企業兼大株主DMG森精機東証プライム:6141】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機、アディティブ・マニュファクチャリング機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。

(2) 経営戦略及び経営環境

2024年の連結受注高は、2023年比4.6%減の4,960億円となりました。第3四半期(7-9月)、第4四半期(10-12月)の連結受注高がボトムだと考えています。機械の受注台数は、20%減となりましたが、平均単価が71百万円/ 433千ユーロ(2023年度:62百万円/ 407千ユーロ)へ上昇しました。工程集約、自動化、GX(グリーン・トランスフォーメーション)をデジタルで管理・効率化するMX(マシニング・トランスフォーメーション)が値引率の低下も含め単価上昇に寄与しています。スペアパーツ、メンテナンス・リペア・オーバーホール、エンジニアリング事業は7%増となり、連結受注高に占める構成比は25%(2023年度:22%)へ上昇しました。地域別の受注は、アジア・インドが伸長し、米州が横這い、日本、欧州、中国は減少しました。業種別には、航空、宇宙、メディカル、金型、エネルギー関連が好調でした。2024年12月末の機械受注残高は2,180億円(2023年12月:2,470億円)へ減少しました。

2025年は連結受注高を7%増の5,300億円と予想しています。機械の受注高は、現在の水準を底にして2025年度後半から回復することを期待しています。宇宙、航空、メディカル、エネルギー産業からの需要は好調に推移する見込みです。半導体製造装置産業からの需要は、2025年度後半から増加に転じることを期待しています。

 工作機械産業は、需要サイクルによる影響を受けます。従来の3カ年の時間軸での事業計画では、需要サイクルの影響を避けられないことから、2022年12月に公表した「中期経営計画2025」を2030年目標に移行することといたしました。20年以上工作機械を使用するお客様の視点に立ち、2030年までという5年の時間軸の中で2030年目標を設定いたします。当社は、国内外の複数の企業が供給するNC装置を使いこなし、多企業の周辺装置をDMG MORIの工作機械との接続に最適なDMQP(DMG MORI Qualified Products)として推奨しています。そして、これらの要素をデジタル技術により加工工程の最適化を図るMXを推進しています。このMXをお客様に理解していただいた上で、安心して機械・自動化システムを使用していただくための直販・直メンテナンス・リペア・オーバーホール体制は当社の大きな強みになっています。2030年目標では戦略の中核をなすMX推進に向けて社内体質の強化を図り、目指すべき業績・財務構造の達成を実現したいと考えています。MX推進に向けての設備投資は一段落しており、2030年に向けては投資の回収期、収益率の改善期と位置付けています。2030年には、DMG MORIのオーガニック資源(現在の経営戦略・自社経営資源)をベースに、売上収益8,000億円、営業利益1,200億円(営業利益率15%)、当期利益800億円(当期利益率10%)を目指します。売上収益の成長は、MX推進による機械単価の上昇と、スペアパーツ、メンテナンス・リペア・オーバーホール、エンジ二アリング事業の拡大が貢献する予定です。収益率の改善により、フリーキャッシュフローの最大化を図り、そのフリーキャッシュフローにより財務体質の強化と株主還元として増配の継続に努めて参ります。財務体質については、総資産回転率1回転程度、ハイブリッド資本を除く株主資本比率50%以上を目標にします。外部資金を利用する管理指標として、Net Debt/Equity比率(純有利子負債株主資本比率)を0.3程度とし、純有利子負債残高を1,000億円程度とします。この収益及び財務構造をベースにROE(株主資本当期利益率)15%を計画しています。

 また、当社は業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、持続可能な社会を目指し、サステナビリティへの取り組みを強化しております。環境面においては、2023年より稼働している自家消費型太陽光発電システムが、3月に伊賀事業所で第2期(約5,200kW)、奈良事業所で第1期(約354kW)の発電を開始し、今後の発電ターム開始後には各事業所の年間電力需要量の約30%を賄います。さらに、6月には当社およびグループ会社のドイツDMG MORI AKTIENGESELLSCHAFTが、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の目標において、国際的な環境団体のSBTイニシアチブから認定を取得しました。これら、当社の温室効果ガス排出削減に向けた取り組みや実績が高く評価され、2025年2月に国際環境非営利団体CDPによる調査「CDP2024」において、気候変動分野で最高評価の「Aリスト企業」に認定されました。

 人的資本経営の面では、2021年に「DMG森精機健康経営宣言」*を発表し、2025年3月には経済産業省と日本健康会議により、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する「健康経営優良法人 2025」の大規模法人部門「ホワイト 500」に3年連続で認定されました。加えて、健康経営に優れた上場企業として、経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄 2025」にも2年連続で選定されました。

 コーポレート・ガバナンスにおいては、引き続き取締役の多様性を強化しております。2025年3月27日開催の株主総会での承認により、取締役会の構成は、取締役12名中、社外取締役が5名(構成比:42%)、女性取締役が3名(同:25%)、外国人取締役が3名(同:25%)となっております。取締役会及び執行役員会において、より多様な意見を反映させ、企業価値向上につながることを期待しております。

 以上のように、顧客価値創造と社会との共生を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。

* 『健康経営』は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

(3) 目標とする経営指標

 需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。

2030年目標に向け、来期は連結受注高5,300億円、売上収益5,100億円、営業利益380億円(営業利益率:7.5%)、当期利益200億円(当期利益率:3.9%)を、それぞれ計画しております。当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。

(4) 優先的に対処すべき課題

①製品開発

 当社が推進するMXは、高精度な5軸マシニングセンタや複合加工機により、ワンチャッキングでワークピースの5面もしくは6面を加工し、自由曲面加工、ギヤ加工、研削加工、そして付加加工なども実現します。さらに加工物を高精度に機上で計測することにより、従来複数台の工作機械で製作していたプロセスを1台の機械に工程集約します。機械台数が少なくなることで自動化が容易になり、オペレーターをワークピースの脱着作業という、単純な重労働から解放します。これを実現するためには複合加工機にロボットを取り付けるだけでなく、切りくずの除去作業、工具の監視や交換作業、ワークの精度測定さらに補正の作業、機械の稼働監視などをセンシング、モニタリング機能などのDX(デジタル・トランスフォーメーション)のサポートにより自動化することが必要です。この取り組みにより世界中で稼働していると予想される500万台の従来機を100万台のMXシステムに置き換えることを当社のミッションとしています。

 MXを導入することで人手不足の解消、省エネ、省スペース、仕掛品の削減が可能となり、GXを実現します。高精度の5軸加工機、複合加工機による部品の複合化や部品精度の向上も達成されます。高精度、高品質、高機能の工作機械、自動化などの周辺機器、工具・クーラントなどの消耗品、システム構築、立上も含めたエンジニアリング、そしてサービスをワンストップでライフサイクルに渡って提供します。

 MXを実現するにはDXが最も重要となり、非常に開発工数のかかる課題です。当社では日独のソフトウェアエンジニアが数年間注力し、ERGOline X with CELOS Xを開発しました。ERGOlineは工作機械のヒューマンマシンインタフェース(HMI)のハードウェアで、搭載されるソフトウェアCELOSと合わせDMG MORIの顔として、日独共通の操作システムをお客様に提供しています。工作機械のHMIは非常に重要な役割を果たしています。DMG MORIでは複数メーカーの制御装置を機械特性やお客様の要望に合わせて使い分けています。CELOS Xにより各メーカーの制御装置の特徴を生かしながら、共通のソフトウェアとしてHMIだけではなく、自動化システムソフトウェア、シミュレーション、独自のテクノロジーサイクルをはじめとするプログラム作成支援、加工状況や工具のモニタリング、機上計測、そしてAIを積極的に応用して工作機械や周辺装置に組み込みMXの高度化を推進しています。

 CELOS Xの大きな特徴としてオンラインアップデートがあります。工作機械は約20年の長期間に渡りお客様の工場で使用されます。お客様が製品を導入した時点では最新であっても使用を続けるうちにソフトウェアモデルは更新され最新機との性能差が出ていました。今後はオンラインアップデートにより常に最新のソフトウェアに進化するメリットを得ることができます。これらのソフトウェアは概ね年に2回程度の頻度で更新されます。例えば新しいテクノロジーサイクルにより、これまで専用機でしか実現できなかった加工がDMG MORIの5軸加工機や複合加工機で実現できるようになり、それを既存の納入機にオンラインで導入しお試し加工ができるようになるのです。DMG MORIはソフトウェアの開発を最優先で進めています。

 また2024年はMXを実現するための加工機として19機種をリリースし、自動化、ソフトウェア、機械コンポーネンツ、省エネ機能など33機能をリリースしています。2025年にはこれを上回る、25機種、38機能を開発する所存です。グローバル生産・販売を大規模で実現することで、日本とドイツを中心に強力な開発組織を維持・発展を可能にしています。

②品質

 当社が提唱するMXは多軸の加工機に自動化周辺機器とそれを支えるためのDXの仕組みが含まれており、従来の単体機よりも複雑で高度な技術が含まれています。無人・省人での長時間連続運転を行うため機械が停止した時の損失が大きくなることから、機械の安定稼働と連続運転を行いながら精度を維持すること、すなわち高い品質が非常に重要です。品質本部ではMX製品の品質を担保するため、これまで以上に高いレベルの取り組みを実施中です。

 当社の品質の取り組みとして最も重要で広く使用されているものが1996年に開始した製品プロブレムレポート(以降PPRと呼びます)です。お客様で発生した製品品質に関するプロブレムを従来は担当部署間が電話等で対応していましたが、それをすべてワークフロー化し、さらに2000年にはデジタル化し、問題発生から対策、設計変更、製造方法変更などによる品質改善、効果の確認、横展開までを見える化し改善を実施してきました。このデータを20年以上も継続して活用してきたことで、品質部門・開発部門では製品の品質モニタとして利用し製品の改善改良を図っており、修理復旧部門では類似の不具合から原因を特定するための重要参考資料として利用しています。

 2024年は製造と品質保証が協力して納入直後のPPRの撲滅に取り組み、目に見える効果が出始めました。同様に開発でも納入直後の不具合削減に取り組んでおり、これも成果が出始めています。また製品検査のデジタル化を予定通り完了しました。当社では製造工程のデジタル化にはアプリ作成のプラットフォームとしてTULIPを用いており、TULIPで作成したデジタルチェックシートを100%用いることで手書き工程や人間による目視の合否判断を撲滅し、デジタル測定器で取得したデータを自動取り込みすることでヒューマンエラーを撲滅する所存です。TQM手法を用いて改善活動を続けたことが認知され2024年のデミング賞受賞にも貢献しました。当社では顧客要求に合わせて最適なシステムを提供するため、かなりの割合で要求仕様に合わせた特別設計が含まれます。すなわち多くのカスタマイズされた製品が日常的に生産されており、カスタマイズに合わせた検証と評価が実施されています。このようなケースでTQM活動を実践しデミング賞を受賞した例はあまりないと評価いただきました。

 品質向上の取り組みは日本工場がリードしながら、日本だけでなく欧州、米国、中国の各工場にも展開をしており、出荷前の検査、ソフトウェアの品質強化、カスタマイズ品の検証など重要な共通テーマに取り組んで高い顧客満足を得るためのチャレンジを続けています。

 DMGMORIでは高度なMXを最高の品質でお客様に提供し、効率よい生産を実現することでGXに貢献いたします。

③安全保障貿易管理

 2024年も前年同様、世界各地で紛争が続くなど情勢は混とんとしており、こうした環境に対応するために、各国が軍事防衛力を強化する方向に向かっております。

 そのため、以前にも増して軍事関連事業を行う企業や軍事目的と思われる引合いも増えてきており、軍事転用可能な高性能工作機械を製造・販売している当社グループとしても、今まで以上に身を引き締めて厳格な輸出管理を行うべく、日々努めております。

 具体的には、2006年10月から日本製造機に搭載を始めた移設検知装置(不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できないようにする装置)搭載の工作機械を欧州製造機にまで広げ、2023年12月までに全世界で製造する工作機械に対してこの装置を搭載し、厳格な管理をする体制を整えることができました。これにより、以前より増して、事前連絡のない転売等による不正使用や軍事用途への使用を未然に防ぐことができるようになりました。

 また、2023年はドイツDMG MORI AG社の輸出管理審査運用を日本側で行うように変え、グループとして統一の基準・判断・管理を行うように改善しましたが、今年2024年については海外生産拠点及び海外販社への訪問監査を行い、実務上の問題点の改善指導をするなど、厳格な輸出管理体制の維持のために動いてきました。同時に2024年から当社グループとなったDMG MORI Precision Boring株式会社(旧 倉敷機械株式会社)をはじめ、日本国内のグループ会社にも研修を行うなど、グループ全体の輸出管理意識の向上のための活動も行いました。

 現在の混とんとした世界情勢のなか、世界各国でグローバルに製造・販売をする当社グループは、今まで以上に、各国の法令順守、販売先管理、技術管理が必要となりますが、たゆまぬ努力を続け、お客様をはじめとしたステークホルダーの皆様に安心していただけるよう、引き続き厳格な輸出管理体制の維持・強化を、重点課題として取り組んでまいります。

④法令遵守

 経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、コンプライアンスに関する問題の予防、早期発見・対策のため、2020年より多言語対応の通報窓口を設置し、海外グループ企業も含めたグローバルでのコンプライアンス体制を強化、さらに2024年からは全・国内子会社に対して外部のハラスメント相談窓口の利用を可能といたしました。以上のほか、内部監査部を主管部署とした定期的な法令遵守活動のモニタリングも継続しております。

 勤務間インターバル制度については、当社では2018年より導入し、2020年度からは在社時間の制限を原則10時間、勤務間インターバルを12時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。

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