INFORICH 【東証グロース:9338】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」をミッションとしております。各ローカルのヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えて、グローバルに経営を行っております。
昨今のスマートフォンの爆発的な普及と電子決済などのサービスの普及により、今やスマートフォンは生活に必要不可欠な存在になっています。使用頻度の増加とデータ通信量の増大に伴い、現代生活における充電ニーズは大きくなり、充電に関する問題は大きなテーマとなっていると考えております。5Gがもたらすイノベーションは、生活をより便利に変えていく一方、スマートフォン端末の消費電力の増加速度が内蔵バッテリーの性能向上速度を上回る状況に拍車がかかっております。この中長期的な社会課題を解決するうえで、また、ESGの観点からも社会全体で利用をシェアする、分かち合うスマートフォン補完充電のインフラ整備が不可欠です。そのために当社グループは、ChargeSPOT事業を主力事業として注力しております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ChargeSPOT事業において、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、月間レンタル回数、月間アクティブユーザー数及びバッテリースタンド設置台数を重要指標として経営を行っております。
月間レンタル回数は、対象月に「ChargeSPOT」からモバイルバッテリーがレンタルされた回数を集計したものです。当該指標は、レンタル収益の源泉として経営の進捗を測るものとして利用しております。
月間アクティブユーザー数は、月に一回以上「ChargeSPOT」を利用したユニークユーザー数を集計したものです。当該指標は、月間レンタル回数の基礎となるものとして、サービスの普及度合や消費者の利用動向、キャンペーン等の施策の効果を測るために利用しております。
バッテリースタンド設置台数は、計数時点で設置されているバッテリースタンドの台数を集計したものです。当該指標は、月間アクティブユーザー数の基礎となるものとして、事業拡大の進捗を測るために利用しております。
(3)経営戦略
当社グループは国内外を問わず、ヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えて橋掛けしていくことを機会と捉え、社会的価値と経済的価値の両立・創造を実現し、日本と世界の発展に寄与してまいります。
新たな垣根の橋掛けとその価値創造をグローバルに模索していく一方、ロケーションベースの各国のリアルなタッチポイントを保有するChargeSPOT事業を第1の主力事業としております。インバウンド/アウトバウンドの増加を契機として、アジアをはじめとした世界中のお客様に日本品質のサービス体験を提供しグローバルでの知名度の向上を目指します。
また、新規事業においてはChargeSPOT事業とそのネットワークとのシナジーを最大化することを目指し、持続的な成長及び将来利益の最大化に努めてまいります。
当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらを総合的に勘案したうえで中長期的な経営戦略を立案しております。
① ChargeSPOT事業の魅力
ChargeSPOT事業の魅力は4つあり、第一に短い投資回収期間、第二に大口顧客に対する低い依存度、第三にバッテリースタンド設置台数及び設置密度とレンタル稼働率の相関関係、第四に有望な市場ポテンシャルであります。
a.短い投資回収期間
ChargeSPOT事業で使用するモバイルバッテリーの2023年12月末の国内レンタル稼働率※1に基づく投資回収期間※2は約25日となっており、短期間で投資が回収されるビジネスモデルとなっております。2022年年末時点では約29日の投資回収期間であり、サービスが拡大すると共に短縮化が進んでいると言えます。
また、バッテリースタンドへの投資はリース契約を基本とすることによりキャッシュ・フローに余裕を持たせた事業展開を行っております。
※1 レンタル稼働率=モバイルバッテリーレンタル数÷市中流通のモバイルバッテリー数
※2 投資回収期間=モバイルバッテリーの仕入単価÷(1レンタル当たりの平均収益×レンタル稼働率)
b.大口顧客に対する低い依存度
ChargeSPOT事業の主力であるモバイルバッテリーシェアリングサービスの収益は、ユーザーからの少額課金の積み上げにより構成されており、特定の大口顧客に依存するリスクが相対的に低いビジネスモデルとなっております。また、47都道府県の様々なエリア、多業種に設置されており、特定のエリア及び業種への依存度も低く構成されています。
c.バッテリースタンドの適切な設置とレンタル稼働率の相関関係
当社グループの実績によると、バッテリースタンドを視認性が高くユーザー利用が見込める場所で適切に増加させることができれば、モバイルバッテリーのレンタル稼働率が上昇することが確認されております。これは、設置効率に関する実績データが蓄積され、効果的な設置戦略が推進されること、市中でバッテリースタンドを見かける頻度が増すことで広告効果が高まり「どこでも借りられて、どこでも返せる」という利便性や返却に関する安心感が訴求されることが大きく関係していると分析しております。
なお、2023年12月末のバッテリースタンド設置台数は国内で42,439台、レンタル稼働率は35.47%となっております。
d.有望な市場ポテンシャル
当社グループでは、現在主力である国内市場におけるターゲットSOM(Serviceable Obtainable Market)を設定し、利用者拡大のためのアプローチを検討しております。
具体的には、それぞれ以下の考え方により、事業拡大を図っております。
当社グループが国内事業のターゲットとして設定するSAMは、スマートフォンのユーザー数9,658万人※1のうち、外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合※2を乗じることで算出される規模に設定しております。
SAM =スマートフォンユーザー数×外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合
次に販売ターゲットとなるSOMについては、SAMのうち、「ChargeSPOT」の潜在的利用者(利用に関心があるユーザーの割合※3を乗じることで算出される規模に設定しております。
SOM =SAM×モバイルバッテリーシェアリングサービスの潜在的利用者の割合
当社グループでは、「ChargeSPOT」の設置台数の拡充によりSOMの拡大を図っております。
※1 日本の総人口(参照情報:総務省統計局「人口推計」- 2023年(令和5年)3月報 - 2022年(令和4年)10月1日現在(確定値))に2022年におけるスマートフォン保有者割合(参照情報:総務省「令和4年通信利用動向調査(個人)」)を乗じて、当社が算出した推計値
※2 電通株式会社「モバイルバッテリーに関する調査・マイバッテリー所有者編」(2023年4月実施調査-日本)
※3 電通株式会社「モバイルバッテリーに関する調査・マイバッテリー所有者編」(2023年4月実施調査-日本) およびNHK国民生活時間調査報告書「家にいる時間」「外出時間」調査を基に当社が算出した推計値
<ターゲットとする市場>
② 海外展開
当社グループは、海外では、台湾、中国本土、香港、タイ及びシンガポールでChargeSPOT事業を展開しており、中国本土の一部、台湾、タイ及びシンガポールにおいては、フランチャイズ契約に基づき他事業者と協働で展開しております。
当社の社名である「INFORICH」は、「情報(INFORMATION)」に「豊か(RICH)」であるという2単語からなる造語です。各国の文化、商慣習、技術等に精通し得るグローバルな企業グループとして、情報連携が我々の目指す垣根を越えた橋掛けの実現において生命線であると捉えております。
上記を踏まえた中長期的な経営戦略は、以下のとおりであります。
① ChargeSPOT事業の拡大・強化
a.規律をもった設置台数の拡大
ChargeSPOT事業におけるバッテリースタンドの設置台数については、海外のみならず国内においてもまだ多くの設置ポテンシャルがあると考えております。人流の多いエリアや駅からの距離などの設置基準を設け、各業種のプライムロケーションへの新規・追加設置、政令指定都市を中心としたエリアドミナント戦略を中心に拡大してまいります。
また、バッテリースタンドにおいては、従来のモデルのみならず他社とのコラボレーションやデッドスペースに合わせた新モデルの開発など、用途に合わせた多種多様な展開を推進してまいります。
b.サービスの進化
「ChargeSPOT」ユーザーの利用の習慣化に向けた更なるUX向上施策を実施してまいります。2023年12月期においては、「バッテリー故障診断ナビ」機能をリリースし、ユーザー自身でレンタル中に発生した問題の解決法を調べたり、返金申請を行なったりできるようにするなど、利便性の向上を図ってまいりました。今後もユーザーの皆さまにとってより使いやすいサービスになるよう、改善を続けてまいります。
加えて、新たな技術を有する企業とのコラボレーションや「ChargeSPOT」のプラットフォームとネットワークを活かした他のシェアリングサービスとの連携を進めてまいります。
サイネージビジネスにおいては、市場規模の拡大を追い風としながら販路の拡大及び供給システムの開発を進めてまいります。
② 海外展開と連携強化
当社グループは、海外では、香港、中国本土、台湾、タイ及びシンガポールでChargeSPOT事業を展開しており、中国本土の一部、台湾、タイ及びシンガポールにおいては、フランチャイズ契約に基づき他事業者と協働で展開しております。
今後も、スマートフォン普及率や電子決済普及率が高く、公共交通機関を有する大都市圏を持つ国をターゲットとし、展開エリアを拡大してまいります。当社グループでは、現地のプラチナロケーションにネットワークを有する企業とフランチャイズ契約を締結することで、リスクを低減しながらもスピード感を持ってフランチャイズ展開を行ってきました。今後も各国でのフランチャイズ展開を推進してまいります。加えて、早期に市場を開拓するべきところに対してはジョイントベンチャー設立、M&Aの実施、現地法人立ち上げなどの直接投資を行うことで、グローバルでの当社グループの競争力を強固にするものと考えております。
また、事業基盤を強固にすべく、連携強化を目的としたさらなる経営体制の強化も行っていく予定です。
(4)経営環境
当社グループの事業が属する経営環境には次のような特徴があります。
① 市場分析
ChargeSPOT事業が対象とするモバイルバッテリーシェアリングサービスの市場規模について、同サービス世界最大のマーケットである中国では、2023年12月末現在約517万台(出所:Fastdata,「2023 China Shared Power Bank Industry Trend Report」)のバッテリースタンドが稼動しており、年間約2.8億人がモバイルバッテリーシェアリングサービスを使用しています。中国と日本では、市場、技術及び文化等の相違はあるものの、中国での市場規模の推移は今後の日本におけるモバイルバッテリーシェアリングサービスの普及を予想する上で、一指標になるものです。
「ChargeSPOT」はモノを所有するのではなく貸し借りすることで使用する、シェアリングエコノミーを前提としたサービスです。昨今の環境意識の高まりなどを受けて、シェアリングエコノミーを積極的に活用するユーザーが一定数存在しています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で発表した「シェアリングエコノミー関連調査2022年度調査結果 2023年1月24日公表」においては、2032年度のシェアリングエコノミーの市場規模は15兆1,165億円※となることが予測されております。
また、株式会社CARTA HOLDINGSによる「デジタルサイネージ広告市場調査 2023年12月21日公表」によれば、2023年の国内のデジタルサイネージ市場規模は、前年度比119%増の801億円の見込みとなっており、2027年の予測は2023年比174%増の1,396億円にまで成長すると予測されております。鉄道やタクシーの車両内広告については首都圏内の主な場所への設置作業がほぼ完了し、デジタルサイネージの標準装備化が実現しました。一方で、小売店舗における広告配信面数の伸び代はまだ大きく残されています。
デジタルサイネージ広告市場は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出及び移動規制などの影響を大きく受けました。しかしながら、市場全体としては既に十分な回復を遂げており、2023年の市場規模は同ウイルス流行前となる2019年時を超えています。
※ 課題解決シナリオ下での最大予測金額
② 競争優位性
当社グループは、競合他社に先駆けてモバイルバッテリーシェアリングサービスを日本に導入しており、「ChargeSPOT」の国内マーケットシェアは、バッテリースタンドの設置台数ベースで約8割※1と業界トップのシェアを有しております。一般的には、設置台数のシェアの多さがユーザーの利便性につながり、ひいては設置先が採択する要因となります。これは、ニューヨーク大学 Stern School of BusinessのScott Galloway教授が提唱する「Unregulated Monopoly」※2に該当し、競合他社との競争優位性を獲得している状況にあると考えております。
多くのバッテリースタンドを設置していることは、レンタル稼働予測の精度の向上にも繋がっております。当社グループでは、周辺の人流や駅からの距離、営業時間、業種などの様々な情報を組み合わせた、設置プロトコルを設定しております。レンタル数は常時モニタリングできるようになっており、一定期間が経っても設置前の予測数値から乖離がある場合には設置先に社員が訪問し、店内での設置場所の移動や販促物の掲示などを行っています。データをもとにした設置とデータを参考にした細かな設置後ケアができていることは、当社の競争優位性であるとともに、今後もデータ量が増えていくことでより精緻な分析が可能になっていくものと考えております。
また、当社グループは、自社で製品開発を行うことで市場のニーズをタイムリーに製品へ反映できる体制を構築しております。今までも、新型コロナウイルス感染症の流行が始まったことを機にバッテリーにSIAA(抗菌製品技術協議会)基準に適合した抗ウイルス・抗菌処理を行うなど、その時々の課題に応じた対応を行ってまいりました。また、カスタマーサポートセンターにいただいた情報は社内の開発チームに連携し、アプリケーションやハードウェアの改善を行っています。
※1 2023年12月末時点の当社グループの設置台数と競合他社が公表している台数を基に当社で算出
※2 高い市場占有率が参入障壁として機能している状態
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ChargeSPOT事業は国内初のモバイルバッテリーシェアリング事業であり、当社グループはそのマーケットリーダーでもありますが、疫病の流行や災害発生などによる人流の減少、国際情勢の変化などによる景気の悪化などのリスクは注視し続ける必要があります。
このような環境の中、当社グループは「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」をミッションステートメントに掲げ、海外発のビジネスモデルを日本に、そして、日本の技術力を海外に展開していくことで、様々な国や文化の垣根を越え、より多くの方々に当社グループのサービスをご利用いただけるよう邁進してまいります。
① さらなる設置の密度向上・観光地設置
当今までに全国各地のプライムロケーションへの設置を進めてきたことで、昨今ではバッテリースタンド自体が当社の広告塔となっており、国内では毎月20万人ほどの新規ユーザーを獲得しております。
これまでも、エリア別・業種業態別のバッテリー稼働率を継続的に分析してまいりました。その結果、国内では乗降客数が多い駅の周辺を中心とした設置を進めてまいりました。今後は乗降客数が多い駅周辺の設置密度を高めると共に、観光地エリアへの設置も推進することで、インバウンド客を含めた観光客のモバイルバッテリー利用ニーズも満たしてまいります。
また、海外での展開エリアに対しても、国内で設定している設置プロトコルを共有することで、グローバル全体での効率的な設置を推進してまいります。
② サービスの質向上
レンタルと返却がしやすい場所への設置を進めるだけではなく、サービス自体の利便性を高めることも当社グループにとって重要であると認識しております。
アプリのUI・UXの改善やFAQの拡充など、ユーザーにとってより使いやすいサービスを目指して活動を続けてまいります。
③ 海外展開
当社グループでは、すでに、ChargeSPOTを世界的に展開しております。中国本土と香港でグループによるサービス展開を、台湾、タイ、シンガポールではフランチャイズでのサービス展開を実施しておりますが、グループの発展のためには、今後も海外での展開を加速していく必要があると認識しております。
④ 経営基盤の強化
企業価値を高め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに信頼され、支持される企業となるために、また、グローバル展開を加速するためには、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取り組みが不可欠であると考えております。
そのため、内部統制システムの強化、マネジメントの強化、人材育成、損益管理の徹底等、持続的な成長を支える経営基盤を引き続き強化してまいります。また、子会社との連携を強化し、グローバルカンパニーとして相応しい経営体制の実現を目指してまいります。
⑤ 財政基盤の強化
当社グループは、2023年度第2四半期に黒字化を達成し、以後継続的に利益が増加しております。
適切な成長のための投資を実施するとともに、財政基盤の強化を目指して活動をしてまいります。
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