味の素 【東証プライム:2802】「食品業」 へ投稿
企業概要
<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>
味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献することを目指しています。そのためには、2030年までに「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」のアウトカムを両立して実現することが必要と考えています。
味の素グループの事業は、健全なフードシステム(*1)、つまり安定した食資源と、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っています。一方で、事業を通じて環境に大きな負荷もかけています。地球環境が限界を迎えつつある現在、その再生に向けた対策は当社グループの事業にとって喫緊の課題です。気候変動対応、食資源の持続可能性の確保、生物多様性の保全といった「環境負荷削減」によって初めて「健康寿命の延伸」に向けた健康でより豊かな暮らしへの取組みが持続的に実現できると考えています。
味の素グループは事業を通じて、おいしくて栄養バランスの良い食生活に役立つ製品・サービスを提供するとともに、温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロス等による環境負荷の削減をより一層推進し、また、資源循環型アミノ酸発酵生産の仕組み(バイオサイクル)を活用することで、強靭で持続可能なフードシステムと地球環境の再生に貢献していきます。
さらに、味の素グループの強みであるアミノサイエンス®を最大限に活用し、イノベーションとエコシステムの構築により、フードシステムを変革していきたいと考えています。
*1 食料の生産、加工、輸送及び消費に関わる一連の活動
(1)ガバナンス
味の素グループでは、グループ各社及びその役員・従業員が順守すべき考え方と行動の在り方を示した味の素グループポリシー(AGP)を誠実に守り、内部統制システムの整備とその適正な運用に継続して取り組むとともに、サステナビリティを積極的なリスクテイクと捉える体制を強化し、持続的に企業価値を高めています。
持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、その概要は提出日現在で以下のとおりです。
取締役会は、サステナビリティ諮問会議を設置する等、サステナビリティとESGに係る当社グループの在り方を提言する体制を構築し、ASV経営の指針となる味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)を決定するとともに、サステナビリティに関する取組み等の執行を監督しています。
経営会議は、下部機構としてサステナビリティ委員会を設置し、「マテリアリティに基づくリスクと機会」を選定・抽出し、その影響度合いの評価、施策の立案、進捗管理を行う体制を構築しています。なお、2022年度はサステナビリティ委員会から2回の報告を受けています。
サステナビリティ諮問会議は、2023年4月より第二期サステナビリティ諮問会議として、引き続きサステナビリティの観点で味の素グループの企業価値向上を追求するため、その活動を継続します。第二期サステナビリティ諮問会議は、主として投資家・金融市場の専門家からなる社外有識者4名で構成され、議長は社外有識者が務めています。取締役会からの諮問に基づき、マテリアリティの実装、その進捗についての開示及び対話、それらを通じてステークホルダーとの関係構築を行っていくことについて、取締役会のモニタリングを強化する視点で検討を行い、取締役会に答申します。第二期サステナビリティ諮問会議は1年に1回以上開催され、審議の内容及び結果を取締役会に報告します。
サステナビリティ委員会は、中期ASV経営を推進するため、マテリアリティに則して、施策の立案、経営会議への提案、サステナビリティ施策の進捗管理を行います。また、マテリアリティに基づく全社経営課題のリスクの対策立案、その進捗管理に関する事項を行うとともに、味の素グループ全体のサステナビリティ戦略策定、戦略に基づく取組みテーマ(栄養、環境、社会)の推進、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援、ESGに関する社内情報の取りまとめを行います。
経営リスク委員会は、経営会議の下部機構として、サステナビリティ委員会と並列で設置され、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスクを特定し、その味の素グループへの影響評価を実施して対応策を立案します。特定されたリスクをサステナビリティ委員会が取り扱う方が実効性高く対応できると判断された場合は、サステナビリティ委員会に対応を委ねるなど、サステナビリティ委員会と緊密に連携します。
(2)戦略
味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開していることから、当社事業は、農、畜、水産資源や遺伝子資源、水や土壌、昆虫等による花粉媒介などのさまざまな自然の恵み、つまり生態系サービスに大きく依存しています。これら自然の恵みは、多様な生物とそれらのつながりによって形作られる健やかな生物多様性によって提供されています。生物多様性に関する問題と気候変動、水資源の減少、資源廃棄物、水質・大気・土壌汚染などの環境問題は相互に密接にかかわり合っており、分けて考えることはできません。この相互の関係性を考慮しながら、生物多様性の保全や生物資源の持続可能な利用と、温室効果ガスの排出抑制や資源の有効活用、廃棄物の削減などの他の環境負荷低減の取組みを進めていきます。
また、味の素グループでは人財資産を全ての無形資産の源泉と考え、従業員のエンゲージメントが企業価値を高める重要な要素と位置付けています。志を持った多様な人財が、生活者・顧客に深くより添い、イノベーションの共創に挑戦できるよう、人財への投資を強化していきます。
(3)リスク管理
2つのアウトカムを含む「中期ASV経営 2030ロードマップ」を実現する上で、的確にリスクを把握し、これに迅速かつ適切に対応することが極めて重要です。味の素グループでは、経営リスク委員会が、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスクを特定し、その味の素グループへの影響評価を実施して対応策を立案し、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づく全社経営課題のリスクの対策立案とその進捗管理はサステナビリティ委員会が行いますが、両委員会の間に取り残されるリスクがないよう、両委員会は緊密に連携しており、経営リスク委員会にてすべてのリスクを包括的に捉え、取締役会へも報告します。
国内外の各現場では、個別の事業戦略や現地の政治・経済・社会情勢を考慮してリスクを特定し、対応策を策定するリスクプロセスを回しています。経営リスク委員会は、リスクプロセスを継続的に改善するとともに、各現場が特定したリスクを取りまとめ、経営がイニシアチブをもって対処すべきものに対応します。また、各事業・法人においては、有事に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、経営リスク委員会は、その有効性を常に検証するための体制を整備しています。
サステナビリティ委員会は、マテリアリティに基づき分析・評価したリスクについて、グループ全体の対応策を策定、実行するとともに、リスクへの対応状況を定期的に監視・管理しています。
(4)指標及び目標
2030年に環境負荷50%削減のアウトカム実現、さらには2050年ネットゼロの達成に向けて引き続き取り組みます。2030年に向けては、これまでの主要なテーマである温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロスの削減、持続可能な調達の実現といった目標を継続し、これらの取組みを推進します。
スコープ1・2における温室効果ガス(GHG)削減、フードロスの削減については計画を上回る進捗となっています。スコープ3におけるGHG削減については、2022年度は、まずタイのMSG原料から、サプライヤーとの協業に向けた対話を開始しました。2023年度はこれらを着実に進めるとともに他のエリアにも横展開していきます。プラスチック廃棄物削減については、リデュース・リサイクル可能な包材への転換とリサイクルの社会実装への貢献を進めています。サステナブル調達については、重点原料での取組みを進めるとともに、2023年度は生物多様性への取組みも進めていきます。
また、ASV指標の実現を支える無形資産強化として、従業員エンゲージメントスコアの向上を推進します。
ASV指標
2030年の環境負荷50%削減、そして2050年のネットゼロ達成に向け取組みを進めます。
また、従業員エンゲージメントスコアについては80%(FY25)、85%(FY30)への向上を目指します。
*2 測定方法を、「ASV自分ごと化」の1設問から、より実態を把握できる「ASV実現プロセス」の9設問の平均値へと2023年度スコアから変更します。
<味の素グループの気候変動に対する考え方>
(1)ガバナンス
気候変動課題に対する当社のガバナンスは、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。
(2)戦略
当社グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開しています。気候変動は、大規模な自然災害による事業活動の停止、農作物や燃料などの原材料調達への影響、製品の消費の変化など、さまざまな形でグループの事業に影響を与えます。
①シナリオ分析の前提
2022年度は、2100年に地球の平均気温が産業革命後より1.5℃又は4℃上昇するというシナリオで(*3)、グローバルのうま味調味料、及び国内・海外の主要な製品に関する2030年時点と2050年時点の気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しました。
中長期における生産に関する事項として、気候変動の影響のうち、渇水、洪水、海面上昇、原料の収量変化等を物理的リスクとして、炭素税の導入やその他の法規制の強化及びエネルギー単価の上昇、消費者嗜好の変化等を移行リスクとして捉え分析しました。
1.5℃と4℃シナリオにおける2030年時点の平均気温差は0.2℃程度であり物理的リスクに大きな差が見られないと考え、平均気温差が1℃程度予想され物理的リスクに差があると考えられる2050年時点のシナリオ分析のリスクと機会を②・③の表において示しています。
なお、これまでに当社が実施したシナリオ分析に係る前提の推移を要約すると以下のとおりです。
| 2020年度(*4) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度(予定) |
事業 | うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品に加えて、その他の加工食品など |
発現の時期 | 2030年 | 2030年/2050年 | 2030年/2050年 | 2030年/2050年 |
シナリオ | 2℃/4℃ | 2℃/4℃ | 1.5℃/4℃ | 1.5℃/4℃ |
売上高基準カバレッジ | 24% | 24% | 55% | 67% |
*3 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しています。
*4 過年度に実施したシナリオ分析の結果については、過年度に発行したサステナビリティデータブックをご参照ください。https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook.html
②シナリオ分析:リスク
1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合 | ||||||
リスク | 平均気温上昇 | 洪水・渇水の重大性と頻度の上昇 | 製品に対する命令及び規制 | 消費者嗜好の移り変わり | 右の対象は当社グループ全体 | カーボンプライシングメカニズム |
リスクの分類 | 移行リスク | 物理的リスク | 移行リスク | 移行リスク | 移行リスク | |
事業インパクト | 炭素税等による原料調達のコストアップ(コーヒー豆ほか) | 創業時より実施している供給継続対策 | 使用する原料に関する法規制の強化によるコストアップ (想定:原料のトレーサビリティやリサイクル使用の法規制) | 気温上昇による需要減 (想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト) | 炭素税の導入・増税や排出権取引により、使用する燃料のコストアップ | |
潜在的財務影響 | 2億円/年 | 僅少 | - | - | 2030年:130億円/年(*5) 2050年:300億円/年(*5) | |
対応策 | ・原料産地の支援 ・別製法で作られた原料の検討 | ・調達地域の多様化 ・代替原料の研究開発 | ・サプライチェーン上下流の包括的な協力体制構築 | ・ASV訴求活動(栄養価値)を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・アイス飲用に適したマーケティング活動 ・レンジ調理メニューの探索・提案 | ・内部カーボンプライシングによる財務影響の見える化 ・燃料転換 ・再生可能エネルギー利用 ・環境配慮型の製法開発 |
4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合 | ||||
リスク | 平均気温上昇 | 洪水・渇水の重大性と頻度の上昇 | 消費者嗜好の移り変わり | 燃料のコスト増加 |
リスクの分類 | 物理的リスク | 物理的リスク | 移行リスク | 移行リスク |
事業インパクト | 農畜水産物の生産性低下によるコストアップ (想定1:養殖の生育環境悪化、想定2:家畜の増体率低下、 想定3:乳牛の乳量低下、 想定4:家畜の感染症流行、 想定5:農産物の生育不良や病害虫流行) | 原料調達のコストアップ、操業停止、納期遅延による売上高の減少 (想定1:タイの洪水、 想定2:タイの渇水、 想定3:日本の局地豪雨による冠水)
| 気温上昇による需要減 (想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト) | 化石系の燃料や電力の価格上昇 |
潜在的財務影響 | 45億円/年 | 1億円/年 | - | 25億円/年 |
対応策 | ・調達地域の多様化 ・サプライヤー・農家との連携強化 ・エキス削減レシピの開発 ・代替原料の研究開発 ・高温耐性品種の導入 ・販売価格への反映 | ・調達地域の多様化 ・代替原料の研究開発 ・節水生産の継続・改善 ・供給体制・物流体制の整備 | ・ASV訴求活動(栄養価値)を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・手軽な加熱調理コミュニケーションへの改善 ・アイス飲用に適したマーケティング活動 ・レンジ調理メニューの探索・提案 | ・燃料転換 ・再生可能エネルギー利用 ・環境配慮型の製法開発 |
*5 SBT(Science Based Targets)イニシアチブに認定された当社グループの2018年度の基準GHG排出量に、IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の1.5℃シナリオに相当する2030年炭素税・排出権取引の予測:新興国=15$/t-CO2、ブラジル・中国=90$/t-CO2、先進国=130$/t-CO2、2050年炭素税・排出権取引の予測:新興国=55$/t-CO2、ブラジル・中国=200$/t-CO2、先進国=250$/t-CO2を乗じて算出。4℃シナリオは現状の成り行きであり炭素税・排出権取引の追加・増税は想定しておりません。
③シナリオ分析:機会
1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合 | ||
機会 | 低排出量商品及びサービス | 消費者嗜好の移り変わり |
機会の分類 | 製品及びサービス | 製品及びサービス |
事業インパクト | エシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加 | ・健康志向によるニーズ拡大=売上増加 ・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加 |
対応策 | ・環境配慮型の製法や製品の開発 ・ESGの好評価を取得する取組み推進 ・低環境負荷を証明するエビデンス強化 ・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策 | ・栄養価値が向上する製品開発 ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・環境配慮型の製法や製品の開発 |
4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合 | ||
機会 | 低排出量商品及びサービス | 消費者嗜好の移り変わり |
機会の分類 | 製品及びサービス | 製品及びサービス |
事業インパクト | エシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加 | ・健康志向によるニーズ拡大=売上増加 ・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加 |
対応策 | ・環境配慮型の製法や製品の開発 ・低環境負荷を証明するエビデンス強化 ・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策 | ・栄養価値が向上する製品開発 ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・環境配慮型の製法や製品の開発 |
④シナリオ分析結果の戦略への反映
(ⅰ)事業戦略への反映
シナリオ分析における事業への影響を踏まえ、今後一層のGHG排出量削減に向け、燃料転換・再生可能エネルギー利用・環境配慮型の製法に関する投資を計画していきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。
また、2023年度以降のシナリオ分析においては、分析の対象製品、対象リスクをそれぞれ広げることにより、リスク・機会の分析を高度化していきます。
(ⅱ)資金調達戦略への反映
当社は、各種取組みに対して必要な資金については、サステナブルファイナンスを基本としており、2021年10月発行のSDGs債、2022年1月のポジティブ・インパクト・ファイナンスによるコミットメントラインに続き、サステナビリティ・リンク・ローンによるコミットメントライン契約を2022年12月に締結しました。また、直近では2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しています(*6)。
これら資金調達により、当社グループが掲げる2030年までの2つのアウトカムのうちの1つ「環境負荷を50%削減」の実現、及び持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層加速させていきます。
*6 これらの詳細に関しては、以下の「サステナブルファイナンス」サイトをご参照ください。
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/csr/finance/index.html
(3)リスク管理
気候変動課題に対する当社のリスク管理は、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。
(4)指標と目標
当社グループは、SBT(Science Based Targets)イニシアチブによるネットゼロを含む新たなGHG排出削減目標への適合を宣言するコミットメントレターを提出しました。これにより、当社グループはSBTイニシアチブより認定を受けている気温上昇を1.5℃に抑えるGHG排出削減目標の取組みをさらに加速させるため、ネットゼロ基準に沿って目標と戦略の見直しを行っています。
(ⅰ)目標
スコープ1・2合計のGHG排出量については、2030年度に2018年度比で50%削減を目標(総量目標)としています。
スコープ3の生産1トンあたりのGHG排出量(GHG排出原単位)については、2030年度に2018年度比で24%削減としている目標(原単位目標)の見直しを行います。
(ⅱ)2022年度実績
スコープ1・2のGHG排出量では、前年度比およそ26,000t-CO2e減、基準年である2018年度に対して28%減と、2021年度から微減となりました。都市ガス供給不安定のため自家発電量が減り、買電量が増加した事業所があったものの、ペルーにおける再エネ電力発電所との直接契約や当社・東海事業所における再エネ証書調達による打ち返し策により、微減となりました。また、2030年度のGHG排出量目標(2018年比△50%)に対しては、現時点での計画によりおよそ8割の達成目途が見えていますが、一層の排出量削減に向け、更なる削減活動を検討してまいります。
スコープ3のGHG排出原単位では、前年度比およそ4%減少し、基準年である2018年度に対しおよそ2%減少となりました。味の素AGF社の「ブレンディ®」ボトルコーヒーの製造・販売をサントリー食品インターナショナル㈱へ承継したことが削減の主な原因です。2023年度は、スコープ3の原料サプライヤーとの協働のトライアルを行う予定です。サプライヤー含めた外部との連携を今後加速し、GHG排出量の削減に向けて取組みを進めてまいります。
(ⅲ)目標達成に向けた取組み
スコープ1・2の目標を達成するための施策として、省エネルギー活動やGHG発生の少ない燃料への転換、バイオマスや太陽光等の再生可能エネルギー利用、エネルギー使用量を削減するプロセスの導入を進めています(化石燃料からバイオマス燃料への転換の検討、中国及び当社・九州事業所における再エネ証書の調達など)。
スコープ3については、製品ライフサイクル全体のGHG総排出量の約60%を原材料が占めていることから、原料サプライヤーへのGHG削減の働きかけや、アンモニアのオンサイト生産等の新技術導入に向けた検討を進めています。
<味の素グループの人的資本に対する考え方>
当社グループは経営戦略の実現にあたり、4つの無形資産(技術・人財・顧客・組織)が重要であると考えています。特に無形資産全体の価値を高める源泉であり、技術と顧客をマッチングさせイノベーションを生み出す人財資産の重要性は高いと考えています。また、志(パーパス)の実現に向けた主たる課題は下記と考えています。
・味の素グループ全体で共有する価値観や志の更なる浸透
・食品とアミノサイエンス、地域、ジェンダー、キャリア等を融合するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの考え方の下、クロスセクショナルチームの取組みを推進し、イノベーションを共創する力の強化
・創業以来、大切にしている価値観の一つである開拓者精神(新しい事業、新市場の開拓に常に挑戦し続ける精神)の強化
(1)人財育成方針
志に共感する仲間が集い、対話を通じた“志の醸成と共感”の促進に加え、“多様性”と“挑戦”を加速することでイノベーションを共創し、継続的に人財資産を強化します(人財投資額(*7):2022年度約100億円/23-30年累計1,000億円以上)。当社グループは従業員のエンゲージメントが企業価値を高める重要な要素と位置付け、従業員エンゲージメントスコア(*8)の向上を推進します(実績:2022年度62%、目標:2025年度80%/2030年度85%)。また、従業員のWell-beingは人財資産の強化を支える基盤と考え、健康増進や資産形成等、広い観点で従業員のWell-being向上にも取り組みます。
*7 機会投資含む金額
*8 測定方法を、「ASV自分ごと化」の1設問から、より実態を把握できる「ASV実現プロセス」の9設問の平均値(2022年度実績:75%)へと2023年度スコアから変更します。
(2)人財に係るマネジメント体制
当社グループは各国・地域の多様な人財を横断的に育成・登用し、人財の適所適財を実現するための基盤として、グローバル人財マネジメントシステムを導入しています。本システムは基幹ポストと基幹人財を可視化する仕組み(ポジションマネジメント×タレントマネジメント)から構成されています。
また、グローバル人財マネジメントシステムや人財資産の強化に係る各種施策等の円滑な運営を目的に、経営会議の下部機構として、最高経営責任者を委員長とし、経営会議メンバーで構成される人財委員会EX及び人財委員会を設置し、2022年度実績で全6回の議論を行っています。特に人財パイプラインの構築という観点では、指名委員会との連動も踏まえたグローバルでの重要ポジションのサクセッションプラン作成、さらに先を見据えた次世代リーダー層の人財プール等を形成、戦略的な育成や登用を強化しています。
(3)志の醸成と共感
当社グループは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)の実現に向けたマネジメントサイクル標準化による志の醸成と共感の促進、各取組みの結果として現れるエンゲージメント向上に向けた取組みを組織的に推進しています。
CEO対話/本部長対話 | 当社の全組織や主要関係会社の従業員とCEOや本部長が直接対話する機会を設定し、会社の志の浸透を進めています。 (2022年度実績:CEO対話:63回 本部長対話:67回) |
個人目標発表会 | 各従業員が会社の志と自身の志や業務との接点を考え、1年間の自身の目標を発表する会をグローバルで実施しています。 (2022年度実施:主要G会社含む29社で実施) |
ASVアワード | 2016年からASVを体現した秀逸な事例の表彰を実施。また受賞した事例をグローバルで共有することで、ASVの理解浸透を進めています。今後は更に社外関係者等を含むステークホルダーの方々とのコミュニケーションに活用し、志の共感を広げていきます。 |
エンゲージメントサーベイ | 2017年よりグローバルで全社員に対するエンゲージメントサーベイを実施しています。ASV理解・納得から組織としての成果創出までの各プロセス(ASV実現プロセス)とそれに付随する設問やスコアの可視化に加え、各社・各組織に専門担当者を設定することで、各社・各組織の課題を明らかにし、適切な対策検討と実行が行われる体制を構築しています。また、過去のエンゲージメントサーベイのスコア結果から「志への共感」「顧客志向」「生産性向上」の項目については1人あたりの売上高と事業利益に正の相関があることが分かっています。 |
(4)多様性
性別、年齢、国籍、障がいの有無、経験等によらず、社員一人ひとりが互いに尊重し合い活躍する会社となり、社内外の多様な「個人」が集い、「組織」が多様な個の強みを活かして共成長し、未来に向けた継続的なイノベーションを創出するというダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンがイノベーションの創出には不可欠であると考えています。
リーダーシップ層(*9)の多様化 | 執行役、事業部長や各組織の長等の重要ポジションの多様化を加速。2030年までに多様性(*10)を持った人財の構成比30%を目指します。(2023年3月末時点:16%) |
女性の登用・活躍推進 | グループ全体で27%(2023年3月末時点)の女性管理職比率を、2030年を目途に40%まで向上することを目指します。特に比率の低い日本では、女性のキャリア形成機会を提供するAjiPannaアカデミー等を通じ、女性管理職候補者や現在の女性管理職のサポートを行い、2030年までに30%の達成を目指します。(当社は2019年より「30% Club Japan」に参画しています) |
キャリア採用 | 高度なスキルや新規事業立上げの知見等を有する人財を中心にキャリア採用を拡大。事業状況に応じて、最適な構成比を目指します。 2022年度実績:当社の年間採用数のうちキャリア採用者の構成比33% 2023-24年予定:当社の年間採用数のうちキャリア採用者の構成比約50% |
*9 執行役及び事業部長や組織長、それに準ずる重要なポジション
*10 多様性:ジェンダー・国籍・所属籍等
(5)挑戦
当社グループは多様な人財一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、志の実現に向けて自律的に挑戦することが組織と個人の共成長には不可欠であると考えています。
手挙げでの異動・プロジェクト参加 | 手挙げによる部門異動や複数部門での横断プロジェクトへの参画を加速。2022年度から当社では社内公募による異動を本格化。事業状況等も踏まえながら手挙げ文化の醸成を推進します。 |
ネットワーク型の働き方 | ビジョン・志への共感と信頼をベースに、自身の資格や専門性を活かした貢献や社外とのプロジェクト参加等、柔軟な方法で価値創出する機会提供を推進しています。(例:栄養リテラシー教育コンテンツ作成、キャリアアドバイザー、タイにおける産官学含む約40団体との連携プロジェクト等) |
自律的な成長の支援 | 協業先や外部研究機関、MBAや専門大学院への派遣等 |
A-STARTERS(新規事業創出プロジェクト) | 当社及び国内の主要グループ会社の従業員を対象に、新規事業立ち上げを望む社員を公募・選抜し、新規ビジネスプランの事業化を推進しています。2020年度からスタートし、2022年度は51件の応募があり、採択されたアイデアは事業化に向けた検討を推進しています。 |
1 on 1(対話)を通じた支援 | 当社では各従業員の志の実現や挑戦を支援すべく、1 on 1での対話を大切にしています。特に自身のキャリア実現に向けて、上司と毎年約1時間のキャリア面談や半期毎のフィードバック面談(1時間程度)を1980年代から実施しており、1 on 1での対話は当社の人財育成の基盤となっています。また、質の向上という観点で全管理職に対してコーチング研修を実施予定です(当社:2023年度実施予定) |
(6)Well-beingに関する取組み
当社グループは従業員のWell-beingは人財資産の基盤と考えており、健康や資産形成等の観点からもWell-beingの醸成を促進します。
健康経営 | 当社では従業員のセルフケアの向上と健康寿命延伸に向けて、年1回、産業医・保健スタッフが日本で勤務する全ての従業員(パート社員含む)と面談を実施(国内グループ会社は隔年1回)。健康診断やストレスチェックの結果等を踏まえた保健指導を実施しています。また、休業中の従業員を対象に独自の「メンタルヘルス回復プログラム」を導入しており、休業開始から職場復帰までの継続サポート等も実施しています。 |
資産形成 | 外部専門家とも連携し、自社の制度や施策を踏まえた資産リテラシー教育プログラムを年間通じて従業員に提供(のべ約2,800名が受講)。無料でファイナンシャルプランナーとの個別相談(任意)の機会提供も行い、従業員の資産形成に対する施策も実施しています。 また、従業員一人ひとりが中期視点での企業価値向上サイクルへの参画意識の向上と共に自律的な資産形成の観点で持株会に関する取組みも推進しています。(当社+国内グループ会社の計20社の加入率:71%(*11)) |
*11 2023年5月時点
(7)人的資本経営に関係する外部機関等からの評価
健康経営優良法人2023 (大規模法人部門~ホワイト500~) | 令和4年度「なでしこ銘柄」 | PRIDE指標2022(ゴールド) |
認定歴:2017~2023年 連続認定 | 選定歴:2016年、2017年、2021年、2022年(2019年、2020年「準なでしこ」に選定) | 認定歴:2020~2022年 連続認定 |
味の素グループの人的資本に対する考え方は、志の実現に向けた人財資産強化のストーリーであり、戦略、指標及び目標について区分することが困難であるため、一体的な文章で記載しています。
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