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企業概要

 当社グループは2024年5月、新サテライトグロース戦略を発表しました。同戦略は5G通信、データドリブン、生成AIをコア領域とし、コアを取り巻くサテライトとして複数のビジネス領域を掲げ、それらの拡大を図ることを目指します。ビジネス領域として、お客さまのライフスタイルを変革するLX(ライフトランスフォーメーション)につながる領域をモビリティ、宇宙、ヘルスケアなどと定めております。これらのコア、LXの各領域に対し、必要となる技術の研究開発を進めてきており、これらの活動を通じて当連結会計年度における研究開発費の総額は、27,721百万円となりました。なお、当社グループにおける研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連づけて記載しておりません。

 以下、コア、LXの各領域に対する研究開発活動のトピックスをご紹介します。

1.コア領域(5G通信、データドリブン、生成AI)

 当社グループでは、5G通信の次の世代に位置づけられるBeyond 5G/6Gについて、その特長を踏まえ、研究開発を続けております。以下に例を示します:

・Beyond 5G/6G時代のネットワークインフラとしてオール光ネットワークが注目されており、光ファイバーの高度化も重要となります。その一環で、2023年10月、住友電気工業株式会社、古河電気工業株式会社およびOFS Laboratories, LLCと共同で、伝送帯域幅115.2テラヘルツの超広帯域伝送実証(従来のC帯に比べて約24倍)に成功しております。同実証は標準と同径の光ファイバーの中に12個の独立したコアを高密度に配置した非結合12コア光ファイバーと広帯域なO帯(※1)光ファイバー増幅器を組み合わせた点が特長です。

・Beyond 5G/6Gでは毎秒100ギガビット超の通信速度を目標に研究開発が進められております。また、Beyond 5G/6G時代には量子コンピューティングの隆盛が予想されています。以上を踏まえ、必要とされる通信速度と同等以上の処理性能をもつ耐量子暗号アルゴリズムが期待されております。これに対し、2023年9月、兵庫県立大学と超高速共通鍵暗号アルゴリズム「Rocca-S」を共同開発しました。同暗号アルゴリズムでは、256ビット鍵長により安全性を確保できるのに加え、前述の通信速度を大幅に超える毎秒2テラビットの処理性能を達成しております。

・2023年5月には、従来の方式を拡張したセルフリー方式(※2)によるエリアを構築し、端末がエリア内のどの場所に移動しても基地局が連携して通信速度を確保し続けることで、お客さまに安定した通信を継続的に提供する実証実験に成功しております。

・当社の電力使用料のうち約98%が携帯電話基地局などで使用する電気に起因しており、その省電力化が重要な課題となっています。そこで、2024年2月より、曲がる太陽電池「ペロブスカイト型」を活用した基地局への電力供給実証を国内で初めて開始しております。電柱型基地局のポールに巻き付けることで、敷地面積が少ない基地局でも太陽光発電が可能になり、再生可能エネルギーの導入が進むことが期待されます。CO2排出量実質ゼロの「サステナブル基地局」の拡大により通信インフラの環境負荷を削減し、地球温暖化の防止に貢献します。

 一方、データドリブン、生成AIの領域についても様々な取り組みを進めております。以下に例を示します:

・2024年3月、大規模言語モデルの社会実装を進める株式会社ELYZAを連結子会社化することを発表しました。同社の持つ国内トップクラスの大規模言語モデルの研究開発力と当社グループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成AIのさらなる研究開発および社会実装を加速させていきます。

・2023年7月には、従来の深層学習モデルで長期間運用する際に課題となる破滅的忘却(※3)を解決し、かつ既存手法の性能を超えることを達成しました。イリノイ大学シカゴ校との共同研究で、継続学習に関する論文「Parameter-Level Soft-Masking for Continual Learning」が、AI分野の最難関国際学術会議である「ICML2023」に採録されました。この内容をもとに、AIが自律的に環境変化に適応して成長する「成長可能AI」の技術確立に向けた取り組みを進めています。

※1 O帯、C帯:

光ファイバーで光通信を行う際に使用される波長帯域の一種。O帯は1260~1360nm、C帯は1530~1565nmの波長範囲を指す。

※2 セルフリー方式:

端末が特定の基地局やセルに依存せず通信を行う方式。

※3 破滅的忘却:

新たな情報を学習した後に、以前覚えていた情報を忘れる現象。

2.LX領域(モビリティ、宇宙、ヘルスケア、スポーツ・エンタメ等)

 当社グループでは、LXとして定義した各事業領域の拡大を目指し、必要となる技術の研究開発を進めています。以下に例を示します:

・モビリティ領域では、先進技術を用いたデジタル化と自動化により、様々な分野の社会課題解決に取り組んでいます。

 例えば、2024年2月、「つながるモビリティ社会に向けた取り組み説明会」を実施しました。トヨタ自動車株式会社と連携し、安全・安心なモビリティ社会の実現に向けた取り組みとして、人流および車両のビッグデータと、過去の事故情報などのオープンデータをAI分析し危険地点を見える化するソリューション(危険地点スコアリング)の提供開始などについて説明しました。

2024年3月、水空合体ドローンを用いて、遠隔での橋脚水中点検に成功しました。精密な位置情報の取得を可能にする音響測位装置により、衛星利用測位システム(GPS)が使えない水中環境でも安定した操作を実現しております。タブレット1つで、空中・水上・水中カメラの映像・情報を確認できるようになり、少人数で効率的な点検が可能になります。

・宇宙領域では、地上での移動体通信を低軌道-静止軌道衛星間、さらには月面通信に拡張すべく検討を進めております。

 例えば、2023年10月、国立大学法人京都大学と共同で、フォトニック結晶レーザー(※4)を使った低軌道-静止軌道衛星間向け光通信方式の実証に成功しました。低軌道―静止軌道衛星間(約3万6,000km)に相当する距離で通信ができるようになります。

 また、アルテミス計画(※5)における月面探索活動では、高速大容量な通信環境の構築が求められています。そのような環境を無人で構築するため、2023年12月、GITAI USA Inc.と共同で、ロボットによる基地局アンテナ設置に成功しております。本実証を通じて得た知見を基に月面探査活動を支援してまいります。

・ヘルスケア領域では、スマホやインターネット依存症、ゲーム行動症といった現代社会で増えつつある社会課題解決に取り組んでいます。

 具体的には、2023年10月、東京医科歯科大学と共同で「サイバー精神医学講座」を開設しました。本講座では、スマホ・ネット依存やゲーム行動症の実態解明、診断や治療を支援するシステム(プログラム医療機器)の検証を行っており、社会の健康促進に貢献します。

・スポーツ・エンタメ領域では、現実世界の物体や状況をデジタル上にリアルタイムで再現する「デジタルツイン」技術を活用し、コンテンツの魅力化を目指しています。

 例えば、2023年10月、モバイル回線で伝送可能なデータ量に圧縮した動的な三次元メッシュデータを、高品質のままスマートフォンでリアルタイムに視聴できる技術を開発しました。スマートフォンでのリアルタイム視聴を可能にする技術は、新たなコンテンツやサービスを生み出す可能性を広げます。

 また、力の感覚を支援する小型・薄型の「力触覚提示技術」を開発し、本技術搭載の卓球ラケット型力触覚提示デバイスを2023年10月に公開しました。本デバイスはカメラなどで感知した人物の位置や姿勢、デバイスの状態をリアルタイムに解析し、適切な方向に動かすことで、プレイヤーの腕の動きを支援します。言葉では理解しにくい力加減や動作タイミングなどを直感的に伝えることで、スポーツにおける直感的な情報共有に加え、高齢者や障がい者の生活支援など、人間の動作支援や能力強化に役立てます。

※4 フォトニック結晶レーザー:

フォトニック結晶と呼ばれる人工的な光ナノ構造を平面状に配置した、2次元フォトニック結晶を有する半導体レーザー。通常の半導体レーザーと比較して、大面積で単一モード発振するため、高出力で狭い拡がり角のビームが得られる。

※5 アルテミス計画:

米国が提案している国際宇宙探査計画で、有人月面着陸、および将来的な有人火星着陸を目指すと発表し、日本政府も参画を表明している。

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