企業兼大株主J.フロント リテイリング東証プライム:3086】「小売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

記載された事項で、将来に関するものは、有価証券報告書提出日現在(2024年5月29日)、入手可能な情報に基づく当社の経営判断や予測によるものです。

(1) 経営方針

当社グループは持株会社体制の下、大丸、松坂屋、パルコの店舗ネットワークや顧客基盤などの経営資源を最適かつ有効活用するとともに、時代の変化に的確に対応し、顧客満足の最大化と効率経営の徹底を通じ、リテール事業(百貨店・SC事業)をはじめ既存事業各社の競争力と収益力の向上を図ります。

加えて、より成長性のある分野に資源配分を行っていくなど、リテール事業を中核に競争力と収益力に優れた事業群でバランス良く構成されるポートフォリオへの見直しを進め、“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”というグループビジョンの実現に挑戦します。

(2) 経営目標

2024年4月15日に、当社グループは「2024-2026年度 中期経営計画」を公表しました。

1.経営数値目標

2026年度に連結事業利益520億円、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)8.0%以上、ROIC(投下資本利益率)5.0%以上、また、非財務目標として、温室効果ガス排出量58.0%削減、女性管理職比率31.0%達成を目指します。

 

2026年度目標

2023年度実績

連結事業利益(IFRS)

520億円

443億円

連結ROE

8.0%以上

8.1%

連結ROIC

5.0%以上

5.1%

温室効果ガス排出量※1

▲58.0%

▲57.5%

女性管理職比率※2

31.0%

22.5%

※1 Scope1・2(2017年度比)、2023年度実績は2024年5月29日時点の概算値

※2 2024年3月1日現在 26.2%

2.財務政策

中長期的な資本収益性の向上を図るため、収益性を伴う成長の実現、自己資本額の適正化及び株主還元の強化に取り組みます。

本中期経営計画では、3年間で2,200億円の営業キャッシュ・フロー(使用権資産に係る減価償却費を含む)を創出し、うち1,750億円を設備投資及び成長戦略投資に充当します。

投資は2030年を見据え、中核のリテール事業に加え、グループシナジーの具現化に向けたデベロッパー事業への先行投資、また成長戦略投資に重点配分します。株主還元については、連結配当性向40%以上の配当と柔軟かつ機動的な自己株式の取得により自己資本の適正化に取り組んでまいります。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は新たな経営体制のもと、2030年を見据えた中期経営計画(2024-2026年度)をスタートさせました。

前中期経営計画(2021-2023年度)では、コロナ影響が長期化したものの、社会・経済活動が正常化に向かうなか、回復基調に転じた国内消費やインバウンド需要を着実に捉えるべく、主力の百貨店・SC事業を中心に重点戦略・施策、また固定費削減など経営構造改革を着実に推進しました。これらの結果、利益水準はコロナ前の水準に復活し、財務体質も改善するなど、前中期経営計画で掲げた経営数値目標を達成しました。

一方、当社を取り巻く経営環境は、地政学リスクの顕在化や海外経済の減速懸念、物価や金融市場の動向など不確実性が増しています。また、人口減少や所得・消費の二極化の進行、テクノロジーの進展、環境や社会課題への意識の高まりなど、コロナ禍を経た生活者の消費への意識、行動は大きく変容しています。

本中期経営計画の策定にあたり、当社はこれらの環境変化を企業変革の好機と捉え、サステナビリティ経営を基軸に、「2030年に目指す姿」を描き、本中期経営計画において取り組むべき重点戦略を定めました。

当社は、2030年を見据えた飛躍的成長に向け、百貨店・SC事業などリテール事業を中核に、グループの力を結集し、お客様をはじめステークホルダーの皆様と共に、新たな価値を提供し続ける企業グループへの進化を図ります。

本中期経営計画では、これら経営の方向性を踏まえ、百貨店・SC事業など「リテール事業の深化」、飛躍的成長に向けた「グループシナジーの進化」と共に、これらの戦略の実効性を高める「グループ経営基盤の強化」に集中して取り組みます。

<2030年を見据えた経営の方向性について>

当社は、グループビジョン“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”の実現に向け、環境や社会課題に向き合い、事業を通じて解決を図るサステナビリティ経営を基軸に、企業活動を推進しています。また、当社の強みは、全国主要都市を中心とする優良な顧客基盤や店舗不動産、ステークホルダーの皆様とのつながりや信頼、そして百貨店やPARCOなどで培ってきた商業プロデュース能力や目利き力と認識しています。

 今後の経営の方向性を定めるにあたり、これらの当社が有する強みと重要視する経営環境の変化を踏まえ、「2030年に目指す姿」を描きました。

当社はリテール事業を中核に、「3つの共創価値」を提供し続ける「価値共創リテーラーグループ」への進化を図ります。

1)当社が重要視する経営環境の変化

消費

・主要購買層の世代交代、グローバル化の進展(インバウンド需要など)

・こころを充足させる「共感・応援・信頼のつながり」への欲求の高まり

・生産・消費のサイクルから、「循環」意識へのさらなる高まり

市場

・国内人口減少、所得格差の進行

・都市機能の更新や集約・まちづくりが進行

・地域経済の担い手の減少、地域独自の伝統や文化への関心の強まり

社会

・気候変動など環境問題の進行、地政学リスクの顕在化

・人や地域とのつながりが希薄化、デジタル上でのコミュニティが台頭

・労働力不足の深刻化、仕事選びでも自己実現、社会貢献などをより重要視

2)2030年に目指す姿

①3つの共創価値、マテリアリティ

当社が有する強みを基盤に、従来の枠にとらわれず、お客様の心を動かす新たな価値を創出するとともに、街の魅力・活力を高め、持続可能な環境や社会づくりに誰もが貢献できる文化を醸成します。

リテール事業を中核に、お客様をはじめステークホルダーの皆様と「共創」の輪を広げ、3つの共創価値を提供し続けます。

「感動共創」:顧客、従業員と共に、感動を生み分かち合う

「地域共栄」:地域の魅力を高め、地域にとって必要不可欠な存在となる

「環境共生」:環境と共に生きる社会づくりに、誰もが貢献できる文化を醸成する

上記の3つの共創価値に基づき、マテリアリティの見直しを行い、5つのテーマを特定しました。これらマテリアリティへの取り組みを事業戦略と一体となり推進し、企業の持続的成長とステークホルダーの皆様の「Well-Being Life(心身ともに豊かなくらし)」を実現します。

当社のサステナビリティについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

②戦略の方向性

『国内外の「高質・高揚消費層」からの圧倒的な支持を得て、

3つの共創価値を提供し続ける「価値共創リテーラーグループ」へ進化する』

消費の多様化が進み、求める商品やサービスは画一的でなくなった今、当社は、「高質・高揚消費層(自身のこだわりや価値観を満たす、高質で心が高揚する消費や体験を嗜好する全ての生活者)」に、3つの共創価値を提供し続ける「価値共創リテーラーグループ」への進化を図ります。

これらの実現には、従来に増してグループ一体となり、当社の強みを拡張していく必要があります。このため、リテール事業の深化と共に、以下の「顧客」「エリア」「コンテンツ」の3つの領域でグループシナジーを追求し、飛躍的な成長を目指します。

<顧客シナジー>

優良な顧客基盤の深耕に加え、海外顧客やMZ世代など新たな顧客とのつながりを強化します。店舗や事業会社、地域を越えてお客様とつながり、生涯を通じてお客様から選ばれるパートナーであり続けます。

<エリアシナジー>

全国主要都市の店舗不動産や事業基盤をグループ横断で活用し、街の魅力化に貢献します。特に、7つの重点エリア※では、百貨店やパルコ店舗の個性を磨き上げると共に、中長期の開発計画、エリア内の顧客連携や回遊促進などを通じて、街の賑わいの創出、さらなる魅力向上に取り組みます。

 ※重点エリア:札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡

<コンテンツシナジー>

これまで培ってきた目利き力や調達力、また地域やお取引先様、クリエイターとのネットワークを融合し、国内に加え、海外やデジタル領域での事業展開など、リテール事業の新たな成長に向けた自社コンテンツの開発を推進します。

上記の実現に向けて、新たな価値を生み出す人財交流やシステム統合など、グループの力を結集する経営基盤の強化に取り組みます。

<2024-2026年度 中期経営計画>

1)中期経営計画の位置づけ、全体構成

・「2030年に目指す姿」の実現、中長期の成長を確かなものとする「変革期」と位置づけます。

・このため、本中期経営計画では主力のリテール事業(百貨店・SC事業)を中心に利益創出を図る一方、グループシナジーの具現化に向けた先行投資、成長戦略投資を拡大します。

・重点戦略として「リテール事業の深化」「グループシナジーの進化」、併せて「グループ経営基盤の強化」に集中して取り組みます。

2)経営数値目標

「変革期」と位置づける本中期経営計画の最終年度(2026年度)の財務目標として、連結事業利益 520億円、連結ROE 8.0%以上とします。また非財務目標として、温室効果ガス排出量58.0%削減、女性管理職比率31.0%の達成を目指します。

3)財務・資本政策

中長期的な資本収益性の向上を図るため、「収益性を伴う成長の実現」と「自己資本額の適正化、株主還元の強化」に取り組みます。

①収益性を伴う成長の実現

・連結はROE経営、事業セグメント別ではROIC経営を推進します。2030年を見据えた成長投資を拡大する一方、成長性と収益性に基づく投資管理の徹底などにより、収益性を伴った成長を実現します。

・本中期経営計画における投資計画では、リテール事業に加え、グループシナジーの具現化に向けたデベロッパー事業への先行投資、また成長戦略投資に重点配分します。

②自己資本額の適正化、株主還元の強化

・事業成長による利益創出に加え、資本収益性の継続的な向上を図る財務基盤を構築します。

・本中期経営計画では、連結配当性向40%以上の配当と自己株式の取得による自己資本額の適正化、株主還元の強化を図ります。

4)中期経営計画の骨子

①リテール事業の深化

A.国内・海外顧客層の拡大

・百貨店事業では、アプリを活用したお得意様向けサービスの対象拡大や外商活動の広域化など、百貨店外商を基盤とする顧客基盤の拡大に取り組みます。またパルコ店舗などグループとの外商連携を推進します。

・SC事業では、アプリ会員と共に、新カードの発行を契機とする会員獲得を、JFRカードとの連携により強化推進します。

・百貨店・SC事業において、訪日外国人観光客の各店への送客や情報発信の強化に加え、アジアを中心とする海外企業との提携による顧客連携や店舗施設の相互利用など、海外顧客との関係強化を図ります。

B.顧客接点の魅力向上

・百貨店事業では、顧客接点の起点となる店舗の魅力向上を図り、各地域での競争優位性を確立します。松坂屋名古屋店をはじめ基幹店舗を中心に、重点カテゴリーの継続強化に加え、MZ世代など次世代顧客やマーケット変化に対応した売場づくり、また高質で快適な店舗環境、環境に配慮したデザインなど空間価値の向上に取り組みます。

・デジタルを活用した顧客接点の拡充に向けて、百貨店アプリやお得意様向け専用サイトのリニューアルを通じた顧客コミュニケーションの高度化などに取り組みます。

・SC事業では、パルコ独自のブランド価値、来店価値の向上を図るため、MZ世代や海外顧客からの支持拡大に向けた戦略改装を、重点4店舗を中心に実施します。渋谷・心斎橋PARCOでは初の大型改装を実施するほか、名古屋PARCOではエリア最大級のエンタテインメントやポップカルチャーの集積、次世代ファッションの導入などに取り組みます。

・パルコ店舗・オンラインでの顧客データの全社活用による顧客への発信強化、会員向けの新たなサービスの導入など、顧客接点の魅力化を図ります。

C.高質・高揚消費層へのコンテンツ拡充

・百貨店事業では、国内・海外顧客から支持の高いラグジュアリーブランドや時計などの継続強化に加え、ファッション、美や健康など、マーケット変化に対応した新たなライフスタイルを提案します。

・また、富裕層マーケットへの対応強化に向けて、外部企業との協働による新たな商品やサービスの拡充などに取り組みます。

・SC事業では、店舗改装を通じたジャパンポップカルチャーゾーンの展開や百貨店との連携によるブランドの導入等に加え、パルコの強みである演劇や音楽、映画、またeスポーツなどデジタルを含めたエンタテインメントの強化を図ります。

②グループシナジーの進化

A.グループ顧客基盤の拡大

・本中期経営計画期間において、アプリの会員拡大と共に、GINZA SIXやPARCOなどの自社カード発行業務をグループに集約します。また、グループ決済基盤の確立を契機に、グループ顧客基盤の拡大を図り、顧客のLTV(Life Time Value : 顧客生涯価値)の向上に取り組みます。

・事業や店舗を超えた顧客連携を進めるほか、重点エリアを中心に顧客データベースの分析・活用などグループ顧客戦略を立案、推進します。

B.エリアの価値最大化

・7つの重点エリアのうち、本中期経営計画では「名古屋栄エリア」でのシナジー創出に集中的に取り組みます。

・松坂屋名古屋店、名古屋PARCOの大型改装に加え、デベロッパー事業による複合商業施設の開業(2026年予定)、JFRカードでの外部加盟店の拡大などにより、グループ施設間の相互送客、エリア内の顧客回遊を促進します。これらを通じて街の賑わい創出や魅力化に貢献し、エリア価値の最大化を図ります。

・「名古屋栄エリア」「大阪心斎橋エリア」での複合商業施設の開業(2026年予定)に加え、「福岡天神エリア」での開発計画を推進するため、デベロッパー事業への投資を強化します。一方、低稼働資産の活用、資産売却や入れ替えなど収益性向上に取り組みます。

・現在の建築内装事業、ビルマネジメント事業を統合再編し、重点エリアをはじめグループ内外の施設における上質な空間価値の創造、設備維持・管理など業務品質の向上、専門人財の確保・育成など事業の拡大を図ります。

C.自社コンテンツの保有・開発

・リテール事業の新たな成長に向けて、百貨店やパルコなど各社が有する目利き力や調達力、ネットワークなど組織能力を融合し、国内のみならず、海外・デジタル領域での事業展開を見据えた自社コンテンツ、サービスなどの開発や保有、また新規事業の開発を他社連携により推進します。

・全国主要都市に展開する当社の事業基盤を活かし、食文化をはじめ、各地域ならではの独自商品やサービスの発掘・育成などに取り組みます。

・時代に先駆けた新たなコンテンツやテナントの誘致に加え、サブカルチャーを軸としたゲームなどコンテンツの開発、保有を推進します。

・サブスクリプション事業の強化に加え、消費の循環を促す事業への新規参入など、他社連携を通じた新規事業の開発を推進します。

・これらの取り組みを加速推進するため、M&Aや他社提携、当社の事業承継・CVCファンドによる成長戦略投資を強化します。

③グループ経営基盤の強化

「2030年に目指す姿」の実現、戦略の実効性を高める経営基盤の強化に、グループ一体となり取り組みます。特に、価値創造の源泉である人財への重点投資、人財戦略の推進にスピードを上げて取り組みます。

A.人財戦略

・高度専門人財の採用強化や能力開発、次世代人財の計画育成、女性活躍推進など経営戦略と一体となった人財戦略を推進します。

・グループ内人財交流を活発化し、従業員が有する「知」の融合を図ると共に、活躍機会を拡大することで、チャレンジマインドの醸成につなげます。

・従業員一人ひとりが挑戦できる環境や仕組みを整え、従業員の意志・意欲や能力を引き出し、人と組織の持続的成長を図る人財開発企業の実現に取り組みます。

B.財務戦略

・中長期的な資本収益性の向上を図るため、成長性と収益性に基づく投資管理を徹底するほか、事業会社との連携による社内浸透などROIC経営を強化推進します。

・資本市場等の動向を踏まえ、フリーキャッシュ・フローの創出、長期安定資金の確保、有利子負債のコントロールなど財務体質の強化を図ります。

C.システム戦略

・事業会社間の連携、社内外コミュニケーションの活性化を促すグループ共通システム、グループウェアを構築します。

・グループ共通会計システムの本格稼働による経営管理の高度化、業務の効率化を図ります。また、情報セキュリティや事業継続への対応強化を図るほか、システム投資や資産管理の高度化などITガバナンスを推進します。

D.コーポレートガバナンス

・2024年度より始動した新たな経営体制のもと、経営の意思決定、執行の迅速化を図ると共に、取締役会による監督機能の強化などガバナンスの高度化により、中長期の成長実現、持続的な企業価値向上を図ります。

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