IHI 【東証プライム:7013】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針,経営環境及び対処すべき課題等は,以下のとおりです。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは,社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」,「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと,「自然と技術が調和する社会を創る」ことを将来のありたい姿とするESG経営を推進しています。人権を尊重し,多様な人財が活躍する企業風土を原動力として,事業活動を通じて気候変動問題を解決することで,サステナブルな社会の実現を目指していきます。
(2)会社の経営戦略及び経営指標
当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づき,持続的な高成長を実現する事業変革をより具体的かつ本格的に進めると同時に,劇的な環境変化へ対応可能な企業体質への変革を加速していきます。
「グループ経営方針2023」の取り組み,経営目標
① 持続的な高成長を実現する事業の変革
事業を通じて社会課題を解決し,社会と当社グループの持続的な高成長を両立するためには,お客さま事業のライフサイクルを通じた価値の提供と,バリューチェーン全体を構築することによる価値の向上が重要となります。「グループ経営方針2023」では,事業を次の3つに区分し,いずれについてもライフサイクルとバリューチェーンを強く意識しながら取り組んでいきます。
a. 成長事業:航空エンジン・ロケット分野
航空エンジン・ロケット分野は,当社グループの成長を牽引する事業と位置付けました。
航空旅客需要増加に伴う民間向け航空エンジン事業の拡大を基盤としつつ,防衛力の抜本的強化の政府方針を受けて防衛事業を拡大させると共に,長期的な成長ドライバーとして宇宙事業を推進することで,持続的な成長を目指します。カーボンニュートラルに向けた電動化・水素推進の技術開発や,民間・防衛における技術・経験のシナジーによる新たな事業創出にも取り組んでいきます。
b. 育成事業:クリーンエネルギー分野
クリーンエネルギー分野は,航空エンジン・ロケット分野と双璧をなし,当社グループの成長を牽引する事業に育成すべく取り組んでいきます。
当社グループはアンモニアの燃焼技術において世界をリードする位置にありますが,今後は,貯蔵や輸送も含めたアンモニアバリューチェーン全体を構築し価値向上を図ることで,社会やお客さまに貢献できるように努めます。また,燃料製造プロジェクトへの投資など,新たなビジネスモデルの構築にも取り組んでいきます。
c. 中核事業
資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械分野は,引き続き当社グループの中核を担う事業と位置付けました。
これらの事業は,これまでのビジネスの延長ではなく,お客さまのライフサイクルにより深く入り込み,そこから得られた知見をフィードバックすることで,さらに進化した製品・サービスをお客さまに提供していきます。また,成長事業及び育成事業に対して投下するキャッシュや人財などの経営資源を捻出するために,業務プロセスの改革やデジタル基盤の活用による業務効率化とともに,事業の見直しも進めていきます。
② 環境変化への対応,変革を実現しうる企業体質への変革
当社グループは,ESGを軸とする経営を徹底するとともに,事業変革のために不可欠な情報デジタル基盤の高度化,そして企業体質の変革を成し遂げる上で最も重要である変革人財の育成・獲得を積極的に進めていきます。
③ 資源配分と経営目標
成長・育成事業へ経営資源を大胆にシフトし,投資を実行していきます。また,安定配当を基本方針として連結配当性向30%を目指します。
財務目標 | 2025年度 |
ROIC(税引後) | 8%以上 |
営業利益率 | 7.5% |
CCC | 100日 |
(参考) 売上収益 | 17,000億円 |
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)
÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額)
・CCC :運転資本÷売上収益×365日
・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債
(3)会社の対処すべき課題
<短期的な課題>
2024年4月24日に公表のとおり,当社の子会社である株式会社IHI原動機において,同社が製造する船舶用エンジン及び陸上用エンジンの試運転記録に不適切な修正が行なわれていたことが判明しました。
本件について,当社は弁護士をはじめとした外部有識者で構成される特別調査委員会を設置して,原因究明及び再発防止策の策定に取り組むとともに,当社グループにおける類似の事象の有無についてあらためて点検を行なっています。
当社は,2019年に当社瑞穂工場にて発生した民間航空機エンジン整備事業における不適切な検査事案を受けて,グループをあげて再発防止に取り組んできましたが,再びこのような事態を招いたことから,これまでの取組みが不十分であったと言わざるを得ないものと考えています。
当社グループは,関係するすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を早期に回復するべく,コンプライアンス意識の再徹底及び組織風土の改善並びに同様の事案を二度と起こさない仕組みづくりに,グループ一丸となって取り組んでいく所存です。
また,当社グループは,当連結会計年度において出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響による損失の計上がありましたが,成長・育成事業に重点的に投資配分していく方針に変更はなく,費用の削減や投資の優先順位の見直しなどを進めると同時に,投資原資を確保するために営業キャッシュ・フローの強化に取り組みます。同時に,事業ポートフォリオ改革や資産売却等を通じて自己資本の増加を図り,財務体質を強化していきます。
<長期的な課題>
ESG経営
当社グループは,自然と技術が調和する社会を創るために,取り組むべき社会課題を「脱CO₂の実現」,「防災・減災の実現」,「暮らしの豊かさの実現」としています。地球規模で問題となっている気候変動への対策として,温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と,その影響に備えて被害を軽減する「適応」に取り組み,暮らしの豊かさを実現していきます。
・社会課題の解決
当社グループは,2050年までに,バリューチェーン全体で,カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく,私たちの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組み,カーボンニュートラルを目指します。具体的には,既存技術を活用した「トランジション」と,新しい技術による「トランスフォーメーション」の2段階で取り組んでいきます。
また,自然災害に強く経済的なインフラ整備と,センシング・モニタリング技術を活用したインフラ管理システムの構築を進め,安心・安全で暮らしやすいコミュニティの実現を目指します。
・人権の尊重
当社グループは,「IHIグループ基本行動指針」において,地球的課題を意識し,あらゆるステークホルダーの期待に応えるために私たちがなすべきことを定めています。この指針に基づき,2020年12月に「IHIグループ人権方針」を定めました。国際規範に基づく人権啓発活動を通じて,人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進することで,あらゆる人びとに対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。また,サプライチェーンにおいても,取引先と協働して社会的責任を果たしていくCSR調達に取り組むことを,「IHIグループ調達基本方針」に定めました。
バリューチェーンを通じて,事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し,すべての人の豊かな生活を実現するために取り組みます。
・多様な人財の活躍
持続可能な社会を実現するには,多様性を受け入れ,環境の変化を的確に把握し対応することが必要です。
社会の発展に貢献するという経営理念や,自然と調和した社会を創るという目指す姿を,社員一人ひとりが理解し,企業としての使命を自覚することが必要です。会社と社員が,お互いの成長に貢献し合う関係性を保ちながら,個人と組織のベクトルを合わせていくことが重要であると考えています。
また,当社グループは,人財の多様性を尊重し受け入れる「ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン」を重要な価値観とし,多様なバックグラウンド・多様な経験・異なる視点を持った多様な人財が活躍できる環境を整備していきます。また,社員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に着けるための制度の拡充や,さまざまな機会提供を行なっていきます。
・ステークホルダーからの信頼の獲得
事業を通じて社会課題を解決し,企業価値を高めるためには,グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築くこと,また,あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうことが重要であると考えています。
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