Sansan 【東証プライム:4443】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念において「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。このミッション、ビジョンの実現に向けて、さまざまなビジネス課題を抱える企業やビジネスパーソンの働き方を変え、DXを促進するサービスを展開しており、これらの事業活動の推進が社会課題の解決に寄与し、ひいては当社グループの株主価値及び企業価値の最大化につながるものと考えています。
(2)重視する経営指標と中期財務方針
これまで2023年5月期から2025年5月期にかけて売上高成長と調整後営業利益(注1)成長の両立を目指す中期的な目標を設定していましたが、2024年5月期までの堅調な業績進捗を踏まえ、2025年5月期の期初において、新たに2025年5月期から2027年5月期にかけての中期財務方針を設定しました。
新たな中期財務方針の下、堅調な売上高成長の継続と利益成長の加速を目指します。まず、最も重要な経営指標である売上高については、当該期間の年平均成長率として、22%から27%を目指します。次に、重視する利益指標として採用する調整後営業利益は、売上高成長のために必要な投資を行いながらも成長を加速させ、2027年5月期における調整後営業利益率として18%から23%を目指します。
(注)1. 調整後営業利益:営業利益+株式報酬関連費用+企業結合に伴い生じた費用(のれん償却額及び無形固定資産の償却費)
(3)中長期的な経営戦略
当社グループの事業には次のような特徴があり、これらに基づいて中長期的な経営戦略を立案しています。
①広大な市場機会
DXへの意識改革や働き方の変化、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、当社サービスに関連する市場は拡大が続いています。DX市場は、2030年度に8兆350億円(2023年度見込比4兆153億円増)(注2)、国内SaaS市場は、2027年度に2兆990億円(2023年度見込比6,862億円増)(注3)の規模に達すると予想されています。
また、当社グループのサービスが取り扱う名刺や請求書、契約書といった書類は、現在でも紙のままで日常的に利用されている機会が多く、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されています。各サービスの潜在市場について、「Sansan」は法人向け名刺管理サービス市場において82.4%(注4)のシェアを有していますが、日本国内の総労働人口を対象として捉えた場合、2024年5月期末における「Sansan」利用者数の割合は約4%(注5)に留まっており、広大な開拓余地が残されていると考えています。次に、「Bill One」では、クラウド請求書受領サービス市場においてNo.1の売上高シェア(注6)を獲得していますが、2024年5月期末における利用企業カバー率は、日本国内の企業の1%未満(注5)に過ぎないため、広大な開拓余地が存在していると考えています。
(注)2.「2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、企業編」富士キメラ総研
3.「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版」富士キメラ総研
4.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2024」(2024年1月 シード・プランニング調査)
5.分母となる国内の総企業数及び従業者数は、総務省統計「令和3年経済センサス活動調査」を基に算出
6. デロイトトーマツミック経済研究所「驚異的な成長を続けるクラウド請求書受領サービス市場」
(ミックITリポート2023年11月号)
②アナログ情報のデジタル化精度99.9%を実現する仕組みとテクノロジー
当社グループが提供する各サービスにおけるアナログ情報のデジタル化精度は、サービスの本質的な品質や競争力に資するものであり、99.9%の精度を実現する仕組みとテクノロジーを有していることが当社グループの事業共通の強みとなっています。当社グループのサービスでは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと、人力の組み合わせによってアナログ情報のデジタル化を行っており、創業以来、人力によるデータ入力を中心に、名刺をはじめとする膨大なアナログ情報をデジタル化してきたことで、現在では、大量のアナログ情報を正確かつ効率的にデジタル化する独自システムの開発・運営が可能となりました。この技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、継続的なサービス品質・競争力の向上に向けて、新技術の開発やオペレーションの改善を追求しています。また、これらの仕組みやテクノロジーは、さまざまなビジネス分野で活用が可能であるという特徴を有しています。
③高い安定性を誇る財務・収益モデル
主要サービスにおける課金モデルは、継続収入が見込めるサブスクリプション(月額課金)が中心となっています。また、サービスの月次解約率は直近12か月平均で1%未満に留まっており、契約当たり売上高の拡大に努めることで、顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を推進しやすいことから、継続的な事業成長が見込める、高い安定性を誇るモデルであると捉えています。
具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りです。
(ⅰ)Sansan/Bill One事業の売上最大化
「Sansan」及び「Bill One」は、業種や業態を問わず、多くの企業を対象とするサービスであり、日本国内だけでも大きな顧客開拓余地があります。2024年5月期では、売上高のさらなる成長に向けて、「Sansan」「Bill One」それぞれに専属の営業部門を設け、人材採用を加速する等、営業体制を強化しました。
この強化した営業部門の下で、「Sansan」においては、ユーザー企業の全社員によるサービス利用(全社利用)を前提とした新規顧客獲得や、既存顧客の利用拡大等に取り組みます。また、「Bill One」においては、新規顧客獲得のほか、「Bill Oneビジネスカード」を活用した「Bill One経費」や、請求書の発行から入金消込までを一気通貫で完結可能な「Bill One発行」といった新たな機能の開発、販売を強化することで、さらなる売上高の拡大を図ります。
また、これまで培ってきた技術を活用し、新たなサービスの創出や強化にも取り組みます。契約データベース「Contract One」においては、AI技術の活用等によって、ユーザーのさらなる利便性の向上に努めます。
(ⅱ)Eight事業の収益拡大
収益性を重視した事業運営体制の下、登録ユーザー372万人を有する「Eight」のネットワークを活用し、ビジネスイベント等のBtoBサービスのマネタイズを強化するほか、「Eight Team」の契約件数の増加等に取り組むことで、調整後営業利益のさらなる拡大を目指します。
(ⅲ)M&Aの活用
グループ各社の企業価値向上に向けた施策を推進するとともに、当社グループが保有するリソースやノウハウを有効活用することで、シナジーの創出に取り組みます。また、M&Aの活用は重要な成長戦略の1つに位置付けており、今後も積極的な検討を進めます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営戦略を進めるに当たって、当社グループの対処すべき主な課題は以下の通りです。
①優秀な人材の採用・育成と多様性の確保
当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴をもつ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えています。当社グループの企業理念や事業内容に共感した優秀な人材が、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築を進めるとともに、人材の多様性確保を進めていきます。
②セキュリティリスクに対する管理体制の継続的な強化
当社グループは、提供サービスを通じて個人情報をはじめとした重要な情報資産を多く取り扱っているため、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えています。現在においても、情報セキュリティ方針や個人情報保護方針等を策定した上で、情報資産を厳重に管理する等、情報保護については万全の注意を払っていますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備を行っていきます。
③技術力の強化
アナログ情報を正確にデジタル化する技術は、当社グループの競争力の源泉であり、当社グループが手がけるさまざまなサービスの成長を支える共通基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えています。そのため、国内外における優秀な技術者の採用や先端技術への投資・モニタリング等を通じて、技術力のさらなる向上に取り組みます。
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