EduLab 【東証グロース:4427】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、教育分野における測定技術の研究開発を行い、質の高いテスト及びラーニングの機会を提供することで、効果的な教育機会を実現し、個人個人の能力の発展に寄与するという日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場においては、GIGAスクール構想に基づき、児童・生徒1人に1台端末が整備され、教育のICT化が不可欠となっております。テスト市場全体においては、従来型の紙のテストからCBTへの移行が進みつつあり、学習のオンライン化及びテストのCBT化が加速する傾向が続いております。また、英語教育の低年齢化、リスキリング需要の高まり及びデジタル化により、英語に対する教育とテスト需要の拡大も見込まれております。したがいまして、当社グループが属する教育ビジネス市場は、今後も成長することが見込まれています。
しかしながら、当社グループでは、当連結事業年度において、テストセンター事業及びAI事業において通期業績予想に対する若干の上振れを達成したものの、前事業年度比では、テスト等ライセンス事業、教育プラットフォーム事業、AI事業、テスト運営・受託事業における売上減少により、売上高は減収となり、売上総利益も減益となりました。業務委託費や人件費の削減等により、販売費及び一般管理費は減少しましたが、売上総利益の減少を補いきれず、営業損失は前期比で損失幅が拡大しました。また、主に将来に損失を繰り延べないため第2四半期までに計上したソフトウエア等の減損損失に加えて、訴訟関連費用及び事業構造改革にかかる費用等の引き当てに伴う特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失は損失幅が拡大しました。
当社グループとしましては、こうした結果を踏まえながらも、教育ビジネス市場におけるビジネスチャンスは大きいことから、教育分野における能力測定技術、AI技術、コンピューターやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として項目応答理論を用いた正確な能力測定を強みとする「CASEC」に代表される試験の高度化を図ることで、他社との差別化を図ってまいります。また、各種検定・試験のCBTの実施会場であるテストセンターの設置・運営を通して、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進し、さらに、独自のAI技術を活かし、AI-OCRの拡販、自動採点、自動問題作成等対応範囲の拡大に努めてまいります。
(3) 経営戦略等
当社グループは、持続的な成長を目指した体制構築に向け、2024年9月期から2026年9月期までの3年間を期間とする、「中期経営計画 -事業計画及び成長可能性に関する事項-」を2023年12月8日に公表いたしました。
当社は、以下に記載する3つの改革に取り組み、2025年9月期に、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化を目指します。
① 事業構造改革
事業ポートフォリオの見直しを行い、高付加価値事業及び成長事業に対して経営資源を積極的に投下するとともに、不採算事業からの撤退を行い、高収益な企業体制を目指します。具体的には、テスト等ライセンス事業及びテスト運営・受託事業で、より付加価値を高めていくとともに、テストセンター事業及び AI 事業を成長事業として育成します。一方で、教育プラットフォーム事業については、上記に記載の通り、撤退することで、他事業へ資源を再配分してまいります。
② コスト構造改革
早期のコスト削減、人員の再配置を行い、筋肉質な組織体制を目指します。具体的には、海外子会社の運営体制の見直しによるスリム化、外注費の最適化、オフィス移転を含めた徹底的な販管費の削減に取り組むとともに、一部事業・サービス撤退による、成長事業への人員の再配置を行います。
③ 組織体制・企業風土改革
これまでの事業部制を廃止し、顧客軸とプロダクト軸を明確にし、顧客ニーズに応じた適切なソリューションを提供する組織へ移行することで複合的なサービス展開を行い、更なる販売拡大を目指します。また、これまで取り組んできたガバナンス体制強化に引き続き注力していきます。さらに、人事評価制度を再構築することで、変革に挑戦できる組織を目指してまいります。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピューターやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「英検 Jr.」に代表される試験を提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化を図ってまいりました。また、独自のAI技術を活かし、AI-OCR、自動採点システム等の開発に努めております。さらに、テストセンター事業を通じて、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進しております。
当社グループでは、今後の業務展開及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① システム開発の強化
当社グループが今後も持続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システム等について、市場での優位性を確保するための製品機能の強化が今後も不可欠であると認識しております。
また、当社グループは、AIを用いた手書き文字認識技術(AI-OCR)を活かすための周辺機能の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を開発してまいりました。
当社グループは、時代の要請により変化する市場と今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応するため、戦略に即した製品機能の強化、オプション機能の開発等を行い、競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化に合わせて継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。
また、世の中で必要とされるスキルや能力は変化しており、そのスキルや能力を測定又は習得していくコンテンツの開発力を高めることが重要です。良質なコンテンツを開発することができる経験豊富な人材は限られており、当社グループは、戦略的な採用活動を通して、質の高い人材にアクセスし、優良なテスト及び学習コンテンツの開発・提供を進めることで、商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発やそのメンテナンス、コンテンツ開発、採点業務の生産性と収益性の向上
当社グループは、現在、インドのプネにある自社の開発拠点にて、ソフトウエア開発やメンテナンスを行っております。また、アイルランドのダブリンにて、先端的なAIの開発に取り組んでおります。当社グループはこれらの体制を通じて、グループ全体のシステム開発の生産性の向上を目指してまいります。
さらに、当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野の修士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保して、英語コンテンツの開発や採点業務を行っております。今後もそうしたナレッジを活かして、収益性の向上を実現してまいります。
④ テストセンター事業の安定的運営と更なる拡大の両立
テスト市場全体において従来型の紙ベースのテストからCBT(Computer Based Testing)への移行が進む中、当社グループは、各種検定のCBTの実施に当たり、その実施会場であるテストセンターの安定的な運営を実現できる体制構築に注力しており、2023年9月末現在で41の直営のテストセンターを運営しております。直営のテストセンターの運営には、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の負担が生じますが、今後この事業を一層安定的に運営し、各種検定のCBT化を推進することで、中長期にわたる事業拡大を実現してまいります。
⑤ 株式会社増進会ホールディングスとの連携強化
当社グループは、2022年7月、株式会社増進会ホールディングスとの資本業務提携契約を締結しております。主にテスト分析・コンサルティング、教育機関・法人向け営業の拡充、独自の能力測定技術を活かしたサービスの付加価値向上、AIを活用した採点業務の効率化等の領域において、両社の事業シナジーを活かしたビジネスを拡充し、双方の企業価値向上を目指してまいります。
⑥ AI-OCR技術である「DEEP READ」やAI自動採点技術である「DEEP GRADE」の事業応用とAI技術の活用領域の充実
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加しています。当社グループは、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「DEEP READ」を開発し、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化を実現してまいりました。また、この文字認識技術は教育IT分野のみならず他分野にも応用可能であり、これまで保険・金融機関やBPO事業者等、様々な企業・団体において、書類管理業務のDXの一環として活用いただいております。引き続きAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態を整えながら、精度面、機能面、サポート面の更なる強化を図ってまいります。
さらに、2023年9月期より、AI事業の新たな柱として、ChatGPTを活用したAI自動採点ソリューションである「DEEP GRADE」を、教育業界向けに提供開始いたしました。「DEEP GRADE」は、AIが問題文の意味や出題の意図と実際に書かれた解答の内容を解析し、採点結果を即座に返却するため、採点にかかる工数を大幅に削減することが可能となり、教育業界のDXを推進します。また、採点結果に加えてフィードバックや学習アドバイスを同時に表示することが可能となり、採点だけではなく学習の効率も飛躍的に向上させることが可能となります。
これらの事業を推進するため、当社グループは、子会社DoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動に努めております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する「令和6年度全国学力・学習状況調査を実施するための委託事業(中学校事業)」を受託いたしました。こうした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AI技術や採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の更なる強化
当社は、2021年8月より、特別調査委員会を設置し、一連の会計処理について調査を行いました。その後、特別調査委員会による最終報告書の内容を踏まえ、2021年10月15日及び2022年2月28日付にて、過年度に係る有価証券報告書等の訂正を行いました。
これに伴い、株式会社東京証券取引所より、当社株式は2022年4月1日付で「特設注意市場銘柄」の指定を受けましたが、内部管理体制の強化に取り組んできた結果、その取組み内容が評価され、2023年5月20日付で当該指定は解除されております。
当社は、引き続き、内部管理体制の整備・強化を継続するとともに、グループ一丸となって企業価値向上に努めてまいります。
⑨ 人材の確保と育成
当社グループは、今後持続的な成長を図るために、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。2023年10月から営業面と商品・サービス開発面を強化した組織体制に移行するとともに、新しい人事制度をスタートさせて、人材の活性化を図ることに加えて、社員への研修・教育制度を整備することで、優秀な人材の確保・育成に取り組んでまいります。
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