i-plug 【東証グロース:4177】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「つながりで世界をワクワクさせる」というミッションのもと、「生涯のキャリア・ポテンシャルを最大化するためのアクションをあらゆる人が実行できる、プラットフォームを実現する」(注1)をビジョンに掲げ、日本の労働市場が直面する急速な労働人口の減少という問題を企業と求職者とのマッチングの観点からテクノロジーとプラットフォームビジネスで解決することを目指しております。
その中で当社は、入社後3年で3割が離職しているというミスマッチの問題(出典:厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」)が顕在化している新卒採用領域において、就職活動中の学生や求職者、企業を対象に新卒オファー型就活サービス「OfferBox(オファーボックス)」を提供しております。さらに、適性検査サービス「eF-1G(エフワンジー)」、オファー型転職サービス「PaceBox(ペースボックス)」、食品業界に特化した就職活動イベントの企画・運営「Tsunagaru就活」等HR関連サービスを提供し、個人の成長と企業の発展に貢献することを通じて企業価値の最大化を図っております。
以上のミッション、ビジョンの実現にあたって必要な価値観を5Valuesとして示し、組織への浸透を図っております。
<5Values>
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、新卒ダイレクトリクルーティング市場のリーディングカンパニーとして、当該市場を拡大することにより高い成長性を継続することを目指します。また、高い成長性を維持するために、利益成長とのバランスをとりながら成長投資を行う方針であります。従いまして、売上高及び売上高に直接的に紐づく決定人数並びに営業利益を当社グループの経営上重要な指標等としております。
(3)経営環境及び経営戦略
当社グループを取り巻く環境変化については、次のとおりです。
① 日本の労働環境の変化
日本の生産年齢(15歳から64歳まで)人口は、2050年までに2020年の約7,400万人から約5,200万人に低下すると言われており、一方で65歳以上の人口は、2020年の3,600万人から約3,800万人に増加するとされています(出典:総務省「令和4年版 情報通信白書」)。このため、将来的に労働力の低下やこれに伴う国際競争力の低下等の課題が発生すると予測されます。
また昨今、政府主導の「働き方改革」により、企業の労働時間管理の見直しや勤務体系の柔軟化といった体質改善のみならず、採用活動へのテクノロジーの活用やジョブ型採用の導入等が進むと考えており、当社グループが提供するサービスとの親和性が高いと考えております。この取り組みの延長線上では、従来の新卒一括採用の在り方や大学教育の在り方についても見直しが進むと考えられており、日本の労働環境は今後大きく変化していくと考えられます。
② テクノロジーのさらなる進化
人工知能をはじめとするテクノロジーの進化はHR領域にも浸透してきております(HR Tech)。ICTを活用したタレントマネジメント(注2)や業績評価に加え、ハイパフォーマー分析(注3)等による活躍人材の再定義を検討する企業は増加傾向にあり、経済産業省の新産業構造ビジョン(注4)の中でも「人工知能等の技術を活用した「労働市場の効果的なマッチング」の実現」が明記されていることから、HR領域におけるテクノロジーの導入は更に進むと考えられます。
③ 人口減少による慢性的な人材不足
我が国の大卒求人倍率(2025年3月卒業予定者)は1.75倍と前卒業年度の1.71倍から0.04ポイント上昇しました。2022年卒ではコロナウイルス感染拡大による景況感悪化の影響から、一時的に求人倍率が低下したものの、それ以降、大卒求人倍率は現在まで上昇が続いており、採用意欲は昨年に引き続き高い状態です。従業員規模別の求人倍率の推移においては、1,000~4,999人企業は変動なし、5,000人以上企業では低下した一方で、300人未満企業及び300~999人企業で大卒求人倍率が上昇しており、中小企業及び中堅企業において、採用難度が高まっています(出典:㈱リクルート「第41回 ワークス大卒求人倍率調査」)。加えて、地方においては行政主導でUIJターン(注5)採用等も活発化してきており、都市部に限らず全国的に企業の人材需要は高まりを見せてきております。
④ 新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとした採用手法の変化
従来の新卒採用手法は、企業と就活生ともに大手就活情報ナビサイトを利用し、就活生から企業にエントリーすることで、企業が母集団を大量に集めて絞り込み、対面で面接を行うものが一般的でした。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により、オンラインでの選考が急速に普及しました。オンラインでの選考は、これまでの対面での選考とは異なり、採用候補者の見極めや候補者の意向上げに工夫が必要となります。このため、大量に集めて絞り込むという採用手法から、最初から候補者の見極めを行い、候補者と企業との一対一での丁寧なコミュニケーションを経て採用するという採用手法への移行がみられました。コロナ禍をきっかけとしたオンラインでの採用活動と従来の対面での採用活動をうまく使い分けた、ハイブリッド型の採用活動を取り入れる企業が増加してきております。
⑤ ダイレクトリクルーティングサービス市場の拡大
2024年度の新卒採用支援サービスの市場規模は1,459億円(前年度比成長率5.3%)と予測されており、当社グループが事業を展開するダイレクトリクルーティングサービス市場も高い成長率を維持しております。
2023年4月から、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の合意改正のもと2025年3月以降の卒業生を対象とするインターンシップの定義が変更されたことにより、企業がインターンシップで得た学生情報を採用選考で活用する、採用直結型のインターンシップの実施が可能となりました。そのため採用活動におけるインターンシップの重要性がさらに高まったことで、インターンシップの学生集客に活用できる新卒採用支援サービスに対する企業からのニーズが高まっており、当社サービスでも「OfferBox」の「早期定額型」の人気がより高まっております。
当社グループの主要サービスである「OfferBox」は、テクノロジー×プラットフォームビジネスで各企業が求める人材を特定及びデータベースより検出、直接アプローチし、一対一のコミュニケーションを通じて採用につなげることができることから、前述の経営環境の変化に適したものであり、今後益々全国規模で深刻化する企業の人材採用における課題解決になり得ると考えております。加えて新型コロナウイルス感染症拡大に伴うオンライン選考の急速な普及等、採用手法の劇的な変化がフォローとなり、さらなる成長機会を獲得できると考えております。
以上の経営環境の変化をふまえ、当社グループは、2023年5月15日に「中期経営計画 ローリングプラン2023(2024年3月期~2026年3月期)」を策定いたしましたが、中途事業及びその他事業において、計画との乖離が生じ、全体的な見直しが必要となったことから、2024年2月に中期経営計画を取り下げ、中長期的な事業戦略の見直しを行いました。今後の中長期戦略の考え方は以下のとおりであります。
① 規律をもった投資による既存領域の着実な成長
2020年3月期から2024年3月期の既存領域の年平均成長率は29.6%と高い成長性を実現してきました。既存領域の主力であるOfferBoxについては、マーケット占有率を踏まえると伸びしろが大きくあります。加えて、紹介型のOfferBoxPLUSなど価値提供範囲を拡大することで更なる成長余地があると考えております。成長ドライバーに対して適切な規模での投資を行うことで、今後も年率20%台の着実な成長を見込んでおります。
② 新卒領域以外での事業開発と利益成長の両立
長期的な持続的成長に向けて、既存事業の成長に加えて、第2の収益の柱となり得る事業の開発を進めてまいります。価値やモデルの探索から再挑戦し、まずは価値確立を目指し、規律をもった投資を行うことで一定の利益額及び利益率の伸びを確保し、事業開発と利益成長を両立させます。
また、中長期的な事業戦略の実現に向けたマイルストーンを2030年度に設定しております。不確実性の高い市場環境に対応するため、2024年度からの7ヵ年を、さらに前後半の2つのステップに分けて取り組んでまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが今後事業を拡大し、継続的な成長を行うために、当社は以下に記載しております課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、継続的な顧客開拓による利用企業数の増加及びサービスの開発・改良による顧客満足度を高め、プラットフォームの拡大を通じて、ビッグデータの有効活用による顧客の採用効率の向上、企業規模の拡大に対応した内部管理体制強化等の整備を進め、企業価値のさらなる向上を目指して取り組んでまいります。
① 顧客開拓について
当社グループは、入社後3年で3割の新卒入社者が離職してしまう早期離職という社会の非効率を解消することを目指します。その実現のためには、企業のイメージや全体多数に対して発信するマス向け広報ではなく、企業から学生にアプローチするダイレクトリクルーティング方式により、一対一のコミュニケーションのなかで学生に応じたアプローチが効果を発揮します。各企業の活用事例や採用コラム等の良質なコンテンツの発信、代理店活用による地方企業の開拓により、サービスの利用を促進し、利用企業数の拡大に取り組んでまいります。
また、より多くの学生に利用してもらうため、クチコミ経由の登録数増加を目指すとともに、オンラインではリーチし難い学生を大学・大学生協との連携を強化し安定的なチャネルとすることで、学生登録者数の拡大に取り組んでまいります。
② サービス開発・改良について
当社グループは、大手・中堅・中小、あらゆる企業が採用ターゲットである人材を採用できない、また学生は自分に合った企業に就職できないというミスマッチな状況を解決するために、「OfferBox」サービスの開発・改良に取り組んでまいります。学生へのサービスの提供価値の向上としては、期待しているような企業からのオファーが届くことといった機能性、利便性、デザイン性等を高めてまいります。また、企業に対しては、適性検査「eF-1G」との連携強化により、受検結果を用いた「分析」を行うことにより、ターゲット学生の探しやすさ、採用決定率の高さといった提供価値を高めていくことで満足度の向上に努めてまいります。
③ ビッグデータの有効かつ適切な活用について
当社グループは、企業から学生にアプローチするダイレクトリクルーティングサービスを提供していることから、登録学生の属性やインターネット上での行動データを創業当時より蓄積しており、競争優位性の高い独自のデータベースを保有しております。また、適性検査「eF-1G」の受検とその受検結果の活用により、更に多くのパーソナリティデータ及びそれらを用いたマッチングについての貴重なデータも保有しております。これらのビッグデータを有効かつ適切に活用し、利用企業と登録学生のマッチング効率のさらなる向上に取り組みます。
④ 個人情報の管理について
当社グループは、学生に関する個人情報を多く預かっていることから、個人情報保護に関しては重要課題と認識しております。「個人情報保護規程」をはじめとする諸規程の制定・運用、役員・従業員への定期的な社内教育の実施、システムのセキュリティ対策等により、個人情報の管理体制を構築・運用しております。また、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマーク制度の認証を取得しており、引き続き、情報管理体制の強化、徹底を図ってまいります。
⑤ 新規事業の創出
当社グループは、主力サービスの「OfferBox」が順調に成長している一方で、同サービスへの依存度が高い状態にあります。今後当社グループが安定的に成長していくためには、新たな事業を創出し、収益化させることが重要であると考えております。
⑥ 優秀な人材の獲得
当社グループは、今後事業領域を拡大し安定的に成長していくためには、様々なバックグラウンドを持つ優秀な人材の獲得が不可欠であると考えております。多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材の獲得を通して、営業体制・開発体制・管理体制等を強化すべく、積極的な採用活動を行ってまいります。
(注)1.キャリア・ポテンシャルとは、自分らしく活躍するための「一人ひとりが持つ多様な可能性の発揮」、「100年の生涯にわたる成長」、「新しい選択肢の獲得」等を指します。
2.タレントマネジメントとは、自社の抱える優秀な人材がどのようなスキルや能力を持っているのかを把握し、そのパフォーマンスを最大化するために戦略的な人材配置や教育等の取組みを行うことを意味します。
3.ハイパフォーマー分析とは、個々の企業における活躍人材の特定のため、ハイパフォーマーの特徴や情報を収集・分析し、採用や教育研修等の人材育成の場に組み込んでいくことを指します。
4.経済産業省産業構造審議会「新産業構造ビジョン 2017年5月30日」
5.UIJターン現象とは、Uターン現象(地方から都市へ移住した後、再び地方へ移住すること)、Iターン現象(地方から都市へ、または都市から地方へ移住すること)、Jターン現象(地方から都市へ移住した後、地方近くの中規模な都市へ移住すること)の3つの人口還流現象の総称のことであります。
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