Globee 【東証グロース:5575】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「個人の可能性を最大化する」という企業理念のもと、創業以来、教育サービスを提供しております。
主に、スマートフォン向けアプリ及びウェブ上で利用できるAI英語教材「abceed(エービーシード)」の企画・開発・運営を行っており、教育主要4分野と呼ばれる「学習ツール」、「教材」、「テスト」、「スクール」をデジタル化し、融合させた英語学習におけるAI学習プラットフォームを構築しております。
当社の社名である“Globee”は“Global Education & Entertainment Company”に由来しており、教育とエンターテイメントを掛け合わせグローバルな学習プラットフォームの展開を目指してまいります。
(2) 経営戦略等
当社は教育主要4分野の「学習ツール」、「教材」、「テスト」、「スクール」をデジタル化し、次世代のNo.1英語教育カンパニーを目指してまいります。今後の重点施策としては以下の2つを中心に推進していく方針です。
1.有料会員数の増加
・コンテンツ基盤の拡充によるターゲット層の拡大
コンテンツの基盤を拡充することにより、既存のユーザー層だけでなく、新しいユーザー層をターゲットとしていくことが可能と考えており、多種多様なコンテンツのライセンスの獲得や制作を進めてまいります。TOEIC®、英検®等の資格試験対策のコンテンツをさらに強化することはもちろん、既に株式会社三省堂と業務提携を実施して対応している教科書コンテンツのほか、学習参考書や入試・受験対策の教材の対応も進めております。また、書籍、教材のコンテンツだけでなく、英字新聞のニュースなどの読み物のコンテンツにも対応しております。書籍、教材以外の新しい種類のコンテンツとして、2023年3月より海外映画・ドラマ等のコンテンツにも対応を開始してエンタメ要素も加わり、さらに2024年8月頃を目処にAI英会話レッスン機能をリリース予定であり、日常英会話などを学習したい層の取込みによるターゲット層の拡大に寄与すると考えております。
・法人向けの展開を加速する営業・CS体制の強化
法人向けの営業及びカスタマーサポート体制の強化を図り、法人向けの展開を加速してまいります。現在、株式会社三省堂と業務提携を実施している中学校・高校向けの学校市場での新規の導入を拡大させるとともに、既存の導入先の長期継続に向けたカスタマーサポート体制を強化しております。また、学校市場での展開を強化するため、提携出版社の拡大に向けた交渉を推進しており、導入件数を伸長させていく方針です。中学校・高校向けのユーザー拡大は、潜在的な一般個人ユーザー(将来的に大学生・社会人になった時の利用を想定)の取込みにも寄与するものと考えております。企業・大学向けでは、研修や自己啓発プログラムへの導入ニーズは強く、新規の導入の拡大と既存導入先の長期継続による導入件数の拡大を図るとともに、「abceed」の有料プランに加えてコーチングやチャットサポート、ライブ講義、課題配信等の運用代行などのスクール要素のあるサービスの提供も増加しており、それらの販売も強化することにより、法人展開による収益の拡大を目指します。
・AIテクノロジーへの投資
当社の強みであるAIによるスコア予測、問題レコメンドといったエンジンの更なる強化に向けて開発体制を強化していくとともに、AIが自動で作問を行うような作問エンジンの開発といった今後のAIテクノロジーへの投資も積極的に実施してまいります。
2.単価の上昇
スクールの基盤を拡充することにより、「abceed」の有料プランのみならず、比較的高単価のコーチングサービスの販売が拡大し、ユーザーの平均単価の上昇に寄与するものと考えております。新機能の追加、UI/UXの向上、映画・ドラマコンテンツ等を含めた新規のコンテンツの追加に加え、プロのコーチ陣による解説講義動画の追加なども行っていくことにより、「abceed」の学習プラットフォームとしての価値向上を図ってまいります。2024年3月にProプランの料金を約2割値上げいたしましたが、依然として英語学習アプリの中には「abceed」よりも価格水準が高いものもあることから、値上げ余地が十分にある状況であると認識しており、「abceed」の学習プラットフォームとしての価値向上に伴って、有料プランの値上げによる平均単価の上昇も目指してまいります。
ターゲットの拡大のイメージ
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、企業価値を向上させ株主価値を高めることが重要であると考えており、そのためには、事業規模を拡大し収益性を向上させることが経営上重要であると認識し、経営指標として、売上高と以下のKPIを重視しております。
・ユーザー数
無料利用のユーザーも含めた総ユーザー数であり、有料会員などのその他の重要指標の前提となるものであります。
・有料会員数(期末時点)
各期末時点での有料会員数であり、現在の売上高の大半の割合を占める収益の元となる一般個人の有料会員数に加え、法人(企業・大学等及び学校)での有料会員数を合わせた数値であります。新規ユーザー数と有料課金転換率の双方を向上させることにより、有料会員数の増加を図ります。
・導入法人数(累計)
事業法人、学校、公官庁等の法人の導入件数であり、法人向け展開の進展及び規模を示す指標であります。特に学校市場については、導入学校数及び学校でのユーザー数もモニタリングしております。
・対応タイトル数
「abceed」に対応している教材の数であり、学習プラットフォームとしての価値向上及びユーザー層の拡大と関連する指標であります。
| ユーザー数 | 有料会員数 (期末時点) (注1) | 対応タイトル数 (注2) |
2020年5月期末 | 116.5万人 | 1.2万人 | 243 |
2021年5月期1Q末 | 126.9万人 | 1.5万人 | 266 |
2021年5月期2Q末 | 141.7万人 | 2.0万人 | 303 |
2021年5月期3Q末 | 158.8万人 | 2.3万人 | 336 |
2021年5月期末 | 179.7万人 | 3.2万人 | 380 |
2022年5月期1Q末 | 195.8万人 | 3.3万人 | 396 |
2022年5月期2Q末 | 213.5万人 | 3.8万人 | 421 |
2022年5月期3Q末 | 233.1万人 | 4.5万人 | 476 |
2022年5月期末 | 257.6万人 | 5.7万人 | 550 |
2023年5月期1Q末 | 276.0万人 | 5.6万人 | 616 |
2023年5月期2Q末 | 295.3万人 | 6.1万人 | 636 |
2023年5月期3Q末 | 316.4万人 | 6.5万人 | 676 |
2023年5月期末 | 343.2万人 | 7.6万人 | 747 |
2024年5月期1Q末 | 364.4万人 | 8.1万人 | 808 |
2024年5月期2Q末 | 386.6万人 | 8.4万人 | 898 |
2024年5月期3Q末 | 412.0万人 | 9.2万人 | 959 |
2024年5月期末 | 448.6万人 | 10.1万人 | 1,044 |
| 導入法人数 | |
期中利用数 (注3) | 累計 導入数 | |
2020年5月期末 | 4件 | 4件 |
2021年5月期末 | 74件 | 75件 |
2022年5月期末 | 177件 | 203件 |
2023年5月期末 | 224件 | 317件 |
2024年5月期末 | 257件 | 430件 |
(注1)有料会員数に関する季節性要因を補足いたします。
1Qは、英語学習者の学習意欲等の変動による年間を通じた閑散期であることを要因として増加幅は微増もしくは微減となる傾向にありますが、今期は例年10月に実施している一般個人向けProプラン割引キャンペーンを1Qに実施したことにより、相応に会員数は純増しております。
2Qは、例年10月に実施している同キャンペーンを今期は実施しなかったものの、今期2Qも相応に純増を確保しております。
3Qについては、例年通り同キャンペーンを実施しており、会員数は純増しております。
4Qは例年4月に同キャンペーンを実施するため大幅に会員数を増加させる傾向にあり、加えて法人(学校・企業)における新年度の新規会員数が追加されます。
(注2)対応タイトル数については従来、映画・ドラマ(2023年3月から対応を開始)のコンテンツ数を含まず、書籍教材等の対応タイトル数の数値を開示しておりましたが、今期より映画・ドラマのコンテンツ数も含んだ数値として開示することといたしました。それに伴い、2023年5月期末の数値を映画・ドラマのコンテンツ数を含んだ対応タイトル数に修正しております。
(注3)期中に有料で利用された法人数を記載しております。
ユーザー数の推移
導入法人数(累計導入数)
(4) 経営環境
■ 市場規模
当社は、TAM(Total Addressable Market)(注1)を日本国内の英語学習者数と現在の「abceed」の課金体系(平均単価1,536円)から約2,600億円と推計しております。日本国内の英語学習者数は約1,440万人(注2)と推計しており、現在の「abceed」の有料会員の平均単価を掛け合わせて算出しております。さらに、足元でアクセスしている市場としてSAM(Serviceable Available Market)(注1)を「abceed」の累計ユーザー数(2024年5月期末時点)と現在の「abceed」の有料会員の平均単価を掛け合わせて約800億円と定めております。当社は教育主要4分野の「学習ツール」、「教材」、「テスト」、「スクール」をデジタル化し、融合した学習プラットフォームを構築しており、中学校・高校現場から大学生、社会人と幅広いユーザー層にサービス提供しております。今後のさらなる多様なコンテンツの拡充、対応により、日本国内のさらに幅広いユーザー層にリーチできるポテンシャルがあると考えております。
(注1)TAM(Total Addressable Market)とは実現可能な最大の市場規模を指し、SAM(Serviceable Available Market)とは、その中でも足元でアクセスできている市場規模を指します。当社が本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではありません。また、外部の統計資料や公表資料を基礎として当社が推計したものであり、これらの資料やそれに基づく当社の推計は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。また、出典元の予測機関は、予測値の達成を保証するものではありません。
(注2)総務省「令和3年社会生活基本調査の結果」のデータを参照
■ 市場環境及びトレンド
教育のデジタル化は海外で先行しており、日本国内は遅れをとっている状況であります。OECDによる各国の教育現場に関する調査結果(注1)によると2018年時点では、「1週間のうち、教室の授業でデジタル機器を利用する割合」がOECD平均値は43.0%であるのに対し、日本は13.6%に留まっておりました。しかしながら2019年に政府より発表されたGIGAスクール構想のもと生徒一人一台の端末普及が目指されており、新型コロナウイルスの影響も相まって学校現場での端末普及が進み、日本国内でもデジタル化が加速しつつあります。教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数(注2)は2020年3月時点の約4.9人/台から2023年3月時点の0.9人/台まで普及が進んでいると文部科学省より発表されております。教育現場でのデジタル化は海外で先行するなか、国内マーケットはまだ発展途上であり、大きな拡大余地があると考えております。
また、当社のサービスは主にスマートフォン・タブレット向けのアプリであり、有料プランを中心とするユーザーによる課金により収益を獲得しております。世界のアプリ市場は拡大を続けており、ユーザーの日常生活へのモバイル及びアプリの浸透は顕著であります。ユーザー一人当たりの一日の時間のうち睡眠を除く消費時間の約3分の1をモバイルでの消費が占めるというデータ(注3)があります。近年では学習においてもアプリを利用するというユーザーの行動が当たり前になりつつあります。また、アプリに対して課金して使用するという行動が全世界的に浸透してきており、アプリへの課金金額(消費支出額)(注3)は年々増加しております。従来はゲームアプリへの課金が多く占めておりましたが、特に近年ではゲーム以外のアプリへの課金が増えていることが特徴的な傾向であります。
(注1)OECD「生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)」より当社集計
(注2)文部科学省「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を参照。「教育用コンピュータ」とは、主として教育用に利用しているコンピュータのことを指し、教職員が主として校務用に利用しているコンピュータ (校務用コンピュータ)は含まず、指導者用と学習者用の両方を含み、タブレット型コンピュータのほか、コンピュータ教室等に整備されているコンピュータを含む
(注3)App Annie「モバイル市場年鑑2022年」のデータを参照
■ 競合環境
当社の以下の3つの競合優位性(第1 企業の概況、3 事業の内容を参照)により、英語学習に特化したAI学習プラットフォームという独自のポジショニングを確立しております。
3つの競合優位性
① 教材コンテンツプラットフォーム ➡ ユーザー獲得の優位性
② 英語特化によるユーザビリティの追求 ➡ ユーザビリティの優位性
③ AIの活用 ➡ 学習成果の優位性
競合他社としては以下を想定しております。
・教材コンテンツプラットフォームではない事業者・サービス
AIを活用した英語学習・資格試験対策のアプリサービスがありますが、教材コンテンツプラットフォームではないため、自社のコンテンツで認知を得るために多大な営業及びマーケティングコストが必要と考えられます。
・英語特化ではない事業者・サービス
学習塾等でAIを活用して学習効率を高めるようなAI教材及びデジタル教材などが想定されますが、多数の科目に対応するサービスとなっており、英語学習に特化したユーザビリティの担保が困難と考えられます。
・AIを活用していない事業者・サービス
デジタル教材プラットフォームなどが想定されますが、これらはデジタル教材であってAIを活用していないことが多く、AIによる個別最適化による学習効率の改善を図ることが困難と考えられます。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①サービス・プロダクト開発の強化
収益の柱となる有料会員や導入法人数の拡大のためには、機能開発・ユーザビリティ追求のための取組みを強化していくことが重要だと考えております。教材・教科書のほか解説・講義動画、映画・ドラマ等のエンターテイメントコンテンツなどの幅広いコンテンツに対応するために、出版社との連携、新領域のライセンス獲得活動及び社内のコンテンツ開発体制の強化を図ってまいります。
②販売・マーケティング体制の強化
国内でのさらなるユーザー数の拡大や有料会員数、導入法人数の拡大のため、積極的なマーケティング及びブランディング、営業体制を構築することが重要だと考えております。
③優秀な人材の確保
ミッションに共感して当社の事業成長に寄与する優秀な人材を確保することが、サービス・プロダクト開発の強化、販売・マーケティング体制の強化その他の事業運営にとって重要だと考えております。積極的な採用活動、採用力の強化に加え、社内の適切な人事制度などの確保に注力してまいります。
④安定的な収益基盤の強化
当社は、今後の持続的な成長を実現するためには、安定的な収益基盤の確保及び強化が必要であると考えております。そのために必要なサービス・プロダクト開発、販売体制の強化、人材の獲得をしていくために、有料会員を中心とした売上の維持、拡大で、安定的に資金獲得を持続できる収益基盤を強化してまいります。
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