企業MORESCO東証スタンダード:5018】「石油・石炭製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、多様化する顧客ニーズや持続可能社会の実現に対応していくため、また、新たな分野での事業創出のため積極的に研究開発活動に取り組んでおり、原材料の精製・合成・変性・配合による高機能付与および顧客要求条件に合致した製品特性の評価技術を基盤に、カーボンニュートラル社会に適合した、特殊潤滑油、合成潤滑油、ホットメルト接着剤および新規事業開発の各部門で研究開発を進めております。研究開発拠点は日本に置き、中国・東南アジア・米国には技術者を日本から派遣し、セグメント間の連携を図りながら現地に根ざした製品開発するとともに、現地の開発力の向上を推進し、各拠点での迅速な開発が可能な体制づくりを行っております。

 主として当社の本社・研究センターに、事業部門に関連した開発部および新規事業開発を担う研究開発部を置き、環境関連、情報エレクトロニクス関連、エネルギーデバイス関連、ライフサイエンス関連の各分野での新材料開発・新技術開発・新製品開発および既存製品の改良開発を推進しております。研究開発スタッフは113名であり、これは従業員全体の13.8%に当たっております。

 当連結会計年度における各セグメント別の研究開発の主要課題、研究開発成果および研究開発費は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,321百万円となっております。

(1) 日本

(特殊潤滑油部門)

 主に、機能材事業部内に設置している各分野の開発課において、ダイカスト用油剤、難燃性作動液、熱間鍛造用潤滑剤、金属加工油等の研究開発を行っております。

 持続可能社会の実現に向けた環境負荷低減や省資源化・リサイクル化に貢献できる新製品開発を始め、IoT・AIやセンサーを用いた基盤技術構築、更に油剤長寿命化や使用量削減が可能な周辺装置開発にも注力しております。

 また、ラボラトリーオートメーションやマテリアルズインフォマティクスの導入を検討し、開発の効率化を図ってまいります。

 ダイカスト用油剤では、少量の塗布で使用可能な油剤による工場内環境改善、品質・生産性向上を実現する製品開発を完了していますが、今後更には各自動車メーカーのEV化・軽量化で貢献できる少量塗布型新製品開発を推進します。また効率的な少量塗布を実現・サポートするための簡易に塗布状態を可視化する技術の開発も進めて参ります。

 難燃性作動液では、国内No.1水グリコール系作動液メーカーとして環境への取り組みを加速し、劣化作動液から主成分を回収利用するリサイクルシステムのブラッシュアップに併せ、作動液の長寿命化を実現するための自動モニタリングシステムの開発により廃棄物低減による環境負荷の低減への貢献も進めています。

 熱間鍛造用潤滑剤では、黒鉛代替可能で工場の作業環境美化に貢献できる白色系潤滑剤の開発を進めています。近年、自動車メーカーのEV化・軽量化に伴い、足回り部品の製造プロセスには高強度かつ軽量化が期待されるアルミ鍛造が採用されるようになってきており、鉄鍛造のみならずアルミ鍛造分野への取り組みも推進しております。

 金属加工油では、環境改善や生産性向上に貢献できる水溶性切削油のコア技術の更なる深耕を進めると共に、リユース材料・容器の積極利用と加工油剤の長寿命化を実現するための自動モニタリングシステムの開発を行い、加工性能の安定化や廃棄物低減による環境負荷の低減への貢献を進めています。

(合成潤滑油部門)

 合成潤滑油開発部において、ハードディスク表面潤滑剤、ハードディスクドライブ内部品用グリース基油・半導体製造装置用の特殊油剤等の研究開発を行っております。独自の分子構造設計と合成・精製ノウハウによりオンリーワン製品の開発に注力しております。

 ハードディスク表面潤滑剤では、さらなる記録密度向上のために必要とされる磁気ヘッドとハードディスク間の低浮上性(低すきま性)を実現する新規化合物が主要ディスクメーカーで採用されております。品質安定化のための製造基盤技術強化を進めるとともに、次世代ハードディスクの要求特性に対応した新規化合物の分子設計に注力しております。具体的には、大容量磁気記録技術として期待されている、MAMR(マイクロウェーブアシスト磁気記録)やHAMR(熱アシスト磁気記録)などに要求される耐久性・耐熱性に優れた新しい構造の潤滑剤の開発を続けております。

 ハードディスクディスクドライブ内部品や半導体製造装置用の特殊油剤では、アウトガス発生の原因となる低揮発成分が嫌われるため、これを徹底的に除去した高度精製油剤の開発を行っており、市場評価も進んでおります。

 また、新しい事業構築を目標として、バイオマス材料を用いた材料開発やPFAS(erluorolkyl ubstances)規制の代替材料の分野への挑戦も開始し、潤滑性や導電性、サステナブル社会への貢献といった市場動向の要求に沿って、独自性の高い高機能添加剤の開発を行うともに、合成技術を活かし他部門やグループ会社との協業による市販原材料とは異なる機能を有した新たな原材料設計・添加剤設計・製品開発に引き続き注力してゆきます。

(ホットメルト接着剤部門)

 ホットメルト事業部内に設置しているホットメルト開発部において、人や環境に配慮した低臭気・無揮発成分(VOC)の接着剤の開発に加えて、省エネルギーを実現しうる低温塗工タイプの新製品やホットメルトの弱点である耐熱性不足を克服しうる反応型ホットメルトの新製品などの開発を行っております。

 主要市場のひとつである衛生材料業界向けには、顧客の海外進出に追随し、現地調達可能な材料を用いた新製品開発とともに現地生産拠点への生産技術支援に引き続き取り組んでおります。また、接着界面の分析・解析技術を用いて、少ない塗布量で接着力を発揮できる低塗布量対応型ホットメルトの開発や、接着以外の付加機能を持つ新たな製品も開発中であり、市場の多様なニーズに応える新製品開発に注力しております。

 近年の環境問題への意識の高まりと共に、カーボンニュートラルと資源の有効活用を目指し、バイオマスホットメルトのラインナップ強化や、100%天然由来成分で作られたホットメルトの開発に取り組んでおります。また、自動車内装用向けの反応型ホットメルトの性能向上に成功し新たな自動車メーカーでの採用拡大が進んでいます。

 ホットメルトはもともと有機溶剤を含まず、人体や環境に優しい粘接着剤ですが、原料そのものからも、微量の残存溶剤を除去できるM-Zero™技術を駆使し、機能性と環境配慮を両立した製品ラインナップを強化していきます。

(新規事業開発部門)

 環境関連、情報エレクトロニクス関連、エネルギーデバイス関連、ライフサイエンス関連などの分野をキーワードとし、引き続き新規事業創出を目指した種々の研究開発を行っております。

 中でも、エネルギーデバイス関連分野に関しては、有機ELデバイスの封止材を主軸とする製品開発と販売に取り組んでおります。次世代有機デバイスとして期待されているフレキシブルタイプ向け、マイクロLED向け、そしてペロブスカイト型太陽電池向けの封止部材についても開発に注力しており、顧客評価が進んでいます。加えて、フレキシブルデバイスに使用するフィルム等のガス・水蒸気透過度測定装置について販売および受託分析を継続しており、国内を中心として実績が拡大しております。更には水素社会に向けた、水素透過率に特化した新装置を昨年度末にプレスリリース致しました。有機薄膜太陽電池(OPV)については海外メーカーとの製品・材料での協業も取り入れながら、Roll-To-Rollでの独自の試作が可能な点を生かしながら販売を開始しております。保有のRoll-To-Roll設備を活用し、OPVだけではなくペロブスカイト型太陽電池の受託作製も行っております。

 また、ライフサイエンス関連部門では複数の大学や研究機関と連携し、オートファジーを対象とした創薬研究を進めています。オートファジーは細胞内の恒常性維持現象で、加齢に伴い低下することが知られております。オートファジーは各種生活習慣病と密接に関係すると考えられており、オートファジーを活性化する薬剤は、健康寿命の増進に寄与すると期待されています。2024年2月、開発化合物に関する第一弾の特許を出願しました。この後、大手製薬企業へのアウトライセンスに向け、安全性データならびに薬物動態データの拡充を進めるとともに、開発化合物の作用メカニズムを明らかにし、早期実用化を目指します。また各種薬物の吸収性を飛躍的に高めることができるナノエマルジョン技術を化粧品原料に応用し、国内ブランドホルダー2社での採用検討が進んでおります。その他の新規事業開発においては、長期経営計画をベースに、バイオガスからの非石油石炭由来オイルの製造開発を進めており、パイロットプラントを稼働させ、技術概念実証とともに、さらなる大規模化に向けた課題抽出を進めております。この他、研究開発部門全体でDXを導入し、研究開発の効率化、スピードアップを進めております。

 日本セグメントに係る研究開発費の金額は1,243百万円であります。

(2) 中国、東南/南アジアおよび北米

 主としてダイカスト用油剤および金属加工油に関して、現地のニーズに合致した製品開発に注力し、研究開発要員が駐在し、現地開発体制の強化を進めております。ダイカスト用油剤においては、リーディングカンパニーとしての開発ノウハウを共有化し、現地ニーズに対応した製品開発をタイムリーに行うことにより、ローカルユーザーを含めた市場シェアアップに努めております。金属加工油では、日本で培った水溶性切削油開発におけるコア技術の共有化を図り、現地ニーズに合致した新製品開発を進めています。

 中国、東南/南アジアおよび北米セグメントに係る研究開発費の金額は78百万円であります。

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