日本板硝子 【東証プライム:5202】「ガラス・土石製品」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
1.経営方針
NSGグループ経営指針「Our Vision」は以下のとおり、「使命:NSGの存在意義」、「目指す姿:NSGのなりたい姿」、「コアバリュー:働き方の基盤となる価値観」から構成されています。
当社グループは、Our Visionを経営の指針とし、お客様と社会が求める多種多様なニーズに対して従来のガラスを超えるプラスアルファの価値やサービスを迅速かつ適切に提供することにより、持続的成長可能な社会の実現を目指しています。
2.マテリアリティ
当社グループでは、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題として、以下の表の通り5項目のマテリアリティを設定しました。この5項目は、「社会にとってのインパクト」と「当社グループにとってのインパクト」を2軸に、マトリクス上で影響度を評価して重み付けを行い決定しました。
これ以外に、コーポレートガバナンス、および財務基盤の確保は会社へのインパクトが極めて強く、会社の基盤ともなるものであり、マテリアリティ選定とは別建てとして当社グループとして重点的に取り組む課題としています。
3.NSGグループの中期ビジョン
NSGグループの使命である「快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く」を実現するべく、当社グループは、進むべき方向性として、中期ビジョン「高付加価値の『ガラス製品とサービス』で社会に貢献するグローバル・ガラスメーカーとなる」ことを新たに掲げました。
これに基づいて、当社グループが「目指すべき貢献領域」として、以下の3分野を設定しています。
①快適空間の創造:快適で安全・健康な「人にやさしい生活空間」を創造する
②地球環境の保護:再生可能エネルギーの活用拡大や冷暖房負荷の軽減などを通して「地球にやさしい環境」を創造する
③情報通信分野: 人々の暮らしをより便利にし、社会の進化をささえる情報通信関連分野に貢献する
また、企業の「ありたい姿」として以下の2項目を設定しています。
・常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループであり続ける
・事業活動を通じて、従業員が「成長」し、「働く喜び」を得られる企業グループであり続ける
4.「中期ビジョン」実現のためのロードマップ
当社グループは、持続的な成長を目指せる事業体質を構築するため、2022年3月期から2024年3月期までの3年間を期間とする、新中期経営計画「リバイバル計画24(RP24)」を2021年5月13日に公表しました。
中期ビジョンの実現に向けて、ステップI(RP24、2022年3月期~2024年3月期の構造改革期)およびステップII(2025年3月期以降の持続的な成長サイクルの確立期)に分けて施策に取り組みます。RP24期間については構造改革期と位置づけ、収益構造の改革、財務基盤の回復、事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組み、抜本的・本質的な施策を完遂することを基本方針としています。
5.新中期経営計画「リバイバル計画24 (RP24) 」における施策と目標
(1)RP24の主要施策
RP24では、以下の「3つの改革」と「2つの重点施策」を断行し、持続的成長が果たせる強い事業体質を構築します。
3つの改革:
① コスト構造改革 | 本質的なコスト構造改革(人員削減、固定費削減、購買コスト削減等)に取り組み、一層のコスト低減を図る |
② 事業構造改革 | 高付加価値事業の拡大、新規成長分野の育成、投資・資産効率の重視により、成長を重視したメリハリのある事業構造への変革を図る |
③ 企業風土改革 | 「顧客重視」、「迅速な意思決定とアクション」、「困難な課題の克服」を 重視し、常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループへの変革を図る |
2つの重点施策:
① 財務基盤の回復 | ・ 成長のための投資は戦略上の中核事業に絞り、優先順位をつけて実施 ・ 徹底的なコスト見直しと生産性向上により、持続的に利益とフリー・ キャッシュ・フローを創出できる事業体質を構築 ・ フリー・キャッシュ・フローと純利益の積み増しによる自己資本の改善を 目指すとともに、中長期的視点での財務基盤の強化も機動的に検討 |
② 高収益事業への ポートフォリオ転換 | ・ 戦略上の非中核事業は大胆な縮小・撤退を検討 ・ 投資・資産効率を重視し、限られた経営資源を成長・高付加価値分野に集中 ・ 事業の高収益化とマネジメントコストの圧縮により、持続的成長基盤を構築 |
(2)財務目標
当社グループにとって喫緊の課題である、持続可能な財務基盤への回復を期し、毎期の安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローの創出により、自己資本比率10%以上への早期回復を図ります。さらに、中長期的視点で財務基盤の強化についても機動的に検討します。
・ 営業利益率改善: コスト構造改革・事業構造改革・ポートフォリオ転換による稼ぐ力の強化
・ 投資の選択と集中:設備投資総額の抑制、資産効率と成長性・付加価値性を重視した優先順位づけ
RP24期間の最終年度(2024年3月期)における財務目標は以下のとおりです。
営業利益率 ※1 | 8% |
純利益 ※2 | 3年累計 300億円以上 |
自己資本比率 | 10%以上 |
フリー・キャッシュ・フロー | 100億円以上 |
※1 個別開示項目前営業利益率
※2 親会社の所有者に帰属する当期損益
6.RP24の進捗状況
(1)RP24の主要施策
2023年3月期はRP24の2年目となりますが、当年度における主要施策の進捗は以下の通りです。
3つの改革
①コスト構造改革 | ・主に欧米の自動車用ガラス事業を中心に拠点、製造ラインを統廃合することに伴う人員削減は2022年3月期で大部分を実施 ・「改革・革新」活動を通した直接費低減の推進を継続 |
②事業構造改革 | ・米国、ベトナムにおける太陽電池パネル用ガラス事業が収益寄与と同時にCO2削減による地球環境の保護にも貢献 ・マレーシアの既存フロート窯に、太陽電池パネル用ガラスを製造するためのオンラインコーティング設備を新設 (2024年3月期より生産開始予定) ・米国でも太陽電池パネル用ガラスの拡大に向けて検討中 ・アルゼンチン2基目の新フロート窯建設完了、第3四半期から生産開始、市場拡大が続いている南米での事業拡大を推進 ・高輪ゲートウェイ駅構内で透明太陽光発電窓パネルを使用した実証実験を開始 ・英国でフロート板ガラスと型板ガラス共有の溶融窯への投資決定(2024年8月までに稼働予定) |
③企業風土改革 | ・全従業員意識調査“Your Voice” Surveyで従業員の声をグローバルに収集、調査結果を踏まえて企業風土改革をトップから推進すべく「リーダーシップ行動憲章」を策定 ・「Inclusion & Diversity (I&D)」を「Diversity, Equity & Inclusion (DEI)」に発展、個々の従業員のキャリアパス開発、エンゲージメント向上を志向 ・取締役会の多様性課題に対応して取締役を選任
|
2つの重点施策
①財務基盤の回復 | ・自己資本比率は10%超を維持 ・フリー・キャッシュ・フローは139億円を計上 |
②高収益事業へのポートフォリオ転換 | ・中国の大手自動車用ガラスメーカーと中国の自動車用ガラス事業を統合 |
(2)財務実績
2023年3月期及び2022年3月期における財務数値は以下のとおりです。営業利益率および純利益については今後より一層改善の必要がありますが、自己資本比率およびフリー・キャッシュ・フローについては2年連続で目標を達成しています。
| 2023年3月期 | 2022年3月期 |
営業利益率 ※1 | 4.6% | 3.3% |
純利益 ※2 | 純損失338億円 | 純利益41億円 |
自己資本比率 | 10.2% | 15.5% |
フリー・キャッシュ・フロー | 139億円 | 223億円 |
※1 個別開示項目前営業利益率
※2 親会社の所有者に帰属する当期損益
7.経営環境及び対処すべき課題
(1)当社グループを取り巻く経営環境
2023年3月期は、期中はかつてないほど高騰した欧州の天然ガスを中心に投入コストが高騰し、また当社グループが事業を行う市場環境は事業により濃淡がありましたが、下半期にはエネルギー関連の投入コストも下落し、市場環境も概ね安定してきました。建築用ガラス市場は、下半期以降欧州で需要がやや軟化したものの多くの地域で需要に支えられ、高騰した投入コストを価格転嫁で吸収し、好調でした。自動車用ガラス市場は、半導体を中心とした自動車部品不足による自動車生産制約の影響が下半期以降徐々に緩和し、また第2四半期以降多くの取引先との価格交渉が進捗した結果、販売価格改善により高騰した投入コストの影響を軽減しました。高機能ガラスは、下半期には新型コロナウイルスに関連した中国におけるロックダウンとIT市場の減速の影響を受けましたが、全般的に安定していました。ただ、金利上昇による潜在的な景気後退のリスクにより市場環境は依然不透明です。またエネルギー関連の投入コストは下落したものの、再び高騰するリスクはあります。世界的なインフレ拡大等で原材料や運送費や人件費等その他コスト増加は継続しており、引き続き、生産コストの更なる引き下げと製品価格への転嫁に取り組み、収益力の回復を進めていく必要があります。
(2)対処すべき課題
当社グループが対処すべき重要な課題は、早期の収益力の回復、そして、事業構造の転換の加速です。
コロナ禍からの経済回復の過程でサプライチェーンが混乱し、原燃材料価格が高騰した後、燃料価格については一旦落ち着きを見せましたが、引き続き注意が必要です。また、インフレ拡大に伴う原材料や運送費や人件費等その他コストの増加、金利上昇に伴う潜在的な景気後退リスクなど事業環境は常に大きく変化しています。これらの変化に早期に対応し、収益力の回復を果たさなければなりません。RP24の財務目標のうち営業利益率、純利益については達成することができておらず、これには自動車ガラス事業の収益力改善が非常に重要です。同事業では、2023年3月期はコスト削減、付加価値製品の拡大、価格転嫁により下半期以降収益が改善し通期黒字を達成しましたが、引き続き収益力の改善に取り組みます。
2023年4月より新たな代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の下での経営体制がスタートしましたが、このためにRP24における3つの改革である「コスト構造改革」、「事業構造改革」、「企業風土改革」に引き続き注力していくことに変わりはありません。
「コスト構造改革」では、本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)に引き続き取り組んでまいります。DX(デジタルトランスフォーメション)はその推進に不可欠のものと考えており、全社横断で進めて行く予定です。
「事業構造改革」については、建築用ガラス事業では、メガソーラー向け太陽電池パネル用ガラスの拡大やビル・住宅向け建物一体型太陽光発電パネルの開発に取り組んでおり、汎用窓ガラス事業から高付加価値ガラス事業への転換を進めています。高機能ガラス事業では、コンタクトイメージセンサーに使用されるSELFOC® Lens Arrayの産業用検査機用途等デジタル市場への展開を図っています。脱炭素社会を背景に伸びる複合材市場への新たなソリューションとして上市した高弾性・高強度ガラスファイバー「MAGNAVI®」は、輸送機の構造部材として多くの引き合いを受けています。
「企業風土改革」では、「コスト構造改革」「事業構造改革」を成し遂げていくため、4(=3+1)つの「F」(Flatな組織、Frankなコミュニケーション、Fastな意思決定+職場におけるFun)と人材の多様化により、事業改革をスピードアップしていきます。
以上のRP24における3つの改革の推進を踏まえ、将来に向けた戦略として、4つの「D」(Decarbonisation (脱炭素化)、Digital(デジタル)、Development (新規事業・製品開発)、Diversity(多様化))をキーワードに取り組んで行きます。「Decarbonisation (脱炭素化)」と「Digital(デジタル)」は、当社グループ事業の成長のためだけでなく、コスト削減等オペレーションにおいても極めて重要です。また脱炭素化とデジタルという市場トレンドを掴みビジネスにつなげるため、新技術、新商品、新しいビジネスモデルの「Development (新規事業・製品開発)」を目指していきます。そして事業の発展に欠かせない、新しいアイデアの源泉として「Diversity(多様化)」をより一層進めていきます。
これらの改革と戦略の実行により、早期の収益力の回復と事業構造の転換の加速を実現し、安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローを創出する持続的成長が可能な事業体質への変革を進めていきます。
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