Jトラスト 【東証スタンダード:8508】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
当社グループをめぐる環境は、中国における景気減速や米国をはじめとする世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響の継続、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え中東情勢が緊迫化するなど先行き不透明な状況が続いております。米国の政策金利の引き上げは落ち着きを見せておりますが、長期間に及ぶ金融緩和の結果、資産価格の高騰とインフレ抑制のための急速な金利引き上げの影響はすぐには収束しない可能性が高く、特に当社グループの銀行業務における業績の回復及び成長に大きく影響することから、今後も状況を注視し続ける必要があるものと思われます。そのような経営環境の下で、当社グループは、株主価値を最大化し、株主の皆様に報いる株価となるよう最大限の努力を行ってまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2024年3月26日)において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」のビジョンのもと、景気動向に業績が左右されることが無いように、銀行業、債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスを目指してまいります。収益モデルにつきましては、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直すことにより収益構造の改善を図ってまいります。今後はこの方針をさらに加速させ、聖域を設けることなく、事業ポートフォリオの価値を見直し、新たな成長戦略を構築することにより、株主価値の最大化に努めてまいります。さらには、コンプライアンスやガバナンスを第一に考えた経営を機軸におき、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供するなど地域とともに共存共栄で発展していく企業体を目指してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
(日本金融事業)
信用保証業務では、当連結会計年度は主力商品である中古アパートローン・海外不動産・有価証券担保ローンへの選択と集中による施策を実施し大きく実績に反映させることができました。翌連結会計年度につきましてはアパートローン、有価証券担保ローン、海外不動産担保ローンに対する保証を中心に収益拡大を図るべく推進してまいります。日本金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。
項目 | 課題 | 対策 |
アパートローンに 対する保証事業 | アパートローンの更なる成長 | ① 新規保証提携に伴うエリア拡大 ② 指定業者の拡大 ③ 新築アパートの取扱い(現在の中古アパートローン中心から拡大、顧客層、エリアの見直し) ④ 借換え需要に対する営業促進 |
有価証券担保ローンに 対する保証事業 | グループ間相互の顧客の連携による保証商品の開発 | 2022年11月から、㈱日本保証において、㈱西京銀行がJトラストグローバル証券㈱の顧客が保有する預り資産を担保とする融資(有価証券担保ローン)に対する保証を開始。同様に今後も当社グループ内でのシナジー効果が期待できるスキームを検討 |
その他の保証事業 | 海外不動産担保ローン等保証商品の開発(多角化) | ① 海外金融事業とのシナジーを活かした新商品の提供やサービスの拡充 ② 提携会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングサイトを通じて、同社が所有する対象不動産に対する買取保証業務を展開 ③ 海外不動産担保ローン(翌連結会計年度に引渡予定の新築物件)に対する保証見込み、その他ファクタリング保証等も検討 |
債権回収業務では、円安などによる物価高騰により、債務者の経済基盤に負の影響を及ぼしておりますが、債権買取価格においては、昨今の入札並びに落札状況では、一部案件において若干の下落傾向はあるものの、特に大きく変動しておりません。当社グループが債権買い取りを行っている主な会社は、そのような状況下でも売上が増加しているネット系のカード・信販等が多く、今後も高い回収力を背景として安定的・継続的な仕入れを実現し事業拡大を図ってまいります。
また、クレジット・信販業務では、Nexus Card株式会社が男性脱毛業界最大手のメンズクリア(以下、「クリアグループ」という。)をはじめとする提携先とエステ、ジム、ゴルフ、クリニック等を通じて行っている割賦事業が好調に推移しており、提携先の割賦をNexus Card株式会社が担い、割賦立替金に対して株式会社日本保証が保証するスキームで収益拡大を図っております。主要な課題、対策は以下のとおりです。
項目 | 課題 | 対策 |
クリアグループ | クリアグループの取扱減少リスクや競合参入リスクへの対応 | クリアグループ、㈱日本保証、Nexus Card㈱が連携し与信枠の拡大を図るとともに、回収率の向上や受付体制の質的向上による差別化を図る。また、MIRAI㈱との連携による、新規加盟店の獲得などにも注力していく |
貸倒リスク | 割賦債権の貸倒リスクへの対応 | MIRAI㈱との連携により、債権回収人員の増員とともに、同社の回収知見をNexus Card㈱内へ展開し、回収率の向上を図る。また、受付体制においても同様の連携により、審査時間の短縮化を進めていく |
資金調達 | 資金調達(キャッシュフローバランス)及び調達金利の上昇リスク | 当連結会計年度は割賦債権が大きく増加する局面であったことから調達実行を優先。今後は、金利面とキャッシュフローバランスの最適化を図るとともに、営業利益黒字化を背景とした業績面を含むより有利な条件面でのファイナンスに注力していく |
さらに、証券業務では、「プライベートバンキングサービスを提供するウェルスマネジメントのJトラストグローバル証券」を前面に打ち出し、プライベートバンキングサービスに注力してまいります。個人金融資産1億~5億円を保有する富裕層を新たなターゲットと捉え顧客開拓に乗り出し、従来の金融資産5,000万~1億円の準富裕層向けビジネスとの両輪で攻め、早期に預り資産を現状の3,400億円から1兆円に増やしたいと考えています。金融資産5,000万~5億円のターゲット層はスタートアップ・ベンチャー企業の創業オーナーも多く、企業成長をサポートしながら、創業者のプライベートバンカーとして資産運用ニーズにも応えてまいります。また、富裕層ビジネスの拡大についてこれまでプライベートバンカーとして培ってきた知見と経験を活かし、成長ビジネスであるウェルスマネジメントを本格的に立ち上げ、顧客開拓の加速化をすすめてまいります。
2022年11月に、株式会社日本保証において、株式会社西京銀行がJトラストグローバル証券株式会社の顧客が保有する預り資産を担保とする融資(有価証券担保ローン)に対する保証を開始しておりますが、今後も当社グループ内でのシナジー効果を高めてまいります。
(韓国及びモンゴル金融事業)
当連結会計年度に引き続き、貯蓄銀行業務からの収益の確保に努めてまいります。韓国経済におきましては、基準金利が2023年1月以降3.5%で凍結維持されており、貸付金利は企業与信と個人信用貸付とも引き上げられた調達金利を反映して運営されています。金利現況については、2024年から中央銀行の金利引き下げが既成事実となり韓国内でも市場金利の下落と銀行定期預金の利子率が下落傾向を現しているものの、現状では貯蓄銀行の調達金利は基準金利が引き下げられても引き下げ幅は制限されると判断されています。また、韓国全体で延滞増加、個人回生・信用回復増加の傾向にあることから、貯蓄銀行の健全性管理の強化を目的に多重債務者に対して貸倒引当金(損失評価引当金)を追加的に積み立てるように貯蓄銀行業監督規程が改正され2024年9月四半期決算から適用される予定です。このような逆風の中でも、韓国各社は、引き続き目標として緩やかな成長を掲げ「量の成長」から「質の成長」を目指し、バランスの取れたRisk-Returnを目標に一定の資産規模を維持し、資産内容の質的な向上を追求してまいります。また、貸付において、債権管理回収を高めるための努力や貸付取り扱い時の延滞率を考慮し、なおかつ収益性が見込める貸出金利を算定するなど貸倒償却費の減少に繋げられる対策を講じてまいります。
債権回収事業におきましては、概ね順調に実績が積み上がっており、これまでに培った高い回収力と遵法性を背景に事業拡大を図ってまいります。
(東南アジア金融事業)
銀行業における貸出金残高が順調に増加していることから利息収益が増加しております。また、基準金利の引き上げによる調達金利の上昇が利益の押し下げ要因となっておりますが、市場実勢に合わせて貸出金利を引き上げたことにより一定の利益水準を維持することができました。今後もPT Bank JTrust Indonesia Tbk.(以下、「Jトラスト銀行インドネシア」という。)及びJ Trust Royal Bank Plc.(以下、「Jトラストロイヤル銀行」という。)による銀行業務からの収益の確保に努めてまいります。なお、基準金利につきましては、2024年には利下げが予測されており、業績予想に織り込んでおります。
Jトラスト銀行インドネシアでは、収益確保のため、積極的な貸出残高の増強、NPL(不良債権)比率の低下による貸倒費用の削減、COF(調達金利)の低下を主要課題としております。Jトラスト銀行インドネシアにおける主要な課題、対策は以下のとおりです。
項目 | 課題 | 対策 |
貸付債権の 積み上げ | 収益基盤の強化 | 貸出増強に向けたミーティングをビジネス部門と日次実施、ビジネス/審査部門の連携強化により体制を見直し、不良債権リスク低減を図りつつ金利収入を最大限享受するため積極的にローン残高、社債残高の積み上げを図る |
自己資本の拡充 | 規制改正に伴い、インドネシア金融庁(OJK)が自己資本比率11.0%(規制上の基準値)の達成を要請 | 2023年12月末の自己資本比率は12.63%となり、現状クリア。今後もOJKの要請に柔軟な対応が必要 |
マーケティング活動、流動性の確保 | ① 1億人獲得プロジェクト ② ブランド認知度向上 ③ 住宅ローン提携 | ① 「新規預金口座獲得」に加え「開設口座の活用」「預金残高の増加」をテーマに展開 ② アイドルグループ「JKT48」とのブランドアンバサダー契約の締結や、女子ゴルフ国際大会へのスポンサー参加などブランド認知度向上に向けた活動 ③ 日系大手デベロッパーの現地法人及びインドネシア大手デベロッパーと住宅ローン業務提携を展開(2023年12月末現在プロジェクト数:23カ所) |
また、2023年10月10日に株式会社西京銀行の取引先事業者でインドネシアへ進出中、又は進出を予定している取引先をJトラスト銀行インドネシアへ紹介する業務提携契約を締結しており、今後40年以上にわたり人口ボーナス期に入ることが予想されているインドネシアにおいて、それぞれの経営資源の相互活用をすることにより、インドネシアへ進出する事業者の企業価値を高めるとともに、インドネシアの経済発展にも寄与すると考えております。
また、インドネシアでは、近年、急速な人口増加と都市化によって不動産価格と需要が上昇するなか、不動産市場規模の拡大が続いており、不動産市場は最も好調なセクターのひとつとなっております。そのため好調な不動産市況を背景に債権売却市場も活性化しており、PT JTRUST INVESTMENTS INDONESIAでも債権回収事業は順調に推移しております。回収金額の最大化を図るための主要な課題、対策は以下のとおりです。
項目 | 課題 | 対策 |
新規買取 | 債権の新規買取強化 | ・DD(デュー・デリジェンス)の正確性・スピード ・グループ内でのネットワーク強化、PT TURNAROUND ASSET INDONESIAとの連携他 |
回収 | 法的回収の強化等 | ・回収困難債権に対する掘り起こし強化 ・競売会社との連携強化 ・人材育成、回収ノウハウの平準化他 |
カンボジアにおいては、Jトラストロイヤル銀行が、2024年のスローガンとして「Faster Forward As One」を掲げ、生産性を向上させるとともに、デジタル分野をより強化し、よりスピーディーにサービスを提供するよう取り組んでまいります。引き続き富裕層顧客を主な基盤とし、RM(顧客担当)と顧客との強固なリレーション力による貸出並びに運用提案により他行との差別化を図るとともに、ニーズを汲み取った商品開発やデジタル対応にも注力していく方針であります。さらに、不良債権の回収、新規不良債権の抑制にも取り組み収益拡大を目指してまいります。
(不動産事業)
不動産事業において、Jグランド株式会社では、不動産と金融のノウハウで築く投資用一棟マンション「J-ARC」シリーズ、IoTを標準搭載し付加価値付けした新築アパート(2024年から「J-Maison」のブランド名に統一)、中古アパートを取得し、外部によるホームインスペクションとリフォームを施した後販売する商品「Vintage Residence」を展開しており、今後も富裕者向けビジネスの拡大を図ってまいります。Jグランド株式会社においては、富裕層を対象とした投資用物件をメインの事業に据えることで、事業規模が順調に拡大することが見込まれており、今後の信用力の向上を目指して上場に向けた準備を進めていきたいと考えております。また、株式会社グローベルスにおいても、総合不動産会社として、マンション分譲、土地・戸建て分譲、賃貸マンションやアパートの開発といった不動産開発事業や、収益物件の販売、賃貸管理や売買仲介を含むソリューション事業、及び新規事業である不動産クラウドファンディング事業等の事業を展開しており、今後も、売上げの軸となる分譲マンション開発を継続して手掛けていく一方で、マンション開発の補完としてストック型の収入となる賃貸業についても並行して強化し、当社グループの商品ブランドの認知度向上に力を入れてまいります。
(投資事業)
投資事業においては、Group Lease PCL(以下、「GL」という。)からの債権回収に努めてまいります。今後も裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、回収強化を図ってまいります。なお、GLに対する債権につきましては、すでに全額引当を行っていることから、回収がなされる都度、収益計上されます。
当社グループは、株主の皆様への利益還元の充実と、資本効率の改善を通じた持続的な企業価値の向上を重要な経営課題と認識しており、自己株式の取得及び消却については業績や資本政策、株価など市場環境等を考慮して実施するとしています。近年は東南アジア金融事業への資本増強を含めた資本政策と株主還元とのバランスをとりながら決定してまいりましたが、持続的な業績拡大の道筋がついたこともあり、株主の皆様への更なる利益還元と、資本効率の向上により、適切な株主価値の実現を図ることを目的に自己株式の取得及び消却をさせていただくこととなりました。また、配当については、通期14円(中間無配、期末14円)の据え置きとさせていただき、より一層の株主還元の充実を図るため株主優待の見直しを行う予定であります。今後も企業価値を高め、株主の皆様の期待に応えていきたいと考えております。
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