ARアドバンストテクノロジ 【東証グロース:5578】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「ARIグループ普遍的価値観」として、「先進性ある技術を通して、顧客の問題解決と社員の幸せを創造し、社会の未来発展に貢献する」を掲げ、DXソリューション事業を営む企業としての経営理念にしております。
当社グループの存在意義と精神は、未来へと続く産業と社会の一端を担い、その発展の歴史に貢献し続けていくことにあります。
貢献とは、先達の知識の蓄積を真摯に学び、自ら社会的価値あるサービスの創出に知恵を絞り、常にその時代に必要とされる先進性ある技術を提供できる集団となることで、社会が、つまり顧客が抱える悩みを一つ一つ解決するという社会的価値を創出し、顧客とそこに関わる人々の発展に尽くしていくことであると考えております。
同時に、社員全員がARIグループという働く場を通して、人生の目標を持ち、出会いを得て、学びを重ね、互いの信頼を積み、心が豊かになり、物質的にも豊かになっていくことで、社員とその家族が幸せだと実感できる環境を作り上げていくことにほかなりません。
これらの在り方は、50年先、100年先も変わらない普遍的な価値観として、当社グループの性質を表す企業文化の礎として浸透していくものであります。
この経営理念に則り、当社グループは「顧客のTo be実現のための一翼を担うにはどのような取り組みが必要になるのか」を常に考え続ける姿勢を持ち続け、未来に向けて奮闘する企業の価値あるITパートナーとして、どうあるべきかを常に追求してまいります。
そして、このような姿勢のもと、クラウド技術とデータ・AI活用によって、顧客とともに事業変革すなわちビジネストランスフォーメーションを実現していくことが当社グループの使命であると考えております。
(2) 経営環境について
2023年の国内ITサービス市場は、国内企業のデジタルビジネス化に向けたマイグレーション、モダナイゼーション及びデジタルイノベーションの実装に向けた需要がいずれも活発であったことから好調に推移し、前年比6.0%増で6兆4,608億円となりました。同市場が5%を超える成長を遂げたのは、2010年以降では初めてであり、2024年以降の同市場は全体として好調を継続し、2023年から2028年の年間平均成長率は4.8%で拡大を続け、2028年には8兆1,495億円になると予測されております。(※1)
IDC Japan株式会社によれば、産業分野別では政府・公共が、中央官庁の既存システム更新やデジタルガバメントの推進に向けた大型案件によって伸長したほか、製造では基幹系システムの刷新やクラウド移行、流通では顧客エクスペリエンス(CX)最適化や大手卸売業のデジタルビジネス強化に向けたシステム、金融では大手金融機関の基幹システムの刷新などが、ITサービス支出を牽引したと分析しております。
2024年以降の同市場は、全体として好調を継続し、国内企業のデジタルビジネス化に向けた投資が、既存システムのモダナイゼーション、あるいはデジタルイノベーションの創出に向けたシステムの両領域で需要が活発化していることが共通の背景であり、こうした変革期の需要によって、より高い成長を遂げるとみています。一方で、IT人材の不足や受注時の採算見積の困難さなどが市場成長を抑制するものの、すべての産業分野でプラス成長を継続すると予測されております。(※1)
このうち、DX国内市場は、CASE(Connected:ネット接続、Autonomous:自動運転、Shared&Service:シェアリングサービス、Electric:電動化)へ取り組む自動車産業・モビリティ事業を中心に、金融業や、スマートファクトリーへと向かう製造業などが牽引しており、これと連動してデジタル関連のコンサルティングニーズも拡大しております。国内市場ではDXに対する関心が非常に高く、企業の投資意欲は高まっております。2021年は、DXに関わる投資が大幅に増加し、1兆円を超える市場規模となりました。
DXの流れが加速する中、非IT企業でのクラウド活用が拡大、加えて政府官庁のクラウド活用も2022年以降更に活性化しており、市場は堅調に拡大しております。
また、国内クラウド市場については、2023年から2028年の年間平均成長率は16.3%で推移し、2028年の市場規模は2023年比2.1倍の16兆6,285億円になると予測されております。(※2)
今後の国内クラウド市場は、カスタムアプリケーション開発した基幹系システムのクラウドマイグレーション、DX・データ駆動型ビジネスが成長を牽引し、また、生成AIの普及は、インフラストラクチャに対する投資を拡大すると共に、製品・サービス単価の上昇が見込まれ、DX・データ駆動型ビジネスの成長を加速するものと予測されております。(※2)
このように当社グループが事業を展開する分野は、中期的には市場拡大の方向にあります。
一方で、国内ITサービス市場の拡大は、事業の鍵となるIT人材の需給逼迫と表裏をなすものであります。経済産業省によれば、中位予測で2025年には36万人、2030年には45万人のIT人材の不足が予測されており(※3)、労働市場での優秀なエンジニアの獲得競争が激化しております。
このような状況のもと、当社は「3 事業の内容 (2)事業展開の特徴」に記載のとおり、BTCアプローチ、ハイブリッドアプローチによりクラウドインテグレーションの面において競争他社との差別化要因になっていると認識しております。加えて、前述のとおり、クラウドに関する技術、人材育成、及びビジネスパートナー等調達の基盤も整備しており、労働市場での人材獲得競争激化にも対応可能であると認識しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、前述「(2)経営環境について」に記載のとおり、DXに重心を移しつつ中期的には拡大基調にあるITサービス市場において、中期的な成長即ち継続的な売上高の伸長を実現するために、引き続きクラウドインテグレーションに注力し続け、「クラウド技術とデータ・AI活用によるビジネストランスフォーメーションデザイナーとして社会変革をリードする」をミッションとして、以下の3つの成長戦略を骨子とする中期経営計画を掲げております。
① BTCアプローチの強化
BTC(Businessノウハウ・Technology技術・Creativeデザイン)を結合した三位一体によるコンサルティング及びデザインを重視したクラウドインテグレーションでDX化支援を推進してまいります。AWSやMicrosoft Azureを軸としてクラウドネイティブ技術をマルチクラウドかつアジャイルで提供する他、DX化に必要な要素技術を複合的に組み合わせ、顧客のニーズに応える質の高いソリューションを提供すべく注力してまいります。
② ハイブリッドアプローチの強化
コンサルティングの提案や自社開発プロダクト等の提供を起点に、捕捉することができた顧客のDX上の課題に対して、課題解決のためのクラウドインテグレーションの提案・提供に繋げるという形をとって、所謂クロスセル、アップセル戦略を展開するビジネスモデルを強化してまいります。所謂フロービジネスにあたるクラウドインテグレーションから得たノウハウを、所謂ストックビジネスである自社開発プロダクトに還元し、自社開発プロダクトの提案を起点にクラウドインテグレーションを拡大させていくという好循環のサイクルを回し、顧客接点機会の創出から、顧客LTVの最大化へ繋げていくという戦略を強化していくものでもあります。また、同時にデジタルマーケティング及びデジタルセールスを強化し、営業力を強化してまいります。
③ 新規事業開発の強化
当社グループのプロダクト及びブランドは、クラウドインテグレーションから得たノウハウを標準化及び自動化することから生まれたものであります。ここから生まれるプロダクトは、顧客に対する新たなDX課題発見の契機となって、DXソリューション事業発展モデルのエンジンを起動させ、クロスセルへと繋がり、新たなクラウドインテグレーションのニーズを拡大させながら、アップセルを実現していくという循環型サイクルを実現します。この循環型サイクルにより、技術的再現性が担保されることで、顧客を跨いだ水平展開が可能なものになっていきます。このサイクルを更に強化していくため継続的な研究開発投資を行ってまいります。
そして、「cnaris(クナリス)」「dataris(デタリス)」と名称した領域特化型のサービスブランド戦略を展開することで認知度向上を図ってまいります。
「cnaris(クナリス)」は「クラウドネイティブ領域に特化し、その技術の標準化及び自動化を経て総合支援をパッケージ化したサービスブランド」であります。クラウドインテグレーションにおいて最も重要なことは、技術テンプレートといった形で可視化され、ビジネス展開の中で蓄積していく、標準化・自動化へと繋がる有形のノウハウであります。これらは再利用が可能であり、再現性をもって水平展開されていくもので、ビジネスの加速度的な発展と品質安定に大きく影響いたします。当社グループは創成期からクラウド技術の造詣を深め、良質なノウハウを豊富に有しております。これらをブランド化し、展開することでクラウドインテグレーションの競争力を高めてまいります。
「dataris(デタリス)」は「データ・AI活用領域に特化し、その技術の標準化及び自動化を経てパッケージ化したサービスブランド」であります。cnaris同様に、データ・AI活用を軸としたクラウドインテグレーションに係る良質かつ豊富なノウハウをブランド化して、差別化を図ってまいります。自社開発プロダクトである「LOOGUE(ローグ)」「ZiDOMA data(ジドーマ データ)」をこのブランドの嚆矢とし、今後も新しい価値を生み出してまいります。
この2つのブランドを育てていくことで、認知度向上を図り、中長期的な成長を加速させてまいります。
また、成長の基盤としてビジネスパートナーの調達は重要な鍵となるため、ソリューションセールスユニット内にビジネスパートナーの調達・管理を推進する専門部署を設置し、200社超のビジネスパートナーと良好なアライアンスを構築しております。従って、万が一社員の増員に支障が出た場合でもビジネスパートナーにて工数不足を補える体制を整えており、今後もアライアンス強化を図ってまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、高い収益性の確保と継続的な売上高の成長を維持することにより、企業価値を継続的に向上させ株主利益を最大化することを経営上の目標としており、そのための指標として、売上高成長率を重視しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
近年、DXへの対応が注目を集めております。DXは単なる“システム化”に留まるものではなく、事業や組織運営の在り方を根底から変えていく、総合的な企業変革へと繋がるダイナミックな動きであり、ITの活用の在り方そのものが大きく変化しつつある環境にあると認識しております。
このようなITに新たな価値を求められる事業環境のもと、経営理念として掲げる「ARIグループ普遍的価値観」の具現化に向けて取り組むべき課題を以下のとおりと認識しております。
① 人材確保と育成
DX市場の拡大に伴い、デジタル化、クラウド化の技術を有する優秀な人材の確保は最重要課題であります。様々な顧客の中長期的な要求に応じて、技術水準の高い人材を確保するための投資を継続し、引き続き優秀な技術者の確保及び育成に努めてまいります。
また、クラウド市場の拡大により多様化する顧客ニーズに対応できるよう、人材育成施策に積極的に取り組んでまいります。具体的には、社員の育成・研修等を推進する専門部署を設置してクラウド技術を中心とした社内外での育成機会を設けるとともに、クラウド関連の資格取得支援を積極推進し、技術力の更なる向上に努めてまいります。
② 収益基盤の強化
当社グループのDXソリューション事業は、顧客のDXにおけるあらゆる工程において、DXを先進技術で支援するワンストップサービスの提供を中核として事業展開しております。具体的には、上流工程であるシステム開発の要件定義から、下流工程にあたる保守・運用までを総合的にサービス提供するとともに、顧客に対して状況に応じた最適な契約形態をとっております。請負・準委任に加え人材派遣によるサービス提供も行っております。従って受注案件ごとの利益率に相応の振幅があり、持続的な成長のためには、安定的な収益基盤を強化し続ける必要があります。そのために、クラウド技術を中軸に、より利益率の高い上流工程案件への取り組みの一層の増強を図りつつ、新規事業分野の開拓、自社開発プロダクトの強化を進めてまいります。加えて、株式会社エーティーエスを中心とした人材派遣・人材紹介といったDX人材サービスの推進により、グループ全体の安定成長を下支えしてまいります。
③ 内部統制の強化
当社グループは、継続的に事業規模を拡大しており、また新規事業の展開の検討・実施を恒常的に行っていることもあり、内部統制整備に関わる課題が経常的に発生いたします。当社グループにおきましては、監査役による監査や内部監査の過程において、状況変化に応じた内部統制の整備状況に係る変更の必要性を認識するとともに、対応策の早期構築に努めてまいります。
④ 営業力の強化
継続的成長のためには、新規顧客の開拓と既存顧客との関係深化に取り組む必要があります。これまで蓄積してきた技術ノウハウや業務知識、研究開発による先行技術知識を活用し、案件の獲得に向けた提案力の強化に注力し、全社的な営業力の向上を図り受注拡大に努めてまいります。
さらに、エンジニアを顧客に提供する際に、適正な能力を有したエンジニアを適正な価格でマッチングすることが必要となります。そのために当該マッチングを担当する営業要員を増員するとともに、営業要員各人の提案力や技術に対する理解深耕などのスキル向上を図ってまいります。
⑤ 資金繰りの更なる安定化
当社グループは、売掛金回収サイトと買掛金支払サイトの差が常に一定以上あるうえ、銀行からの資金借入もあり、現時点では資金繰りについては充分な余裕があります。しかしながら買掛金支払サイトは僅かではあるものの短縮化の傾向にあるうえ、業容拡大に伴い、今後、売掛金回収サイトの長い大型の請負契約が多く発生した場合には資金繰りに余裕がなくなる可能性も否定できないことから、直接金融も含めた資金調達の更なる多様化を検討してまいります。
(出典)
※1 IDC Japan株式会社「国内ITサービス市場予測」2024年4月
※2 IDC Japan株式会社「国内クラウド市場予測」2024年6月
※3 経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)」2019年3月
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