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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは「BEYOND SCIENCE FICTION」をグループミッションに掲げ、現在は「個人認証」「個人最適化」「個人情報管理」の3つのソリューションにて事業を展開しております。

 個人認証ソリューションで「あなたは誰か」を証明し、個人最適化ソリューションで衣食住における「あなただけの服」「あなただけの店舗」「あなただけの居場所」を実現します。個人情報管理ソリューションでは、個人認証ソリューション及び個人最適化ソリューションで取り扱ってきた個人情報管理のノウハウを通じた、セキュアな個人情報管理を実現します。その結果、「金融犯罪」「未着廃棄」「食品ロス」「エネルギー・ロス」「個人情報漏えい」といった、社会課題の解決に繋がる取り組みを続けてまいります。


(2) 経営環境

 当社グループを取り巻く経営環境は、法律改正や新型コロナウイルス感染症の影響により、日々変化しております。

 個人認証ソリューションでは、2018年の犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正にて、本人確認をオンラインで完結する方法が認められたことや、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響にて非対面サービスの重要性が高まり、従来の対面型サービスから非対面サービスへの移行が急激に進んだことにより、「LIQUID eKYC」の導入が拡大しました。また、金融機関や通信会社など、犯収法により本人確認業務が求められている業種に留まらず、CtoCのシェアリングサービスやマッチングサービス等、日常生活に欠かせない幅広い業種において、成りすましによる不正を防止しユーザーからの信頼性を高めるニーズが高まっており、導入が進んでおります。

eKYC及び当人認証ソリューション市場の市場規模は、2025年に152億円に達すると見込まれております※1。また、個人認証を利用する業界や企業数の拡大、及び提供するサービスと利用シーンの拡大により、将来的には約1.2兆円のマーケットに成長すると想定しております。

 個人最適化ソリューションでは、新型コロナウイルス感染症の影響に伴うオフィスへの出社制限や店舗への入場制限、営業時間短縮などにより、導入事業者においてIT投資が一時的に停滞しておりましたが、当社グループでは、withコロナの前提でのサービス設計を進めて参りました。現在、経済活動は感染症拡大前に戻りつつあり、事業者からの問い合わせも増えてきております。経済活動の回復に合わせてIT投資が再開されると、従来リアル店舗で提供されていたサービスをリアルとオンラインで複合的に提供できる当社グループのサービスにとって、中長期的には追い風になることが予想されます。

 個人情報管理ソリューションでは、近年多くの企業にて問題になっている個人情報管理をサービス対象としています。東京商工リサーチの調査※2によると、2023年だけでも、上場企業とその子会社で個人情報の漏えい・紛失事故を公表したのは147社、事故件数は175件、漏えいした個人情報は4,090万8,718人分(前年比590.2%増)となっております。また大手企業に限らず、近年は、半数以上の病院が利用する電子カルテシステムを狙った個人情報に対する攻撃も増えており、医療機関においても個人情報管理の重要性はますます高まっている状況です。当社グループにおいては、グループでこれまで培った情報セキュリティ技術や暗号鍵分散管理技術を個人情報管理に特化させ、企業の個人情報管理の改善、個人情報の匿名化・仮名化を行うことで、社会全体としての情報の利活用が促進されると考えております。

※1 株式会社矢野経済研究所「eKYC/当人認証ソリューション市場に関する調査」(2023年7月18日発表)

※2 株式会社東京商工リサーチ「2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査」(2024年1月19日発表))

(3) 経営戦略

 当社グループは、経営方針に基づき様々な事業に取り組んできた結果、現在は「個人認証」「個人最適化」「個人情報管理」の3つのソリューションを提供しております。今後も、社会課題の解決とともに、企業価値をさらに高めていくことを目指して参ります。

 個人認証ソリューションのサービスである「LIQUID eKYC」は、現在多くの事業者に導入頂き、グループの成長を牽引しております。また、個人認証ソリューションのその他サービス、個人最適化ソリューション、並びに個人情報管理ソリューションにおいては、これまでの研究・開発を活かして、現在は商用化フェーズに移行し、次なる事業の柱となるよう取り組んでおります。各サービスとも当初は研究・開発期の費用負担から赤字となりますが、商用化や事業成長に伴い売上高が増加して損益分岐点を上回ると、営業利益が拡大する収益モデルとなっています。

 当社グループ全体の利益構造としては、先行して成長フェーズに入った個人認証ソリューションの継続拡大に加えて、個人最適化ソリューション及び個人情報管理ソリューションの商用化フェーズの進展を通じ、改善していくものと考えております。


 当社グループは今後の成長戦略として、「個人認証ソリューションの拡充」「個人最適化ソリューションの成長」「個人情報管理ソリューションの立ち上げ」「アライアンス及びM&Aの活用」の4点を考えております。

① 個人認証ソリューションの拡充

 個人認証ソリューションにおいては、「LIQUID eKYC」の市場拡大を目指します。現在は、金融業や通信業が主力市場でありますが、CtoCのシェアリングサービスやマッチングサービスへの導入も進んでおります。さらには公共分野や医療分野など、認証を必要とするシーンは日常生活において多岐にわたり、今後はそれらの市場への導入を目指します。また、提供開始済みのオンライン当人認証サービス「LIQUID Auth」に加え、事業者横断で不正利用を検知するサービスなど個人認証ソリューションの拡充による利用シーンの拡大も目指します。加えて、適切な時期において海外市場への積極的な展開を考えております。人口増加に伴い、eKYCが必要とされる各種オンライン取引の規模拡大が期待されるアジア太平洋地域(APAC)での展開を目指します。

②個人最適化ソリューションの成長

 個人最適化ソリューションにおいては、これまで衣食住の各分野で事業を展開してきました。足元は当社グループ全体の選択と集中の観点からサービスの縮小、撤退を進めてきました。今後は、既存の継続事業に加え、当社グループが培ってきた画像認識技術を活用する生成AI技術を生かした新分野の立ち上げを通じ、パートナー事業者と協業しながら、事業の再成長を目指しております。

③個人情報管理ソリューションの立ち上げ

2023年8月に個人情報管理ソリューションである「ELEMENTS CLOUD」の提供開始を発表いたしました。本サービスについては、既存の個人認証ソリューションの提供事業者に加え、医療関連分野の事業者等への導入を図っていきます。

④アライアンス及びM&Aの活用

 当社は、非連続的な成長の手段としてアライアンス及びM&Aの活用を実施しております。当該戦略の一環として、2024年2月に株式会社アドメディカの子会社化を実施、2025年1月には株式会社ポラリファイの子会社化を発表いたしました。今後も、財務健全性の維持と両立しながら、アライアンス及びM&Aを活用していきます。

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、財務指標として、連結売上総利益及びEBITDA(営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+株式報酬費用+のれん償却額の合計にて算出)を重視しております。連結売上総利益については、事業の成長も考慮した上で、グループ全体としての収益性を示す重要な指標として考えております。EBITDAについては、グループ全体の事業運営状況の健全性及び継続性を示す重要な指標として考えております。

 財務指標の推移については以下の通りであります。

 

第7期
連結会計年度

(自2019年
  12月1日

 至2020年
  11月30日)

第8期
連結会計年度

(自2020年
  12月1日

 至2021年
  11月30日)

第9期
連結会計年度

(自2021年
  12月1日

 至2022年
  11月30日)

第10期
連結会計年度

(自2022年
  12月1日

 至2023年
  11月30日)

第11期
連結会計年度

(自2023年
  12月1日

 至2024年
  11月30日)

連結売上総利益 (千円)

498,160

816,243

1,088,212

1,499,344

2,183,371

EBITDA(千円)

△912,606

△691,052

△573,451

△125,757

343,089

(5) 対処すべき課題

当社グループは、以下の課題に取り組んでまいります。

① サービス設計と品質の維持

 当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、サービス提供の過程で日々取得する「ヒト」に関するデータを継続的に機械学習することで、サービス品質の維持・向上に繋げております。当社グループのサービスは、各導入事業者が展開するサービスに組み込まれる形で、各導入事業者からユーザーに提供されます。ユーザーは、これらのサービスを利用するにあたり、当社グループの管理するデータベースにユーザー自らがデータをアップロードします。ユーザーから取得したデータを当社グループが保管するため、様々な面から機械学習を行い、既存サービスの品質向上のみならず新規サービスの開発に繋げられるのが、当社グループの特徴です。しかしながら、各事業者または産業固有のオペレーション・フローに対応したサービス設計を行うためには、それぞれの事業者または産業の特徴を理解する必要があります。価値が高いサービスを提供するには、大量のデータを日々取得できる、効率的な機械学習環境を整備することが有効であると当社グループは考えており、日常生活の自然な導線上でユーザーにお使い頂けるよう、ユーザビリティの高い自社サービスの設計と品質の維持を心がけております。

② 海外展開

 当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、個人が日常生活から発するデータを分析対象としているため、対象市場は国内に留まりません。データ収集の対象数が多い市場で事業を行うことは自然な流れであり、人口増加と経済成長が著しい、アジア太平洋地域(APAC)市場は最重要マーケットと認識しております。当社グループは、インドネシア共和国にて同国の華僑系財閥である「Salim Group」と現地合弁会社「PT. Indoliquid Technology Sukses」を設立し、当社グループが国内で展開するサービスの単純な海外移管に限定しない、現地の文化や市場ニーズにマッチしたサービスの展開を目指して活動を行っております。

③ システムの安定性確保

 当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、インターネット上にてサービス提供を行っております。当社グループの事業を支えるサーバーは、主に外部クラウドサービスであるAmazon Web Services, Inc.が提供するAmazon Web Services (AWS)で管理されており、利用者数の増加及びそれに伴うアクセス数の飛躍的な増加への対応並びにユーザビリティ向上のため、複数のサーバーによる負荷の分散・システムの冗長化・定期的なバックアップの実施・各種不正アクセス対策等によるシステムセキュリティの強化・システム稼働状況の監視等を図り、システム障害を未然に防ぐべく取り組みを行っております。

④ 情報管理体制の強化

 当社グループはサービスの提供において、ヒトに関するデータ(ユーザーの個人情報)を取り扱っており、情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、連結子会社の株式会社Liquidにおいては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO/IEC 27001」及び国内規格である「JIS Q 27001」の認証を取得しております。機密情報や個人情報について、以前より社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備を行っておりますが、今後も引き続き情報管理の徹底及び体制の強化を図ってまいります。

⑤ 知的財産権の確保

 当社グループは、日々の開発業務から生じた新規性のある独自技術の保護のために、単独または他社と共同で、それらに関する特許権等の知的財産権の取得を図っております。画像解析及び機械学習領域においては、国内外大手IT企業等が知的財産権の取得に積極的に取り組んでいるため、当社グループも特許権等の取得により活動領域を確保することが課題であると認識しております。今後、様々な業界に対してシステムを開発・提供することによって有用な知見が得られることが期待されるため、外部専門家とも協力しながら、独自の技術領域については、他社に先立って戦略的に特許権を取得していきます。

⑥ 人材の確保及び教育の強化

 当社グループはこれまで、少人数で効率的な組織運営を行ってまいりました。一方で、今後の業容拡大に向け、当社グループの成長速度に見合った人材の確保及び従業員の実務的なスキル強化も重要な課題と認識しております。そのため、今後も優秀な人材の獲得及び教育に取り組んでまいります。

⑦ 内部管理体制の強化

 当社グループは、各分野において今後もより一層の事業拡大を見込んでおります。そのため、今後も当社グループの事業拡大に応じた内部管理体制の強化を図り、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。

⑧ 財務体質の強化

 当社グループは2024年11月期に設立以来初の営業黒字を計上いたしましたが、過去、営業赤字が継続しておりました。今後、十分な売上高が獲得できない場合や研究・開発期のサービスに対する新規投資が増加した場合には営業赤字、営業活動によるキャッシュ・フローの赤字が発生する可能性があります。当社グループは経営の健全性を保つために、キャッシュ・フローを重視した経営に努めておりますが、今後の事業強化や拡大を図るためには資金が必要となります。そのような場合に備え、常に一定水準の手元流動性を確保し、信用獲得に努めてまいります。手元流動性確保のため、資金調達や内部留保の確保を継続的に行い、財務基盤の更なる強化を図ってまいります。

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