企業兼大株主東洋紡東証プライム:3101】「繊維製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」というビジョンを掲げています。「素材+サイエンス」として、自社保有のコア技術のさらなる進化に加え、積極的なオープンイノベーションの考え方の下、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。

 当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究開発部門と、中長期的視点から次代を担う新事業・新製品・新技術の創出を図る全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントはイノベーション推進会議の方針のもとイノベーション戦略部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。

(フィルム)

 包装用フィルム分野においても、環境配慮商品に対するニーズが高まっており、バイオマス原料を使用した“バイオプラーナ”として、ポリエステル、ナイロン、シーラントの各該当フィルム製品の採用も拡大しています。薄肉化(プラ減量化)では、新機台立ち上げに伴い開発を進めている、高耐熱・高剛性のポリプロピレンフィルム“パイレンEXTOP”のうち、F&Gタイプと超高耐熱タイプについて試験販売を開始しました。その他、ナイロンやシーラントフィルムでも薄肉化の開発に取り組んでおり、包装材の減容化・モノマテリアル化を促進し、循環型経済の実現に貢献できるよう努めていきます。

 工業フィルムでは環境に配慮したリサイクル原料を使用したフィルム製品“クリスパー”、“カミシャイン”、“リシャイン”の開発・改良、販売促進に加え、環境負荷の少ないリサイクルシステムの開発も積極的に進めています。また、バイオマス原料を用いたポリエステルフィルムの開発を推進しています。さらに電子情報通信分野、自動車分野で拡大しているセラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”においても、薄層化による減量化、リサイクルによる環境対応に注力しています。また、液晶ディスプレイに最適な超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”は、既存設備改造による増産検討およびバイオマス原料による新製品の開発を積極的に進めています。加えて、力学的・熱的特性に優れたポリエチレンナフタレートフィルム“テオネックス”の開発を進め、自動車分野やエネルギー分野に貢献する商品としていきます。

 以上、当事業に係る研究開発費は41億円です。

(ライフサイエンス)

 感染症診断領域では、SARS-CoV-2、インフルエンザ、RSVをひとつのデバイスで同時に判定できる簡易抗原検査キットの開発に成功し、販売を開始しました。また、研究試薬領域では、次世代シークエンサーでより詳細な遺伝子発現解析が可能になるキットの開発に成功し、販売を開始しました。

 医療機器分野では、2024年2月に医療機器開発推進のためのメディカル研究所が竣工し4月より運用開始しました。骨再生誘導材“ボナーク”は、歯科領域での展開に加え、新たに口腔外科領域の先天性疾患である口唇口蓋裂に対する保険適用申請を行いました。

 血液浄化領域の製品“リムサイト”は厚生労働省より製造販売承認を取得しました。さらに血液浄化商品群の拡充のための製品開発を進めています。

 以上、当事業に係る研究開発費は16億円です。

(環境・機能材)

 モビリティ分野において、東洋紡エムシー株式会社は、OEM(完成車メーカー)へ直接アプローチして共同開発を進める新組織「モビリティ事業推進ユニット」を立ち上げました。先行開発段階からそのニーズをつかみ、一体となって開発に取り組むことで、より付加価値の高い製品をグローバル市場へ投入していきます。この新組織は、東洋紡エムシー社長直轄の営業・開発一元組織で、営業メンバーによるプリセールスグループと開発技術者による先行開発グループで構成されています。重点テーマを①質量低減金属代替(軽量化)②次世代内外装(樹脂化・機能性)③次世代環境対応(リサイクル)④新素材・新技術(加工技術の深化)⑤フッ素代替(規制対応)とし、量産開発段階における素材提供ではなく、次世代自動車の企画構想段階からOEMと一体となって共同開発を進めます。

 樹脂・ケミカル分野では、電子材料の接着剤用途向けに、“ビトリマー(Vitrimer(※))”と呼ばれる新しい架橋樹脂を応用することで、溶剤フリーで常温流通(輸送・保管)を可能にした環境配慮型のポリエステル系高耐熱接着シートを新たに開発しました。電子材料向けの接着剤用途などで展開する共重合ポリエステル樹脂“バイロン”に、ポリマー間の架橋状態を維持しながら熱可塑性樹脂のように圧力や熱などに応答可能な“ビトリマー”の特徴を応用することで、本接着シートの製品化を実現し、電子材料メーカー向けにサンプル提供を開始しました。“ビトリマー”の特徴を生かすことで再成形性・自己接着性・自己修復性などを有する高機能なポリマーが実現できると考えており、接着シートに留まらず、積極的に研究開発を進めていきます。(※)“Vitrimer”はFONDS ESPCI PARISの登録商標です。

 環境・ファイバー分野では、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けて経済産業省が立ち上げた産官学の協議体「サーキュラーパートナーズ(Circular Partners)、略称:CPs」に参画しました。工場のVOCガスを回収・再利用する装置の性能向上に取り組むと共に、環境に配慮した三次元網状繊維構造体“ブレスエアー”の新製品(2製品)の開発を行っています。1つは、水平リサイクル型三次元網状構造体“ブレスエアーメビウス”、もう一つは生分解性樹脂を用いた“テルスエコー”です。従来品である“ブレスエアー”は軽量・高反発で、耐久性に優れることから、1996年の上市以来、一般用・業務用寝具、新幹線などの鉄道車両や船舶の座席シート、オートバイやベビーカーなどの幅広い用途で採用されてきました。新製品(2製品)もその特性を引き継ぎます。今後、サーキュラーパートナーズへの参画を通じて、リサイクル原料の一層の活用やリサイクル技術の高度化といった取り組みを推進するとともに、他の会員との連携を強化し、資源循環に向けたエコシステムの形成・参画を加速することで循環型経済の早期の実現に貢献できるよう努めていきます。スーパー繊維“イザナス”は、洋上風力発電設備の係留索用途として、高耐クリープ性を有する原糸の開発を進めており、採用に向けた実証実験も控えています。中空糸型正浸透膜(Forward Osmosis=FO膜)は、デンマークのベンチャー企業SaltPower社が世界で初めて実用化に成功した浸透圧発電プラントに採用され、稼働を開始しました。また、海水淡水化においても浸透圧差を駆動力として利用するFO膜法は、従来の蒸発法やRO膜法に比べて、少ない電力で海水から真水を取り出すことができます。当社グループのFO膜を採用したトレビ社(Trevi Systems Inc.)の海水淡水化実証実験(米・ハワイ州)が終了し、海水から1日当たり500㎥の真水を造り出すことに成功、海水からの真水回収率は65%を超えました。当社グループはトレビ社への出資を通して、世界の水不足をはじめとする環境課題の解決に貢献していきます。

 以上、当事業に係る研究開発費は49億円です。

(機能繊維・商事)

 衣料繊維分野では、持続可能な商品開発としてナイロン工場で発生する屑を再利用するマテリアルリサイクルのほか、産業廃棄物をケミカルリサイクルによりバージン原料に近づけた“looplon”シリーズの商品拡大中です。

 また、ポリエステル分野でも製造工程中にでる廃材や廃棄製品を脱色させてからポリエステル原料に戻し再度ファイバー化する“T2T”を開発しており、廃棄焼却によるCO削減や化石原料使用低減に貢献しています。

 工業材料分野では、安全・防災・環境対応資材として、断熱シート製品の拡販、寒冷紗の改良、FRP型保護材開発、新エネルギー要素技術開発、塗膜防水および路面緑化の検討を行っています。

 機能資材分野では、第2種医療機器製造販売業、化粧品製造販売業、医薬部外品製造販売業の各許可証を得て、今後商品の拡大を積極的に行います。

 機能樹脂分野では、リサイクルPET安全コーン“ECONEO”の上市を行いました。

 エアバッグ用基布事業では、カーボンニュートラルの取り組みとして、植物由来のバイオ原料やリサイクル原料によるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を使った新規織物の開発に取り組みます。又、製造工程におけるCO削減を目指してタイの織物工場に太陽光発電システムを導入します。尚、現在主流のナイロン織物に関しましては、昨年稼働したタイのナイロン原糸工場で生産された原糸を使用してグローバルに安定した織物供給体制構築に取り組んでいきます。

 以上、当事業に係る研究開発費は4億円です。

(全社共通)

 イノベーション部門においては、全社成長戦略(ソリューション志向)に基づいた価値提供領域及び大型テーマの設定とテーマ推進の加速をはかりました。

 全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションなどデジタル技術を用いた解析業務を通じて、研究開発全般および当社の製造、販売活動をも支援する全社インフラとしての機能も有しています。また、総合研究所に設置したデジタル戦略室の活動においては、MI(Materials Informatics)技術の展開を所内全域に広めており、各研究員のMI技術能力の向上とともに、開発実務への応用を進めました。

 一方、研究開発の中心拠点である総合研究所では所内インフラのリニューアルを進めており、第一期工事として2023年1月に竣工した「パイロットプラント棟」の運用を開始しました。

 具体的な研究開発例として、東洋紡エムシー株式会社と共同開発した電子材料の接着剤用途向け環境配慮型ポリエステル系高耐熱接着シートや、細胞が分泌し細胞間の情報伝達や細胞の修復に重要な役割を果たすことが明らかになっているエクソソームを精製する精密ろ過膜の開発が挙げられます。今後、社会課題の解決に向け、早期の市場投入を目指した研究開発を加速していきます。

 新規事業企画・開発においては、引き続き、オープンイノベーションの考え方の下、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を積極的に進めました。また、2022年4月に神戸大学と、同年6月には大阪公立大学と包括連携協定を締結し、それぞれの大学と「環境、ライフサイエンス分野における共同研究の成果を社会に実装する」こと 、「大阪を起点とした地域社会の発展、社会課題の解決に向けた貢献を目指す」ことを狙いとした取り組みを進めています。

 以上、当事業に係る研究開発費は43億円です。

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