ラクスル 【東証プライム:4384】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般への取組
当社グループは、創業より「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンに基づく事業活動そのものが、持続可能な社会の実現に資するものと考えております。社会課題に向き合い、ステークホルダーと共に社会構造を変革していくことでより良い社会を実現し、ひいては自らの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につながるものと考え、サステナビリティの実現に向けた活動に取り組んでおります。
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティへの取り組みを推進するため、代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設置し、年4回開催しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や考え方の整備、サステナビリティ推進体制の構築、取り組み状況のモニタリングを行っております。サステナビリティ委員会で検討、協議された方針や課題において、特に重要な事項については取締役会に報告され決定しております。
②戦略
当社グループは、ステークホルダーの期待や要請に応えていくため、優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を策定しています。当社グループのビジョンを実現する重要課題の策定プロセスは下記のとおりであります。
a.課題候補項目の抽出
SASB(サステナビリティ会計基準)やGRIスタンダード、SDGs (国連の持続可能な開発目標) といった国際的な指標を参照し、またステークホルダーの声を踏まえ、当社の事業活動や企業文化に関連性の高い社会課題を抽出しております。
b.ステークホルダーとの対話を通した、当社における重要課題の把握と整理
株主・投資家との対話や主要なサプライヤーへのインタビューを通じて、当社グループに対する期待について情報収集を行っております。また、定期的に実施している従業員サーベイの結果を通して従業員からの期待を把握しております。これらの対話を通じて、抽出した社会課題の重みづけを行っております。なお、外部のESG格付け機関からの評価も参照し、当該評価において指摘を受けている課題についても勘案しております。
c.自社による重要性の評価と特定
抽出・整理した社会課題について、取締役会及び経営会議における議論を通じて、当社経営戦略との関連性を評価し、取締役会決議を経て、優先的に取り組むべき重要課題を特定しております。
③リスク管理
当社グループは、経営に対して大きな影響を及ぼすリスクに適切かつ迅速に対応するため、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、事業活動を行う上で対処すべきリスクを認識・特定して、対策を協議しております。サステナビリティ委員会で特定した重要なリスクについては、リスク管理委員会と連携し、全社リスクに統合して分析や把握を行うことでリスクの低減、未然防止等を図っております。サステナビリティに関するリスクを含め、主な重要リスクは「3 事業等のリスク」をご参照ください。
④指標及び目標
重要課題に関連する評価指標や実績は、サステナビリティ・ESG運営サイトにて公開しております。(https://corp.raksul.com/esg/esg_data/)
(2) 人的資本・多様性に対する取組
当社グループは、継続的な事業成長及び多様な価値の創出を実現していく上で、人材を重要な経営課題の一つとして認識しており、人的資本の価値最大化を図ることで中長期の企業価値の向上を実現していきたいと考えております。当社グループの重要課題として「多様な人材の採用と活躍推進」及び「次世代リーダー人材の育成と複利による報酬還元」を掲げており、人事組織ポリシーに基づき、多様な価値を創造し続ける組織に向けて多様な人材の採用や配置を行い、従業員の特性や能力が最大限に発揮される職場環境の構築や人材育成に取り組んでおります。
①ガバナンス
当社グループは、人的資本に関する具体的な取り組みについては、人事執行責任者の下、担当部門と各事業部と連携して検討しており、取り組みの進捗状況や人事施策の効果・課題等は、定期的にSVP会議や取締役会に報告しております。主に、人的資本に関する各種方針等の重要事項については、取締役会で審議、決定しております。また、従業員に向けて、年1回の従業員サーベイを実施しており、その結果はサステナビリティ委員会に報告されモニタリングする体制を整え、重要課題の整理に反映させるとともに、人的資本に関するリスクの早期発見・対処に努めております。
②戦略
人的資本に関して、主に下記に記載の取組みを行っております。
a.多様な人材の採用と活躍推進
当社グループは、性別や国籍など属性による多様性のみならず、経験や異なる文化、専門分野などの多様性を確保するため、様々なバックグランドを持つ人材の採用を積極的に行っております。また、高い専門性やスキルを保有しているだけではなく、当社グループの企業理念やビジョンへの共感度を重視した採用を行っており、入社後においては、経験や能力の保持だけではなく、しっかりと成果や実績を出した従業員に公平に報いる評価及び登用の機会を設けております。また、人事評価は、当社の経営理念や行動指針の浸透に活用するとともに、上司と部下の面談による適切なフィードバックを通して、効果的な人材育成につなげる仕組みを構築しております。
(多様な働き方と女性の活躍推)
女性の活躍を実現するためには、多様な働き方や継続的なキャリア形成への支援は不可欠であると考えております。多様な人材が、公平な機会のもと、ライフステージの変化に柔軟に対応でき、安心して挑戦・活躍できる職場づくりを実現するための福利厚生制度を導入しております。また、全ての従業員に対して公平な評価及び登用の機会を設けており、各会議体でのモニタリング等を通じて公平な評価運用を継続してまいります。
(外国籍、障がい者雇用の推進)
当社グループにおける海外子会社では、現地在住の人材を積極的に採用しております。海外子会社の従業員を含む外国籍従業員と日本国内における日本国籍従業員とのコミュニケーションを活性化させ、拠点間での相互連携を通じ総合的な技術向上を図るため、英会話教師経験のある従業員による言語支援プログラムを導入しており、多様性を受け入れながらビジョンの実現へ向けた企業風土の醸成に努めております。また、障がい者しごと支援センターとパートナー契約を結び、印刷関連サービスにおける業務・訓練を通して技術と知識の習得だけではなく、作業環境を一般就職に近づけた訓練を実施することで直接雇用を推進する等、障がい者の就労機会の創出や活躍機会の拡大についても取り組んでおります。
b.次世代リーダー人材の育成と複利による報酬還元)
当社グループは、事業や組織拡張に伴う変化に対応しながら継続的な成長を牽引する次世代リーダーの育成に取り組んでおります。また、当社グループの競争優位性は組織・人であり、優秀な人材の確保のため、労働市場で競争力のある報酬水準を維持するとともに、中長期的な業績成長や企業価値の創出を引き出すためのインセンティブとして新株予約権制度及び譲渡制限付株式報酬制度を活用しております。
(人材育成の仕組みづくり)
当社グループは、中長期で創出したい事業価値から逆算して思考し、課題設定および解決に向かう取り組みとして、グループ全社横断の「プロジェクト制度」を実施しております。中長期的な投資の機会を追求し、継続成長への貢献が高いテーマを創出する本制度の活用や、連続的なM&Aによる拡張で実地の経営経験等の機会を創出していくことが、次世代リーダーの育成にも繋がっております。また、エンジニア目線でのサービス品質の向上や新たなイノベーションの創出を促進し、ソフトウエア開発力の強化を目的とした社内イベント「HACK WEEK(ハックウィーク)」を年1回開催しております。「HACK WEEK(ハックウィーク)」は、エンジニア職の従業員が通常業務から一時的に離れて、新たなテクノロジーを身に付けるとともに、それを適用した実用的なプロダクトの開発に集中し、新しい挑戦に取り組む機会となっております。
(長期株式価値と連動したインセンティブ設計)
当社グループでは、株式報酬制度を採用しております。従業員の成果に対する対価が長期株式価値の上昇を通じて享受できる仕組みであり、中長期的な企業価値向上への意識変革やエンゲージメントの向上が期待されます。2019年11月に譲渡制限付株式報酬 (RS) 制度を導入し、2022年12月より従業員に対しては株式報酬型新株予約権制度を導入、更には、一層の意欲及び士気を向上させ、組織の結束力をさらに高めることを目的として、業績目標連動型かつ中期インセンティブとして有償ストック・オプションを付与しております。
③指標及び目標
当社グループでは、人的資本に関する取組について、主な評価指標を定め、進捗をモニタリングしております。
| 2023年7月期 |
取締役に占める女性取締役の割合(注1,2) | 37.5% |
管理職に占める女性労働者の割合(注3) | 23.2% |
労働者の男女の賃金の差異(注3) | 49.2% |
男性労働者の育児休業取得率(注3) | 71.4% |
(注)1.提出会社単体における取締役の構成を示しております。
2.2023年10月26日開催の第14回定時株主総会において承認可決された取締役であります。
3.提出会社及び国内連結子会社における比率であります。
当社グループの従業員全体における女性従業員の割合は49.0%、管理職に占める女性従業員の割合は23.2%となっております。今後さらなる女性活躍の推進を実現するため、一定グレード(等級)以上の女性従業員の割合を2025年7月期末までに20%以上にすることを目指してまいります(2023年7月末時点16.3%)。また、男女の賃金差異は49.2%となっており、給与水準が相対的に高い職群の男性比率が高いことが差異に影響していると考えております。同一労働に対する賃金に格差はないため、積極的な機会の提供やジョブアサインにより格差の是正を目指してまいります。男性の育休取得率については、政府が2025年までに50%を達成するという目標を掲げておりますが、当社グループはその数値以上の水準となっており、今後も現状以上の水準を維持し続けることを目指してまいります。
(3) 気候変動に対する取組
当社グループは、中長期的な企業価値の向上、並びに持続可能な社会を実現していく上で、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと認識しており、環境負荷の低減と企業価値の向上の両立を実現していきたいと考えております。当社は、2021年4月にTCFD(注)による提言への賛同を表明するとともに、TCFD提言に基づく積極的な情報開示と透明性向上に努めております。
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ委員会において、気候変動に関する方針や重要課題への対応について検討を行い、その対応状況や特に重要な事項等については、年1回取締役会に報告され、取締役会の指示・助言のもとモニタリングを行っております。
②戦略
気候変動に関する事業影響を把握し、気候関連リスク・機会への適応力を強化することを目的として、TCDFが提唱するフレームワークに基づいたシナリオ分析を実施しております。主に国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)及び国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)等のシナリオを参考に、パリ協定を踏まえて低炭素経済に移行する1.5℃シナリオと、現状予想される以上に気候変動対策が推進されない4℃シナリオを中心に、2030年時点における外部環境の変化を予測し、分析を行っております。これによって特定した事業上のリスク、機会及び対応策は下表のとおりであります。
なお、分析の対象範囲は、当社主力事業であるラクスル事業(印刷事業)のみを対象としておりますが、今後は他の事業にも分析対象を拡大するとともに、ラクスル事業における分析結果についても外部環境や自社の取り組みの変化に応じて内容を見直ししてまいります。
(リスクと機会の特定)
分類 | 財務への影響 | 2023年における影響評価 | 利益影響度(注) | 対応策 | |
1.5℃ | 4℃ | ||||
リスク | 炭素税による運営コスト上昇 | 炭素税が導入され、排出量に応じた財務影響が発生する | 小 | 小 | 当社の排出量からみて影響は軽微ながらも、適切な脱炭素対策を講じる |
| 原材料コストの上昇 | 森林DD等の促進による違法伐採等の減少や違法伐採による紙の原材料価格の下落の解消によって紙の原材料価格が増加し、紙資源価格が上昇する | 小 | - | 紙の集中購買を実施することで、紙資源価格の上昇の影響を低減する |
|
| 世界的な紙需要の増加によって紙資源価格が上昇する | 中 | 大 |
|
|
| 森林破壊・火災等による森林資源の減少、パルプ等の生産悪化により紙資源価格が上昇する | - | 小 |
|
|
| ガソリン価格の増加による送料等の上昇 | - | 小 | 料金表の見直しや調整を実施することで送料等の負担を下げる |
|
| 印刷用アルミ版の原材料コストが上昇する | 中 | - | 従来の印刷機から、アルミ版を使用しないデジタル印刷機へ一部転換を図る |
| 消費者の嗜好の変化による商品とサービスの需要の減少 | 脱炭素の推進や廃棄物の削減による大企業顧客の離反が進み、売上が減少する | 中 | - | ・デジタル販促等のサービスへの移行需要を取り込む ・関係会社等への投資による集客デジタルコンテンツの拡充や紙印刷市場から集客市場及び印刷周辺領域への展開を進めることで、新たな収益源を確保する |
|
| 印刷市場(特に事務印刷)の市場の縮小が加速し、売上が減少する | 中 | - |
|
機会 | 消費者嗜好の変化 | 環境対応紙の需要が高まる | 中 | 小 | 環境対応紙の取り扱いを拡大することで、需要を取り込み、売上を拡大させる |
(注)利益影響度は、年間5億円未満の場合は小、5億円以上8億円未満の場合を中、8億円以上の場合を大として表示しております。
〔用語説明〕
(注) | TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略 |
| 気候関連財務情報開示タスクフォース。金融安定理事会(FSB)によって設立され、企業に対する気候関連リスク・機会の情報開示の促進と、低炭素社会へのスムーズな移行による金融市場の安定化を目的としている。 |
③リスク管理
気候変動に関するリスクと機会は、サステナビリティに関する事項を所管する部門において、社内の関係部門の協力のもと特定・評価を行い、サステナビリティ委員会に報告・提言し、全社的な気候変動への対応を推進してまいります。サステナビリティ委員会で挙がった気候変動に関わる重要な環境リスクや気候変動問題を含む社会課題については、リスク管理委員会と連携し、全社リスクに統合してまいります。
④指標及び目標
気候変動への対応として、温室効果ガスの排出量を測定・開示し、オフィス活動における温室効果ガスの排出量の削減に努めており、また、環境に配慮したシェアリングプラットフォームのデザインを通じ、エネルギー効率の改善を推進してまいります。Scope1,2におけるCO₂削減目標について議論を進めており、バリューチェーン全体における温室効果ガスの排出削減への貢献を含め、中長期でのCO₂削減目標に向けた指標づくりへの準備を行ってまいります。
気候変動に関する評価指標としているGHG排出量の実績については、以下のとおりであります。
| 単位 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 |
Scope1 | t-CO₂ | - | - | - |
Scope2 | t-CO₂ | 124 | 133 | 162 |
Scope1,2 CO₂排出量原単位(売上高当たり) | t-CO₂/億円 | 0.49 | 0.39 | 0.40 |
Scope3 | t-CO₂ | 48,525 | 56,939 | 71,491 |
Scope1,2,3の合計 | t-CO₂ | 48,649 | 57,072 | 71,653 |
Scope3 カバレッジ(注) | % | 100 | 91.0 | 81.7 |
(注)「Scope3 カバレッジ」は、Scope3の算出対象としている当社グループ会社の売上高の合計額が、当社グループの連結売上高に占める比率であります。
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