TKC 【東証プライム:9746】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
(1)全社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
当社は「自利利他(自利トハ利他ヲイフ)」を社是とし、経営理念に「顧客への貢献」を掲げ、創業時に会社定款第2条に定めた次の二つの事業目的を達成するために経営を展開しています。
1)会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営
2)地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営
今日、当社の定款には上記以外の事業目的も追加していますが、これらの事業目的はこの創業来の事業目的を補完するものであり、経営の基本方針は変わっておりません。
② 経営環境
わが国経済は、原材料やエネルギー価格の高騰の影響はあったものの、株価の上昇や消費拡大によって活発化し、緩やかながらも景気回復の動きが続きました。
こうした状況の中、当社グループは、相次ぐ社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。
当社グループが提供する製品およびサービスには、法令等の改正とICTの進化が大きな影響を与えます。法令等の改正としては、令和5年10月より開始された消費税インボイス制度や、改正電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存の義務化、定額減税制度、その他にも国・地方のデジタル改革の推進や自治体情報システムの標準化・共通化などがありました。また、ICTの進化としては、クラウドコンピューティング、OSSの普及、生成AIなどの技術革新があげられます。
当社は、こうした事業環境の変化をいち早く捉え、当社グループの提供する製品およびサービスへと展開することで変化の先頭に立ち、顧客に貢献することが重要であると考えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1)「顧客への貢献」に向けたイノベーションの創発
当社の顧客である会計事務所や地方公共団体を取り巻く事業環境は大きく変化しています。また、生産年齢人口の減少に対応するために、デジタル化の推進による生産性向上や業務効率化が欠かせません。当社は最新のICTを取り入れ、法令に完全準拠しながら、より付加価値の高いシステムを提供することにより、顧客の業務を支援します。そのため今後もシステム開発体制をより強化します。
2)「安全・安心・便利」なデータセンターの運営
当社は会計事務所や中小企業、上場企業、地方公共団体、金融機関、大学、法律事務所など80万件を超えるお客さまに対して、自社が雇用する社員が運用するデータセンターによるクラウドサービスを提供しています。50年以上にわたり培ったノウハウを結集したデータセンターで、お客さまの大切なデータを保管し、事業活動を支援しております。堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策の実施、情報セキュリティの確保に努めることにより、お客さまが “安全・安心・便利”にクラウドサービスを利用できる環境を整備します。
3)持続的な成長と中長期における企業価値の向上を確かなものにする取り組み
当社は創業以来、会社にとって最大の財産は従業員と位置づけ人材育成や待遇面の向上、働きやすい職場環境の整備等に努めてきました。今後も持続的な成長を確かなものとするために、人的資本経営及び資本コストや株価を意識した経営に取り組み、企業価値をより高めてまいります。
(2)会計事務所事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」)に基づき、当社のお客さまである税理士および公認会計士(1万1,400名)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。
TKC全国会では、2022年から2024年までの3年間にわたる運動方針を次のとおり掲げています。
「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」
1)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する 「TKC方式による自計化」の推進
2)租税正義の守護者となる 「TKC方式の書面添付」の推進
3)黒字化を支援し、優良企業を育成する 「巡回監査」と「経営助言」の推進
当社では、TKC全国会が掲げる運動方針に基づき、2024年戦略目標の達成に向けた活動を実施しています。
また、TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」とも綿密な連携を図り、上場企業を中心とする大企業市場向けに税務・会計システム等の提供を通じて、TKC会員の関与先拡大を支援しています。
② 経営環境
国税庁が令和6年11月に発表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和5年度における全法人の黒字申告割合は36.0%でした。前年度に比べて0.2ポイント悪化しており、依然として法人の約64%が赤字となっています。さらに、原材料費や人件費、燃料費等の高騰により、多くの中小企業は先を見通せない状況下で、必要利益をいかに確保するかが大きな課題となっています。
そうした中でTKC会員事務所は、「黒字決算と適正申告」の実現に向けて月次巡回監査と月次決算、経営助言を実施し、「会計で会社を強くする」活動を展開してまいりました。また、借入金返済のための必要利益や必要売上高を算出し、経営計画の策定も支援しています。こうした活動の結果、TKC会員の関与先企業の約57.2%が黒字決算を実現しており、いまTKC会員事務所の指導力の高さに全国の中小企業や金融機関から大きな期待が寄せられています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
会計事務所事業部門は、圧倒的なスピード感をもって顧客に有益な情報を提供するとともに、最新のクラウド技術の活用と法令に完全準拠したシステムの開発・提供によって、顧客の業務生産性と付加価値向上を支援します。また、TKC全国会との連携により「会計で会社を強くする」活動と「黒字決算と適正申告の実現」に取り組んでまいります。
次期における当部門の主要な商品・市場戦略は、以下のとおりです。
1)FXクラウドシリーズの推進による「黒字決算と適正申告」の実現
2)「ペポルインボイス」の普及・促進による経理業務の省力化と月次決算の早期化支援
3)「TKCモニタリング情報サービス」の普及促進による金融機関との連携強化
4)TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会との連携による会員導入活動の強化
5)「TKC連結グループソリューション」の強化・拡充による大企業の税務・会計業務の合理化
6)「TKCローライブラリー」の利用拡大とアカデミック市場におけるDX推進
7)顧客へ提供するシステムの「品質」向上とその「サポート」強化
(3)地方公共団体事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
また、中長期の事業ビジョンとして「TKCシステムの最適な活用を通して、行政効率の向上・住民サービスの充実・行政コストの削減を実現し、地域の存続と発展に貢献する」との方針を掲げ、その実現に向けた戦略を実行しています。
② 経営環境
地方公共団体(特に市区町村)における情報化は、いま大きな転換点を迎えています。地域社会における少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足を背景に、これまでの半数の職員数でも持続可能な形で行政サービスを提供する「スマート自治体(デジタル社会)」への転換が、市区町村にとって重要な経営課題となっています。特に、行政のデジタル化の遅れが社会的課題として顕在化したことで、その動きは一段と加速しています。政府はデジタル社会の実現のためには住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であるとして『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』(総務省/令和6年4月24日改定)により、全ての自治体が足並みを揃えて取り組んでいくことを求めました。
さらには、国・地方の財政状況が厳しさを増す中で、これからも市区町村が行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくために〈持続可能な行政経営〉の確立が期待されています。そのため、市区町村では財務書類等の適切な更新・開示を行うとともに、正確な財政状況の見える化を図り、財務書類等から得られた情報を事業評価やトップの意思決定に積極的に活用することが急務となっています。
一方、地方公共団体向けビジネス・ベンダーの市場動向に目を向けると、行政サービスのデジタル化分野において他業種や新興企業の市場参入が相次いでいます。このことから地方公共団体市場における企業間競争は一段と激化し、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステム・サプライヤーだけが生き残っていく厳しい時代を迎えたといえます。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
地方公共団体事業部門は、令和8年3月末日までに、国が定める標準仕様に準拠する「標準準拠システム」への移行作業を対象となる全顧客団体において完遂する計画を策定しています。そのため、この間にシステム改修費や導入作業費などの一時的な売り上げが集中し、第59期~第60期の2年間は、システム標準化対応により業績が大幅に押し上げられる見通しです。
また、地方公共団体は、デジタル技術を徹底的に活用した業務改革による「効率的な行政運営」と「住民生活の利便性向上」が求められており、システム標準化移行後はこの流れがより一層加速するものと予想しています。当社では、こうした変化をチャンスとして捉え、最新技術を活用したイノベーションの創発を通じて新たな顧客価値の創造とサポート体制の充実を図り、システム標準化の移行完了後もさらなる成長につなげてまいります。
(4)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
印刷事業部門では、「デジタル技術」と「ニーズの変化に対応した製品・サービスの提供」により、顧客企業やそのお客さまのコミュニケーションとマーケティングに貢献することを経営方針として掲げています。新型コロナウイルスの感染拡大は情報化社会における急速なデジタル化推進の流れをもたらしました。社会環境の変化やお客さまの価値観の変化に対応し、自社の生産技術を生かした製品・サービスの開発、品質改善、付加価値の向上に取り組みます。さらにお客さまの良きパートナーとして、デジタル技術と印刷物を使ったコミュニケーション環境の整備を通じて企業価値の一層の向上に努めます。
② 経営環境
行政のデジタル化や規制改革、令和6年10月1日からの郵便料金改定、マイナンバーカードの普及、教育のデジタル化、消費税インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正など、印刷事業を取り巻く環境は変化しています。主力商品のデータ・プリント・サービス(DPS)とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)においては、こうした「新しい生活様式」や「新しいビジネス様式」に対応した製品・サービスの提供が求められています。
また、温暖化が急速に進む中で、CO2削減や環境配慮を志向するお客さまが増加しています。「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」をはじめ環境に優しい製品の開発は、印刷業界においても避けては通れない重要課題だと考えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
印刷事業部門においては、DPS業務やBPO業務に経営資源を集中し、顧客の課題を解決するコミュニケーション実現に向けた新製品・サービスの開発に取り組みます。併せて製品・サービスのさらなる品質と付加価値の向上に努め、販路を拡大します。
また、地方公共団体情報システム標準化を事業拡大の機会と捉え、これに対応した生産設備の充実と生産体制の強化を図ります。
なお、令和4年10月3日付で取得したFSC森林認証(CoC認証)の制度を生かし、お客さまの「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」への対応を支援します(FSC-C182216)。
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