日本インシュレーション 【東証スタンダード:5368】「ガラス・土石製品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、1914年の創業以来、保温・断熱分野で事業を展開し、さらに1966年に世界で初めて1000℃の耐熱性を有するゾノトライト系けい酸カルシウム材の製造技術を開発した後は、耐火・耐熱分野へと進出し、製品開発と用途開拓に努めてまいりました。
当社の主たる事業である保温・断熱材、耐火・耐熱材の製造販売・施工は、各々SDGs7(クリーンなエネルギーをみんなに)及びSDGs13(気候変動に具体的な対策を)、SDGs11(住み続けられるまちづくり)に貢献するものであります。すなわち当社の存在意義は、サステナブルな社会の実現に貢献することにあると考えております。
このことは1977年に定めた当社の社是(信頼を高め 付加価値を創造し 人間を豊かにする)に表現されており、すべてのステークホルダーに信頼され、独自の技術をもって新たな付加価値を持つ製品を提供することにより、広く社会に貢献する企業となることを目指しております。
(2) 経営戦略等
企業価値向上に向けた取り組みにつきましては、当社では、2021年6月に「サステナビリティ経営の推進」を基本テーマに据えた中期経営計画(対象期間:2021~2023年度。以下、前中期経営計画)を策定して開示しました。主要方策として、①脱炭素社会への実現への貢献、②レジリエントな社会実現への貢献、③ステークホルダーとのエンゲージメント深化、④ガバナンスの高度化によって、企業力の強化、企業への信頼の醸成を図ることを掲げて、方策を推進してまいりました。その実施状況につきましては、後述(P11参照)のとおりであります。
前中期経営計画の期間終了に伴い、当社では、創業110周年にあたる2024年度を始期とする中期経営計画(対象期間:2024~2026年度。以下、新中期経営計画)を策定し、その実現に向けて努めてまいります。長期的には、➀2030年までの7年間で約70億円の投資枠を設けること、②チャレンジ戦略枠を創設し、研究開発、人材育成分野を中心に社員に新事業や新規方策への挑戦を促すことを掲げております。
サステナビリティに取り組む当社の姿勢を明確にするために、これに併せて、サステナビリティ基本方針を定めました(P11参照)。
(3) 経営環境
前中期経営計画の期間における事業環境の変化として、以下のような変化が生じていると認識しております。
① 過去2年において、ウクライナ戦争に端を発する都市ガス、LNG及び電力価格の高騰により、当社製品の製造コストが著しく上昇しました。また、原材料メーカーも同様の影響を受け、原材料価格も上昇しました。これを受けて、当社では価格転嫁を実施しましたが、今後については、地政学リスクもあり不透明な状況です。
② 地球温暖化防止の観点から、プラント事業の顧客(主に電力、石油、化学、鉄鋼分野)では、燃料や原料を化石燃料から非化石燃料由来に切り替える事業構造の転換が始まっています(SAF、アンモニア燃料、ケミカルリサイクル原料への切り替え等)。一方で、従来燃料とのコスト差が大きな課題であり、商用化のスピードは不透明な部分があります。
③ わが国における少子高齢化の影響が当社の採用活動にも影響を与え、希望通りの新卒採用ができない状態が続いています。喫緊の課題として、建設2024年問題への対応も求められます。
④ 1960年に操業を開始した岐阜工場は、操業開始60年余りを経過し、安定操業を確保するための対策を検討する時期になっています。
⑤ 資本コスト経営に対する要請が強まり、企業に対して資本を十分に活用した経営を行っているかの説明責任が求められるようになっています。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としては、主に下記の8点があります。
① 市場の拡大、収益の確保
1)国内事業の拡大
国内市場につきましては、建設投資を確実に受注につなげられるよう営業力の強化を図るとともに、更なる工事管理強化による採算性の向上を図り、また、新市場の開拓及び新規商品の開発を推進します。
・建築事業においては、耐火被覆材のシェアアップ、新製品開発、既存製品の性能・機能の向上等を進めていきます。SDG'sを強く意識し、建物(物流施設、オフィス、商業施設、工場、データセンター等)の特徴に応じた提案を推進します。
・プラント事業においては、保温材のシェアアップ、建設案件の営業強化等を行っていきます。SDG'sを強く意識し、新しい需要への対応を推進します。
・生産事業部においては、エネルギー原単位とエネルギー購入コストの低減策に取り組みます。
・技術本部においては、将来の収益の一翼を担うことを目指し、カーボンニュートラル・カーボンネガティブを意識した新規商品の開発を推進します。
2)海外事業の推進
以下の対策等により海外事業の拡大を図ります。
・ベトナム工場の安定稼働を維持すべく、全力で取り組みます。
・ベトナム工場生産品の販路拡大のため、海外、とりわけ東南アジアにおける営業を、インドネシア駐在員事務所を核とし、各国の販売店と協調しながら一層強化します。
・ベトナム工場については、生産性向上のため、海外需要等の事業環境を見極めながら、段階的に増設を進めます。
・建築事業においては、市場拡大に向けてアジア地区での各国販売店との連携を推進します。
3)建築・プラントに次ぐ第三の事業の創出
環境分野(特に循環経済、廃棄物の再資源化)に焦点を当て、景気の波に左右されない強固な事業基盤の構築を目指し、第三の事業を創出していきます。
② サステナビリティ経営の推進
マテリアリティ(重要課題)を特定し、将来あるべき目標とマイルストーン(中間目標)を設定し、サステナビリティ経営を推進します。政府方針である2050年におけるカーボンニュートラルの実現に向けての取り組みを進めます。
③ 人的資本経営の推進
1)JIC版働きがい改革の推進を、経営トップの意識改革、経営戦略としての「人事戦略・方針」策定、人事施策・方針の見直し、社員との双方向の対話、を核として進めていきます。
2)「人的資本経営」の考え方に立ち、人への投資を進めていきます。
3)企業価値の向上及び社員の成長を目指し、社員の生産性向上、少数精鋭体制の確立のため、社員教育の強化、有能な人材の確保に努めてまいります。
4)健康経営の推進に一層努めてまいります。
5)次世代経営者及び次世代幹部候補者の育成に努めるとともに、女性社員、外国人、中途採用者を含めた多様な人材の育成(ダイバーシティの推進)を進めてまいります。
6)引き続き、海外生産体制並びに海外営業の強化を進め、さらにグローバル人材の確保のため、語学教育の強化、外国人の登用等を通じ、海外業務に対応できる体制を強化してまいります。
7)当社の工事分野における総合力の向上のため、協力業者の育成を図ってまいります。
④ コンプライアンスの徹底
コンプライアンスは経営の根幹をなすものであり、これまで以上に役職員に対するコンプライアンス教育を徹底する他、コンプライアンスを推進するために必要な体制の整備及びその確実な運用を図ります。2023年度においては、コンプライアンス全般、ハラスメント防止、インサイダー取引規制などについて、コンプライアンス委員会事務局より研修ツールを提供し、教育・啓蒙に努めてまいりました。また、役職員のコンプライアンスに対する意識や法令遵守状況等の実態を把握するため、「コンプライアンス意識調査」を実施しました。
2024年度においては、こうした取り組みに加え、既に設置し運用している内部通報制度・ハラスメント相談窓口制度の運用改善、人権尊重に関する教育の実施等の取り組みを行います。
反社会的勢力とは関係を一切持たない経営を推進します。
「働き方改革関連法」の本格適用を受け、時間外労働の上限規制を遵守します。
⑤ ガバナンス体制の強化
コーポレートガバナンス・コードに適切に対応しガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。
⑥ 危機管理への対応
1)当社を取り巻く様々なリスクを事前に認識し、リスクが顕在化しないよう、適切な対策を実施していきます。リスク管理委員会を年に2回、取締役会メンバー及び執行役員により開催しており、当社を取り巻く潜在的なリスクの確認やその未然防止策等について審議を行っております。また、役職員に対する教育の実施により、リスクへの意識の涵養に努めております。
2)地震や台風などの自然災害に伴うリスクに対し、適切に対応します。
3)感染症が当社事業並びに当社役職員を含む全てのステークホルダーの安全・健康に及ぼす影響を適切に見極め、対応します。
4)海外展開の推進に伴い増加するリスクに対し、適切に対応します。
5)取引先を含む人権尊重の徹底に取り組みます。
6)また、建設アスベスト損害賠償請求等の訴訟につきましては、今後とも弁護士と協議しつつ適切に対応します。
⑦ DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進
IoT、AI、RPA等の高度IT技術を活用した生産性の向上に引き続き取り組んでいくとともに、電子帳簿保存法に対応する帳票管理システムの拡張開発や、中長期的な取り組みとして基幹システムの刷新も進めてまいります。
⑧ 品質・安全維持への対応
労働災害、品質クレームゼロを目指し、日頃からの管理の徹底、発生時の原因追究及び対策実施を徹底します。
上記課題に対処し、これからも社会的責任を果たすため、コンプライアンス体制の強化を図り、事業環境の変化に対応したコーポレート・ガバナンスの一層の充実を推進し、取引先からの信頼の向上を図ります。また、技術力・開発力の強化、収益力の向上を図り、さらに企業価値を高めることにより株主からの支持を得られるよう全社を挙げ努力します。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業の成長並びに生産性向上を測定するうえで、売上高、営業利益及び配当水準を重視しております。成長性と収益性の観点から、前中期経営計画(2021年度~2023年度)を2021年6月30日に開示し、目標達成に向けての取り組みを行ってまいりました。経営成績としては、下図のとおりであり、売上高は累計で目標を達成したものの、営業利益では累計目標の82%にとどまりました。
これは、エネルギー、原材料価格の高騰に起因する製造原価、工事原価の上昇に加え、建設資材価格の高騰に伴う建築着工量の減少等の影響によるものと考えております。
前中期経営計画(2021~2023年度)の達成状況 (単位:百万円)
(連結) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||||||
計画 | 実績 | 達成率 | 計画 | 実績 | 達成率 | 計画 | 実績 | 達成率 | |
売上高 | 12,900 | 14,118 | 109.4% | 12,950 | 12,320 | 95.1% | 13,000 | 12,537 | 96.4% |
営業利益 | 1,716 | 1,861 | 108,.5% | 1,852 | 1,145 | 61.8% | 1,863 | 1,458 | 78.2% |
営業利益率 | 13.3% | 13.2% |
| 14.3% | 9.3% |
| 14.3% | 11.6% |
|
当期純利益 | 1,143 | 1,145 | 100.2% | 1,266 | 723 | 57.2% | 1,291 | 975 | 75.5% |
当期純利益率 | 8.9% | 8.1% |
| 9.8% | 5.9% |
| 9.9% | 7.8% |
|
自己資本 | 12,148 | 12,080 | 99.4% | 13,084 | 12,469 | 95.3 | 14,070 | 13,330 | 94.7% |
ROE | 9.8% | 9.8% |
| 10.0% | 5.9% |
| 9.5% | 7.6% |
|
上記前中期経営計画の達成状況とその間の経営環境の変化(P8「経営環境」参照)をふまえ、2024~2026年度を期間とする中期経営計画を策定し、推進してまいります。
次期中期経営計画では、サステナビリティ経営を推進し、社会に貢献する事業の拡大を図ってまいります。
これによって、以下を目標とします。
・ ROE 10%程度
・ PBR 1.0以上
この目標を早期に達成し、さらに高みを目指していきます。
中期経営計画(2024~2026年度)の目標 (単位:百万円)
(連結) | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 2026年度 |
実績 | 計画 | 計画 | 計画 | |
売上高 | 12,537 | 12,547 | 14,000 | 15,000 |
営業利益 | 1,458 | 1,186 | 1,550 | 1,750 |
営業利益率 | 11.6% | 9.5% | 11% | 12% |
ROE | 7.6% | 5.7% | 7.0% | 8.0% |
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