「サステナビリティ基本方針」として定めた上で、「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」の5つのマテリアリティ(重要課題)を掲げ、当社グループの事業のサステナビリティ(持続可能性)向上を図る企業活動(サステナビリティ経営)に取り組んでおります。
これらを踏まえ、2023年3月期からの3ヵ年計画である中期経営計画(DKK-Plan2025)を2022年5月に策定し、「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」を基本方針に据え、社会課題の解決を通じた持続的な成長の実現に向けて事業活動を展開してまいりましたが、原材料等の価格高騰や既存顧客の設備投資抑制などの外部環境の変化が業績面に強く影響する状況等を鑑み、外部環境の変化に対応できる体制や基盤を構築し、早期の業績回復を目指すため、2024年3月にDKK-Plan2025のローリングプランを策定いたしました。このローリングプランでは、抜本的な事業構造改革等を実行し、収益創出体制を確立させることで、次期中期経営計画(DKK-Plan2028)における成長の実現・加速につなげる各種取り組みについて掲げております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、中期経営計画(DKK-Plan2025)にて2025年3月期の達成目標として自己資本当期純利益率(ROE)5%を掲げておりましたが、DKK-Plan2025ローリングプランにて、目標の達成年度を2年延期し2027年3月期の達成を目指すことといたしました。ローリングプランでは事業構造改革と財務戦略の推進により収益創出体制を構築することを掲げております。また、2024年3月に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の記載のとおり、収益性の向上と市場評価の向上のための取り組みを進め、2027年3月期を目標に株価純資産倍率(PBR)1.0倍超を目指してまいります。
また、「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」に向け、マテリアリティ(重要課題)に掲げる「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」の5つの課題に対するそれぞれのKPI達成に向け、その取り組みを進めております。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
なお、マテリアリティ(重要課題)及びKPIについては、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会において協議の上、定期的に見直しを行ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、経営環境の変化に迅速に対応し、事業の継続性と安定した収益の確保を目指すとともに、継続的なコーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みを進めることで、企業価値の増大を図ることを基本としています。
当社の中長期的な経営戦略としては、2021年3月に開示いたしました「中長期経営戦略」において、「社会貢献への積極的関与」と「企業価値の向上・成長の実現」により、当社グループのありたい姿である「未来の当たり前をつくる企業(Pioneering the future)」の実現に向け、「新規事業の創出」、「既存事業の更なる拡大」、「経営基盤の強化」の3つの戦略を掲げております。
また、その実現のため、「成長に向けた土台作り」と位置付ける中期経営計画(DKK-Plan2025)及びそのローリングプランにおいて、「経営基盤の強化」「事業ポートフォリオの最適化」「新規事業創出の早期実現」の重点施策のもと、当社グループが永続的に発展・成長するための強固な経営基盤の構築に向け進めてまいります。詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。
①新規事業の創出
・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「環境経営の推進」及び「新規事業の創出」
「新規事業の創出」においては、ビジネススタイルの変革や顧客層の拡大・差別化の追求により、これまでの事業とは異なる新たな収益の源泉を創出してまいります。具体的には、2024年3月に策定した「DKK-Plan2025」ローリングプランで注力セグメントと位置付けた「ソリューション」においては、AIの実用化及び無線通信技術の高度化への対応に向け取り組みを進めてまいります。また、「高周波関連」においては、「高周波新領域」のセグメントにおける新たに開発した過熱水蒸気設備を軸にした環境ビジネスを早期に確立し、収益改善を目指していく所存です。
②既存事業の更なる拡大
・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「社会インフラ整備への貢献」
2024年3月に策定した「DKK-Plan2025」ローリングプランでは、「防衛」「ソリューション」「高周波関連」を注力セグメントに設定しましたが、従来携わってきた社会インフラに関わる既存事業の拡大についても重要なテーマとして捉えております。これまで携わってきた移動通信関連、固定無線関連、放送関連、高周波関連を中心にその周辺分野への事業拡大の取り組みを進めておりますが、以降においても、継続的に新たな技術を有した製品を投入し安定的な収益基盤の構築を図っていくことと併せ、設備投資及びM&A投資などを通じて適宜適切に経営資源を投入することで、社会貢献と企業価値増大の寄与に向けた取り組みを推進してまいります。
③経営基盤の強化
・関連するサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ:「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」
技術革新への対応が求められるなか、これからの時代を見据えた研究開発に加え、保有する経営資源を的確に投入していくことで将来を見据えた取り組みについても進めております。
また、「経営基盤の強化」には、企業統治の観点も不可欠であり、経営の透明性と健全性を確保することにより、企業の社会的信用性を高めながら企業価値の増大を図ることを、コーポレートガバナンスの基本的な考え方としております。取締役会の健全性、実効性及び透明性の確保に向けた取り組みや、コンプライアンス経営に向けたコンプライアンス・プログラムの推進、政策保有株式の縮減などの各種取り組みをコーポレートガバナンスの強化として継続して実施してまいります。なお、政策保有株式の縮減については、保有する上場株式を2027年度末(2028年3月末)までに全て売却することとしております。
(4)経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に弱い動きが見られますが緩やかに回復しております。高水準の企業収益を背景に設備投資が底堅く推移しており、供給制約の緩和から生産活動も持ち直しの動きを見せております。一方、海外経済の不透明感に加え、商品市況の高止まりや円安に伴う資材価格の高騰が継続しており、消費が弱い動きとなっているなどリスク要因が複数あることから、先行きについては依然として予断を許さない状況が続いております。
当社グループの関係しております電気通信関連業界におきましては、移動通信関連分野では、顧客の設備投資計画が依然として全般的に抑制されております。固定無線関連分野では、自治体の防災体制の強化等により防災行政無線の需要に回復傾向が見られておりますが、放送関連分野においては放送事業者による設備更新需要の先送りの継続により、依然として停滞しております。高周波応用機器業界におきましては、自動車関連分野における設備投資需要に回復の兆しが見られますが、その基調は未だ緩やかなものとなっております。なお、いずれの事業分野においても、エネルギー及び部品等の価格高騰や、人件費の高騰といった原価上昇要因が、依然として影響を及ぼしております。
(5)会社の対処すべき課題
当社グループは、顧客の設備投資動向の影響を受ける事業形態であること、また、原材料価格の高騰や為替相場の大幅な変動をはじめとした事業環境への対応等が課題として挙げられます。当社グループとしては、新規事業への取り組みの早期実現、販売価格の適正化、原価低減、製造体制の再構築等を継続して進めてまいります。
以上のような環境の中、2024年3月に公表した中期経営計画(DKK-Plan2025)のローリングプランに記載のとおり、今後においては、既存事業の着実な取り込みに加え、防衛・ソリューション・高周波の事業領域を注力する分野と定め当社グループの早期の業績回復を目指してまいります。
電気通信関連事業のうち、防衛関連分野においては、防衛費の予算増額を背景とした装備品の安定供給と既存設備の維持・点検整備事業への積極的な提案による受注獲得を図るとともに、ソリューション関連分野においては、映像を主体としたAIソリューションによる社会課題解決に向け、提案力・開発力を増強するとともに、子会社化した株式会社サイバーコアとの協業による受注拡大を進めてまいります。また、高周波関連事業のうち高周波誘導加熱装置分野においては、自動車EV化に伴う受注の獲得や既存設備のメンテナンス需要の掘り起こしを進め、熱処理受託加工分野については、生産調整の解消からの回復傾向にある需要の着実な獲得に取り組み、高周波新領域分野については、事業化の早期実現に向けてスピードを上げて推進してまいります。
既存事業についても、電気通信関連事業のうち移動通信関連分野においては、移動通信基地局用アンテナ製品に加え、開発した無線装置と併せ需要の取り込みを図るとともに、移動通信鉄塔のメンテナンス需要の獲得にも継続して取り組んでまいります。固定無線関連分野については、緊急防災・減災事業債の期限延長の影響を受け、地方自治体向け防災行政無線の需要の回復が見込まれておりその獲得に注力し、また放送関連分野については、放送設備の更新・メンテナンス需要の取り込みを着実に進めてまいります。
また、当社グループはサステナビリティ経営を掲げ、「サステナビリティ基本方針」のもと、重要課題として5つのマテリアリティ(「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」)を定めており、引き続き社会課題の解決を通じた持続的な成長の実現に向けて、事業活動を展開いたします。
(経営理念)
・優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する。
・時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す。
・絶えず生産性の向上に務め、常に適正な利益を確保する。
・一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める。
(サステナビリティ経営の実現に向けたマテリアリティ(重要課題))
マテリアリティ:「職場風土・働き方改革」「コーポレートガバナンスの強化」「社会インフラ整備への貢献」「環境経営の推進」「新規事業の創出」
(中長期経営戦略のビジョンと戦略)
ビジョン:ありたい姿である「未来の当たり前をつくる企業(Pioneering the future)」の実現
戦略:「新規事業の創出」、「既存事業の更なる拡大」、「経営基盤の強化」
(中期経営計画の基本方針と重点施策)
基本方針:「サステナビリティ経営の推進による企業価値の向上」
重点施策:「経営基盤の強化」「事業ポートフォリオの最適化」「新規事業創出の早期実現」
(ローリングプランの方針と重点施策)
基本方針:「事業構造改革による収益体制の構築」
重点施策:「収益改善のための構造改革」「中長期的な成長戦略」「適切な資本構成」
(次期(2025年3月期)の経営重点方針)
全体目標:「業績改善・利益確保の実現とサステナビリティ経営の発展」
取組方針:「グループ全体で強い意志を持った利益の最大化」、「コストを意識した効率化の追求による業務価値の向上」、「事業化のスピードアップと研究開発の選択と集中」、「職場風土・働き方改革の推進とコンプライアンス、リスクマネジメントの徹底」、「積極的なサステナビリティ経営の実践による社会貢献と発展成長の実現」
<決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備について>
2023年6月30日付の内部統制報告書にてお知らせしました決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備については、当連結会計年度において改善活動に注力いたしました。
しかしながら、固定資産の減損については、会計基準及びその適用方法の理解が不十分であり、固定資産の減損処理に関する準備が遅延し、本来実施すべき外部専門家や会計監査人への相談が不足したことから、状況に対応した手順書やワークシートの改善が徹底されておりませんでした。
また、適切な経理・決算業務のための必要かつ十分な専門知識が不足していたため、重要な事象や状況の変化に対する会計基準の適合性に関する検証の精度が不足しておりました。
これらの決算・財務報告プロセスの開示すべき重要な不備により、当連結会計年度においても会計監査人から固定資産の減損処理の誤りの指摘並びに異なる納税主体間での繰延税金資産及び繰延税金負債の誤った相殺処理、満期保有目的の債券に係る流動固定区分の分類誤り、連結キャッシュ・フロー計算書の科目集計の一部誤りによる決算短信の訂正を含む修正事項が発生いたしました。
前連結会計年度同様に決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備が検出されておりますが、当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、当社及び連結子会社において下記を含む再発防止策を講じて内部統制の整備・運用を強化し、財務報告の信頼性を確保してまいります。
(再発防止策)
①決算・財務報告プロセスにおける検証機能の強化
・重要な会計処理や状況の変化に関する早期の検討実施と外部専門家及び会計監査人との早期のコミュニケーションの実施
・固定資産の減損に関する手順書・ワークシートの更新
・重要な事象や状況の変化に対する会計基準の適合性を踏まえたチェックリストの整備
・経理責任者が会計基準に基づいてチェックを実施できるための体制整備の一環として、十分な経理知識を有した公認会計士等を含むチェック体制の強化
・外部専門家による直接的なチェックを受けられる体制の整備
②会計処理を適時適切に実施するための人員補強等
・公認会計士等の十分な経理知識を有する者の新規採用を含む人材の補強
・複数人によるチェック体制を整備し属人的にならない体制の確立
・経理責任者及び実務者の知識向上のための継続的な研修参加機会の確保
- 検索
- 業種別業績ランキング