大日本塗料 【東証プライム:4611】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「新しい価値の創造を通じて地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に貢献できる企業を目指します。」という経営理念のもと、持続的成長力をもつ企業たるべく事業展開を図っております。
この度、2024年度を初年度とする『2026中期経営計画』の策定において、この経営理念を改めて見つめなおし、DNTグループの重要視するマテリアリティを刷新のうえ、創立100周年となる2029年度に向けてありたい姿(ビジョン2029、経営戦略項目にて後述)を明確化いたしました。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは企業価値の向上に向けて、持続的な事業成長を果たすための指標として売上高を、資本コストを踏まえた本業における利益成長を推進するための指標として営業利益およびNOPAT-ROE(税引後営業利益ベースROE)を設定することといたしました。また、株価を意識した経営の観点から、株主還元方針としてはDOE(株主資本配当率)を採用することといたしました。ビジョン2029及び2026中期経営計画における各指標の連結目標値は下記のとおりであります。
| 2026年度 | 2029年度 | 参考:2023年度実績 |
売上高 | 800億円 | 1,000億円 | 719億円 |
営業利益 | 80億円 | 100億円 | 49億円 |
NOPAT-ROE | 8%程度 | 8%程度 | 6.1% |
DOE | 3%以上 | 5%以上 | 2.2% |
(3)経営環境
外部環境
2024年3月期におけるわが国経済は、雇用や所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が期待されるものの、不安定な国際情勢に伴うエネルギー価格や原材料価格の高騰、円安の常態化による急激な物価上昇などが景気の下押しリスクとして存在し、依然として先行きは不透明な状況にあります。
国内塗料市場は一般用分野では堅調な需要環境が見込まれ、工業用分野では新設住宅着工件数の減少影響が懸念される一方、金属製品や産業機械向けにおいては緩やかなや需要回復を予測し、総じて前期並みの需要環境と見通しております。海外塗料市場は自動車産業向けの需要回復を見通しております。照明機器市場は都市部を中心とした再開発案件の継続を背景に堅調な需要を見通しております。
中長期的な見通しとしましては、塗料市場は国内において大きな伸長を期待することは難しく、市場の成長が見込まれる新興国を中心とした海外における比重を高めていく必要があります。国内においてはサステナビリティ分野を成長市場かつ先駆的領域と位置づけ取り組んでまいります。
内部環境
当社は2020年度から2023年度までの2023中期経営計画において、持続的成長の実現に向けた基盤整備と成長軌道の確立を目指し、5つの重点施策「提供価値の強化」「価格競争力の強化」「販売体制の強化」「労働生産性の向上」「海外事業の強化」を掲げて遂行してまいりました。各施策の振り返りは下記のとおりであります。この振り返りを生かし、事業セグメントや塗料部門ごとの戦略を明確にした上で、それにふさわしい人材育成と組織体制を再構築すると同時に、メリハリをつけた資源配分を行っていく必要があると認識しております。
重点施策 | 成果 | 課題 |
提供価値の強化 | •防食、コーティングの両技術センター活用による顧客リレーションの強化、ソリューション営業の深化 | •新たな成長領域の育成、探索 |
価格競争力の強化 | •原材料コスト低減施策によって原材料価格高騰影響の緩和に貢献•拠点集約による固定費削減の進展 | •原材料コストの抜本的改善には至らず •生産工場・設備の老朽化問題が残存 |
販売体制の強化 | •市場開発部の新設により、市場・製品横断の営業活動が活性化 | •部門ごとの個別最適にとどまり、技術開発を含めた総合力を発揮しきれず |
労働生産性の向上 | •「働き方改革」や「ウィズコロナ」をキーワードとして柔軟な勤務体系が定着化 | •人的資本経営への本格的な取組みは検討段階に留まる |
海外事業の強化 | •製造現法を浙江に移転し、外部への上海現法譲渡を完了 | •中国事業の合理化が大幅に遅延 •攻めへのリソースの配分未実施 |
(4)経営戦略
当社が設定する各マテリアリティの実現に向けて、創立100周年となる2029年度におけるDNTグループのありたい姿として、前記の「(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、従前より掲げていた連結財務目標「売上高1,000億円、営業利益100億円」を明確な目標に再設定いたしました。さらに、資本コストと株価を意識した経営を推進すべく「NOPAT-ROE(税引後営業利益ベースROE)8%程度の確保、DOE(株主資本配当率)5%」という2つのKPIを新たに追加しました。これらをグループ共通の中長期目標「ビジョン2029」と位置づけることで、全てのセグメントを通じて企業価値の向上に邁進してまいります。
2026中期経営計画の初年度となる2024年4月以降の展望としましては、ビジョン2029からのバックキャストと2023中期経営計画の振り返りに基づき、2024年度からの3年間で遂行すべき3つの基本方針を定めました。
・成長市場と先駆的領域への注力
持続性ある事業成長に向けて、サステナビリティ分野を中心とする成長市場や先駆的領域に対して、社内リソースの多くを配分し注力してまいります。
・外部リソース獲得・活用による事業基盤拡大
市場成長が見込まれる海外において外部リソースの活用を前提とした事業基盤の拡大を推進してまいります。国内においては大きな市場拡大が見込めないものの、効率化を図る上で外部との連携が重要と考えております。
・人材及び事業活動の全社最適化
設備刷新やDXを絡めた職場環境改善を推し進め、照明機器や蛍光色材も扱う総合塗料メーカーとしての優位性を発揮してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営理念と経営環境を踏まえ、事業活動を通じた社会への貢献、その事業活動の持続性確保という視点から、当社グループの重要課題を下記の通り、6つのマテリアリティとして再定義いたしました。詳細は後記の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
①安全・快適な社会と社会インフラへの貢献
②未来を見据えた製品及び技術開発による社会への貢献
③気候変動対策・脱炭素社会への貢献
④資源の循環・サーキュラーエコノミーへの貢献
⑤多様な人材の確保と能力を発揮できる環境づくり
⑥コーポレート・ガバナンスの強化、社会的責任の遂行
(品質に関する不適切行為)
当社は2023年10月26日付で、当社の連結子会社である岡山化工株式会社において製造するJIS製品について、社内で定めた検査規格に係る検査値の改ざん等の不適切行為が行われていたことが判明し、一般財団法人日本塗料検査協会よりJISマーク表示の一時停止の通知を受けたこと及び、2023年10月27日付で外部の弁護士、当社独立社外取締役及び独立社外監査役から構成される特別調査委員会の設置を公表いたしました。当社は、特別調査委員会の調査に全面的に協力し、事実関係の解明、原因分析、再発防止策の策定等を進めております。一方で、JISマーク表示の一時停止の通知を受けて以降、一時停止の原因となった行為の是正及び品質管理体制の改善に取り組み、2024年3月7日付で一般財団法人日本塗料検査協会よりJISマーク表示の一時停止の解除通知を受領いたしました。今後は、特別調査委員会の指摘を踏まえ、再発防止に向けて取り組んでまいります。
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