企業兼大株主LIXIL東証プライム:5938】「金属製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

(1) 経営方針及び経営環境

 私たちを取り巻く世界や日々の暮らしは変化を続けています。しかし、より豊かで快適な住まいで暮らしたいという人びとの願いは、いつの時代も変わりません。

LIXILのPurpose(存在意義)は、持続的な成長に向けて、よりアジャイルで起業家精神にあふれた企業になるための取り組みを続け、意思決定を行う際に指針となるものです。従業員は、当社における価値創造の原動力であり、LIXIL Behaviors(3つの行動)を日々の業務の中で実践することで存在意義の実現につなげています。

 上記のPurposeのもと、当社グループは、人びとの住まいの夢を実現するために、先進的な技術と製品を開発、提供しています。

 水の可能性を広げるシャワーや水栓、料理の創作意欲を高めるキッチン。清潔さと快適さを兼ね備えたトイレ。家の中と外の世界をつなぐドアや窓。空間に彩りを添える内装や外装。長い一日の疲れを癒すお風呂。住まいをより豊かで快適にするのは、実は意外とシンプルなことです。

 当社は、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生しました。以後、GROHE、American Standardといった世界的ブランドを傘下に収め、日本のものづくりの伝統を礎に、世界をリードする技術やイノベーションで、日々の暮らしの課題を解決する高品質な製品をグローバルで幅広く提供しています。

 現在、当社グループは、世界150カ国以上で約49,300人の従業員を擁するグローバル企業となり、毎日10億人以上の人びとに当社グループの製品をご愛用いただいています。今後も生活者視点に立ち、考え抜いた、意味のある製品デザインにこだわり、世界中のあらゆる人びとのより豊かで快適な住まいと暮らしの実現に向けて、さらなる可能性を追求し、責任ある事業成長を推進していきます。

 この数年間、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化し、世界的なインフレーションや物流危機、サプライチェーンの寸断などさまざまな課題に直面しながらも、逆境を乗り越えることで、さらに強い組織へと変革を推進してきました。経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」に基づき、持続的な成長の実現に向けて、着実に前進しています。

 直近では、主に欧米における金利の高止まりやインフレーションの影響を受け、住宅関連需要が想定以上に減退し、海外事業は大きな痛手を受けました。最大の収益源となっていた欧州市場の低迷に加え、国内市場における新築需要が想定を大きく下回って推移したことも重なり、当連結会計年度の業績は減収減益、当初計画に対して未達という非常に厳しい結果となりました。欧米をはじめとする海外住宅市場の需要低迷は、当社グループにとっても販売量や生産数量の減少を招き、固定費負担が収益性の面で大きな課題となっています。強い逆風下にあったとはいえ、この環境悪化を跳ね返すことができる体力が不足していたことが浮き彫りとなり、この結果を重く受け止めています。

 よって、当社グループにとって喫緊の課題は、海外事業の収益性改善と、事業環境に左右されない強靭な事業基盤を構築することだと考えています。期初から構造改革を推進し、欧米を中心とした人員配置の最適化、サプライチェーンの再構築によるコスト低減、事業ポートフォリオの最適化を着実に実行してきました。この構造改革を予定より早期に推進できたことで、当初計画以上の構造改革費用を当連結会計年度に計上することになりましたが、こうした取り組みの成果は、次期以降の収益改善に貢献する見込みです。環境変化の激しい中で、包括的な構造改革をスピーディーに実行してきたことの意義は大きいと考えています。

 国内事業については、新設住宅着工戸数は依然として低水準で推移していますが、省エネ効果の高い高性能窓への改修を後押しする政府補助金の効果もあり、リフォーム需要の取り込みが奏功し、利益のけん引役となりました。リフォーム市場へのシフトに加え、コスト上昇に対応した機動的な価格改定や、これまで実施してきた国内事業の最適化に向けた取り組みが実を結び、収益性改善が進みました。

 次期については、将来に向けて大きな利益成長を実現するための足固めの1年になると考えています。欧米の景気回復の時期は現時点では不透明であり、次期の市場環境の見通しについて楽観視はしていません。海外の需要は前期並みとした上で、国内の新設住宅着工戸数についても弱含むことを想定しています。このように事業環境が厳しい時期だからこそ、変化への対応力を高め、強固な事業基盤を築くため、海外事業の構造改革を次期に概ね完了させ、さらなる体質強化を図ります。

 これに加え、市場の需要回復に先んじて、差別化された商品を軸に、成長機会を着実に捉えていくことができるよう準備を進める必要があります。社会や環境にインパクト(良い影響)を生み出す差別化商品のラインナップ拡充を図っており、すでに新たなコア事業の芽として期待できるものも出てきています。次期においては、将来に向けたイノベーションの創出に一段と力を入れ、高付加価値で差別化された、革新的な製品の投入、拡販を進めていきます。

 収益性の改善には、高利益率のビジネスへのリソースのシフト、差別化商品の拡販、コスト削減の3つのアプローチが重要だと考えています。中長期目標に掲げた事業利益率10%、ROIC10%に近づけるよう、これらの課題に着実に取り組み、変革を推進していきます。

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、すべての事業の軸となるPurpose(存在意義)達成の道筋として、2021年3月期に経営の基本的方向性を示す「LIXIL Playbook」を策定し、取り組むべき優先課題を設定しました。Purposeを追求し、当社グループの特長をさらなる強みへと進化させ、持続的な成長の実現につなげていくロードマップを明確化したものです。先行きが不透明で将来の予測がしにくい事業環境においても、目指すべき方向を明確に示すことで、従業員が一丸となって優先課題に注力することができています。(なお、策定日以降の事業環境の変化に対応させるため、2023年に優先課題の一部改訂を実施しています。)

[「LIXIL Playbook」における5つの優先課題]

① インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応

 資材や物流費の高騰による影響を踏まえ、販売価格の最適化や、素材の変更によるコストダウンとコスト安定の両立を図るとともに、付加価値の高い差別化製品へのシフトにより収益性改善を進めます。また、グローバルサプライチェーンが寸断されるリスクに備え、調達先の冗長化や生産のプラットフォーム化といった従来からの施策に加え、地域内における調達、生産体制への移行を進めていきます。

② 日本事業の最適化と新たな事業成長の追求

 日本事業の収益性と機動力を高めるための施策を継続し、従来は水回り製品が中心であったリフォーム商材を窓や壁といった断熱改修にまで広げることで、拡大するリフォーム需要の取込みを強化します。さらに、全ての製品群に関して環境配慮型の製品を導入し、差別化につなげていきます。

③ ウォーターテクノロジー事業における海外事業の成長促進

 付加価値の高い製品の販売拡大、販売チャネルの多角化、戦略的なブランド・ポートフォリオの構築といった施策を通じて、コモディティビジネスからの脱却を図り、海外市場の成長を着実に取り込むための基盤を強化します。

④ 環境戦略の事業戦略への統合

 当社グループの環境戦略は、「気候変動対策を通じた緩和と適応」「水の持続可能性を追求」「資源の循環利用を促進」という3つの重点領域を設定しています。環境戦略を事業戦略に統合し、各領域における中期目標の実現に向けて取組みを強化しており、持続的成長と地球環境や社会へのインパクトの拡大を目指します。

⑤ 新たなコア事業の創出

 将来の成長に向けて、インパクトのある新しい技術、製品、ビジネスモデルの創造を通じて、新たな収益の柱になるようなコア事業の確立を目指しリソースを投入していきます。

「LIXIL Playbook」で掲げた優先課題に沿って、複雑化していた組織の簡素化、基幹事業への注力、サプライチェーンの強化といった取り組みは順調に進捗し、外部変化への対応力を着実に強化してきたという実感があります。しかしながら、海外事業を中心に、取り組むべき課題はまだ残されています。引き続き構造改革を推進し、外部環境に対する組織の弾力性を高めていきます。

 事業環境は引き続き厳しい状況が続きますが、縮小が見込まれる国内市場の売上比率の高さ、資本効率の改善、利益率の低下といった課題は、企業努力で対処可能な課題であり、経営者として克服に努めていきます。最終的には、私たちの提供する商品すべてが、社会・環境にインパクトを創出し、それらの商品を迅速かつ効率的に、低コストで生み出していくことができる、強靭な事業基盤の構築を目指します。

 中長期で目指すのは、「LIXILから商品を買うこと自体が、世の中にとって良い」と認知される、そういう世界を創ることであり、その中核を担うのが、社会・環境にインパクトを生み出す商品群です。2030年には、売上の半分以上をこれらの商品群が占める姿を目指します。「LIXIL Playbook」の優先課題に沿ってこうした取り組みを中長期的に進めていくことで、目標とする事業利益率10%、ROIC10%は達成できると確信を強めています。

 長期的に、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まい」を実現する企業になるための絵は描けています。今はまず、将来の利益成長につなげる準備期間として、しっかりと足固めを行いながら、新たな暮らしの可能性を広げるイノベーションの創出に注力し、競争力の強化を図ります。事業活動を通じて社会・環境課題の解決に貢献することは、企業として果たすべき役割です。こうした活動は社会全体に利益をもたらすだけでなく、当社グループの事業の持続可能性を高める上でも、非常に重要です。今後も全社一丸となり、次世代へとつなぐ住まいと暮らしの向上に取り組んでまいります。

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