企業兼大株主SRAホールディングス東証プライム:3817】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、研究開発及びその成果に基づくビジネス展開から構成されます。

 株式会社SRAの先端技術研究室においては、研究開発分野としてソフトウェアに関わる基礎研究及び技術開発研究に取り組んでおります。前年度に引き続き高品質ソフトウェアに関する基礎研究、ソフトウェア検証に関わるモデル検査技術の研究開発及び諸科学の発展に寄与するコンピューティング技術の開発と公開をテーマとして、一部公的研究費助成金(科研費)も獲得しながら進めています。ソフトウェア技術を核としたデジタルトランスフォーメーションを、専門家との共同研究や国内外の研究コミュニティとの協力を通して、産業、教育、学術といった社会の多様な側面で推進するべく、オープンソースソフトウェアを基盤とする技術活用のための研究開発を継続しております。これらは、主に特定のセグメントに区分できない基礎研究であります。

 株式会社SRAのプロダクトサービス事業部は、自社製品・サービスの開発と販売を手掛けており、そのための技術開発や技術検証に取り組んでおります。当社グループが今まで蓄積してきた技術や業務の知見を活用した新たなビジネス創出を目指して研究開発を進めております。またSRA OSS合同会社はオープンソースソフトウェアのサポートビジネスや製品ビジネスを手掛けており、オープンソースソフトウェアの研究開発を通じて新たな製品サービスの創出やコミュニティに対する貢献をしております。これらは、主に販売セグメントに係る研究開発であります。

 当連結会計年度での研究開発は、当社のグループ会社である株式会社SRAの先端技術研究室及びプロダクトサービス事業部が中心に行っております。研究開発費の総額は270百万円であります。

(1) 高品質ソフトウェアに関する基礎研究

 先端技術研究室では、ソフトウェア開発研究の核として、形式仕様の研究開発を継続的に進めております。形式仕様はソフトウェアの仕様を数学的な道具を使って記述し、その特性を分析する技術で、AI時代においてもソフトウェアの信頼性や生産性を高める技術として期待されています。先端技術研究室は、形式仕様の中でも歴史が長いVDM(Vienna Development Method)の国際的な研究コミュニティと協力して、VDMの言語仕様の改訂などへの貢献を継続しています。また、当社独自の形式仕様研究として、信頼性や生産性に加えて操作性や有用性を高めることを目的に、UI技術やアジャイル開発技術、ライブプログラミング技術、プログラム自動生成技術などとの連携によって創造的なシステム仕様の策定を支援する開発環境 ViennaTalk の開発を継続し、オープンソースソフトウェアとして公開して無償で提供しております。

(2) ソフトウェアの正しさを検証する技術開発研究

 ソフトウェアの振る舞いを自動的に解析してその正しさを検査するためのモデル検査技術の開発研究を行っております。先端技術研究室では、生物の集団行動が引き起こす創発的な性質を利用する点を特徴とした研究を進めています。本研究テーマは、独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業において基盤研究(C)として採択され、2022年度から3年間の研究助成を受けております。

 当連結会計年度では、2022年度に開発した複数の集団の存在を仮定した技術を繰り返し適用することで,検証の漏れを順次低減する技術を新たに開発しました。開発した技術の有効性を確認して,その成果を海外の学術会議で発表しました。引き続き、検査性能のさらなる向上とユーザにとって使いやすい技術の実現を目指し、研究開発に取り組みます。

(3) 科学的コンピューティングのための技術開発

 先端技術研究室では、科学の諸分野にソフトウェア技術を通して貢献することを目指しております。様々な分野の学術研究者と協力して、研究を推進し研究成果を広く応用展開するための、プラットフォームとなるソフトウェアを開発しております。オープンソースソフトウェアとして開発を進めているマルチエージェントシミュレーション環境 re:Mobidyc は、生物学や環境学での数理モデルの構築と検証に特化したもので、現在、食料問題などに関わる研究に利用されています。また、データサイエンス分野においては、OLAP (OnLine Analytical Processing) 技術の応用を支援するための専用のデータ可視化ソフトウェア gOLAP を開発しております。量子化学の分野においても引き続き、膨大な量の化学反応経路のデータに対して、インタラクティブな探索や分子構造の類似性によるナビゲーションを提供するソフトウェアを開発しております。これら科学的コンピューティングの技術開発のうち、gOLAP に関するものは、独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業において基盤研究(C)として採択され、2023年度から研究分担者としての助成を受けております。

(4) オープンソースソフトウェア

 オープンソースソフトウェアに関しては、継続的に情報収集と整備を進めております。このような活動から得た様々な知見に、ソフトウェア工学の研究成果を組み合わせることにより、ソフトウェア開発プロジェクトの統合管理環境「ProjDepot」、テスト自動化支援環境「Testablish」などの自社製品を開発し、改良を続けております。グループ内の多くの開発プロジェクトがこの環境を利用しており、プロジェクトの開発状況の可視化と生産性向上に寄与しております。

 オープンソースソフトウェアのデータベースでグローバルに開発されている「PostgreSQL」においては、SRA OSS合同会社が開発に貢献しております。2名のエンジニアが開発貢献者として認定されており、日々、様々なPostgreSQLの開発に携わっております。また、SRA OSS合同会社はPostgreSQLに貢献する企業として開発コミュニティが選出するMajor Sponsor企業の16社のうちの1社としても認知されています。さらに、PostgreSQLのエンタープライズ活用を目的とした研究開発も行っており、多機能なクラスタ機能を提供する「Pgpool-II」や、増分ビューメンテナンスの機能を提供する「pg_ivm」をオリジナルのオープンソースソフトウェアとして開発・公開しています。

(5) 新規製品・サービスビジネス

 当社グループではビジネスモデル変革の一つとして自社の製品・サービスビジネスに取り組んでおります。

 株式会社SRAのプロダクトサービス事業部では、自社製品・サービスビジネスを推進し、サービスを主体とするビジネスモデルへのシフト、デジタルトランスフォーメーションへの対応などを積極的に進めております。

 当連結会計年度では、昨年度検証したスマートグラスによる点検プロダクトの製品化、従来のパスワード認証よりも安全かつ使いやすい認証方法であるFIDO2とWAFを連携させたプロダクトの製品化、ARKitのモーションキャプチャー機能を使った、スマートグラスでの拡張現実(AR)におけるコマンド操作の検証、大規模言語モデル(LLM)によるText生成の回答精度を向上させる検索拡張生成(RAG)ツールの開発、次期文教システム(UniVision)開発のためのローコード開発ツール作成を実施しました。社内で使用、検証し有効と判断したものを今後製品化する予定です。

 これらはいずれも、高度で高品質なソフトウェアの実現に有益となる技術・環境・ツールを目指して進めているものです。実務レベルへの適用を随時行いつつ、国内外の大学や研究機関との連携を通して最新の技術動向を取り入れながら、研究成果を継続的に構築していく実用型の研究です。これらの研究成果の一部は、コンサルテーションや他機関との協同研究開発作業等にも活かされております。

PR
検索