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企業概要

 当社の経営方針、経営戦略等は次のとおりであります。

 また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営理念及び経営方針

 当社は、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念(ミッション)として掲げ、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸として、世界中のバイオものづくりプラントにおいて当社の技術が使われ、「創造的な技術力、提案力でバイオものづくり分野を牽引し、常識を変革する企業になる」ことを目指しております。

(2) 経営戦略等

 当社の成長は、次の事項により実現してまいります。

① 3つの収益化手法での事業展開

 当社の強みは、バイオものづくりの事業について、菌体開発から商用生産まで全体を通した知見と経験を有していることであります。したがって、バイオものづくりにかかる様々な課題に対して、その解決法を考え、提供していくことで、バイオ化学品の上市を実現していくことが弊社の事業のコアとなります。

 当社がバイオ化学品の上市を実現するための収益化の形として、次の3つの手法が挙げられます。

・ライセンス

・自社販売

・テクノロジーパッケージ

 いずれの手法についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。

② バイオものづくり分野におけるプラットフォームの構築

 世界の脱炭素の流れにおいて、欧米を中心に、化学品のバイオ化の要請が強まりつつありますが、まだ、日本においては、バイオものづくりという分野は未成熟であり、バイオものづくり事業という産業が確立されている状況ではありません。そうした状況を危惧し、国内においても、政府が、従来の脱炭素の目標に加え、安全保障の観点からも、バイオ燃料やグリーン化学品の社会実装に力を入れはじめています。

 そうしたなかで、当社は、バイオものづくり事業のプラットフォームを構築し、そのプラットフォームを使って、国等のプロジェクトも含む次のような事業に取組み、バイオものづくりの社会実装を推進してまいります。

<成長戦略を実現するための主要パイプライン>

・バイオファウンドリ事業関連

・木質バイオマス由来のエタノール関連

・製紙産業素材由来のバイオ燃料・バイオ樹脂原料

・パーム残渣由来のバイオ燃料・バイオ化学品

・米由来の次世代タンパク質

・CO2由来のバイオ化学品

・セルロース・ヘミセルロース・リグニン由来のバイオ化学品関連


(3) 経営環境

 近年、米国や欧州等では、バイオテクノロジーと経済活動を一体化させた「バイオエコノミー」という概念に基づく総合的な戦略のもとに技術開発や政策が推進されております。

2022年9月に、米国で発表された「National Biotechnology and Biomanufacturing Initiative」のFACT SHEET(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/09/12/fact-sheet-president-biden-to-launch-a-national-biotechnology-and-biomanufacturing-initiative/)では、バイオものづくりが今後10年以内に製造業の世界生産の3分の1を置き換え、金額換算で約30兆ドル(約4,000兆円)に達するという分析がなされています。

 また、欧州では、EUが規制戦略による循環型社会(サーキュラー・バイオエコノミー)の構築が進められ、英国では2023年2月に組織を新設するとともに、同年12月にEngineering Biologyに関するビジョン(「National Vision for Engineering Biology」)を公表しています。

 このほか、中国、韓国、シンガポール等のアジア諸国でも、バイオものづくり産業に対する政策的な支援や市場創出の取組みが進められています。

 日本においては、2024年6月に、内閣府(統合イノベーション戦略推進会議)が「バイオエコノミー戦略」を策定しました。本戦略は、バイオエコノミー市場拡大に向けて、2019年に策定した「バイオ戦略」から、「バイオエコノミー戦略」に名称を改め、最新の国内外の動向等を踏まえ、2030年に向けた科学技術・イノベーション政策の取組みの方向を取りまとめたものです。本戦略によると、バイオテクノロジーやバイオマスを活用するバイオエコノミーという産業の世界全体の市場規模は、2030年時点で約100兆円が見込まれており、うち当社が属するバイオものづくり・バイオ由来製品の領域は53.3兆円を占めています。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき財務上の課題として、設立時より研究開発のための設備や人件費等を先行投資しており、2024年9月期までにおいては継続的な営業損失を計上しております。研究開発サービスを提供する、当社のような技術開発型ベンチャーにおいては、商用化可能な技術基盤の確立のための設備投資を含む研究開発費用が先行して計上されるに伴って、赤字計上となることに特徴があります。

 今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、次の事業上の課題である「開発から商用化というビジネスモデルの確立」及び「成長を支える体制の確立」に取組むことで、更なる売上高の拡大を目指し、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。

 また、優先的に対処すべき事業上の課題は次のとおりであります。

① 開発から商用化というビジネスモデルの確立と実績作り

 当社は、バイオものづくりという新しい市場で生き残り、成長していくために、自社で開発、生産、販売するという単純なビジネスモデルではなく、様々なニーズや課題を抱える他社との研究開発を実施し、事業化可能な技術レベルまで発展させ、最適な商用化の形(ライセンス契約、自社販売又はテクノロジーパッケージ)を選択し、収益を確保してまいります。

また、いずれの選択についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。

 そのため、中期目標とし、今後3年間において、次の項目を実施してまいります。

a 国内外企業との研究開発の推進

 社会が求めるバイオ化学品を選び出して、その開発のために最適なパートナー企業を探し出し、研究開発を進めております。特に最近では、地球環境問題等に対する関心が高まり、非石油由来のバイオ樹脂や生分解性のバイオ樹脂に対するニーズが強まっているものと考えております。また、バイオマスを原料とする場合、原料調達費、人件費、物流コスト、供給安定性等から、低コスト化のためには、海外での商用化がカギを握っております。さらに、近年、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」ということが叫ばれ、廃棄物の有効利用が求められており、当社が有している非可食バイオマスの利用とバイオものづくりの知見を使ったソリューションを提供してまいります。

 こうした状況を踏まえ、今後3年間において、バイオ燃料生産技術の確立、バイオ樹脂原料の研究開発、海外企業とのバイオ化学品の研究開発、食品残渣・農業残渣由来のバイオ化学品の事業化に向けた取組みを展開してまいります。

b 開発製品の商用化

 継続的かつ安定的な収益の確保のためには、研究開発による一時的な売上だけではなく、開発した技術及び製品の商用化(ライセンス契約、共同出資会社による生産及び販売、自社販売又はテクノロジーパッケージとしての技術開発)が重要であります。製品の価格、用途、市場規模、パートナー企業の有無、技術の特性等の状況に応じて、どの形態が最適かを判断し、商用化を進めてまいります。

 具体的には、今後3年間において、既に開発に着手している、バイオ燃料、新規アミノ酸、非可食バイオマス利用及び食品向け素材のパイプラインの商用化を計画しております。

c 商用化済製品の収益拡大

 当社は、既に5種類のアミノ酸のライセンス、並びに化粧品用エタノールの自社販売という形で商用化を実現しており、これらの商用化済製品からの収益の拡大にも取組む必要があります。

 具体的には、今後3年間において、改良技術の提供等を通じたライセンシー企業の製品の売上高拡大によるロイヤリティ収益の拡大を図ります。

② 成長を支える体制の確立

 当社が「バイオものづくりの社会実装を実現するプラットフォーマー」であり続けるためには、事業の拡大を支える体制を確立・維持し続ける必要があり、中期目標として今後3年間において、次の項目を推進してまいります。

a 内部統制システムの適時の改定及び運用の継続

 規程類の整備とその適正な運用、必要となる組織の新設及び変更並びに適切な人員の採用及び配置、予実管理及び決算体制の整備、会計システムのワークフローの確立及び人的作業からシステム制御への移行、内部監査の実施、リスク及びコンプライアンス管理の実施等を実行して、法令に準拠し、また当社の事業構造に適応した内部統制システムの適時の改定及び運用を継続してまいります。

b 人材の確保

 世界的な石油資源からバイオマスへの転換の波による、大企業におけるバイオプロセスの研究開発への投資や少子化による研究者の絶対数の減少等により、研究者は現在売り手市場であると考えております。当社は技術開発型ベンチャーであり、独自の技術開発が事業の根幹となることから、優秀な研究者の確保が必要不可欠であります。

 また、上述の内部統制システムの構築や、適時開示及びIR等、付加的業務への対応のため、企画、管理部門についても増員が必要であり、適時の採用活動を行っていきます。

c 研究施設及び設備の充実

 当社のビジネスモデルの特徴として、自ら大規模な製造設備を持たないことで、大きな設備投資を必要としないことにありますが、成長のためには、多くの製品の開発を行う必要があり、人員の拡大に伴う研究施設の拡張、発酵槽等の研究開発設備への追加投資が必要であります。

d 当社の認知度及び信用力の向上

 研究開発は、必ずしも目標値を達成し、成果を確約するものではなく、また新規技術は市場における実績も少ないことから、取引先の拡張にあたっては、当社の認知度及び信用力を向上させ、当社の技術に対しても信用を持たせることが重要であります。

 当社は、商用化実績を着実に積み上げるとともに、上場企業としての知名度の上昇及び信頼の獲得を目指します。

③ SDGsへの取組み

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月開催の国連サミットで加盟国により採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標であり、17のゴール(目標)と169のターゲットから構成されます。

 当社の事業は、17のゴールのうち次の6つの達成に寄与するものと考えており、当社の事業成長が持続可能な社会の実現に繋がることを志しております。


(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、バイオものづくり事業により、今まさに新たな市場を作りだしている過渡期であります。

 市場成長の初期段階において先駆者として実績を積むことは、当該市場において高い優位性に繋がることから、第一に売上高と営業外収益(研究開発受託に関連する助成金のみ)を経営指標とし、パイプラインの拡大を基盤とする販売実績の増加を目指しております。

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