住友重機械工業 【東証プライム:6302】「機械」 へ投稿
企業概要
事業を取り巻く経済環境は依然として複雑に変化しており、厳しさが継続しております。withコロナからポストコロナ社会へシフトし、経済活動はパンデミック前に戻りつつあるものの、原材料不足による部品の価格高騰や供給遅延は終焉に至っておりません。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰や物価上昇などは、一旦落ち着いたもののいまだにリスクをはらんでおります。海外においては、米国経済は比較的堅調であるものの、欧州における景気後退の懸念、中国経済の回復遅れ及びその世界経済への影響、中東及び東アジアでの地政学上のリスクなど、不透明な状況が続いております。
(1) 会社の経営の基本方針
住友重機械グループは、1888年(明治21年)、住友グループの祖業である別子銅山の工作方として創業以来、社会と産業の発展とともに歩んできました。住友グループ各社に共通の理念と位置付けられる「住友の事業精神」は、社会性が重要視される現在の環境との親和性も高く、当社グループにとっても経営の基本であり、この精神に則り企業活動を実践していきます。
また当社グループは、住友の事業精神のもと、従来の経営理念(企業使命+私たちの価値観)に加え、このたび企業の存在意義となるパーパスを次のとおり制定し、理念体系を整備いたしました。
パーパス
こだわりの心と、共に先を見据える力で、人と社会を優しさで満たします
Enhance society and those within it with compassion through our ownership and vision
当社グループはこれら理念に則り、製品及びサービスのさらなる深化を図り、顧客の声に応え続けるとともに、持続可能な社会実現に向けて、イノベーションにより社会課題解決へのソリューションとなる製品及びサービスを提供していくことで、社会価値および企業価値の拡大に引き続き取り組んでいきます。
(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題
①「中期経営計画2023」の総括
「中期経営計画2023」は、2030年の長期目標に向けた基礎固めの期間と位置付け、その大きな狙いの一つとして、企業価値と社会価値の両立を目指し、社会課題の解決にも取り組んでまいりました。売上は、建機関連の拡大などにより最終年度は計画目標を達成しましたが、受注は半導体やエネルギー関連の需要の減少により、また、営業利益は原材料費や調達品の価格状況やサプライチェーン混乱などの影響から、計画目標を達成することはできませんでした。しかしながら、厳しい外部環境のもとでも、セグメントの組替え、重要領域での製品開発など、長期的な成長に向けた準備を進めてまいりました。セグメントの組替えでは、新規事業を探索する「探索力の強化・追求」と、コアコンピタンスの結合やシナジーを発揮する「新たな深化力の獲得」を課題として掲げ、事業の共通の方向性や軸で事業ポートフォリオを見直し、メカトロニクスセグメント、インダストリアル マシナリーセグメント、ロジスティックス&コンストラクションセグメント及びエネルギー&ライフラインセグメントとして再編いたしました。複雑化する事業環境のもとで、将来の成長を目指し、既存事業体の枠を越えて相互のシナジーを発揮させ、新しい事業を創出してまいりました。
一方、関連するサステナビリティの取組みについては、社会価値の向上を目指し、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)のそれぞれの項目で課題を設定し、その課題に対する取組みを実施してまいりました。環境(E)では、2021年にTCFD*の提言に賛同し、2030年CO2排出量削減目標及び2050年カーボンニュートラル目標を設定いたしました。社会(S)では、人権方針策定、LGBT対応強化などジェンダー・ダイバーシティを推進し、働きやすい会社への変革を進めてまいりました。ガバナンス(G)では、取締役会の実効性強化につながる取組みに注力し、コーポレート・ガバナンスの充実・強化を行ってまいりました。
これらの施策を長期目標へ向けて、成果として結実させるべく、「中期経営計画2026」を策定いたしました。
②「中期経営計画2026」の概要、今後の施策等
「中期経営計画2026」は、「中期経営計画2023」よりつながる、「あるべき姿」からバックキャストして社会課題を導き、「製品・サービスによる社会課題解決を通じて持続的に企業価値を拡大する」という方針を継続しつつ、新たにパーパスを策定し、当社グループとして何を目指していくのかを共通認識として持つ、大事な道標といたしました。2030年の「あるべき姿」を「コア技術で豊かな社会を支え、CSV**を実現する企業」とし、成長力、収益力、信用力といった「企業価値」と、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点で示される「社会価値」をバランスさせ、環境に左右されない、変化に強い、「強靭な事業体の構築」を基本方針としております。本基本方針のもと、「収益力の改善」、「資本効率の向上」、「新事業探索の強化」を重点課題と位置付け、コーポレートとセグメントの両面から遂行する基本戦略とし、「深化による稼ぐ力の強化、利益にこだわる経営」、「ROIC経営の徹底」及び「探索による事業機会の発掘」を推進してまいります。〔図1〕
「中期経営計画2026」では、2026年度に売上高12,500億円、営業利益1,000億円、ROIC8.0%を達成することを財務目標とし、併せて、非財務目標としてESGの各項目に分類したサステナビリティ重要課題(E:環境負荷の低減、S:よりよい暮らし・働き方の実現、従業員の安全・健康・育成、地域との共存・共栄、持続可能なサプライチェーンの構築、G:ガバナンスの強化、製品品質の確保)の各目標値を設定しております。
コーポレート戦略
a.事業ポートフォリオ改革の推進〔図2〕
成長を見込む重点領域事業へ経営資源を集中し事業の拡大を図り、事業ポートフォリオ改革を推進してまいります。当社グループ製品を支える技術が多岐にわたるなかで、外部環境や当社グループの強みを踏まえて、コア技術をベースに、「ロボティクス・自動化」分野、「半導体」分野、「先端医療機器」分野及び「環境・エネルギー」分野の4つの「重点投資領域」を設けました。これらの「重点投資領域」へ、「中期経営計画2023」を上回る積極的な投資を行うことで、事業を伸長し新たな価値創造と企業価値向上を目指してまいります。
b.資本政策
「中期経営計画2026」ではROIC向上施策の推進によりキャッシュ・フロー創出力を強化するとともに、財務の健全性を損なわない範囲で有利子負債も活用し、重点投資領域を中心に投資へ1,900億円、研究開発費へ900億円、株主の皆様へ800億円の還元を計画しております。
今後の還元は中長期的にDOE***3.5%以上、最低配当125円、自社株買いを含めた総還元性向40%以上を基本方針とし、一層の充実に努めてまいります。2024年度は1株当たり配当予想を5円増配の125円とし、さらに100億円の自社株買い実施を決定しました。
「中期経営計画2026」の期間中はDOE3.5%への向上と自社株買いの継続で、総還元性向は50%以上の水準を想定しております。
c.新事業探索の強化
2023年に設置した新事業探索室を中心に、4つのセグメント及び本社部門と連携をとりながら、セグメントをまたぐ横断的な探索テーマの調整と推進、コーポレート視点でのテーマ発掘と事業化推進を行ってまいります。また、将来の当社グループを支える社内企業家人材の育成についても取り組む計画としております。
d.経営基盤強化
「中期経営計画2026」では、上記の取組みを支える経営基盤(サステナビリティ、人的資本、DX****)の強化を進めてまいります。
サステナビリティでは、SDGs、当社グループの2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた対応を強化し、社会環境変化のリスクをチャンスへ変えて、企業価値向上を目指してまいります。具体的には、機械メーカーに対応が求められるサステナビリティ課題を抽出し、7つの重要課題を特定して、事業を通じた社会課題解決への貢献や、気候変動リスクをはじめとする中長期的なリスクへの対応に取り組んでまいります。
人的資本では、「人材育成基盤の強化」と「組織能力の強化」が事業の持続的成長を支えるとの人的資本経営の考え方のもと、人材確保、人材育成基盤の強化、グローバル人材マネジメントの基盤整備、組織能力強化、ダイバーシティ推進を重点課題と位置付け、人材戦略を遂行してまいります。
DXでは、デジタライゼーションを継続し、強靭な事業体実現を支えるDX推進基盤を構築してまいります。同時に、新たな顧客価値を創出する、一流の商品・サービスづくり及び設計・製造バリューチェーンなどの業務プロセスの変革を加速いたします。また、SDGs実現に向けて、環境・安全対策に取り組み、社会課題の解決を推進してまいります。
セグメント戦略
「中期経営計画2026」では、メカトロニクスセグメント、インダストリアル マシナリーセグメント、ロジスティックス&コンストラクションセグメント及びエネルギー&ライフラインセグメントのそれぞれの役割を以下のように位置付け、セグメント毎にROIC目標を設定し、成長戦略を遂行する計画としております。
メカトロニクス : 高収益で成長牽引セグメント
インダストリアル マシナリー : 高収益で成長牽引セグメント
ロジスティックス&コンストラクション : 安定収益を確保する基盤セグメント
エネルギー&ライフライン : 将来成長のための育成セグメント
各セグメントは、コーポレート戦略で設定された「重点投資領域」の4つの分野を踏まえ、深化による稼ぐ力の強化、探索による事業機会の発掘を行ってまいります。メカトロニクスセグメントは「ロボティクス・自動化」と「半導体」分野、インダストリアル マシナリーセグメントは「半導体」と「先端医療機器」分野、ロジスティックス&コンストラクションセグメントは「ロボティクス・自動化」分野、エネルギー&ライフラインセグメントは「環境・エネルギー」分野を軸に実行してまいります。
それぞれのセグメントは、セグメント内だけにとどまらず、セグメント間でシナジーを追求しつつ、同時にセグメント組織の効率化を図り、強靭な事業体の構築を目指し、目標達成へ向けて取り組んでまいります。
「中期経営計画2026」の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載しております。
https://www.shi.co.jp/info/2024/6kgpsq000000myl5.html
*TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、G20からの要請を受けて、大手企業、信用格付機関など世界中の幅広い経済部門と金融市場のメンバーによって構成された民間主導の特別組織であり、気候変動によるリスクおよび機会が経営に与える財務的影響を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨しています。
**CSV(共有価値の創造 Creating Shared Value)とは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで自社の持続的成長につなげるという考え方です。
***DOE(株主資本配当率 Dividend on Equity Ratio)とは、年間の配当総額を株主資本で割って算出する財務指標を指します。
****DX(デジタルトランスフォーメーション Digital Transformation)とは、ITの活用により、あらゆる活動をより良い方向に変化させることを指します。
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