テルモ 【東証プライム:4543】「精密機器」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティ全般
ガバナンス・リスク管理
テルモは、取締役会で決議した経営の基本方針に基づき業務執行に関する意思決定を行う経営会議の下部組織として、代表取締役社長CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を2023年4月に設置しました。当委員会は関連部門や各グループ会社と連携してサステナビリティに関わる活動方針の立案、CSV・ESGに関する重点活動テーマやKPIの設定を行い、グループ全体の活動を促進する役割を担っています。テーマ毎の活動状況やKPIの進捗は委員会でモニタリングし、経営会議および業務執行の監督機能を担う取締役会へ定期報告を行うとともに、経営会議や取締役会での指摘内容を関連部門やグループ会社にフィードバックし、活動の改善・拡充を図っています。また、サステナビリティに関するリスク管理については、リスクと機会をタイムリーに把握して活動方針や計画に反映するため、サステナビリティ委員会が中心となって社外のサステナビリティに関する動向を調査し、当社グループとの関連性の識別や影響度の評価を行った上で、経営会議・取締役会に報告・提言を行っています。
サステナビリティ推進体制
戦略
テルモは、持続可能な社会の実現とテルモグループの持続的成長の両立に向けて長期的視点でサステナビリティ経営を推進するため、2021年12月に「テルモグループ サステナビリティ基本方針」を制定し、併せてサステナビリティ重点活動テーマを改定しました。基本方針では、テルモの企業理念に基づき、パーパスである「医療の進化」と「患者さんのQOL向上」への貢献を通じた「社会価値創造」(CSV)をサステナビリティ経営の最重要活動テーマと位置付けました。さらに、社会価値創造を支える基盤としての活動をESGと定義し、活動テーマを設定してCSVとともに推進しています。
サステナビリティ重点活動テーマ
重点活動テーマの特定プロセス
以下のプロセスを経て、テルモグループの重点活動テーマを特定しました。
ステップ1 課題の抽出
GRI(Global Reporting Initiative)やSASB(Sustainability Accounting Standards Board)などが公表しているサステナビリティ関連のガイドラインや基準などを参照し、テルモグループに関連のあるサステナビリティ課題を網羅的に抽出。
ステップ2 優先順位づけ
抽出した課題について、ステークホルダーにとっての重要度と、企業理念との関連性などテルモグループにとっての重要度を評価し、双方にとって重要度の高い課題を抽出。
ステップ3 重点活動テーマの特定
抽出された重要度の高い課題の内容を基に、テルモグループにおける現状の取り組みも考慮しながら、重点活動テーマを特定。特定されたテーマを経営会議、取締役会で審議し、妥当性を確認。
指標及び目標
2022年度からの5カ年成長戦略「GS26」では、CSV・ESGに関するモニタリング項目・KPIを設定し、役員で分担して推進するとともに、役員の業績評価・報酬に反映される仕組みを導入しました。
GS26 CSVモニタリング項目
テーマ | モニタリング項目 | |
医療技術・サービスの 普及、医療アクセスの向上 | ラディアル手技の普及 (心臓血管カンパニー) | ラディアル比率 (2026年度) ・心臓(冠動脈)75%以上 ・下肢動脈 20%以上 ・がん治療 15%以上 ・脳血管 15%以上 |
医療現場の課題解決に対するソリューション提供(メディカルケアソリューションズカンパニー) | 医療安全・病院経営効率化 (導入施設数) | |
命を救うテクノロジーをより多くの患者さんに提供 (血液・細胞テクノロジーカンパニー) | 新たな地域にテクノロジーを 届ける | |
イノベーションによる新たな治療オプション提供 (血液・細胞テクノロジーカンパニー) | 病院経営効率化 (導入施設数) 治療の選択肢を広げる | |
一人ひとりの人生に 寄り添う医療の提供
| 個別化医療推進 (心臓血管カンパニー) | ステントグラフト・放射線塞栓ビーズ・ハートシート・WEB 症例数 |
患者中心かつケア全体をとらえた価値提供(メディカルケアソリューションズカンパニー) | がん・女性医療 (導入施設数)
| |
持続可能な 医療システムの共創 | トレーニング(心臓血管カンパニー) | TIS実施件数 |
DXを活用した医療の質向上と変革 (メディカルケアソリューションズカンパニー) | データを活用した ソリューション構築 | |
医療提供のインフラ効率化 (血液・細胞テクノロジーカンパニー) | 血液の製剤化にイノベーション |
注:GS26公表後に内容を一部見直しております。
GS26 ESG KPI
テーマ | KPI | |
カーボンニュートラル実現 | CO2排出量(2018年度比、スコープ1+2) | 削減率50.4%(2030年度) 削減率100%(2040年度) |
使用電力の再生可能エネルギー利用 | 利用率50%(2030年度) | |
資源の有効活用 | 水使用量 (売上収益当たり、2018年度比) | 削減率20%(2030年度) |
リサイクル率 | 90%(2030年度) | |
製品・サービスの品質と 安全性、安定供給の確保 | 規制当局からの重大な指摘事項の件数 | ゼロ |
持続可能なサプライチェーン マネジメント | 重大な市場欠品 | ゼロ |
サプライヤーガイドラインの趣旨に 反する重大な逸脱のある取引 | ゼロ | |
労働環境の安全対策推進 | 死亡・重大労災発生件数 | ゼロ |
アソシエイト エクスペリエンス向上 | アソシエイト一人当たりの教育投資 | - |
多様な人財を活かし 価値創造につなげる組織へ | 経営役員、グローバル・キーポジションの 国籍別比率 | - |
女性管理職比率(テルモ株式会社) | 13%(2026年度) | |
取締役会の実効性 | 取締役会の実効性評価 | 毎年実施 |
コンプライアンスの推進 | 会社の経営に重大な影響を与える 法令違反 | ゼロ |
注:GS26公表後に内容を一部見直しております。
(2) 人的資本
人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
戦略
性別、国籍、職務、役職等において多様性のあるアソシエイトで構成されるグローバルDE&Iカウンシルを2021年7月に発足させ、テルモグループ共通のDE&Iフィロソフィー・ガイディングプリンシプル・ガイドラインを策定しており、多様性の確保に向けた人財育成方針、社内環境整備方針を定めております。また取り組み事例として、グループ横断選抜型の育成プログラムやグローバルタレントレビューの実施、育成計画、サクセッションプランを通したグループワイドな人財登用の整備を行っております。さらに、2023年にはDE&Iを推進するための4つの重点分野を選定し、グループ各社で活動を進化させております。
[4つの重点分野の主な取り組み]
●帰属意識・一体感:グループ各社におけるARG(Associate Resource Group)設置の促進
●インクルーシブリーダーシップ:各経営役員による具体的な取り組み目標の宣言と実行
●制度・手法:DE&Iの観点より、グループ各社の人事に関する制度・手法の見直し
●コミュニケーション:社内外コミュニケーションの強化(例:テルモ DE&I Weekのグローバル実施)
指標及び目標
<目標値を設定している指標>
- テルモ株式会社
5か年成長戦略(GS26)で掲げている目標:2026年度末までに女性管理職比率13%を目指す
<指標の内容と実績>
・女性管理職
- テルモグループ 女性管理職比率:30.8%(2023年3月31日現在)
- テルモ株式会社 女性管理職比率:9.6%(2023年3月31日現在)
・外国人管理職
- テルモグループ 経営役員外国人比率:33.3%(2023年3月31日現在)
- テルモグループ グローバル・キーポジション外国人比率:54.0%(2023年4月1日現在)
・中途採用者管理職
- テルモグループ 経営役員中途採用比率:50.0%(2023年3月31日現在)
- テルモ株式会社 管理職中途採用比率:21.5%(2023年3月31日現在)
(注)1.上記指標のうち、テルモ株式会社の女性管理職比率以外の指標は各国や地域によって状況が異なるた
め、モニタリングのみを実施しており、目標値は設定しておりません。
2.人的資本に係るガバナンスとリスク管理につきましては、「(1)サステナビリティ全般」の「ガバナ
ンス・リスク管理」をご参照ください。
(3) 気候変動への対応
2022年3月、テルモは、金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。TCFDのフレームワークに基づき、気候変動に伴うテルモの事業活動への影響と取り組みを以下に開示します。
ガバナンス | 取締役会のメンバーであるEHS(環境・安全衛生)担当取締役が気候変動を含む環境に関わる監督責任者です。 EHS担当取締役が議長を務める環境安全委員会が、気候変動に関する最高の意思決定機関であり、気候関連リスクと機会の特定、方針、戦略、目標の策定と見直し、目標の達成状況の監視を行い、経営会議に報告しています。本委員会を年3回開催する他、本委員会の下にEHS専門部会としてエネルギー部会を設置し、エネルギーに関わる目標の進捗管理、環境安全委員会への定期的な報告を行っています。 EHS担当取締役の下でカーボンニュートラル実現に向けたプロジェクトを発足させ、生産部門だけでなく、財務部門を含む本社機能部門とも横断的に連携して温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた対応方針、戦略、目標の策定と見直し、目標の達成状況の監視を行い、取締役会に報告しています。 | ||||||||||||||||
戦略 | 「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、人の命と健康を守るため医療機器・医薬品の提供を止めないことが最も重要であると認識しています。さらに、新しい治療方法の提供を通して、医療の効率化と医療現場からのGHG排出量削減を実現することが可能と考えています。 気候シナリオとして、物理的リスクの増大を想定した産業革命前からの気温上昇が4℃のシナリオ(RCP(Representative Concentration Pathways)8.5)と、移行リスクの増大を想定した気温上昇を1.5℃以内に抑えるシナリオ(RCP1.9)の2つを念頭に置き、事業に影響を及ぼすリスクと機会を以下表の通り整理しています。 | ||||||||||||||||
リスク管理 | 環境安全委員会が、気候関連リスクと機会を特定、事業への影響を評価し、関連部門に対してリスクの低減と機会の促進のための管理を指示し、進捗状況を管理しています。 テルモグループのリスクマネジメントにおけるリスク対象にも、環境安全委員会から挙げられた気候関連リスクが含められ、リスク管理委員会が制定する全社リスク管理体制のもと、リスク管理計画に基づくモニタリングが行われています。 | ||||||||||||||||
指標•目標 | テルモではパリ協定が求める産業革命前と比較して気温上昇を「1.5℃」に抑える水準と整合したGHG排出量削減目標を設定しています。この目標は国際的な団体である「Science Based Targets initiative」(SBTイニシアチブ)から、科学的根拠に基づくものとして認定されています。
テルモグループの温室効果ガス排出量削減目標 スコープ1+2 ・2030年度までに、温室効果ガス排出量を2018年度比で50.4%削減 ・2030年度までに、使用電力の再生可能エネルギー比率を50% ・2040年度までに、カーボンニュートラルを実現 スコープ3 ・2030年度までに、売上収益あたりの温室効果ガス排出量を2018年度比で60%削減
2021年度 CO2排出量(Scope1、Scope2 内訳)
対象:テルモグループ(国内事業所・海外生産事業所) *第三者検証における保証対象指標 2021年度実績の第三者保証の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載している2022年度発行の統合報告書(テルモレポート2022 ESG情報編)を参照ください。
(2022年度実績は、第三者保証後に当社統合報告書(テルモレポート)にて公開予定)
|
「Scope」については、GHG(Greenhouse Gas)プロトコルによる以下の区分で報告しています。
Scope1:直接排出(燃料燃焼などの自社の排出)
Scope2:購入した電気などのエネルギー生産に伴う間接排出(電力事業者などの排出)
Scope3:Scope2以外の間接排出(原料生産、輸送、廃棄などの他社の排出)
事業に影響を及ぼすリスク
リスク | リスクの内容 |
物理的リスク | 自然災害が発生した場合の建物・設備・在庫への被害、操業の一時停止により製品の供給に支障が生じた場合の機会損失 |
慢性的な気温上昇や水不足によるエネルギーコストの増加、労働生産性の低下、操業に一時的な支障が生じた場合の機会損失 | |
社会インフラである医療体制が自然災害の影響を受けた場合の特定製品に対する需要の急増、医療体制の機能低下・停滞が長期化した場合の収益への影響 | |
移行リスク | 炭素税が導入・強化された場合のエネルギーコスト・原材料費の増加 |
GHG排出規制などの環境規制強化に伴う設備変更とそれに伴う設備投資コストの増加 | |
顧客やビジネスパートナーからのGHG排出量削減要請や環境配慮型製品の供給要請が高まった場合の対応コストの増加、対応が困難な場合の機会損失 |
事業に影響を及ぼす機会
機会 | 機会の内容 |
物理的機会 | 気候変動に伴う長期的な疾病構造の変化に対応した製品の提供、医療体制のレジリエンス強化に寄与する製品の提供 |
移行機会 | 生産やサプライチェーンのエネルギー効率向上によるコスト削減 |
医療現場の効率性向上やGHG排出量削減に寄与する製品の提供 |
4℃シナリオ、1.5℃シナリオそれぞれにおいて、上記のリスク・機会がテルモの事業に与える影響度を分析した結果、以下のリスクが比較的影響度が大きいと推定されました。
<4℃シナリオ>
自然災害が発生した場合の事業所の建物・設備・在庫への被害、操業の一時停止により製品の供給に支障が生じた場合の機会損失
<1.5℃シナリオ>
自然災害が発生した場合の事業所の建物・設備・在庫への被害、操業の一時停止により製品の供給に支障が生じた場合の機会損失
炭素税が導入・強化された場合のエネルギーコストや原材料費の増加
自然災害など事業継続に関わるリスクへの対応については、テルモグループ共通の基本的な考え方および体制・対応事項を「グループ事業継続マネジメント(BCM)規程」で定めています。平時においては、各生産拠点、原材料調達や物流などに携わる本社機能部門、各カンパニー、海外子会社のリスク担当者が連携し、有事の際に事業を中断しないため、また万が一中断しても早期に復旧・再開させるために、BCP(事業継続計画)を策定しています。事業継続に関わるリスクが発生した場合は、テルモ株式会社の代表取締役社長を対策本部長として「対策本部」を設置し、迅速に対応を行います。テルモグループのサプライチェーンや業務が一定期間停止することが判明した場合には、早期の復旧を図ります。エネルギーコストや原材料費の増加に対しては、エネルギー効率の高い生産設備の導入や、より少ない原材料やエネルギーで生産できる製品の開発などに継続的に取り組んでいきます。
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