TKC 【東証プライム:9746】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
(1)全社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
当社は「自利利他(自利トハ利他ヲイフ)」を社是とし、「顧客への貢献」を経営理念として、会社定款(第2条)に定める次の二つの事業目的を達成するために経営を展開しています。
1)会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営
2)地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営
この会社定款に定める基本方針は、創業(昭和41年10月22日)以来のもので、その後の業容の拡大に伴い、定款には他の事業目的が追加されましたが、それらはこの二つの事業目的を補完するものであり、経営の基本方針は変わっていません。
② 経営環境
わが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され、政府による支援と経済・社会活動の正常化により緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界的な金融引き締めや原材料価格の上昇、ゼロゼロ融資の返済に伴う中小企業の資金繰り悪化など、依然として先行きの不透明感も漂っています。
こうした状況の中、当社グループは、このような社会環境の変化や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。
当社グループが提供する製品およびサービスに大きな影響を与えるものは、法令等の改正とICTの進化です。法令等の改正としては、令和5年10月より開始の消費税インボイス制度や、宥恕措置が終了し令和6年1月より対応が必要となる改正電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存の義務化、その他にも国・地方のデジタル改革の推進や自治体の情報システムの標準化・共通化、ガバメントクラウドの導入などがあり、その対応を求められています。また、ICTの進化としては、クラウドコンピューティング、FinTech、生成AIなどの技術革新があげられます。
こうした環境の変化をいち早く捉え、当社グループの提供する製品およびサービスへと展開することが重要であると考えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1)さらなる「顧客への貢献」に向けたイノベーションの創発
当社の顧客である会計事務所や地方公共団体を取り巻く環境は、大きく変化しており、デジタル化の推進による生産性向上や業務効率化が急務となっています。当社は最新のICTを取り入れ、法令に完全準拠しながら、より付加価値の高いシステムを提供することにより、顧客の業務を支援します。そのため今後もシステム開発体制の強化に努めてまいります。
2)AIの活用に向けた人材育成と研究開発
今後、顧客を支援する上で、AIの活用は不可欠だと考えています。そのため、令和4年1月より、AIの活用を企画・推進できる人材育成を目的として、「AIプランナー」を120名育成する研修を開始しています。
さらに当社は、AIAzure OpenAI Serviceの大規模言語モデルをベースに開発した社内向けAIチャットサービス「TKC AI Assistant」の利用を開始しました。システム開発の業務のみならず、社内事務や営業の現場などでも「TKC AI Assistant」を積極的に活用することで、社員の業務効率化・生産性向上を目指しています。
このような取り組みを通じて、将来的にはAIを活用した製品・サービスの創出につなげてまいります。
3)地球環境の保護と「安全・安心・便利」なデータセンターの運営
環境保全活動は企業の社会的責任であり、持続可能な社会の実現に不可欠であることから、平成19年に掲げた「環境基本方針」に基づきCO2削減に積極的に取り組んでいます。今後も「サステナビリティ方針」にもとづき、地域社会に貢献してまいります。
また、当社は会計事務所や中小企業、大企業、地方公共団体、金融機関、大学、法律事務所など80万件を超えるお客さまに対して、自前のデータセンターによるクラウドサービスを提供しています。50年以上にわたり培ったノウハウを結集したデータセンターで、お客様の大切なデータを保管し、事業活動を支援しているため、堅牢でセキュアなデータセンターの運営とBCP対策の実施、情報セキュリティの確保に努めています。
当社では、引き続き顧客が“安全・安心・便利”にクラウドサービスを利用できる環境の整備に取り組んでまいります。
(2)会計事務所事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」)に基づき、当社のお客さまである税理士および公認会計士(1万1,400名)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。
TKC全国会では、2022年から2024年までの3年間にわたる運動方針を次のとおり掲げています。
「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」
1)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する 「TKC方式による自計化」の推進
2)租税正義の守護者となる 「TKC方式の書面添付」の推進
3)黒字化を支援し、優良企業を育成する 「巡回監査」と「経営助言」の推進
当社では、TKC全国会が掲げる運動方針に基づき、2024年戦略目標の達成に向けた活動を実施しています。
また、TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」とも綿密な連携を図り、上場企業を中心とする大企業市場向けに税務・会計システム等の提供を通じて、TKC会員の関与先拡大を支援しています。
② 経営環境
国税庁が令和5年11月に発表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和4年度における全法人の黒字申告割合は36.2%でした。前年度に比べて0.5ポイント増加したものの、依然として法人の約64%が赤字となっています。
さらに、地政学的なリスクの高まりによる原材料費の高騰、新型コロナウイルスの緊急融資等の返済開始など、中小企業が経営難や赤字に陥るリスクは未だ回避できていません。多くの中小企業は先を見通せない状況下で、必要利益をいかに確保するかが大きな課題となっています。
そうした中でTKC会員事務所は、「黒字決算と適正申告」の実現に向けて月次巡回監査と月次決算、経営助言を実施し、「会計で会社を強くする」活動を展開してまいりました。また、借入金返済のための必要利益や必要売上高を算出し、経営計画の策定も支援しています。こうした活動の結果、TKC会員の関与先企業の約53%が黒字決算を実現しており、いまTKC会員事務所の指導力の高さに全国の中小企業や金融機関から大きな期待が寄せられています。
なお、令和4年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、また令和5年10月1日には改正消費税法が施行されました。それにより全ての事業者が電子取引のデータ保存や、適格請求書(インボイス)への対応を迫られています。当社ではこうした法律および社会制度の改正を、TKC会員の関与先を拡大する機会と捉えています。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
会計事務所事業部門では、TKC会員事務所の社会への貢献度をさらに高め、その事業の成功を実現するために、TKC全国会の指導の下で、以下の活動を全力で支援してまいります。
1)システムの競争力の強化
当社では、以下の取り組みを通じてシステムの競争力の強化を図り、優位性を訴求することで他社との差別化に努めます。
a.当社システムの「強み」は税務と会計の一気通貫にあります。それは、財務会計システムにおいて法令および会計基準への完全準拠性を堅持し、税務情報システムと完全連動させ、会計・税務・電子申告の一気通貫を実現していることです。今後も、法令改正や制度改定に迅速・的確に対応します。
b.当社システムの最大の特長は、税務と会計の実務に精通したTKC会員がシステムの導入から運用まで、きめ細かなサポートを行い企業の適法・適正な税務と会計の処理を支援していることにあります。
こうしたTKC会員の業務の高付加価値化の支援強化を図ります。
2)自計化推進活動
当社では、TKC全国会の戦略目標達成を支援するため、「FXクラウド」における企業経営者の迅速な意思決定を支援する機能を強化・拡充するとともに、会計データの改ざんを可能とする遡及的な加除・訂正の会計処理ができないシステムの強みを生かした自計化推進活動を展開しています。
また「FXクラウド」や「インボイス・マネジャー」の利用拡大を図ることにより、今後はペポルインボイス(デジタルインボイス)の普及にもつなげてまいります。
3)TKC会員事務所1万超事務所の達成の支援
TKC全国会が掲げるTKC会員事務所1万超事務所の達成に向けて、TKC会員と連携した会員導入活動へ取り組み、TKC全国会の戦略目標の達成に貢献します。
4)TKC連結グループソリューションの強化と拡充
TKC全国会の「中堅・大企業支援研究会」や「海外展開支援研究会」と連携し、「TKC連結グループソリューション」の活用による大企業の税務、会計、海外子会社管理業務等の合理化・効率化を支援します。
5)TKCローライブラリーの利用拡大
「TKCローライブラリー」を構成するコンテンツ「LEX/DBインターネット」「出版社データベース」「LegalBookSearch」等の機能強化と収録内容の拡充および生成AIの活用を進めます。あわせて他社の「リーガルテックサービス」とも連携するAPIサービス等の提供により、利用者の利便性を高めます。こうした取り組みにより競合他社のサービスとの差別化を図り、法律事務所等へのさらなる利用拡大を目指します。
(3)地方公共団体事業部門の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
また、中長期の事業ビジョンとして「TKCシステムの最適な活用を通して、行政効率の向上・住民サービスの充実・行政コストの削減を実現し、地域の存続と発展に貢献する」との方針を掲げ、その実現に向けた戦略を実行しています。
② 経営環境
地方公共団体(特に市区町村)における情報化は、いま大きな転換点を迎えています。地域社会における少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足を背景に、職員数がこれまでの半数でも持続可能な形で行政サービスを提供する「スマート自治体(デジタル社会)」への転換が、市区町村にとって重要な経営課題となっています。特に、コロナウイルス対応で行政のデジタル化の遅れが社会的課題として顕在化したことで、その動きは一段と加速しています。政府は「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)を策定し、デジタル社会の実現のためには住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であるとして『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』(総務省/令和4年9月2日改定)により、全ての自治体が足並みを揃えて以下の施策に取り組んでいくことを求めました。
1)自治体情報システムの標準化・共通化
2)マイナンバーカードの普及促進
3)行政手続のオンライン化
4)AI・RPAの利用促進
5)テレワークの推進
6)セキュリティ対策の徹底
さらには、国・地方の財政状況が厳しさを増す中で、これからも市区町村が行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくために〈持続可能な行政経営〉の確立が期待されています。そのため、市区町村では財務書類等の適切な更新・開示を行うとともに、正確な財政状況の見える化を図り、財務書類等から得られた情報を事業評価やトップの意思決定に積極的に活用することが急務となっています。
一方、地方公共団体向けビジネス・ベンダーの市場動向に目を向けると、行政サービスのデジタル化分野において他業種や新興企業の市場参入が相次いでいます。このことから地方公共団体市場における企業間競争は一段と激化し、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステム・サプライヤーだけが生き残っていく厳しい時代を迎えたといえます。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社では、地方公共団体における「スマート行政DX」の実現、および「持続可能な行財政改革」を支援するため、今後も最新のICTを活用した革新的な製品やサービスの開発・提供を通じて「住民サービスの充実」と「行政効率の向上によるコスト削減」を支援することが重要な経営課題であると捉え、以下の5つの重点活動に取り組みます。
1)基幹系システムの標準化への対応
a.令和8年3月末までを期限とした自治体の情報システムの標準化・共通化に対応すべく、国の策定する「標準仕様」に完全準拠したシステムの開発、およびガバメントクラウドへの移行のための準備を進めます。
b.ガバメントクラウドとは、国(デジタル庁)が用意する政府共通のクラウドサービスの利用基盤です。当社においては、TISCで運用・稼働しているシステムをこの基盤に移行し運用・稼働させることになります。
2)行政サービス(各種手続き)のデジタル化・オンライン化の支援
市区町村においては「行政サービスのデジタル化」の早期対応が不可避となっています。これを支援するため、先進的に取り組む団体の協力を得て「TASKクラウドスマート申請システム」と「TASKクラウドかんたん窓口システム」を組み合わせた窓口サービスのデジタル化に向けて一層の機能強化・拡充に取り組みます。
3)地方税税務手続きのデジタル化の支援
地方税共同機構の認定委託先事業者として、また税務情報システムの提供を通じて、税務業務の効率化を支援する関連サービスの一層の拡充・機能強化を図り、その普及促進に取り組みます。
4)庁内事務のデジタル化の支援
次世代版「TASKクラウド公会計システム」の普及・促進を図り、市区町村の内部事務のデジタル化を支援してまいります。
5)次世代製品の研究・開発
a.基幹系システムの標準化後を見据え、高付加価値な独自サービス、機能の研究・開発に取り組みます。
b.先進団体との実証事業等を通じて、行政手続きのオンライン化やワンストップ・ワンスオンリー化などデジタル化を支援する新たなソリューションの研究・開発に取り組みます。
(4)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等
① 経営方針・経営戦略
印刷事業部門では、「デジタル技術」と「ニーズの変化に対応した製品・サービスの提供」により、顧客企業やそのお客さまのコミュニケーションとマーケティングに貢献することを経営方針として掲げています。新型コロナウイルスの感染拡大は情報化社会における急速なデジタル化推進の流れをもたらしました。社会環境の変化やお客さまの価値観の変化に対応し、自社の生産技術を活かした製品・サービスの開発、品質改善、付加価値の向上に取り組みます。さらにお客さまの良きパートナーとして、デジタル技術と印刷物を使ったコミュニケーション環境の整備を通じて企業価値の一層の向上に努めます。
② 経営環境
行政のデジタル化や規制改革、マイナンバーカードの普及、教育のデジタル化、消費税インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正など、印刷事業を取り巻く環境は変化しています。主力商品のデータ・プリント・サービス(DPS)とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)においては、こうした「新しい生活様式」や「新しいビジネス様式」に対応した製品・サービスの提供に努めます。
また、ビジネス帳票は長期的に需要の減退が続いておりますが、生産環境の整備、設備の統廃合や生産効率の向上によりコストを抑え、市場内でのシェア拡大を図ります。
なお、印刷事業部門の株式会社TLPでは、環境配慮を志向するお客さまが環境にやさしい紙製品をお使いいただけるよう、令和4年10月3日付でFSC®森林認証(CoC認証)を取得しました(FSC-C182216)。この認証制度は、適切に管理されたFSC認証林およびその他の管理された供給源からの原材料を用いるとともに、適切な管理と印刷加工が求められています。これを維持・管理することによって紙製品にFSC認証マークを付すことができ、お客さまの環境配慮への姿勢のアピールを支援することができるようになりました。この認証制度を活かし、お客さまの「グローバルな諸課題の解決を目指すために掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)」への対応を支援します。
③ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの印刷事業部門では、データ・プリント・サービス(DPS)およびビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を主体とした拡販のため次のとおり取り組みます。
1)アナログとデジタルを融合した印刷技術で製品・サービスの付加価値を向上させ、顧客のダイレクトコミュニケーションへ貢献します。
2)顧客ニーズへの対応、他社との差別化による提案型の営業展開のため新技術開発へ継続して取り組みます。
3)コロナウイルスの感染拡大は顧客のアウトソーシング業務範囲を拡大させました。その受託では高品質かつ、コストの最小化、情報セキュリティリスクの低減などにより顧客の経営効率化に寄与します。
4)令和7年度末までの地方公共団体情報システム標準化対応に向けて、最適なアウトソーシングサービスの構築を目指します。
5)DPS専門工場の生産環境の一層の整備により、品質改善、品質力の強化と生産力の増強を図ります。
6)品質の向上と安定・維持、また品質障害防止のため、全商品の工程ごとの品質チェック体制を強化します。
7)全社においてデジタルトランスフォーメーション(DX)と自動化に取り組み全部門の生産性と業務品質を向上させます。
8)顧客や取引先等からの信頼獲得、および政府が進めるマイナンバーカードの普及促進に合わせ、マイナンバーの管理については「プライバシーマーク」「ISMS」に基づいた情報セキュリティ体制を一層強化します。
9)「ISO14001」取得の環境配慮型企業として、損紙の削減を図るとともに、生産性の向上と効率化によりエネルギー消費量の削減をさらに進めます。
- 検索
- 業種別業績ランキング