企業兼大株主富士フイルムホールディングス東証プライム:4901】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)経営方針、経営環境

 当社は、2024年1月20日に迎えた創立90周年を機に、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。当社は創業以来、先進・独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて人々の「笑顔」に寄り添ってきました。来たる100周年、さらにその先も、全事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう、従業員一人ひとりが「アスピレーション(志)」を持って挑み続けていきます。

 当社は、2017年8月に長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定しました。当社の中期経営計画は「SVP2030」の具体的なアクションプランとして位置付けており、2021年4月に発表した中期経営計画「VISION2023」では、事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んできました。「VISION2023」で掲げた売上高・営業利益目標は1年前倒しで達成し、2023年度も「売上高」「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」で過去最高を更新しました。また、「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化等により、成長投資の原資確保と、重点・新規/将来性事業への経営資源の集中投下、及びポートフォリオ内の資源循環の加速・強化を図ることで、事業を通じて「環境」「健康」「生活」「働き方」の課題に取り組み、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする事業基盤の構築」を進めてきました。

 2024年4月17日には、新たな中期経営計画「VISION2030」を発表しました。「VISION2030」では、収益性と資本効率を重視した経営により富士フイルムグループの価値を高め、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界をひとつずつ変え、様々なステークホルダーの価値(笑顔)を生み出すことで、さらなる強靭な事業基盤の構築を実現していきます。

 2024年度は、世界的な雇用情勢の回復、及び人手不足の深刻化を背景とした実質賃金の改善が進むとともに、企業の投資意欲の持続や、IT・半導体関連市況の回復等が、景気の追い風となることが予想されます。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化やイスラエル・ガザ紛争を発端とした中東情勢の緊迫化、中国経済の停滞、インフレを背景とする金融引き締めの持続等により、世界経済が減速するリスクも懸念されています。このような状況下で、当社グループは全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、ヘルスケア・エレクトロニクスの成長加速と、持続的な成長を可能とするさらに強靭な事業基盤の構築をより一層推進し、「稼げる力」を高めていくことで、この難局を乗り越えていきます。

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

2023年度

2024年度

(次期の見通し)

対前年度

 

 

2026年度

(中期経営計画)

売上高

29,609

31,000

1,391

 

34,500

営業利益

2,767

3,000

233

 

3,600

当社株主帰属当期純利益

2,435

2,400

△35

 

2,700

ROE

8.2%

7.8%

0.4ポイント減

 

8.1%

ROIC

5.6%

5.4%

0.2ポイント減

 

5.8%

(2)対処すべき課題

「ヘルスケア部門の成長戦略」

 ヘルスケア部門では、高齢化社会におけるQOL(Quality Of Life)向上や新興国における医療環境の整備といった医療分野の社会課題に対し、当社独自のAI技術やバイオ技術等、最先端の技術を駆使した製品やサービスを投入し続けます。これにより、2024年度は、ヘルスケア部門で初となる売上高1兆円超えによる増収・増益を目指します。

 メディカルシステム事業では、重点課題として設定している、富士フイルムヘルスケアとのグループシナジー創出と、IT・AI技術の活用による付加価値の向上に引き続き注力していきます。今夏には、メディカルシステム事業に関わる国内グループ会社を機能軸で再編成し、事業戦略立案や研究開発、販売・保守サービスの各機能の体制をさらに強化します。また、当社の強みである幅広い製品ポートフォリオと医療ITを組み合わせた付加価値の高いソリューションの提供により、「モノ」としての医療機器の付加価値を向上させるだけではなく、AIを活用した故障予兆監視、疾患別ソリューション、そして健診センターのようなトータルパッケージの提供等、「モノ+コト売り」による価値提供へのシフトを推し進めます。2024年4月には、医療機関や研究機関における画像診断支援AI技術の開発を支援するサービス「SYNAPSE Creative Space」を発売しました。高度な工学的知識を必要とせず、手元にPCを用意すれば利用できるクラウドサービスであり、希少疾患を始めさまざまな疾病を対象とした画像診断支援AI技術の開発を促進します。本サービスの提供を通じて、医療現場をサポートするAI技術の開発を支援するとともに、AIの社会実装や教育支援にも力を入れていきます。

 バイオCDMO事業では、抗体医薬品の旺盛な需要に応えて事業を拡大すべく、2024年度からデンマーク拠点の大型原薬製造設備を稼働させるとともに、米国ノースカロライナ拠点に、追加で新たな大型原薬製造施設の建設を開始します(2028年稼働予定)。また、バイオテック企業への投資環境の冷え込みに起因する細胞・遺伝子治療薬の開発停滞、及び臨床試験開始件数の減少により、英国や米国拠点の中小型製造設備における受託ビジネスが低調となる中、特に需要停滞の長期化が見込まれる遺伝子治療薬については、原薬生産設備を抗体医薬品用途へ転用する等、生産体制の最適化を進め、ビジネスの拡大を図ります。

 ライフサイエンス事業では、創薬支援材料分野においてiPS細胞・培地・試薬を組み合わせたソリューション販売と、特徴ある製品開発によって顧客提案力を向上させ、製薬企業・バイオテック企業・アカデミアのニーズにきめ細かく対応できるカスタマーサポート体制で継続的な事業拡大を図っていきます。また、iPS細胞技術・ノウハウを生かした細胞治療薬の開発製造受託ビジネスも拡大していきます。

 医薬品事業では、コロナ禍後の感染症流行により需要の高まる抗菌剤の安定供給を進めます。

 コンシューマーヘルスケア事業では、2023年度に発売した「アスタリフト アドバンスドシリーズ」や、機能性表示食品の「ヒザテクト」といった新製品を拡販するとともに、独自性の高い化粧品・サプリメント新製品を逐次投入して、事業を継続的に拡大していきます。

 CRO事業では、当社独自のAI技術や化合物ライブラリ、iPS細胞等を駆使した特徴のあるサービスを、主に基礎研究から非臨床試験までの創薬初期段階の顧客に広めていきます。

「エレクトロニクス部門の成長戦略」(旧マテリアルズ部門)

 エレクトロニクス部門では、「高機能材料戦略本部」の下、中長期視点での新規事業開発と、同領域の顧客アプリケーション軸での事業ポートフォリオの構築・戦略マネジメントにより事業拡大を進めていきます。

 半導体市場では、AI、IoT、5Gの普及やDXの加速等により需要が拡大し、半導体の高性能化に必要な微細化・高集積化がさらに進むとみられています。半導体材料事業(旧電子材料事業)ではこうした市場ニーズに応えるために、高性能化を支える材料開発や安定供給を目的とする積極的な設備投資をタイムリーかつ継続的に実施していきます。また、2023年度のプロセスケミカル事業買収により、当社の製品ラインアップが拡充し、半導体製造プロセスのより多様な工程に当社製品を提供できるようになりました。今後、新製品開発によりさらなる製品ラインアップの拡充を進めるとともに、CMPスラリーとポストCMPクリーナーといった補完し合う材料を有する強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決していく等、「ワンストップソリューション」を提供することで、事業成長を加速させます。

 ディスプレイ材料事業では、車載ディスプレイやAR/VRスマートグラス向け等に薄膜・積層塗布や光コントロール等、当社が蓄積してきた技術を活用した新規用途向け部材の開発・導入を推進し、次世代エレクトロニクスデバイスの普及に積極的に貢献していくことで、事業を拡大していきます。また、液晶パネル向けTAC製品の強いマーケットポジションの維持、及び有機EL向け材料のシェア向上も推進していきます。

 産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や、データセンターで使用されるデータテープ、半導体やディスプレイ等デバイス製造工程に使用される圧力測定フィルム「プレスケール」、メンブレンろ過フィルター等、当社独自技術を活用した高機能製品の販売拡大を継続するとともに、爆発的に増加する「通信」と「エネルギー」インフラに向けた新規ビジネスの開拓を行い、積極的に事業を拡大していきます。

 ファインケミカル事業では、「フロー合成」「高純度化」等の当社が有する技術により半導体材料等のエレクトロニクス分野向けに差別化製品を供給拡大していきます。また、「エレクトロニクス」「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」3分野を重点領域と位置づけ、高純度化技術や高度な品質保証機能を活かした差別化製品を創出し、事業領域を拡大していきます。

「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」

 ビジネスイノベーション部門では、グラフィックコミュニケーション事業をビジネスイノベーションへ統合し、「プリンティング&ソリューション」事業として、オフィスから商業印刷(アナログ・デジタル)・産業印刷まで全領域をカバーする業界で唯一の「ソリューションパートナー」として事業展開を進めていきます。加えて、他社との業務提携を通じた、原材料・部材調達やトナー開発・生産供給体制構築により、事業基盤をさらに強化していきます。

 ビジネスソリューション事業では、DXのニーズの高まりを背景に、ITインフラ環境の構築・運用を支援する「IT Expert Services」をベースとして、顧客企業のインフラのクラウド化や顧客企業が現在利用しているシステムを最大限生かした業務プロセス変革を支援し、DXを加速するクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供、「Microsoft Dynamics 365」を主力としたERPソリューションの販売・導入支援等を通じて、顧客企業のDXに貢献し、事業成長を図ります。

 オフィスソリューション事業では、ハイブリッドワークの浸透により、プリントボリュームが漸減する中で、当社が特に強みをもつA3カラー領域に注力し、環境対応と生産基盤強化を軸に、効率的な販売に転換します。加えて、欧州各国の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いを開始し、新規市場での販売拡大を図ります。

 グラフィックコミュニケーション事業では、商業印刷・パッケージ印刷市場で、大ロットのアナログ印刷やモノクロ印刷が減少する一方、多品種・小ロット印刷やカラー印刷が増加し、高速フルカラーデジタル印刷・DXのニーズが拡大することを見込んでいます。当社は、成長を期待できる高速・高画質のデジタル印刷・DXへ投資し、国内市場で圧倒的シェア・海外でもトップレベルのシェアをもつ刷版の顧客を中心に販売を拡大し、デジタルシフトを加速していきます。刷版事業では、グローバルでの生産ライン統廃合によるリーンな体制の下、高付加価値な無処理版*の販売拡大に集中し、収益性改善を進めていきます。インクジェットインク・ヘッドについては、生産体制の再編で収益性改善を図るとともに、インク・ヘッドという基幹部材を自社でもつ強みを活かし販売を拡大することに加えて、インク・ヘッドを組み合わせたカスタムシステムをブランドオーナーに提供し、顧客製品の生産ラインへデジタル印刷技術を組み込む等、商業印刷・パッケージ印刷のデジタル市場の成長に応えていきます。

* 現像機が不要であり、コスト・作業時間が削減されることに加え、現像液不使用による廃液レスのため環境性能に優れる。

「イメージング部門の成長戦略」

 イメージング部門では、「写真を撮る・写真を楽しむ・共有する」ことを核とした当社独自のエコシステムを発展させ、新しい感動や体験を創造し続けることで持続的成長を実現させます。

 コンシューマーイメージング事業では、2024年4月に発売したアナログインスタントカメラの最上位モデル「INSTAX mini 99」をはじめとし、さらなる新製品の発売、イベント・ビジネス需要の取り込みや異業種との協業により新たなユーザー層拡大を図ります。また、富士フイルムビジネスイノベーション製トナー方式フォトプリンター機の展開拡大や異業種パートナーとのアライアンスによる若い世代との新たなタッチポイント創出等により、新規プリント需要の掘り起こしを進めていきます。

 プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルカメラ「Xシリーズ」「GFXシリーズ」マルチブランド戦略強化により、スマホでは飽き足らない潜在ニーズを掘り起こし、当社ファン拡大を図ります。また、プロジェクターの拡販、遠望監視カメラの新規用途への展開や最先端の光学技術・画像処理技術・AI駆使によるDXソリューションビジネス等、新規分野の立ち上げも進めていきます。

「SVP2030の下での重点分野と取組み」

 当社グループは、「SVP2030」のもと、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」との2つの側面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における各分野で設定した目標達成に向けた取組みを進めています。

 「環境」においては、気候変動への対応や水資源を含む生物多様性の保全、資源循環の促進等を重点課題として取り組んでいます。脱炭素化については、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合した目標「自社の製品ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出を2030年度までに50%削減(2019年度比)」を掲げています。本目標は「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ*1」より、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標として認定されました。本目標の達成に向け、富士フイルムグループ環境戦略「Green Value Climate Strategy」の下、環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。2023年度は、自社エネルギー起因(Scope1+2)のGHG排出削減目標11%削減(2019年度比)を達成する見込みです。さらに前年度導入したインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を用いて低炭素投資を促進することで、脱炭素社会の実現に貢献しています。このような活動が評価され、当社は国際的な非営利団体CDPが実施する企業調査において「気候変動」で最高評価である「Aリスト企業」に認定されました。「気候変動」分野での「Aリスト企業」認定は、前年に続いて2年連続です。

 「健康」においては、2023年度に100ヶ国まで拡大した医療AI技術を活用した製品・サービスの導入国を、2030年度には世界196の全ての国に導入することを目標にしています。内視鏡システム、超音波診断装置、デジタルマンモグラフィ、CT、MRIといった診断用の医療機器・サービスを提供することで、疾病の早期発見に取り組む医師をサポートし、人々の健康維持増進に貢献しています。また、従業員の健康に対する意識向上やがん対策等が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に4年連続で選ばれました。また、経済産業省と日本健康会議より、優良な健康経営®*2を実践している法人として「健康経営優良法人ホワイト500」に8年連続で認定されました。今後もヘルスケア事業を通じた社会課題の解決に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

 「働き方」においては、ビジネスに革新をもたらす当社のソリューション・サービスの利用を通じて、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を2030年度まで累計5,000万人に提供していきます。また、厚生労働省が後援する日本の人事部「HRアワード2023(主催:「HRアワード」運営委員会)の企業人事部門で、最高位となる最優秀賞を受賞しました。本受賞は、当社グループ独自の自己成長支援プログラム「+STORY(プラストーリー)」の取組みが高く評価されたものです。

 「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでいます。取締役会議長をCEOと分離し、業務執行の「監督」と「執行」の役割を明確化しました。また、取締役に対し、「譲渡制限付株式報酬」、及び「中期業績連動型株式報酬」の導入、取締役会の多様性確保(女性取締役の増員、スキル・マトリックスの再検証)を行ってきました。当社は誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。

*1 CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)による国際的な共同イニシアチブ。科学的根拠に基づいてGHG排出削減目標の検証や削減施策のベストプラクティスを推進している。

*2 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

「2024年度グループ基本方針」

 当社グループの2024年度の経営方針は「アスピレーション(志)を持って卓越した価値を届けよう!」です。グループパーパスを実現するためには、①事業の持続的成長につながる新製品開発や設備投資、②環境・人権・サプライチェーンマネジメント等のESG課題への取組み、③人材育成や労働環境の向上、賃金引き上げ等、従業員の働きがいや能力発揮につながる取組みを実現させることが必要です。当社グループは、これらの活動の原資となる利益を生み出すために「稼げる力」をさらに高め、経済的価値と社会的価値の両方を追求しながら、「稼げる会社」に進化させていきます。そして、獲得した利益を上記①②③に再投資することで、永続的な好循環を実現させます。地球上の人々に何度も幸せな笑顔が訪れるよう、多様な「人・知恵・技術」を結集させ、独創的な発想のもと、様々なステークホルダーとイノベーションを起こし、アスピレーション(志)を持って、卓越した価値を世の中に届けていきます。

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