ACSL 【東証グロース:6232】「機械」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」というミッションのもと、「最先端のロボティクス技術を追求し、社会インフラに革命を」というヴィジョンを掲げております。当社グループは自律制御技術を始めとしたロボティクス技術を追求し、常に最先端の技術開発を行っております。それらの技術の社会実装を通じて、人類の活動の基盤となる社会インフラにおける、人類の経済活動の生産性を高め、付加価値の低い業務、危険な業務を一つでも多く代替させ、次世代に向けた社会の進化を推し進めるべく事業を展開しております。
(2) 経営戦略等
屋内外の3次元空間を制約なく自由に移動できるロボティクス技術であるドローンの潜在的な利用可能分野は広範であり成長力は非常に高いと考えております。当社グループは、ドローンの社会実装と国産ドローン採用への回帰が進む中で、日本のドローン市場の成長と合わせて、黎明期に求められる評価用機体の試作や実証実験といったソリューションの作り込みから、成熟期に求められる量産機の開発、量産体制の構築、その後の販売・導入支援までを一気通貫で提供し、デファクトスタンダードの技術としてドローンの社会実装を推進するべく、国産のセキュアな産業用ドローンを提供してまいります。
産業用ドローン市場が「実証実験期」から「社会実装期」へと移行する中で、当社グループは2022年1月に2022年度~2025年度を対象とした中期経営方針「ACSL Accelerate 2022」をローリング方式により発表いたしました。「ACSL Accelerate 2022」では、当社グループが「持続可能なグローバル・メーカーへ」進化するため、高い技術力により顧客の要望に応えるビジネスモデルを確立することで、高い水準の収益性を実現し、持続的な成長、継続的な企業価値向上を目指してまいります。
(3) 経営環境
ドローン市場を取り巻く環境は、オペレーションの効率化・無人化に向けたドローンを含むロボティクスの導入や、脱炭素化・EV化の手段として、ドローンの有用性が認知されつつあり、世界的に利用が広がっております。加えて、地政学的リスクの高まりや不安定な世界情勢などから、経済安全保障やセキュリティへの関心が強くなっております。
当社グループは2022年1月に示した中期経営方針「ACSL Accelerate 2022」に基づき、「持続可能なグローバル・メーカーへ」進化するための取り組みを推進してまいりました。一方で、新型コロナウィルス感染症の流行に伴う経済活動の停滞、世界的な半導体の高騰、急激な円安進行、世界的なインフレ等による外部環境の変化に伴い、事業環境は当時の想定より厳しい状況となっており、成長をけん引する想定であった国産の高セキュリティ対応の小型空撮ドローン「SOTEN」は販売台数が伸び悩んでいる状況です。SOTENの競争力が発揮できる脱中国製品が明確な米国市場・台湾市場への進出や、国内におけるSOTENの販売拡大に向け全国体験会等の活動を進めているものの、大きな売上成長には至っておりません。このような状況を踏まえると、売上・収益力向上を重視した事業全体の改革を進めることが急務となっております。
具体的には、幅広く展開してきた市場、用途及び製品について、収益性の改善を目的とした「選択と集中」を行い、大幅な売上増加を前提としない黒字化を実現できるコスト構造へ転換すべく「リソースの最適化」を行います。「選択と集中」としては小型空撮機体の強みを活かせる経済安全保障、脱中国製品が明確である日本の政府調達及び米国・台湾の点検・災害対応分野に注力いたします。加えて、物流分野としては日本郵便株式会社との機体開発及び社会実装に向けた体制構築に注力いたします。リソースの最適化としては、注力事業領域に合わせて研究開発テーマの中止、日本国内の人員最適化及び連動する間接費用の削減を実施したうえで、成長市場となる米国・台湾への再投資を行います。
国内における直近の進捗としては、「SOTEN」について継続的な機能アップデートを実施して需要創出を図っております。また、日本郵便株式会社が実施する「ドローンによる郵便物などの配送試行」に国産ドローンを提供し、2023年3月に日本で初めてレベル4でのドローン配送に成功いたしました。日本郵便株式会社及び日本郵政キャピタル株式会社とは、2021年6月に資本業務提携を行っており、レベル4対応の物流専用機の開発をはじめ、今後もドローン物流の社会実装の推進とドローン市場の拡大に向けて連携を進めてまいります。
海外ドローン市場においては、日本以上に経済安全保障への関心が高く、昨今の世界情勢の状況により転換期を迎えております。特に当社グループが展開を進めている米国ではNational Defense Authorization Actが施行され、ロシア製や中国製のドローンの政府調達が禁止されており、加えて、中国製ドローンメーカーのDJI社は、2022年10月より米国国防総省の「中国軍事関連企業」に指定されるなど、経済安全保障を強く意識した施策が行われております。また、台湾においても2023年1月にドローンの政府調達に関わる方針が発表され、セキュリティに対する懸念から中国製ドローンの政府調達が制限されております。
当社グループはセキュリティが担保された国産ドローンを有しているのみならず、企業向け対応および用途特化型をキーワードとしたポジショニング形成が可能であり、海外におけるセキュアなドローンへの需要にも適応することができる可能性が高く、当社製品は海外市場においても十分に競争力を持つ製品であると認識しております。
米国市場では官庁・社会インフラ関連企業にて利用されている中国製ドローンからのスイッチングを目指し、カリフォルニア州の当社子会社ACSL, Inc.を2023年1月に設立し、CEOには、直近まで米国大手ドローンソフトウェア開発企業であるAuterion社や中国ドローンメーカーDJI社にて北米の企業向けドローン市場において大きな成果を発揮してきました、シンシア・ホァン(Cynthia Huang)が就任しております。
米国市場での当社製品の販売、サポート、修理及びサービス支援を行うディストリビューターとして、General Pacific社との間で2023年7月に戦略的販売代理店パートナーシップに関する覚書(MOU)を締結し、2023年12月より、米国市場向けにSOTENの輸出を開始し、同月末までに50台のSOTENを販売しております。
台湾市場については、台湾に拠点を置く台灣翔棋科技股份有限公司(Xiangqi Technology社)、台灣先創國際股份有限公司(SENTRA社)及び台灣敦陽科技股份有限公司(Stark Technology社)との間で、2023年8月に台湾市場における当社製品の販売に関する戦略的販売代理店パートナーシップに関する覚書(MOU)を締結するとともに、2023年12月にXiangqi Technology社との間で台湾エリアにおける販売店契約を締結し、台湾市場での販売を進めてまいります。
インド市場への進出については、現地パートナー企業(Aeroarc社)と2023年5月に今後2年間で総額3,000万米ドル(4,050,000千円相当(1米ドル=135円で算定))のドローン及びロボティクスに関するプロジェクトを検討及び具体化していくための戦略提携覚書(MOU)を締結いたしました。同MOUに基づき、ArcV Holdings Private Ltd.よりインドにおける地上走行ロボットの販売として1,362万米ドル(1,838,700千円相当(1米ドル=135円で算定))の受注をいたしました。なお、本案件については、一部受注について輸出手続きが完了しているものの、2023年12月末日時点においてArcV Holdings Private Ltd.での検収作業中となっており、当連結会計年度の売上高には含まれておりません。
当社グループの研究開発投資は、短期的な利益を追うのではなく、海外展開も含め、中長期的な成長を実現するために戦略的かつ積極的に研究開発費を投下する方針を維持し、各種用途特化型機体の機体開発、量産体制の構築を進めるとともに、プラットフォーム技術の強化を行ってきました。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき課題は下記のように考えております。
① 開発戦略
用途特化型機体の開発として事業の「選択と集中」を行い、当社グループの強みを活かせる小型空撮機体及び日本郵便株式会社との物流機体の開発に注力いたします。
小型空撮機体については、開発投資が先行するフェーズを抜け、上市・市場対応を実施するフェーズに移行しており、今後も積極的な機能改善や顧客からのフィードバックへの対応を進め、製品力の強化に努めてまいります。また、海外展開に向けた、輸出許可の取得や現地法規に対応可能となるための開発についても、積極的な投資を進めてまいります。加えて、「中小企業イノベーション創出推進事業」における 「行政等ニーズに応える小型空撮ドローンの性能向上と社会実装」事業(SBIR事業)にて新たな高性能の安全安心な小型空撮ドローンの開発を目指します。
物流機体については、資本業務提携を行っております日本郵便株式会社でのドローン物流の社会実装に向け、国内で唯一である「レベル4」(有人地帯上空における目視外飛行)に対応した第一種型式認証を取得している技術力を活かし、物流専用機体の開発を進めてまいります。
② 生産体制
当社グループは、安全品質を最優先事項と位置づけ、品質向上を目指して、社内体制の強化を進めてまいりました。機体の量産については、国内における高品質な組み立て供給が可能なパートナー企業との連携により、用途特化型機体の量産体制を構築してまいりました。今後も製品の安全品質は当社グループの最優先事項であり、パートナー企業との連携を深め、高品質かつ安定的な量産体制の構築を維持してまいります。また、販売を開始した製品について顧客からのフィードバックを受け、継続的な品質向上を目指してまいります。
調達戦略としては、高騰している半導体・電子部品価格への対応として安価な半導体・電子部品へ設計変更などを実施することにより、原価低減を進めてまいります。また、キーサプライヤーに対する調達強化や協力体制の構築による原価低減にも取り組んでまいります。
③ 営業戦略
国内市場においては、小型空撮分野において、当社グループの小型空撮機体の強みである、国産かつ高セキュリティ対応である点を活かせる、官公庁等の政府調達に注力してまいります。また、物流分野においては、資本業務提携を行っております日本郵便株式会社とのドローン物流の社会実装に向けた体制構築を進めてまいります。
海外市場については、経済安全保障による需要の増加を受けて、本格的な海外進出を展開いたします。特に脱中国製品が明確である、米国・台湾の点検・災害対応分野に注力いたします。米国市場においては、2023年1月に設立した当社子会社と現地ディストリビューターとの連携により、販売体制の構築を進めてまいります。台湾市場においても、現地パートナー企業と販売代理店契約を締結し、販売輸出に向けた対応を進めております。また、インド市場においては、引き続きインドにおけるパートナー企業と連携し、日本メーカーである優位性を活かした案件の獲得を目指してまいります。
④ 規制への対応
ドローン関連業界を取り巻く規制の変化に対応し、拡大が見込まれる需要に対応すべく、規制整備に関連する国土交通省、経済産業省などの行政機関と引き続き、密な連携を図ってまいります。
加えて、海外市場への進出においても、現地法規制への対応を進めるとともに、現地規制当局との連携も図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社は、従来、一層の事業拡大を進めるにあたり、適切な内部統制システムの構築、コンプライアンス遵守体制の整備に継続して取り組んでまいりました。また、監査等委員会、内部監査室及び監査法人とより密接な連携を図ることで、内部統制システムの適切な運用を進めております。当社は、2023年3月より、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の監査・監督機能の一層強化により、更なるコーポレート・ガバナンスの充実を図ってまいります。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、急速かつ持続的な利益成長を目指して成長性や効率性の向上に取り組んでおり、主な経営指標として、売上高を特に重視しております。また、当社グループの事業モデルを勘案した上での成長ドライバーとしてのKPIは、用途特化型機体の量産モデルを想定した上で、機体の出荷台数、また、ソリューションの作りこみとして、概念検証(PoC)及びカスタム開発におけるプロジェクトの案件数、機体の出荷台数があげられます。
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