ワコールホールディングス 【東証プライム:3591】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。これらの将来予測には、不確定な変動要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ戦略
気候変動などの環境問題や人権問題はさらに深刻さを増しており、持続可能な社会に向けた取り組みが強く要請されています。当社グループでは、社会からの要請に応えることはもちろんのこと、複雑化・多様化する社会課題への取り組みを将来の「成長機会」として捉え、事業を通じて「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を目指す「サステナビリティ経営」を推進することで、企業価値の向上に努めていきます。
また、当社グループの企業価値向上を実現するためには、会社のあるべき姿や使命を明確にして行動できる社員を増やすことも重要な課題であります。経営理念の実践者を増やすことで、従業員一人ひとりの自己成長と企業成長を実現してまいります。
①ガバナンス
当社グループでは、「サステナビリティ経営」を推進し、事業を通じた「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を実現するため、2022年4月より、「サステナビリティ委員会」を設置しています。また重要なサステナビリティ課題への対応強化を図るため、「サステナビリティ委員会」傘下に、4つの「部会」を設置しています。「サステナビリティ委員会」は、定期的に取締役会と同日に開催し、サステナビリティ課題に対する具体的な取り組み施策の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行うこととしています。取締役会は「サステナビリティ委員会」から報告を受け、当社グループのサステナビリティ課題への対応方針及び取り組みについて指示を行います。なお、代表取締役社長執行役員が「取締役会」及び業務執行レベルの最高意思決定機関である「グループ経営会議」の責任者であり、「サステナビリティ委員会」の委員長を務めています(2023年6月28日時点)。
2023年3月期における「サステナビリティ委員会」の開催回数は、合計7回でした。主に、「サプライチェーンにおける温室効果ガスの削減」「環境配慮型素材の採用推進」「責任ある調達活動の推進」「サプライチェーンにおける人権尊重の推進」に対する課題共有と中期経営計画期間における具体的な活動内容と目標設定について議論を行いました。
推進部会について:
(カーボンニュートラル部会)
ワコールグループの事業活動における環境影響・環境リスクを低減し、自主的かつ積極的に環境保全の活動を推進するため、気候変動対応やバックオフィスの環境負荷軽減など環境課題に関する活動方針や取り組み、環境保全に関連する戦略投資案件を審議するとともに、進捗状況のモニタリングを行います。
(資源循環部会)
資源循環型社会の実現に向けて、サプライチェーン上の資源・資材の持続可能な利用及び省資源対策、廃棄物の削減・リサイクルを推進するため、環境配慮型資材の調達方針や品質基準を審議するとともに、生産や調達活動における廃棄物削減の進捗状況のモニタリングを行います。
(CSR調達部会)
ワコールグループのCSR調達に関する計画立案と進捗確認の責任を担い、「ワコールグループCSR調達ガイドライン」に定める内容の遵守状況を、製造委託先や原材料調達先の自己評価等によるモニタリングから、分析・評価フィードバック、是正・改善計画、フォローアップという一連のサイクルを機能させることによって、的確に把握するとともに、継続的に是正・改善を行う取り組みを主導します。
(人権・D&I部会)
人権方針に基づく人権尊重の責務が果たされ、その業務執行が適正に行われるよう、人権擁護に関わる教育啓発活動、および人権デュー・ディリジェンスの実行への助言・提言を行います。また、多様な社員を受け入れ、個々の能力を存分に発揮できる職場環境の実現に向けて、社内セミナーの開催をはじめとした各種施策を実施していきます。
②戦略
世界での人口増加、少子高齢化、デジタル革命の進行、グローバル化、気候変動や人権課題の深刻化など、将来の予測は難しくなっています。当社グループでは、中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」の策定にあたり、マクロトレンドや多様なステークホルダーからの要請事項を考慮に入れつつ、2030年までに想定される事業課題と社会・環境課題を洞察し、「解決すべき社会・環境課題」と「事業成長」の両評価軸からマテリアリティ分析(重要度評価)を行ったうえで、以下のマテリアリティ(重要課題)を設定しています。
マテリアリティ(重要課題):
対象 | 目的 | マテリアリティ(重要課題) |
顧客 | 顧客への提供価値の最大化 | ・パーソナライゼーションの追求による顧客体験価値の向上 ・事業領域拡大への挑戦 ・商品品質の深化とサービス品質の構築 |
従業員 | 従業員ひとりひとりの成長と、 働きがいの高い組織の構築 | ・自らの可能性を広げ、自信と誇りを持ち活躍できる人材への成長 ・共創・協業による高い成果を発揮できる組織づくり ・継続的な従業員の健康増進と健康意識の向上 |
環境 | 次世代に向けた地球環境の保全 | ・環境負荷を低減する事業活動の推進 |
社会 | すべての人が自分らしく活躍できる社会の実現 | ・社会課題を解決する共創イノベーションの推進 |
ガバナンス | 持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化 | ・透明性の高い経営の実践 ・リスクマネジメント体制の強化 ・収益性、資本効率の継続的改善 |
③リスク管理
当社グループの経営全般に関するリスクについては、代表取締役社長執行役員を統括責任者とし、グループ管理統括担当取締役を委員長とする「企業倫理・リスク管理委員会」(事務局は経営企画部)を設置し、重要リスクへの対応と定期的なモニタリングを行っています。また「企業倫理・リスク管理委員会」は、当社グループ全体のリスク管理体制の運営状況を定期的に取締役会へ報告を行っております。なお各事業部門や子会社で管理可能なリスクについては、各組織が事業活動の中で対応を行っています。
当社グループのサステナビリティ課題に係るリスクについては、「サステナビリティ委員会」及び各部会にて、直接操業及び一部上流・下流までを含むサプライチェーン全体への影響を短中長期的な視点で検証するとともに、それらの結果をさらに上部機関である「取締役会」に報告し、最終的に特定・評価するプロセスとなっています。また、リスクの管理についても「サステナビリティ委員会」及び各部会におけるモニタリングや達成状況の評価を通して実施しています。
④指標及び目標
当社グループは、「サステナビリティ経営」を推進し、事業を通じた「社会課題の解決」と「持続的成長」の両立を実現するため、11の戦略マテリアリティ(重要課題)に対応する指標を設定しています。また、目標数値については現在検討を行っており、2024年3月期中に開示する予定です。
顧客:顧客への提供価値の最大化
| 戦略マテリアリティ (重要課題) | 具体的な取り組み | 2030年までの非財務目標 |
1 | パーソナライゼーションの追求による顧客体験価値の向上 | お客さまの感動を生むために、お客さまとのつながりを増やし、お客さまから学ぶ | ワコールグループとつながりを持つ顧客数の拡大 |
顧客体験を向上させるワコールならではのサービスの体験人数の拡大 | |||
期待を超える商品と愛される商品をつくる | 顧客データを活用した新製品やサービス開発の推進によるインナーウェア事業の再成長 | ||
2 | 事業領域拡大への挑戦 | お客さまをあらゆる角度でサポートするための、新領域への挑戦 | レディースインナー以外の事業成長と収益力の向上 |
Well-being実現に向けた新規事業の創出 | |||
社内リソースの新領域への展開 | |||
世界のお客さまに感動を届けるための、グローバル成長の実現 | 海外での事業拡大 | ||
3 | 商品品質の深化とサービス品質の構築 | 時代の要求する品質管理体制および、品質レベルの追求 | 商品品質の継続的な監視と改善活動の実施 |
店頭・デジタルサービス品質の維持・向上 |
従業員:従業員ひとりひとりの成長と、働きがいの高い組織の構築
| 戦略マテリアリティ (重要課題) | 具体的な取り組み | 2030年までの非財務目標 |
4 | 自らの可能性を広げ、自信と誇りを持ち活躍できる人材への成長 | 世代・役職関係なく、主体的に自己能力を高め、熱意をもってチャレンジする人材育成 | 自発的なキャリアデザイン、スキルアップの取り組みの強化 |
熱意を持ってチャレンジできる人材育成と環境の整備 | |||
5 | 共創・協業による高い成果を発揮できる組織づくり | 多様な立場の人が協力し、ミッションを達成できる組織風土の醸成 | 多様な立場の人が協力できる労働環境の整備 |
会社のあるべき姿や使命を明確にして行動できる従業員の増加 | |||
6 | 継続的な従業員の健康増進と健康意識の向上 | 従業員のこころと身体の健康増進 | 「生産性」「心身の健康」の向上 |
健康への理解力(リテラシー)の向上 |
環境:次世代に向けた地球環境の保全
| 戦略マテリアリティ (重要課題) | 具体的な取り組み | 2030年までの非財務目標 |
7 | 環境負荷を低減する事業活動の推進 | 従業員・消費者双方における環境意識の醸成 | 事業活動におけるエコ活動の可視化 |
脱炭素社会の実現 | CO2排出量の削減 | ||
廃棄物削減の推進 | 製品廃棄率の低下 | ||
資源循環型社会の実現 | 環境配慮型素材の使用率向上 |
※詳細については、「(2)気候変動への対応」をご覧ください。
社会:すべての人が自分らしく活躍できる社会の実現
| 戦略マテリアリティ (重要課題) | 具体的な取り組み | 2030年までの非財務目標 |
8 | 社会課題を解決する共創イノベーションの推進 | 女性のQOL(Quality of Life)向上への貢献 | ブレストケア活動の推進 |
女性のQOL向上に貢献するニーズ(商品・サービス)対応とシーズ開発 | |||
ステークホルダーとの継続的な対話を通した女性のQOL向上への貢献 | |||
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 | ダイバーシティ課題(ジェンダーなど)の理解に向けた社内啓発活動の推進 | ||
ダイバーシティ課題(ジェンダーなど)の解決に向けた外部ステークホルダーとの対話、共創活動の推進 | |||
人権の尊重とCSR調達活動の推進 | 人権デュー・ディリジェンスの構築・実施、人権教育の推進 | ||
CSR調達活動の対象範囲拡大 |
ガバナンス:持続的成長の実現に向けたガバナンスの強化
| 戦略マテリアリティ (重要課題) | 具体的な取り組み | 2030年までの非財務目標 |
9 | 透明性の高い経営の実践 | 実効性の向上を実現する最適なコーポレート・ガバナンス体制の維持・構築 | コーポレートガバナンス・コードの実践 |
取締役会の機能発揮と多様性確保 | |||
企業価値を向上させる役員報酬制度の継続的改善 | |||
公正かつモチベーション向上につながる評価・報酬制度の構築 | |||
10 | リスクマネジメント体制の強化 | 法令遵守の徹底と高い倫理観を持った組織体の構築 | 企業活動における不適切な行動の防止、役員・従業員一人ひとりのコンプライアンス意識の向上 |
事業リスクへの着実な対応による組織レジリエンスの強化 | 重要リスクの選定方法や対応方針の見直し、DXや情報通信技術の運用に伴う情報セキュリティ対策の推進、事業継続体制(BCP)強化 | ||
11 | 収益性、資本効率の継続的改善 | 経営戦略の実行と役割権限の明確化 | 中長期戦略の実効性向上に向けた重要業績評価指標の管理強化と費用対効果の検証 |
成長の実現に向けた事業ポートフォリオマネジメントの実行 | |||
適時適切な意思決定を行う執行体制の構築 |
(参考)サステナビリティ委員会(推進部会)の具体的な活動について
※カーボンニュートラル部会、資源循環部会の活動については、「(2)気候変動への対応」をご覧ください。
CSR調達部会:
目的・役割 | CSR調達活動の推進(責任のある調達活動の推進) |
3カ年の活動方針(2023年3月期~) | ・「人権」「労働慣行」「環境」「倫理」など、社会的要求事項の的確な状況把握と継続的な是正・改善 ・実効性、合理性を伴った活動対象工場の拡大 |
2023年3月期 具体的な活動 | ・海外子会社における委託先工場でのCSR調達活動を開始 ・現地監査、ならびに援用監査の基準項目を改定 ・委託先工場で発生した課題に対する是正・改善活動の推進 |
人権・D&I部会:
目的・役割 | 人権尊重・D&Iの推進 |
3カ年の活動方針(2023年3月期~) | ・人権リスクの特定、人権デュー・ディリジェンスの実施体制の構築 ・改正障害者差別解消法、LGBTQ+顧客への対応方針の策定・実行 ・D&I推進に関するロードマップ策定・開示 |
2023年3月期 具体的な活動 | ・サプライチェーン上における人権課題に対して簡易アセスメントを実施 ・人権デュー・ディリジェンスの実施に向けて有識者ヒアリングを実施するとともに、3カ年の具体的な取り組み項目を検討・決定 ・D&I推進に向けて有識者ヒアリングを実施し、2024年3月期以降の取り組み内容を決定 |
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
地球や企業活動に重大な影響を及ぼす気候変動は、当社グループの経営にとってリスクであると同時に、新たな事業機会をもたらすものと考え、健全な企業としての発展と持続可能な社会の実現を目指して、環境課題の解決に向けた取り組みを推進するとともに、環境情報に関する開示の拡充に取り組んでいます。
温室効果ガス排出量の削減に向けて:
脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進め、サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量削減をより確実なものにするため、2021年よりワコール事業(国内)のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope3)の算定を開始しました。また、2030年に向けた国内事業所における温室効果ガス排出量(Scope1&2)の削減目標を開示したほか、2022年6月には、ワコール事業(国内)のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope3)の削減目標も開示しています。
削減プロセス:
現在、サステナビリティ委員会傘下のカーボンニュートラル部会が中心となり、温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向けた具体的な行動計画を検討しています。目標として掲げる国内事業所の温室効果ガスの排出量実質ゼロに向けては、流通センターに新たな太陽光発電システムを導入するほか、既存事業所においても順次再生可能エネルギーへの切り替えを進める方針です。一方、サプライチェーンにおける排出量の削減に向けてはサプライヤーとの協働が不可欠となります。削減に向けた行動計画やプロセスを検討するとともに、サプライヤーへの温室効果ガス排出量削減の働きかけを行う予定です。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応:
当社グループは、2021年9月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言へ賛同を表明しました。また、TCFDの提言に沿った、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目についての情報については、2022年6月末に開示しています。
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。詳しくは、「(1)サステナビリティ戦略 ①ガバナンス」をご覧ください。
②戦略
当社グループでは、分析可能なデータが揃った事業より順次シナリオ分析を実施し、気候変動問題のリスク及び機会の影響評価を行っています。
リスク:
当社グループの事業・戦略・財務計画などに影響の大きいリスクとしては、暴風雨、洪水など異常気象の激甚化や、炭素価格の上昇などがあると考えています。
機会:
当社グループは、製品廃棄の少ない製造・販売体制を構築するなど、環境に配慮した活動を推進しています。今後も「環境目標 2030」の達成を目指し、環境負荷の少ない事業活動を推進していきます。消費者や社会の環境に対する意識は高まっているため、当社グループのこのような事業活動は、売上拡大の機会になると考えています。
TCFD提言に基づくシナリオ分析:
当社グループは、TCFDの提言に従い、2023年3月期に気候変動に対するシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析ではグループ全体に対する売上高の比率が最も高い㈱ワコールを対象に、2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と対応策を検討しました。シナリオ分析の結果、2℃上昇時は環境意識の高い消費者からの支持の獲得などポジティブな影響がある一方で、炭素税の導入などの移行リスクが事業にネガティブな影響を及ぼす可能性があることがわかりました。また、4℃上昇時は暴風雨、洪水をはじめとする異常気象の激甚化などの物理的リスクが事業にネガティブな影響を及ぼす可能性があることがわかりました。今後も順次シナリオ分析の範囲を拡大し、グループ全体として詳細なリスク分析を行えるよう取り組みを進める予定です。
リスク・機会の種類 | 例 | 影響 | 対応策 | ||||
2℃ | 4℃ | ||||||
移行 | 政策・法規制 | 炭素税の導入 | リスク | 環境税導入により諸費用が増加 | 中 | - | ・再生可能エネルギーの導入とともに、省エネ・創エネ活動などの推進により、コスト増加を回避または軽減 ・サプライヤーと協働でCO2排出量削減を推進 |
電力小売価格の上昇 | リスク | 再生可能エネルギー導入などに伴う電力価格の上昇 | 小 | 小 | ・省エネ・創エネ活動などの推進により電力調達量を削減し、コスト増加を回避または軽減 | ||
評判 | 消費者意識の変化 | 機会 | 環境配慮型の当社製品への消費者需要の拡大 | 中 | 小 | ・再生繊維などの環境配慮型素材の使用比率を高めるなど、地球環境にやさしい事業活動を推進 ・品質の高いものづくりを推進し消費者に長く使用いただくことで、消費者の衣料廃棄量の削減へ貢献 | |
物理的 | 急性 | 異常気象の深刻化・増加 | リスク | 異常気象増加に伴う店舗営業日の減少 | 中 | 大 | ・CX戦略の推進によりビジネスモデルを変革。店舗の売上減少をECでカバーできる販売体制を構築 |
慢性 | 降雨日の増加や平均気温の上昇 | リスク | 気象パターンの変化に伴う在宅機会の増加、外出機会の減少 | 中 | 中 | ・ノンワイヤー商品など、在宅ニーズに対応する製品開発を強化 ・自社ECの利便性を高めることにより、消費者の購買機会及び意欲の低下リスクを軽減 | |
機会 | 中 | 中 | |||||
機会 | 気候変動に伴うインナーウェアへの意識の高まり | 中 | 中 | ・気候変動による消費者ニーズの変化を認識し、ニーズに対応する機能性製品の開発の強化 |
③リスク管理
気候変動に関するリスクは、サステナビリティ戦略のリスクに含めて管理しています。詳しくは、「(1)サステナビリティ戦略 ③リスク管理」をご覧ください。
④指標と目標
当社グループは、気候変動問題の解決と脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めるため、2030年に向けた独自の環境活動目標「環境目標 2030」を掲げています。
環境目標 2030
1.自社排出量(Scope1&2)「実質ゼロ」<対象:国内事業所>
温室効果ガスの自社排出量(Scope1&2)実質ゼロを目指し、順次再生エネルギーへの切り替えを実施
2.製品廃棄「ゼロ」<対象:㈱ワコール>
製品廃棄ゼロを目指すとともに、工場での残材料破棄削減に向けた取り組みを推進
3.環境配慮型素材の使用比率「50%」<対象:㈱ワコール>
再生繊維やリサイクル糸などに切り替えるなど、環境配慮型素材の使用比率を「50%」までに高める
4.サプライチェーン排出量(Scope3)「20%削減」<対象:ワコール事業(国内)>
温室効果ガスのサプライチェーン排出量(Scope3)20%削減を目指し、パートナー企業との取り組みを推進
なお、当社グループのCO2排出量は以下のとおりです。
(対象事業所:本社、スパイラルビル、浅草橋ビル、麹町ビル、京都ビル、新京都ビル、守山流通センター、伏見流通センター、㈱ワコールマニュファクチャリングジャパン(長崎・熊本・福岡・福井・新潟)
スコープ1 CO2排出量の推移(単位:t-CO2)
| 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
日本 | 1,784 | 1,611 | 1,736 | 1,701 |
対2020年3月期 |
| △10% | △3% | △5% |
スコープ2 CO2排出量の推移(単位:t-CO2)
| 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
日本 | 4,658 | 4,103 | 4,369 | 4,179 |
対2020年3月期 |
| △12% | △6% | △10% |
※海外事業については、自社排出量(Scope1&2)の把握から開始し、2025年3月期までに目標を開示する計画です。
※その他の環境データについては、当社ホームページをご覧ください。
https://www.wacoalholdings.jp/sustainability/environment/activities/#data
(参考)サステナビリティ委員会(推進部会)の具体的な活動について
カーボンニュートラル部会:
目的・役割 | 脱炭素社会の実現(環境負荷の低い事業活動の推進) |
3カ年の活動方針(2023年3月期~) | ・国内:温室効果ガス排出量の削減に対する行動計画の策定・実行 ・海外:温室効果ガス排出量の試算、削減目標の策定 |
2023年3月期 具体的な活動 | ・国内事業所の排出量ゼロに向けて、削減シナリオの立案に向けた研究活動を実施するとともに、パートナー企業を選定(2024年3月期に具体的な移行計画を策定) ・海外の全事業所(事務所・倉庫・工場)のエネルギーデータ取得 ・サプライチェーン全体の排出量削減に向けて、削減シナリオの立案に向けた研究活動を実施。強化して取り組むホットスポットを特定 |
資源循環部会:
目的・役割 | 資源循環型社会の実現と廃棄物削減の推進(㈱ワコール対象) |
3カ年の活動方針(2023年3月期~) | ・環境配慮型素材の使用比率の引き上げ(2023年3月期の使用比率17%を、26%まで引き上げ) ・製品廃棄の削減:1.1%水準(2020年3月期水準)へ回帰(2023年3月期の廃棄率1.1%) ・工場、仕入先における残材料の廃棄削減(目標:2021年3月期に対して約3割を削減) |
2023年3月期 具体的な活動 | ・環境配慮型素材の定義を検討(材料混用率20%以上の素材を、環境配慮型素材と定義) ・環境配慮型素材の使用率の目標値を策定 ・製品・残材料廃棄の削減目標値を策定 |
(3)人的資本
基礎研究、商品の企画・開発から材料調達、生産、販売に至るまでのバリューチェーンについて、その大半をグループ内のリソースによって築いている当社グループにとっては、「人材」は最も重要な経営資源であり、人的資本の最大化を目指すことは、経営上の重要な取り組みとなります。当社グループの従業員が「やりがい・働きがい・生きがい」を感じながら働ける魅力ある企業風土を実現することで、社員一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮し、生産性や競争力の向上といった組織の成果に結びつき、持続的な成長につながっていくものと考えています。
①ガバナンス
各事業会社が各社の事業戦略に基づき人事戦略を展開していくうえでは、個社の人事部門が主体となって、人事課題に対する具体的な取り組み施策を立案、実行し、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価検証というサイクルを回しています。一方、グループ全体の人的資本に関するガバナンスを有効に機能させるために、人権・DE&Iやコンプライアンスの観点を中心に、各社の取り組み、整備の状況について定期的にモニタリングを行い、状況に応じた指示や要請を行っています。
中核会社である㈱ワコールでは、社長を含む取締役が参加する「人材開発会議」を設置しており、人材戦略に関する方針の検討、策定を行っています。
②戦略
事業環境の不確実性がますます高まる中、ビジネスモデルの変革を早期に進めていくうえで、担い手となる人材に関する戦略の重要性は増すばかりです。とりわけ日本国内においては少子高齢化による労働力人口の減少が進み、これまで以上に人材獲得競争が激化することは確実であり、魅力ある企業であるための人材戦略を策定、実行していく必要があります。また、果断なく変革を進めていくためには、従業員個人のさらなる成長と、個の力を組織の力に結びつけるための環境や風土が必要です。
㈱ワコールにおいては、収益性の早期改善のための施策と並行して、中長期的に選ばれ、選ばれ続ける会社であるために、キャリア自律の支援・成長機会の提供(人材開発)、チーム力の最大化のためのマネジメント力強化(組織開発)、働きがいを支える制度・仕組み、DE&I、Well-beingの実現(風土醸成)の3つの軸で取り組みを進めていきます。
人的資本戦略(対象:㈱ワコール)
基本方針 | キャリア自律の更なる促進と働きがいが実感できる風土を醸成し、社員一人ひとりの個性・強みが発揮される”社員総活躍企業”を目指す |
求める人物像 | “自律革新型人材” 経営理念を尊重し、具現化できる人材 既成概念や現状の枠組みを見直し、熱意をもって革新できる人材 主体的に自己の能力を高め、新たな可能性にチャレンジできる人材 良好なチームワークを構築し、組織目標に貢献できる人材 健康的で健全な生活習慣を実践できる人材 |
経営戦略に基づく人的資本の課題 | <方向性> 少数精鋭の組織運営の実現=個の成長×組織力の向上×魅力ある風土の醸成 早期に収益力を改善するための要員計画マネジメントと並行して、中長期的な成長のための人材育成・組織開発・風土改革を実行する。 <重点課題> ①会社の成長を担う人材の獲得・育成・登用 ・事業ポートフォリオやビジネスモデルの変化に合わせた人材ポートフォリオに基づく、採用、育成を行う。 ・自律的なキャリア形成のための機会、時間の提供を拡大し、個の成長を支援する。 ②個の力を組織の成果に結びつけるためのマネジメント力の向上 ・サクセッションプランに基づく適正な登用・配置を強化する。 ・健全なフィードバック文化の醸成を通じ、マネジメント力・組織力の向上を実現する。 ③エンゲージメント・心理的安全性の高い組織風土の醸成 ・DE&Iを推進し、多様な個が公正な環境下で活躍できる心理的安全性の高い風土を醸成する。 ・公正かつ時代に合った人事・報酬体系を実現するとともに、登用・任用基準・プロセスを明確にする。 |
人的資本の最大化に 向けた取り組み | Ⅰ.人材獲得 |
Ⅱ.成長支援(育成・リスキリング・キャリア形成) | |
Ⅲ.マネジメント力の強化 | |
Ⅳ.DE&Iの推進 | |
Ⅴ.Well-beingの実現 |
人的資本の最大化に向けた取り組み
Ⅰ.人材獲得
当社グループは、先人たちが前例にこだわることなく今日の企業グループを築いてきたように、今後も大胆に、また果敢にチャレンジする風土を大切にしながら、新風を吹き込み新しい価値を創造する多様性の尊重こそが競争の源泉になると考えており、新卒採用と同様に経験者採用(第2新卒採用、キャリア採用等)にも力を入れております。㈱ワコールでは、今後も引き続き、経営幹部候補人材、グローバルやEC、DX等の専門人材の補完など、総合職の採用人員の3~5割程度を経験者採用としていく予定でおります。
㈱ワコールの採用状況(総合職):
質問内容 |
| 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
経験者採用の状況 | 男性 | 2 | 4 | 1 | 4 |
女性 | 6 | 6 | 1 | 6 | |
合計 | 8 | 10 | 2 | 10 | |
新卒採用の状況 | 男性 | 10 | 13 | 7 | 6 |
女性 | 13 | 16 | 16 | 10 | |
合計 | 23 | 29 | 23 | 16 | |
経験者採用比率 | 26% | 26% | 8% | 38% |
Ⅱ.成長支援(育成・リスキリング・キャリア形成)
当社グループでは、従業員一人ひとりの個性や強みが発揮される企業への変革を目指し、学びの機会の提供やキャリアアップの支援など、一人ひとりの成長を支援する各種研修制度を整えています。
<人材育成>
㈱ワコールでは、「ワコールの発展は、ワコールの社員一人ひとりの資質の向上とその協力によって実現する」という考え方のもと、経営理念を実践できる人材の育成を目的に、従業員のキャリア形成と能力開発を支援する研修や従業員の主体的な学びをサポートする自己啓発支援制度などにより、従業員の成長を支援しています。
また、モノづくり基礎学習等の品質や商品力を維持・向上させるための研修や、お客さまにご満足いただくための「コンサルティング力」を高める研修など、各部門特性に応じた人材育成を実施しているほか、海外の生産工場に日本から技術者を派遣して支援・指導するなど、競争力の高いものづくりの伝承や、グローバルベースでの品質や生産性の向上に注力しています。
新人材育成体系:
㈱ワコールでは、2019年4月より、経営理念を具現化できる自律革新型人材の育成と人が育つ風土醸成を目的に、新たな人材育成体系「WACOAL TERAKOYA」の運用を開始しました。新たな育成体系では、従業員の自発的なキャリア構築と継続的学習をサポートするため、階層別研修以外の研修を拡充するとともに、手挙げ制で参加できる機会を増やしています。研修内容もアウトプット中心の実践型研修に変更したほか、他企業との合同研修も実施することで、多様な視点を学べる内容としています。事業環境が変化する中で、経営理念を実践し新たな価値を創造できる人材の育成を通して、持続的な成長を実現していきます。
人材育成プログラム(一部):
プログラム名 | 実施目的 | 一人当たりの 研修時間 | 年間参加人数 | ||
2022年3月期 | 2023年3月期 | ||||
階層別研修 | 役割・資格の変化に伴う、期待役割の認識及びマインドセットを目的に実施します。同時に会社の方向性と自身のキャリアビジョンを考える機会とします。 | 1~6日 (研修による) | 811名 | 684名 | |
ビジネススキル | ビジネスマンとして求められる必須スキルを、社内のみならず社外人材との交流を通して学ぶことで、社内外で通用する普遍的なビジネススキルを体得できます。 | 7.5時間 | 58名 | 61名 | |
ワコールアカデミー | ワコールにおける社内ナレッジの共有、知識伝承、組織開発等を目的に社内外の講師による研修・セミナーを開催します。 | 7時間~ | 2,334名 | 1,217名 | |
Global Talent Development | 事業のグローバル化が進む中、グローバルコミュニケーションスキル(業務遂行能力、語学力、異文化適応力等)を発揮できるグローバル人材を育成します。 | 海外業務研修 | 2年 | 5名 | 4名 |
海外語学研修 | 6ヶ月 | ※ | ※ | ||
グローバルコミュニケーション研修 | 1日 | ※ | ※ | ||
セルフラーニング | Eラーニングを活用した「いつでも、どこでも」学べるコンテンツ提供と主体的な能力開発・自己研鑽を支援する制度があります。 | 自己啓発援助制度 | - | 36名 | 160名 |
通信教育・Eラーニング | - | 253名 | 2,138名 |
※新型コロナウイルス感染症の影響等のため、中断
<リスキリング>
㈱ワコールでは、事業成長や新規事業に必要なスキルを持った人材を育成するため、リスキリング(学び直し)による人材育成に取り組んでいます。2024年3月期においては内勤業務の労働生産性向上を目指したITリテラシーの底上げ策の一環としてオンライン学習ツールの運用を開始しました。
<キャリア形成>
㈱ワコールでは、自ら異動先を希望できる「社内ジョブチャレンジ」制度、グループ外の企業や団体への出向によって社内では得られない経験を可能にする「社外キャリアチャレンジ」制度を拡充し、従業員が自発的にキャリアを広げる機会を増やすことで、イノベーションを起こすことができる人材の育成に取り組んでいます。また、定期社内公募の対象部門を拡大し、グループ会社も対象とする事によって選択肢を広げるとともに、応募対象者も拡大し、従業員と組織双方が積極的にキャリア開発や人材獲得に動ける仕組みを取り入れています。
Meet My Careerプログラム:
㈱ワコールは、従業員が自らのキャリアを主体的かつ前向きに切り拓いていくことを目的にした、キャリア形成に伴う多様な制度・仕組みを拡充し、キャリア自律を促進することによって働きがいの向上と組織の活性化を目指す「Meet My Careerプログラム」を導入しております。このプログラムでは、従来型の自己申告やキャリア面談、研修・自己啓発、異動に加えて、ジョブチャレンジや社内公募、社外キャリアチャレンジ、長期休職、副業など、従業員が主体的にキャリア・可能性を切り拓くための機会を供する制度を体系的に示すことによって、従業員に対して多様な働き方の能動的な実践を促し、同時に今までと異なるスキルを身につけ、磨く機会を供し、個々人の多様なキャリア開発の実現を早めることを目指しております。さらに2024年3月期からは、総合職の新入社員の配属にあたり、受け入れを希望する部門と新入社員のマッチングを行うイベント(Meet My First Career)を開催する等、新たな取り組みを行っています。
プログラム名 | 実施目的 | 人数(人) | |
2022年 3月期 | 2023年 3月期 | ||
ジョブチャレンジ、社内公募 | 自律型人材形成の一環として 「ジョブチャレンジ」自らの意思と意欲を前提に自己異動希望を示す者に、ジョブローテーションの機会を支援し、組織全体の活性化につなげる。 「社内公募」組織自らが求める人材を得ることで部門の強化を図り、社内組織全体を活性化につなげる。 | 15 | 18 |
社外キャリアチャレンジ | 変化の激しい時代において、社外での就業経験を通して多様な視点や価値観を取り入れ、知識のアップデート、リスキルを行うことで、適応力やレジリエンスを高めることにつなげる。 | 19 | 38 |
副業申請者 | 1.社外での活動に携わる中で、自身のスキル・能力・専門性を高め、本業での発揮能力を高める。 2.今後のキャリアを見据えたうえで、社外ネットワークの構築及び新たな知見、スキルを獲得する。 3.自分の趣味や興味のあることに取り組み、更なる収入を得ることで多様なライフの充実を実現する。 | 40 | 38 |
長期休暇制度 利用者 | 「自己啓発・自己開発を目的とした場合」と「配偶者が転勤、または遠隔地に居住する者と婚姻した後」において、一定期間の休職を認めることにより、就業継続を支援する。 | 3 | 5 |
Ⅲ.マネジメント力の強化
中核会社である㈱ワコールは、売上の低迷と固定費率の高いコスト構造を背景に収益力が低下しており、トップラインの成長回帰と収益力の改善に向けて、中期経営計画で掲げる事業戦略の見直しを進めております。経営の実効性を高めるために、的確かつスピーディーに意思決定を行い、組織の成果に貢献するためのマネジメント力の強化は極めて重要な課題であり、改めてサクセッションプランに基づくマネジメント人材の発掘、育成、任用に取り組みます。また、組織力の強化の観点からは、健全なフィードバック文化の醸成も必要であると認識しています。ビジョンの実現と戦略を実行でき、かつ個の力を組織の成果に結びつけるためにメンバーを動機づけることができるマネジメント人材の確保・育成の取り組みを推進していきます。
<マネジメント人材の育成>
2024年3月期においては、新たにシニアマネジメント向けの経営理念浸透策の一環として実施するトレーニングと、全管理職を対象とした、イノベーションの源泉である多様性の推進と組織開発の基盤である心理的安全性、アンコンシャスバイアスの基礎知識の習得に取り組む計画です。
<評価制度の見直し>
㈱ワコールでは、人材の多様性を高めつつ、より生産性の高い少数精鋭の組織づくりを進めています。また、それらのベースとなる「公正な評価や処遇」、「組織の魅力を高め続けることができるリーダーの任用」についても制度及び運用の見直しを随時行っており、フィードバック文化の醸成ならびに評価結果への納得度を高めることで、組織力の強化を図っています。また、2024年3月期から新たに評価項目として経営理念(VISION 2030、アクション)に基づく要素を設定し、経営理念の浸透・実践につなげると共に、評価をコミュニケーションツールの一つとして活用し、対話の機会の充実を図っています。
Ⅳ.DE&Iの推進
当社グループは、従業員一人ひとりの働きがいを高める仕組みを追求しつつ、人的資本の量的・質的な適正化を図ることによって、健全な企業風土と強固な経営体質の構築を進めております。「相互信頼」の経営理念のもとに、多様な人材や価値観を受容し相互に信頼関係を深め、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる職場環境の実現を目指しております。引き続き、多様なキャリアパスや働き方の選択肢を拡充させるほか、新しい人事評価制度の導入を進めるなど、変化の激しい市場に対する組織の意思決定において、従業員の多様性を活かすことができる人材施策を実行してまいります。
<女性活躍>
㈱ワコールは、お客様そして従業員の多くが女性であることから、より多様な価値観を経営の意思決定に反映する必要があるため、女性の活躍推進を重要な経営課題と捉えています。そのため、女性特有のライフステージに応じた就労環境を整備し、より柔軟な働き方を促進するとともに、性別や年齢に拘らず能力や成果に応じて昇格・登用されるしくみを整備しています。なお、㈱ワコールは2021年2月に女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優良であるとして、厚生労働省から「えるぼし認定」を取得いたしました。
<女性の管理職への登用>
㈱ワコールでは、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しており、2025年3月期までに課長級以上の女性管理職比率を30%以上に高めることを目指しています。2023年4月1日時点の課長級以上の管理職に占める女性比率は29%となっています。
性別を問わず、早い段階からリーダー適性の高い人材の発掘を行い、経営幹部候補への育成機会の提供をさらに進めてまいります。また社員の自律的な成長をサポートしつつ、様々な事業、職務の経験を促して、継続的にキャリア意識の醸成に取り組み、経営幹部を担う人材の育成を進めます。
(詳しくは当社ホームページに掲載しておりますのでご参照ください)
:女性活躍推進法に基づく行動計画
https://www.wacoalholdings.jp/sustainability/resource/diversity/
:ESGデータ集(ダイバーシティ&インクルージョンほか)
https://www.wacoalholdings.jp/ir/library/esg_presentation/
:(厚生労働省HP) 女性の活躍企業データベース・「株式会社ワコール」
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/detail?id=284
<男女間の賃金差異>
女性活躍の一つの指標である男女の賃金の差異は、㈱ワコールで52.9%(正社員53.9%、パート・有期社員58.1%、総合職79.2%、管理職91.2%)となっています。㈱ワコールでは、同一の役割であれば男女で賃金の格差は設けていないため、この差は、①管理職における男性比率が約70%程度あること、②総合職採用、特に新卒採用における女性比率が年々高まっており、結果として入社10年以下の社員においては女性社員の比率が高いこと(10年以下110名、51.9%、10年超71名、15.9%)、③総合職に対し販売職の人数比率が高いことによるものです。
男女の賃金の差異の解消に向けて、総合職における新卒採用や経験者採用で女性比率を高めているほか、年齢や性別に関係なく能力による登用を行い、管理職や役員の女性比率を高めてまいります。
<外国人の管理職への登用>
当社グループは、世界の国や地域で事業を営む企業グループとして、米国や欧州、中国をはじめとする海外各法人の代表(社長)及び重要な経営ポストに現地人材を登用しております。また、㈱ホンコンワコール、フィリピンワコール㈱及び㈱インティメイツオンライン(米国)の代表(社長)は女性が務めております。今後も引き続き、海外各市場での顧客視点による事業拡大、競争優位性の強化のために、国籍を問わない多様な現地人材の採用と重要な管理職ポストへの登用を継続的に推進してまいります。
<ワークライフバランス>
㈱ワコールでは、従業員が豊かな人生を送り、仕事において持てる能力を最大限に発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。この取り組みの一つ、仕事と育児の両立支援では、当事者だけでなく周囲でサポートするメンバーの双方にとって働きやすく働きがいのある職場を目指し、制度や風土の整備に取り組んでいます。また、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいた行動計画を策定し、目標達成に向けて取り組みを行った結果、2018年には3回目の「くるみん」認定に加え、「プラチナくるみん」の認定を取得しました。今後は、従業員が仕事と家庭だけでなく社会とのつながりを積極的に持つことによって、従業員個人の中での経験やスキルの多様性を増し、仕事におけるイノベーション創出につなげられるよう、従業員が自身の時間の使い方を柔軟にできるような仕組みも作っていく予定です。
<障がい者雇用>
当社グループでは、全員がいきいきと働き続けるために必要な研修の実施や、一人ひとりの声を聴くための個別面談を通じて、環境改善、就労支援をしています。2018年2月には、障がい者の雇用促進と活躍機会の創出を目的にワコールアイネクスト㈱を設立し、2018年12月に障害者雇用促進法に定める特例子会社の認定を受けました。
ワコールアイネクスト㈱では、業務範囲を限定せず、一人が複数の業務を担当する「マルチタスク」や、業務を分業して複数で請け負う「ワークシェア」など、個々人の能力開発を促す柔軟な働き方を採用し、一人ひとりがやりがいを持ち、成長を実感できる職場の実現を目指しています。法定雇用率を守ることは企業として必要なことですが、数値としての目標ではなく、ワコールの掲げる相互信頼のもと、すべての人が活躍し、成長できる職場づくりにグループ全体で取り組むことで、多様性を活かす社会の実現に貢献していきます。
:障がい者雇用や再雇用制度等については、当社ホームページをご参照ください。
https://www.wacoalholdings.jp/sustainability/resource/diversity/
Ⅴ.Well-beingの実現
中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」で掲げる「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを実現するには、重要なステークホルダーである従業員のやりがいを高め、組織全体の生産性を向上させることが不可欠です。
㈱ワコールでは、従業員一人ひとりの働きがいや幸福度の向上こそ、高い生産性を実現する原動力と捉え、従業員とのエンゲージメント向上の一環として、Well-beingの実現のための施策を実行していきます。
<多様な働き方の推進>
㈱ワコールは、リモートワークの部門特性に合わせた積極的な活用、フレックスタイム制勤務の促進、勤務地限定制度の運用などを組み合わせ、いかに労働生産性を高めることができるかといった意識と行動変容を求めた取り組みを推進しております。実績・成果を重視する組織改革を進める一方で、多様な意見、価値観を認め合いビジネスパートナーとして個々を尊重する組織風土づくりに注力しております。新型コロナウイルスの感染予防対策として一気に普及したリモートワークですが、5類移行後も「成果・パフォーマンスを最大化するためのワークスタイル」として部門特性に応じた活用を継続します。また2023年4月からはスーパーフレックスタイム制をスタートさせるなど、引き続き働き方改革を進めていきます。
<健康経営>
㈱ワコールでは「社員の健康は、持続的成長のための重要な資産」と位置づけ、会社・健康保険組合・労働組合が三位一体となって、健康経営を戦略的に推進しています。「VISION 2030」では、「継続的な従業員の健康増進と健康意識の向上」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げています。健康経営の推進に向
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