企業兼大株主ブラザー工業東証プライム:6448】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)サステナビリティ

 ①ガバナンス

 「サステナビリティ基本方針」※に基づく各種活動を推進することを目的として、2022年4月にサステナビリティ委員会を設置しました。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、後述する各分科会オーナー及び常務以上の執行役員、事業統括執行役員、その他必要な機能として社長が定める者により構成されています(以下、当委員会の委員長を「サステナビリティ委員長」といいます)。

 サステナビリティ委員会の傘下に特定分野ごとの各種サステナビリティ活動を推進することを目的として、分科会を設置しています。各分科会には、分科会活動を統括する者として、分科会オーナーを置いています。分科会オーナーには、原則としてサステナビリティ委員長が指名する執行役員が就くものとしています。各分科会は、該当する分科会オーナーの招集により、適宜開催されます。

 分科会を新設・改廃する場合には、サステナビリティ委員長の判断でサステナビリティ委員会を開催のうえ、その目的や役割、必要に応じ分科会オーナーや構成メンバー等の必要事項を明確にした上で、委員長の決裁により行うものとしています。

 サステナビリティ委員会の開催には定例会と臨時会があります。臨時会は必要に応じてサステナビリティ委員長が招集するものとしています。以下の重要事項を策定、改訂する場合には、サステナビリティ委員会または分科会で検討のうえ、役付執行役員を中心に構成される戦略会議で審議、取締役会で決議を行います。

・サステナビリティ基本方針の策定、改訂

・マテリアリティの特定、変更

・サステナビリティ目標の策定、変更

・その他、サステナビリティに関する重要な事項

 サステナビリティ委員長またはその指名する者は、定期的に取締役会において、サステナビリティ委員会の活動計画及び活動実績について報告を行っています。

 また、統合報告書の開示に関しては、投資家を中心としたステークホルダーへの説明責任を適切に果たすため、企画と最終的な開示の二段階おいて、サステナビリティ委員会が内容の承認に関与します。加えて、企画・制作・開示のすべての段階にわたって、承認プロセスが適切であるかどうかを内部監査部門がモニタリングをします。

 サステナビリティ推進体制

※「サステナビリティ基本方針」

 ミシンの修理業から始まったブラザーは、働きたい人に仕事をつくるために輸入産業を輸出産業にするという志のもと、ミシンの生産を始めました。壊れにくい国産ミシンを作ろうという思いは、お客様を第一に考える“At your side.”の精神として、すべての活動の礎である「ブラザーグループ グローバル憲章」に受け継がれ、お客様への価値提供を増大させ、そこから生まれる成果をステークホルダーや地球環境への貢献に活かすことで企業価値を高めてきました。

 ブラザーグループはこれからも、お客様の課題、ひいては社会の課題に向き合い、取り組むべきマテリアリティ(重要社会課題)を定め、解決することで、「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」というビジョン「At your side 2030」の実現、及び国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を目指してまいります。

 ②戦略

 ブラザーグループは、“At your side.”の精神のもと、持続的なお客様への価値提供と、事業を通じた社会課題の解決を図るべく、サステナビリティを重視した経営を実践しています。

 私たちは、ブラザーグループビジョン「At your side 2030」において、当社グループのあり続けたい姿を「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」と定めています。このビジョンからバックキャストする形で策定・スタートした中期戦略「CS B2024」においては、サステナビリティへの貢献を最重要な経営課題と位置付け、当社グループとして初めてマテリアリティを特定し、それらを解決するための2024年度までの目標を設定しました。

 ③リスク管理

 ブラザーグループは、グループの経営に大きな影響を与える恐れのあるリスクを低減することを目的として、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、「ブラザーグループリスク管理規程」に基づく総合的なリスク管理体制を定めています。当社グループの各組織及び各子会社はリスクとその発生可能性を把握し、影響の軽減または回避策の実施などのリスク管理に努め、その実施状況については定期的に取締役会に報告を行う体制をとっています。コンプライアンス・製品安全・輸出管理・情報管理・環境法規・安全衛生・防災・サプライチェーンに関するリスクを常に認識し対応することに加え、危機発生時の事業継続の強化や永続可能な価値創造の仕組みの見直しなど、従来以上に中長期的かつ戦略的な観点でリスクを認識し対応していくことを目指します。(詳細な内容に関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 5)内部統制システムの整備の状況 3.リスク管理体制」を、具体的なリスクの内容、対応策に関しては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。)

 また、2030年に向けて、ブラザーグループを取り巻く事業環境の変化を踏まえながら、ブラザーの存在意義と社会への提供価値を示した、ブラザーグループビジョン「At your side 2030」を策定しました。ビジョン達成に向けた重要社会課題として、SDGsを起点に洗い出した項目に対し、社会及び自社にとっての重要性を評価。外部識者からの意見なども踏まえ、戦略会議や取締役会での議論を経て、5つのマテリアリティを特定しました。

 2022年度には、サステナビリティの推進とリスク管理を目的に、リスク管理委員会と同じく代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設立し、マテリアリティの解決に必要な問題を特定した上で適切な対策を決定、実行し、その進捗状況を定期的にモニタリングしています。

 今後は、サステナビリティ委員会及び各分科会において、人々の価値創出の支援、人々の多様性の尊重、バリューチェーンの人権、CO₂排出削減、資源循環などを始めとしたサステナビリティに関するリスク及び機会の識別、評価、適切な対応指示についての議論をさらに深め、対応を強化します。

 ④指標及び目標

 ブラザーグループは、「At your side 2030」達成のため特定した5つのマテリアリティ解決に向けて、「CS B2024」期間中におけるサステナビリティ目標を設定し、重要な経営課題として活動を推進しています。

マテリアリティ

2024年度目標

社会の発展

・人々の価値創出の支援

・産業機器事業におけるお客様の生産性向上、
CO₂排出削減に貢献するための製品性能の優位性確保

・P&S事業におけるお客様のLTV*1向上に向けたお客様と直接「つながる」ための基盤の構築

・多様な人々が活躍できる
社会の実現

・グローバルベースでの従業員エンゲージメントの可視化と調査スコアの向上

・海外拠点責任者の現地登用を促進するための人財育成およびガバナンスの強化

・管理職の健全なジェンダーバランスに向けたパイプラインの強化及び多様な働き方を実現する環境整備*2

・責任あるバリューチェーンの追求

・サプライヤーに対する人権リスク評価の拡大

・RBA*3 Gold認証を取得したグループ製造拠点数 3拠点

地球の未来

・CO₂排出削減

・[スコープ1,2]*4 2015年度比47%削減
(2022~2024年度の3年間で9%を削減)

 参考)2030年度目標:2015年度比65%削減

・[スコープ3]*4 自助努力での15万t削減対策の実施

 参考)2030年度目標:2015年度比30%削減

・資源循環

・製品に投入する新規資源率 81%以下

 参考)2030年度目標:65%以下

*1 : LTV

Life Time Value(顧客生涯価値)の略称。製品・サービス利用期間全体におけるお客様にとっての価値および企業にもたらされる収益。

*2 : ブラザー工業株式会社において実施。

*3 : RBA

Responsible Business Alliance(CSRの国際的推進団体)の略称。製造業のサプライチェーンにおいて、労働環境が安全であること、労働者が敬意と尊厳を持って処遇されること、さらにその事業活動が環境に対して責任を持ち、倫理的に行われることを確実にするための基準を規定している。

*4 : スコープ 1・2・3

 温室効果ガスの排出源の区分け。スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2は他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)。

※2024年度目標の進捗に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略 ◆マテリアリティとサステナビリティ目標」をご参照下さい。

 なお、上記のうちCO₂排出削減(スコープ1,2)については、その目標達成度を役員に対する株式報酬における業績連動指標として採用しています。(詳細に関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」をご参照下さい。

(2)人的資本

◆戦略及び指標と目標

 ブラザーグループの持続的な成長のために最も重要な基盤は、人財です。ブラザーグループは、「多様な人々が活躍できる社会の実現」をマテリアリティとして定め、2024年度目標として「従業員エンゲージメント※の向上」「海外拠点責任者の現地登用促進」「ジェンダーバランスの取れたパイプラインの強化や多様な働き方を実現する環境整備」を掲げています。中期戦略「CS B2024」で掲げた「持続可能な未来に向けた経営基盤の変革」に向けて、ブラザーグループは、自らの生産性と創造性を高め続けるとともに、従業員一人ひとりが働きやすい環境づくりを行うなど、人的資本をさらに強化するための活動を今後も推進していきます。

※ 従業員と会社が相互に対等で、互いに価値を提供しあう関係のこと

<多様性の確保についての考え方>

 ブラザーグループは、 ビジネスや市場環境に大きな変化が起こっている昨今、ますます多様な人財を確保し、多様な働き方やキャリアの形成が不可欠と考えております。

 ブラザーグループにおいては、ブラザーグループ グローバル憲章(以下、グローバル憲章)の「基本方針」に掲げた「従業員の多様性を重視し、さまざまな能力を発揮できる職場環境とチャレンジングな仕事への機会を提供する。そして、努力と成果に対しては、公正な評価と正当な報酬で応える」という考え方があり、グローバル憲章の行動規範では「常に一人ひとりの人格、多様性を尊重し、信義と尊敬を持って行動する」ことを定めております。

 ブラザーグループはこれまでも、女性、外国人、様々な職歴をもつ経験者採用者など、多様な人財の採用、管理職への登用を積極的かつ継続的に行いつつ、個々の能力を最大限に発揮できる職場環境の整備、新入社員から管理職層まで各階層教育などの取り組みを進めております。

<多様性の確保の目標・多様性の確保の状況>

(ⅰ)女性の管理職への登用

 ブラザー工業は、女性活躍推進法に基づき「女性活躍推進に関する行動計画」を策定し、2023年3月末時点で52名の上級職(管理職相当及びそれと同等の処遇を受ける専門職)数を2025年度末に60名以上にすることを目指しています。育成の視点では、性別に関わらず社員の成長を支援しておりますが、ライフイベントとキャリアの意識醸成や管理職というポジションを身近にする環境整備のため、社内の女性管理職のキャリアを紹介する座談会や有識者を招いた講演会、社外女性社員とのキャリア研修、管理職候補者に対する外部カウンセリング機会の提供等、学ぶ機会を提供しております。2022年9月に実施した「女性リーダー研修」には24人が参加しました。他にも、育児・介護を目的にした在宅勤務制度、職場復帰を控えた育児休職中社員向けの復職セミナー等、安心して働ける環境を整備しております。

(ⅱ)外国人の管理職への登用

 ブラザー工業は、事業の中核を担う人財確保のために、国籍に関係なく採用・登用を行っております。2023年3月末時点の外国籍社員比率は1.6%、管理職比率は0.4%となっております。また、当社の執行役員に占める外国籍社員比率は2022年3月末時点で10.0%、2023年3月末時点で10.5%です。各国・地域のグループ会社の幹部社員は、国籍を問わず適任者を登用し、地域に密着した経営を目指すこととし、統括拠点であるアメリカ及び中国の販売会社の社長を含め、ブラザーグループの各拠点では現地スタッフを積極的に経営幹部に登用しております。海外拠点責任者の現地社員率は、2017年の55%から、2022年には69%に上昇しております。このような状況から、現在のブラザーグループにおける外国人の人財登用は十分な水準にあると認識しており、当社における外国人の管理職への登用に関する目標設定は行っておりません。

(ⅲ)経験者採用者の管理職への登用

 ブラザー工業において、2022年度の経験者採用者比率は45.5%、管理職比率は24.8%となっております。経験者採用者数は労働市場環境に左右される面もあるため、管理職への登用に関する目標設定は行っておりませんが、今後積極的に事業ポートフォリオの変革を実現していくために、外部からの専門人財の登用を積極的に行っていきたいと考えております。

<多様性の確保に向けた人財育成方針、社内環境整備方針とその状況>

 ブラザー工業は、従業員の多様性と個性を尊重し、優れた価値を提供できるグローバルな人財を育てることを多様性の確保に向けた人財育成方針としております。また、当社では、多様な人財が活躍できるための基盤づくりとして、社員が高いモチベーションを持ち、多様なキャリアパスや一人ひとりの社員がより柔軟な働き方を実現できる取り組みを進めることを、社内環境整備方針としております。

 <従業員エンゲージメントの向上>

 ブラザーグループは、ビジョン達成に向けた変革の実現と従業員のチャレンジ行動促進を目的に、マテリアリティの2024年度目標として「グローバルベースでの従業員エンゲージメントの可視化と調査スコアの向上」を掲げており、従業員と会社が対等で、価値を提供しあう関係を目指しています。ブラザー工業では従業員意識調査を2008年から毎年行っていますが、2022年度には「従業員エンゲージメント調査」を新たに実施しました。調査の結果、組織からの「成長支援」を感じ、「組織への共感」「貢献感」が高い従業員が約半数を占めており、全体としてエンゲージメントが高い状態であるといえることがわかりました。今後も「ブラザーグループ グローバル憲章」の共有活動などと並行して、一人ひとりの目標設定の質を高める取り組みや、自律的なキャリア開発を促進する取り組みを実施するほか、グローバルでのエンゲージメント調査を進めるなど、ブラザーグループ全体でのエンゲージメント向上を図る予定です。

<健康経営の推進>

 ブラザーグループは、従業員が長期にわたり才能とスキルを発揮するためには、一人ひとりの健康管理が重要であると考えています。ブラザー工業は2016年9月に、ブラザーグループ健康経営理念を制定、従業員が生き生きとさまざまな能力を発揮するために、喫煙率10%未満やがん検診二次検査の受診率90%以上など2025年までに達成すべき長期目標「健康ブラザー2025」を定めました。そして、ブラザー工業の代表取締役社長を最高健康責任者とした健康経営推進体制を構築し、会社・労働組合・健康保険組合が三位一体となり、運動習慣者比率をさらに向上させる取り組みなどを進めています。また、健康経営における課題とその解決に向けた取り組みなど一連の流れを可視化できる健康経営戦略マップを作成するなど、従業員の健康保持・増進に戦略的に取り組んでいます。その結果、ブラザー工業は2022年、累計6度目となる健康経営優良法人に選定されました。

(3)環境への取り組み

◆ブラザーグループ 環境ビジョン2050

 エネルギーや資源を使用し、紙や糸、布などの生物由来の物を使用する製品を提供する企業として、CO₂排出削減、資源循環、生物多様性保全を3本柱とする「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を2018年に策定しています。この環境ビジョンは、気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組むことを明確にしたものです。その後2022年に、加速する持続可能な社会に向けた動きを見据えたCO₂排出削減と資源循環の目標見直しを行い、現在の形となりました。

※21年度までのCO₂排出量の実績

※21年度までのCO₂排出量の実績

◆TCFDへの対応

 ブラザーグループは社会の発展と地球の未来に貢献するため、解決すべき重要な社会課題の一つとしてCO₂排出削減をマテリアリティに特定し、サステナビリティ目標としてCO₂排出削減目標を設定しています。2020年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。

 このTCFD提言に基づき、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業、マシナリー事業及び新規事業について、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会を分析し、関連する情報を2021年度に開示しました。今後は分析対象とする事業範囲を拡大し、情報開示の充足に努めるとともに、脱炭素社会の形成に貢献するため、より一層の気候変動対策を推進していきます。

①ガバナンス

 ブラザーグループは「(1)サステナビリティ ①ガバナンス」及び「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」で記載の取締役会、戦略会議、サステナビリティ委員会を設置しております。気候変動を含む環境分野のサステナビリティ活動の推進においては気候変動対応分科会を設置し、分科会活動を統括する者として、環境担当役員が分科会オーナーに就いています。また、気候変動に関わる目標の達成度と役員報酬を連動させることで実効性のある取り組みをしています。

 気候変動を含む環境関連の重要事項を策定、改訂する場合には、サステナビリティ委員会または気候変動対応分科会で検討のうえ、戦略会議で審議、取締役会で決議を行います。またサステナビリティ委員長またはその指名する者は、定期的にサステナビリティ委員会及び取締役会において、サステナビリティ委員会の活動計画及び活動実績について報告を行っています。気候変動対応分科会においては気候変動を含む環境分野のサステナビリティ目標の進捗管理及び活動推進を行っています。

②戦略(シナリオ分析)

 ブラザーグループは、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」でCO₂排出削減を重要項目の一つに掲げています。世界的に深刻化する気候変動を社会的な重要課題と認識するとともに、ブラザーグループの事業上のリスクと機会として捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組んでいます。

 2020年度はTCFD提言に基づき、主要な事業について2020年現在から将来までの間に事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。それぞれのリスクと機会に対して、『世界で温暖化対策が進み、脱炭素社会の実現に近づくという1.5℃シナリオ』と『世界で現状を上回る温暖化対策がとられず、気温上昇がさらに進むという4.0℃シナリオ』に基づき、7つの重要なリスクと機会を特定し、自社の事業や財務に及ぼす影響を評価しました。

 1.5℃シナリオ及び4.0℃シナリオではIEA(International Energy Agency)のSDS(持続可能な開発シナリオ)、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のRCP8.5シナリオ、Aqueduct(水リスク評価ツール)などを参照しました。

 今回の分析の結果、リスク、機会の両面において、ブラザーグループにとってカーボンニュートラルの推進、特にサーキュラーエコノミー対応の推進が重要である事が判明しました。今後はさらなるCO₂排出削減活動や循環型ビジネスの拡大などの取り組みを強化していきます。

*1

■事業所におけるCO₂排出削減の取り組み

 ブラザーグループは一丸となって、持続的発展が可能な社会の構築に向けて環境への取り組みを強化しています。

 事業所内の省エネルギー活動(高効率機器の導入など)の推進、再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。これらのCO₂排出削減の取り組みに加え、残りの排出量をカーボンクレジットで相殺したことにより、ブラザーグループの二つの製造拠点(BROTHER INDUSTRIES (U.K.) LTD.とBROTHER INDUSTRIES (SLOVAKIA) s.r.o)が、PAS 2060※規格の基準を満たしていると判断され、カーボンニュートラル企業として認定されています。

※ Publicly Available Specification 2060:カーボンニュートラルを実現していることを証明する国際的な規格

*2

■製品におけるCO₂排出削減の取り組み

 製品において製品のライフサイクルのステージごとの工夫の積み重ねや技術革新を組み合わせることにより、CO₂排出の削減に取り組んでいます。

<インクジェットプリンター>

 従来カートリッジの機能をよりシンプルに再構築し、部品点数を削減するとともにインク貯蔵部の容積効率を向上させることで、従来カートリッジと比べ、インクの大容量化を実現しています。カートリッジの交換頻度が減ることで、カートリッジの廃棄や梱包材の使用削減につながり、CO₂排出削減に貢献しています。

<ガーメントプリンターGTXproシリーズ>

 消耗品インクを従来のカートリッジ交換方式からパウチ交換方式やボトル供給方式に切り替えることで、消耗品のプラスチックや梱包材の削減を実現し、CO₂排出削減に貢献しています。

*3 *5

■内燃機関から電気自動車(EV)への転換に対する取り組み

 需要が増加しているEV向け部品で求められる大型のアルミ部品(インバーターケース、バッテリーケース、ポンプハウジング、大型バルブなど)や、さまざまな加工ニーズに応えることができる製品“SPEEDIO”シリーズを開発することで、EV部品加工ソリューションを提供し、自動車産業が内燃機関からEVにシフトする際のリスクと機会の両面に対応しています。

 “SPEEDIO”シリーズでは、工具交換や非切削時の時間短縮によるサイクルタイムの削減、高効率主軸モータや電源回生システムによる動作時の消費電力削減、自動消灯機能による非動作時の消費電力削減などにより高い生産性と省エネ性を実現し、EV部品加工時のCO₂排出削減に貢献しています。

*4 *6

■サーキュラーエコノミーへの取り組み

 ブラザーグループは製品における廃棄物の削減、新規資源の投入抑制に加え、循環経済型ビジネスの実現・拡大に向けて「プリンターの消耗品カートリッジの回収・リサイクルの拡大」、「製品のリユース促進」、「サブスクリプションサービス等のお客様とつながり続けるビジネスの拡大」の三つをリスクと機会の両面における主要な取り組みとして位置づけ、資源の有効利用、資源循環のさらなる推進を通じて、CO排出削減に貢献しています。

<トナーカートリッジのリサイクル>

 回収された使用済みトナーカートリッジは、ブラザーグループの再生拠点で新製品と同一品質を持つトナーカートリッジへとリサイクルされ、再び、お客様に届けられます。このように「クローズドループ」でリサイクルを行うことによって、廃棄物の削減による天然資源の有効利用につながり、CO排出削減に貢献しています。

③リスク管理

 気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」にて長期的かつ継続的にその解決に取り組むことを明確にしています。

 ブラザーグループでは、2022年度に気候変動対応を含むサステナビリティの推進とリスク管理を目的に、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設立し、マテリアリティとして特定された気候変動リスクを識別、評価し、適切な対応指示を行っています。サステナビリティ委員会の下部組織として設けられた気候変動対応分科会で、気候変動などの重要な問題を特定し、適切な対策を決定し、実行しています。さらに、気候変動対策としての野心的な目標を設定し、進捗状況を定期的にモニタリングしています。

④指標と目標

 「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO₂排出削減では、2050年度までにあらゆる事業活動のカーボンニュートラル※と、バリューチェーン全体のCO₂排出最小化を目指すことを掲げています。また、そのマイルストーンとなる「2030年度 中期目標」では、2030年度までにブラザーグループから排出するCO₂(スコープ1・2)を2015年度比で65%削減、バリューチェーンの中でも特に排出量の多い製品の調達・使用・廃棄の各ステージで排出されるCO₂(スコープ3のC1・11・12)を2015年度比で30%削減することを目標としています。

 このCO₂排出削減に関する「2030年度中期目標」は、国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)による「1.5℃目標」の認定を取得しています。

 また、同じく「ブラザーグループ環境ビジョン2050」の資源循環では2050年に向けて、ブラザーグループは、資源循環の最大化により、資源の持続可能な利用と廃棄物による環境負荷の最小化を目指すことを掲げています。

 そのマイルストーンとなる「2030年度 中期目標」では循環経済型ビジネスの拡大と資源の再生利用により、2030年度までに製品に投入する新規資源率を65%以下とすることを目標として掲げています。

 さらに「2030年度 中期目標」達成に向けたマイルストーンとして「ブラザーグループ中期環境行動計画2024」において2024年を目標年度とする短期目標を設定し、活動を推進しています。

※ ブラザーグループから排出するCO₂を全体としてゼロにする

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