企業兼大株主富士通東証プライム:6702】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。パーパス実現に向けて必要不可欠な貢献分野であるマテリアリティを、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上の3分野に定め、この3分野において、気候変動、情報セキュリティの確保、生活の質の向上に向けた医療ヘルスケアの推進など、重点的に取り組むべき11の課題を設定しました。全社でマテリアリティへの取り組みを推進し、当社グループの企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指しております。

 また、2030年に向けて、クロスインダストリーでサステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供して、社会・お客様・株主様・社員などのステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる、というビジョンを定めております。このネットポジティブとは、社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにすること、と定義しております。

 財務資本、人的資本といった資本を投入し、重点戦略に沿ってマテリアリティに取り組み、財務・非財務の両面でアウトプットやアウトカムを生み出し、それをまたインプットとして投じる、これを継続することでステークホルダーへの提供価値の向上を図ってまいります。

<市場環境>

 当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、引き続き緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのモダナイゼーションやクラウド化への投資は今後も堅調に増えると予測されています。さらには、生成型AI(人工知能)に代表されるAIなどのテクノロジーやデータ分析・活用といったデジタル化に向けた投資は、社会や企業の成長・発展へのニーズに加えて、社会システムや産業構造の変化に対するニーズも加わることで、今後も拡大すると想定されています。

<2025年度までの中期経営計画について>

 このような状況のもと、当社グループは、2023年度から2025年度までの3年間を2030年及びそれ以降の目指す姿の実現に向けて持続的な成長と収益力向上のモデルを構築する期間として位置付けた3か年の中期経営計画を定め、達成に向けた取り組みを進めております。

2025年における当社のあるべき姿と、ステークホルダーへの提供価値の最大化を実現するため、事業モデル・ポートフォリオ戦略、カスタマサクセス戦略/地域戦略、テクノロジー戦略、リソース戦略の4つの重点戦略に沿って施策を推進しております。

<2023年度の進捗と2024年度以降の取り組み>

 主に3つの取り組みを進めております。1つ目は、事業モデルと事業ポートフォリオの変革です。Fujitsu Uvanceを中心に、従来型のSI(システムインテグレーション)ビジネスから、オンクラウドやビジネスアプリケーション、クロスインダストリーといった事業モデル及び事業ポートフォリオへの変革を進めております。

Fujitsu Uvanceの2023年度の売上収益は、当初計画の3,000億円を大きく上回る3,679億円となり、前期の2,000億円から84%増と大きく伸長しました。2022年度はお客様のDXを支えるためのテクノロジーやソリューションを提供するHorizontal領域の売上収益が中心でしたが、2023年度は市場をクロスインダストリーで捉えるVertical領域のオファリング強化を進めた結果、Vertical領域の売上収益がFujitsu Uvance全体の売上収益の3割を超えてきております。

 また、クロスインダストリーの取り組みはデータの連携と活用が重要な要素となりますが、2023年度は、当社のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」をベースに、AI機能を活用したFujitsu Uvanceの高度化にも取り組み、Vertical領域を中心に22のオファリングにFujitsu KozuchiのAIエンジンを実装しました。2024年度は、引き続きオファリングを拡大してまいります。

 また、2月に発表した当社の新たなコンサルティング事業モデルである「Uvance Wayfinders」のコンサルティング・リードによるビジネスの拡大や、海外での本格展開を見据えたグローバル共通サービスの拡充を図ってまいります。

2つ目は、お客様のモダナイゼーションの確実なサポートです。モダナイゼーションビジネスは、国内を中心に順調に拡大しております。2023年度は、デマンドに対するリソース要件の可視化や、2022年に設置したモダナイゼーションナレッジセンターによる商談及びプロジェクトの効率化、グローバルで実績のあるツールの展開などを行いました。

2024年度以降も既存システムのモダナイゼーションの需要は継続していくと予想しております。当社グループにおいては、可視化されたリソース要件をベースに、商談状況に応じた機動的なリソースのアサインメントを行い、プロジェクトを確実かつ効率的に遂行してまいります。また、モダナイゼーションに必要なスキルを保有する人材も継続して拡充し、ビジネスの変化に対応しながら、クラウド化やDXを見据えたモダナイゼーションをサポートしてまいります。

3つ目は、海外ビジネスの収益性向上です。2023年度の「サービスソリューション」のサブセグメント、「リージョンズ(海外)」全体の売上収益は6,041億円と前期から微増となりました。調整後営業利益率は1.7%と依然採算性が課題となっておりますが、事業ポートフォリオの変革などの取り組みにより回復を見込んでおります。Americasリージョンは、事業ポートフォリオの変革が順調に進み、サービスビジネスの割合が増加しており、2023年度は調整後営業利益率は改善傾向にあります。2024年度はビジネス規模の拡大と、さらなる収益性の向上に取り組んでまいります。Europeリージョンは、ドイツにおけるプライベートクラウド事業のカーブアウトや、より採算性の高い地域に集中するための低採算地域からの撤退、サービスビジネスとハードウェアビジネスの分離のための法人体系の再編といった構造改革を実行しており、2025年度中に完了予定です。施策の効果により、調整後営業利益率は2023年度の0.5%から2024年度は4.3%まで回復すると見込んでおります。Asia Pacificリージョンでは、競争の激しいインフラビジネスから脱却し、ビジネスアプリケーションといったサービスビジネスへシフトするための構造改革を検討しております。いずれの地域においても、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスビジネスへのシフトを進めてまいります。

 以上3つの施策に加えて、全社的な取り組みとしてサービスソリューション全体の収益性向上に向けた取り組みを継続して進めております。サービスソリューションにおける売上総利益率改善のため、デリバリーの変革とお客様への提供価値に基づくプライシングの2つを中心に進めております。

 グローバル標準でのオフショア開発やサービスデリバリーを行うグローバルデリバリーセンター(GDC)は人員を拡大し、内製化率やオフショア率の改善に取り組んでおります。また、日本固有の商習慣やニーズを踏まえてデリバリーを標準化するジャパングローバルゲートウェイにおいて、全社共通の開発プラットフォームの活用による開発作業の標準化や自動化を進めており、工数削減などの効果が出始めております。

 また、従来のコストベースの見積もりから脱却し、提供価値に基づくバリュープライシングへのシフトを進めております。 2023年度からは、SAP、ServiceNowといったサービスにおいて、グローバル共通のレートカードを設定し、全リージョンに展開しており、一定の効果が出ております。これらの取り組みを進めた結果、売上総利益率が年間で2%改善しました。

 今後も、競争力のあるサービスやお客様にとって価値の高いサービスの提供に必要な人材育成に投資を行い、当社による提供価値を高め、外部環境の変化によるコスト増も加味しながら適正なプライシングも行い、さらなる収益性と生産性の向上に努めてまいります。

<非財務面での取り組み>

 当社グループは、非財務の領域においても、環境、お客様、生産性、そして人材の4つの項目において2025年度のKPIを定め、達成に向けて取り組んでおります。環境でのKPIとして温室効果ガス削減量を定めており、2020年度と比較しScope1・2では当社グループで50%削減、Scope3ではサプライチェーンで12.5%の削減を目指しております。お客様については、お客様NPS®において2022年度比で20ポイント上昇を目指してまいります。生産性については、従業員1人当たりの調整後営業利益において、2022年度比40%の上昇を目指しております。人材では、従業員エンゲージメントについて、グローバルでのスコア75の達成を目指しております。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、グローバルでの女性幹部社員比率を2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としております。2024年度は上記2025年度のKPIのいずれも変更はなく、引き続き達成に向けて取り組んでまいります。また、非財務面での取り組みが財務面に対しどのように寄与するかについての定量的な分析も進めており、2023年度は非財務と財務の各項目の相関関係の見える化に取り組みました。2024年度は、さらなる分析を進めてまいります。

 当社グループは、引き続きデータを活用して迅速な意思決定を行いながら、デジタルテクノロジーと、これまで培った多様な業種への実績・知見を活かし、安心で安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります。

(注)1.お客様NPS®:お客様Net Promoter Scoreの略。顧客体験=カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善度や深化の把握のために、企業、商品やサービスへのお客様の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」を測る指標。

2.従業員エンゲージメント:会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標。

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